天使と悪魔の友達   作:ほにゃー

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第5話

「あ、やっべ」

 

四時間目が終わった昼休み。

 

いつも通り鞄から弁当を取り出そうとして、その弁当が無いことに気付いた。

 

「蒼空、どうしたの?」

 

「ああ、弁当忘れちまった。仕方ないし、購買でパンでも買ってくるから、先食っててくれ」

 

ヴィーネにそう言い、財布を手に購買へ向かおうとする。

 

「あ、じゃあさ、今日は学食行ってみない?」

 

「学食?」

 

「うん。一度行ってみたいの」

 

「なるほど…確かに俺も興味はあったし、行ってみるのもいいか」

 

「じゃあ、決まりね」

 

席を立ち上がり、隣のガヴも誘おうと声を掛ける。

 

「ガヴ、俺とヴィーネ、今日は学食に行くつもりだけど、お前も来ないか?」

 

だが、ガヴは上の空で髪の毛を弄っていた。

 

「ガヴ、どうした?」

 

「具合でも悪いの?」

 

心配になり声を掛けると、ガヴは溜息を吐いて話し出す。

 

「私たちってさ、人間界に来て暫く経つでしょ。それで、実際来て思ったんだけどさ…………人間ってこんなに沢山いらなくね?うじゃうじゃウゼェ……」

 

友人(天使)に、存在を否定された…………

 

「天使の言葉とは思えない台詞ね……それより、今日のお昼は学食に行かない?」

 

「学食!?あそここそ、人間のたまり場じゃん!そこに自分から行きたいって、ドMなの?」

 

「違うわよ!」

 

「まぁ行ってもいいけどさ、学食ってお金掛かるでしょ?幾らまで出してくれんの?」

 

「なんで奢ってもらう前提なんだよ……」

 

「それと、サターニャも誘おうと思うの」

 

「サターニャも?………そう言えば、サターニャっていつもどこで食べてるの?」

 

言われてみればそうだな。

 

昼休みになると、教室にサターニャの姿は無く、何処かに行ってるみたいだ。

 

幸いにも今日は、まだサターニャは教室にいる。

 

サターニャの方を向くと、サターニャは辺りを警戒する様に確認し、そして何処かへと向かった。

 

「なんか挙動不審に出て行ったな」

 

「追ってみましょうか……」

 

サターニャの後を付けると、サターニャはどんどん人気のない所へと移動し、そして屋上に繋がる階段の前で止まる。

 

そして、階段に座ると持ってきた包の中からおにぎりを出して食べ始めた。

 

まさかのぼっち飯………

 

いや、人気のない所に移動した時点である程度察してはいたが。まさか本当にぼっち飯だったとは………せめての救いは便所飯じゃないことだ。

 

「アイツ、いつもこんな所で食べてたのか……」

 

「こんなことなら、もっと早くに気付いて上げるべきだった……」

 

「今からでも遅くないし、誘おう」

 

俺たちは頷き合うと、サターニャに近づく。

 

俺達に気付いたサターニャは驚く。

 

「うわああっ!?ガヴリール!?ヴィネットに蒼空!?何でここに!?」

 

驚き出すが、すぐに自分の今の状況に気付き慌てておにぎりを隠そうとする。

 

だが、うっかりおにぎりをまだ手を付けていないおにぎりと共に落とす。

 

「あっ!?」

 

「何やってるんだよ…」

 

「くっ……甘いわね!私にはまだ奥の手があるんだから!」

 

そして、今度はメロンパンを取り出す。

 

「ワン!ワン!」

 

すると何処からか白い犬が現れ、サターニャのメロンパンを奪い、何処かへと逃げて行った。

 

「ああっ!?」

 

「奥の手がなんだって?」

 

「なんで犬が………」

 

「サターニャ……ドンマイ」

 

サターニャは悲しみに暮れ、膝を付く。

 

「サターニャ、ごめんね。一緒に食べる人がいなかったんだね」

 

「なっ!?いや、えっと、その……別に一緒に食べる人がいなかったわけじゃなくて、むしろ私は一人で食べたかっただけで、下等生物共と集団で食べること自体愚の骨頂って言うか!」

 

「落ち着け」

 

涙目でそう言うサターニャを見ていられず、俺はサターニャを止める。

 

「これからは一緒に食べましょう」

 

「だから違うって!そう言うの別にいいから!」

 

「いや、でも本当にサターニャを誘いに来たんだが」

 

「え?私を?本当に?」

 

「本当」

 

「冗談じゃなくて?冷やかしじゃなくて?」

 

「どんだけ疑うんだよ……」

 

誘われたことが嬉しいらしく、サターニャは嬉しそうな顔をする。

 

だが、すぐに自分が締まりのない顔になってることに気付き、いつもの調子に戻る。

 

「私は孤高の悪魔、胡桃沢=サタニキア=マクドウェル!魔界の支配者になる者!そんな私が群衆の中で食事を摂るなんて笑止千万!貴方達とじゃれ合ってる暇はないのよ!」

 

「じゃあ三人で行くか」

 

「う、うん」

 

「寂しくなったらいつでも来いよな」

 

「ちょっ……!?こ、今回は特別に行ってあげてもってちょっと!待ちなさいよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここが学食かぁ」

 

「美味しそうな匂いが……人は多いけど」

 

「へぇ~、こうなってるのか」

 

学食に着くと、上級生や同級生が入り乱れて席に座り、昼飯を食べていた。

 

学食なんて初めてで少し新鮮だな。

 

「まずは何をするのかしら?」

 

「ふふ、どうやら私の出番の様ね」

 

「サターニャ、学食に来た事あるのか?」

 

「初めてよ!でも、この学校の形態は既に掌握しているわ!これも全て、我がライバル、ガヴリールに後れを取らない為にね!」

 

「お前って……本当にバカだな」

 

「バカって言うな!」

 

ガヴにそう言うとサターニャは自信満々に俺達を食券の券売機の前まで連れて行く。

 

「この券売機でまず食券って言うアイテムを購入するのよ!」

 

まぁ、なんとなく分かってはいたけど、折角サターニャがやる気なんだし、見守ってやるか。

 

「サターニャ先にやってよ」

 

「私達よく分からないし」

 

「お安い御用よ」

 

そう言ってサターニャは券売機の前に立つが、結構メニューが多くある為、どれを買えばいいのか迷っていた。

 

迷った末に普通のうどんを買った。

 

そして、何を思ったのか“まとめ買い”ボタンで四人分のうどんの食券を買っていた。

 

「なんで私たちまでうどんを食べないといけないのさ?」

 

「あ、貴方たちの分まで買って上げたんだから、感謝なさい!」

 

「まとめ買いって文字が読めなかったのか?罰としてお前の奢りな」

 

「そんな!?」

 

「もう許してやれって」

 

「それより、ガヴ。割りばし取って」

 

「うん……はいよ。蒼空とサターニャも」

 

「ありがとう」

 

「サンキューな」

 

ガヴから割り箸を投げ渡され、それをキャッチする。

 

だが、サターニャは割り箸をじっと見つめ、ガヴに文句を言った。

 

「ちょっと!これ一本でどうやって食べろって言うのよ!嫌がらせ?」

 

「は?もしかしてサターニャ、割り箸知らないの?」

 

「それ、半分に割って使うお箸なのよ」

 

「そ、そうだったわ!こんなの常識中の常識よね!」

 

サターニャは誤魔化す様に笑い、そして、割り箸を横に割った。

 

「どうしてその形状からそう割ろうと思った………」

 

「いいから食べなさいよ!」

 

サターニャが改めて新しい割り箸を割ったのを見て、俺たちもうどんを食べ始める。

 

「うん、美味しい!」

 

「これは中々……」

 

「あの値段でこの味か……文句なしだな」

 

うどんの味に舌鼓を打つ中、サターニャは一人ドヤ顔していたが、ある物を見つけた。

 

「ん?ななあじ……からこ?」

 

「七味唐辛子な。それ、七回掛けると丁度いい辛さになるんだぞ」

 

「ち、ちょっとガ――」

 

ヴィーネがガヴに注意しようとするが、ガヴがヴィーネの口を押える。

 

「サターニャ、掛け過ぎると辛過ぎて食べれなくなるから……って遅かったか……」

 

俺が注意する前に、サターニャは七味唐辛子を掛けていた。

 

「振り方が甘い。やり直し」

 

「そう?一、二、三、四……」

 

「もっと大きく」

 

「一、二、三、四、五……」

 

「もうワンセット」

 

「随分沢山かけるのね」

 

ガヴの言葉を鵜呑みにし、結局サターニャのうどんには七味唐辛子がたっぷりと掛かっており、スープが若干赤く染まっており、白いうどんの面にも赤い粒がびっしり付いていた。

 

「なんか七回処じゃ済まなくなったけど、まぁいいわ。いただきます」

 

そう言って、サターニャは七味まみれのうどんを啜る。

 

「んっ!?」

 

「ちょ、大丈夫!?」

 

「水飲むか!?」

 

俺とヴィーネは思わず立ち上がり、サターニャを心配する。

 

だが――――――――――

 

「美味しいっ!」

 

「「「えっ!?」」」

 

これには俺とヴィーネだけでなく、ガヴも驚いていた。

 

「辛さがうどんの味を引き立ててるわ。悔しいけど、中々やるわねガヴリール」

 

「そ、そうでしょ………もっと面白い反応を期待してたんだけどな……」

 

「サターニャが味音痴でアテが外れたわね」

 

「意外な形で負けたな」

 

苦笑していると、サターニャはガヴのうどんのどんぶりを掴み、自分の手元に引き寄せる。

 

そして、七味をたっぷりと掛け始めた。

 

「ガヴリールのにも掛けてあげるわ。七回じゃ足りないわよね」

 

「うわー!止めろー!」

 

ガヴの叫びもむなしく、ガヴのうどんには大量の七味が掛けられていた。

 

「どうしろってんだよ、これ………」

 

七味まみれのうどんを前に、ガヴは呆然とする。

 

自業自得とは言え、流石に可哀想だな。

 

「ガヴ、俺のうどんと変えてやるよ」

 

「え?いいの?」

 

「辛いのは割と平気だし、それにお前も無理して七味まみれのうどんは食いたくないだろ?食い掛けだが、まだ一口だけしか食ってないから大丈夫だろ?」

 

「頼むわ」

 

そう言ってガヴから七味まみれのうどんを受け取る。

 

ついでに割り箸も一緒に受け取る。

 

「あ、ガヴ。割りば―――」

 

「ん?ろうひた(どうした)?」

 

既に俺の割り箸で、俺のうどんを食っていた。

 

流石に新しい割り箸を割るわけにもいかないし、このままこの箸を使うか。

 

ガヴが使っていた割り箸を使い、七味まみれのうどんを啜る。

 

うん………辛いし、噎せる…………

 

(あれ?今更だけど、私、蒼空と間接キスしてね?…………まぁ、子供じゃあるまいし、間接キス程度で騒がないっての。………騒がないけど……なんか顔が熱いような………風邪か?)

 


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