「ガヴ、そろそろ俺は落ちるぞ」
ログアウトの準備をしつつ、俺は背後のガヴにそう言う。
「え?まだ八時じゃん?」
「今日買い物に出かける予定があるんだよ。どっかの誰かさんが、容赦なくウチに飯を食いに来るから、俺の計算より食料の減りが早いの」
「うっ…………」
ガヴに嫌み気味に、言いつつ、ネトゲをログアウトし、ノーパソの電源を切る。
「だから、お前はもう帰れ。俺はシャワー浴びたら家出るから、それまでに出てけよ」
「分かったよ……ま、私もヴィーネと出掛ける用事あるし、少し仮眠取ってから行くかな」
「出掛けるって何時からだよ?」
「えっと………十時に待ち合わせ」
「今、仮眠したら絶対起きれなくなるぞ」
「大丈夫だってまだ二時間あるし。それに、いざとなったら寝ないでいくからさ」
「たっく………遅刻するんじゃないぞ」
そう言い残し、俺はシャワーを浴びに、風呂場へ向かう。
風呂から出ると、既にガヴは居なかった。
服を着替え、簡単な朝飯を食べ終えて、俺は家を出た。
外に出ると、俺はまず駅前の本屋に向かった。
「えっと………確か新刊が今日出てるはずなんだけど………おっ、あった!」
お目当てのライトノベルの新刊を見つけ、棚に近寄る。
「最後の一冊か、ラッキーだな」
それに手を伸ばそうとしたら、別の人と手がぶつかった。
思わず、顔を見上げる。
「あ、蒼空」
「あ、サターニャ」
そこにいたのは、同じクラスで友人の胡桃沢=サタニキア=マクドウェル。通称、サターニャだった。
サターニャはヴィーネと同じ悪魔で、根拠ゼロの自信家だ。
悪魔的行為とか言って、様々な悪いことをしているが、俺から言わせてもらうと、しょぼい。
誰が見てもしょぼい悪さしかしていない。
例を上げると、ペットボトルのキャップを外さずに、ごみ箱に捨てたり、宿題をやってこなかったりだ。
「この本、蒼空も買うの?」
「ああ、そうだけど」
どうやらサターニャもこのラノベがお目当てらしいが、残りは一冊。
どちらかが諦めなければならない。
「ふ、ふん!べ、別に私はこんな本読まないし!ただちょっと、暇つぶしで読もうかと思っただけ出し………別に本ならなんでもいいし!」
そんなに読みたいなら、我慢しなくていいのに。
「あ、この本、俺が探してたのと違うな。どうやら、新刊が出る日、間違えてたみたいだわ」
そう言い、ラノベをサターニャに差し出す
「ほい。サターニャ読んでみたら?これ、結構面白いって有名だぞ?」
「そ、そう!そ、そこまで言うなら仕方ないわね!読んであげるわよ!」
嬉しそうに本を受け取り、サターニャはうきうきとしながら、レジへと向かっていた。
「………本当に悪魔らしくない連中だな」
そう呟き、俺は別に欲しかった本を数冊手に取り、レジで会計をした。
本屋を後にした後、ゲームショップで新作ゲームのチェックをし、欲しい新作のゲームの予約をしてから、スーパーに向かった。
「さて、今日の晩飯は何にしようかな………」
買い物カゴを手に、スーパーの中を歩いていると、俺はふとある事を思い出した。
「そう言えば、ガヴの奴、カレーが食いたいとか言ってたっけ…………カレーにするか」
今日の献立を決め、カレーの材料以外に、必要な物をカゴに入れて行く。
「これで買い物は終了っと。早く家に帰って、昼飯にするかな」
家に帰ろうと足を進めていると、ヴィーネを見つけた。
ヴィーネは一人、そわそわと時間を気にしながら、ぽつんと立っていた。
「ヴィーネ、なにしてんだ?」
「あ、蒼空」
「今日、ガヴと買い物に行くんじゃなかったのか?」
「そのガヴが来ないのよ。もう二時間も待ってるのに……」
「いや、そこまで待ったら電話しろよ……ってか、もっと早くに連絡しろよ」
ヴィーネって真面目過ぎて、本当に悪魔らしくない………
「多分、アイツ仮眠取るって言ってそのまま寝てるだろうし、家まで迎えに行ったらいいんじゃないか?」
「………ああ、そっか」
気付かなかったのかよ…………
結局、ヴィーネと一緒に家に向かい、ヴィーネはガヴの家に向かい、俺は買った物を家に置きに行った。
「……俺も様子見に行くか」
二人の様子が気になり、荷物を置くと、すぐに隣に向かった。
部屋の中では、ガヴとヴィーネの二人が掃除をしていた。
「ガヴ、何があったんだ?」
「いや、ヴィーネを怒らせないように、適当に嘘ついたら何故か部屋の掃除をする羽目に……」
「どうせ、部屋掃除していて時間忘れてたとか適当なこと言ったんだろ?」
「そうだよ。流石は私の(ネトゲでの)相棒」
「はぁ~……仕方ないし、俺も手伝う」
「悪いね」
「悪いと思うなら、日頃から掃除しろ」
ガヴが物を片付け、ヴィーネは掃除機をかけ、俺は雑巾で床を拭いていると、ヴィーネがふと口を開く。
「しかし、ホント汚い部屋ね。天使ってみんなこんな感じなのかしら?」
「失礼な。私だけだっての」
「それもどうなのよ………」
「しっかし、本当にお前は天使らしくないな。実は、お前天使じゃないんじゃねぇの?」
「うむ……その可能性はあるな」
冗談のつもりで行ったのに、ガヴはその冗談を可能性があると言った。
「お前……本当に天使かよ?」
「天使だよ。その証拠に……綺麗な天使の輪っかがあるでしょ?」
そう言う、ガヴの頭の上には黒くなっている天使の輪っかがあった。
「「真っ黒なんだけど!?」」
「あれ!?」
「ちょ!?それ大丈夫なの?」
「う~ん……どうやら私には堕天の才能があったみたいだ……」
それってあったらいけない才能だと思うんだが………
「堕天ってちょっとカッコいいし、一度やってみようかな」
「アンタ、それ簡単に言ってるけど、それって悪魔になりますって宣言だから」
「まぁ、私が天使らしくないのは今更だけどさ………ヴィーネは自分が悪魔らしくないって自覚ないでしょ?」
「あー………」
思わず納得してしまった。
すると、ヴィーネは掃除機を離し、ガヴに詰め寄った。
「ど、どのへんが!?」
「やっぱ自覚なかったんだな………ほら、世話好きだったり、困ってる人を放って置けなかったり………」
「ああ、そうだな。ガヴの世話してるし、学校でも真面目だし、ヴィーネも悪魔らしくないな…………」
「ど、どうすればいいと思う!?」
悪魔らしくないことに焦り出す、ヴィーネはガヴにそう尋ねる。
「それを天使に聞く?ん~、そうだなぁ…………誰か
「悪魔かっ!ちょっとは真面目に考えなさいよ!」
悪魔かって、悪魔だろ。
「だって、悪魔の事なんてわかんないし」
「まぁ、それもそうよね………どうすれば………」
真剣に悪魔らしくなるのを考えるって凄い光景だな。
あ、この本、雑巾掛けするのに邪魔だな。
本を退かそうと持ち上げると、その陰からカサカサっと黒い物体が飛び出す。
それはGだった。
「きゃあああああああああ!!?」
Gを見た瞬間、ヴィーネは悲鳴を上げ、下がる。
「なに!?どうした!」
「ゴッ……ゴゴ……ゴキ……ゴキッ!」
「ゴキ?なにそれって………うおっ!なんだこの黒いの!」
ガヴはGを見るのが始めてたのか、慌てて飛び退く。
「アンタこいつの事知らないの!?これは全ての人々を不幸にするモノ……
いや、そこまでの脅威じゃ…………確かに、居たら嫌だけど。
「ウェポンだが、何だが知らないけど……私の部屋で好き勝手するのは許さん!」
ガヴは教科書を丸め、Gを叩き潰そうとする。
が、危険を察知され、Gは逃げ出す。
そして、ヴィーネの方に向かった。
「ヴィーネ、そっちに向かったぞ!」
「いやああああ!こっち来ないで!」
逃げようとするヴィーネだが、部屋の隅に移動してしまい、逃げ場が無くなる。
それでも尚、Gはヴィーネに近づく。
「あ……あ……~~~~~こっちに……来ないでええええ!!」
ヴィーネは三叉槍を取り出し、Gに向ける。
「ちょ!?そんなもの振り回したら……!」
ガヴが止める間もなく、ヴィーネは槍を振り下ろし、Gは吹き飛んだ。
部屋の中も…………
余計に散らかった部屋を見つめ、ガヴはヴィーネに言う。
「随分と愉快な空間にしてくれたな。今日は部屋の掃除をしてたと思うんだけど……」
「…………あ、悪魔らしく人に迷惑かけて見ました!」
「それで許されると思うなよ」
結局、ガヴの部屋は天使的な不思議な力で元通りに直った。