空の花《チェロ・フィナーレ》ただいま更新停止中 作:雪宮春夏
どっちかというと、プロローグがこれなんじゃ?と思う方もいるかもしれませんが、プロローグは各章毎につける予定なので……。
はい。
いつ止まるかは分かりませんが、とりあえず今回の始まりの話し以降も書いてみようかとは思います。
最もあくまで予定ですので……。
その髪……濃き紫の長きにして
「いたぞ!あそこだっ!!」
屋根の上に立つその人物を、この屋敷の所有者をボスと仰ぐファミリー達が取り囲んでいた。
視界を埋め尽くさんばかりに集まる黒服の男達を見下ろしながら、追い詰められている筈の人物はふっと唇を緩ませる。
その眼……高純度の大空の炎の如く、鮮やかな橙。
「バァカ。ハマったのはそっちだよ!」
声に出して一瞬。トンと軽い跳躍で……その人物は窓から飛び降りる。
それを捉えようと落下地点へと駆け寄る男達にほくそ笑み、懐に手を伸ばす。
その
「《
その唄……虹ように儚い。
手の中にあったのは、
細身の刀は東洋系に感じられるが、
しかし、その剣を前にした男達にはそのような思考をする暇さえ与えられなかった。
その人物が地面に着地するよりも先に突き刺さられた剣からその瞬間、炎が迸ったのだ。
その炎は大地を駆け、まるで意志を持っているかのように次々と男達を拘束していく。
「な……何だこれ!? ロープみてぇに硬ぇ!」
一人の男が驚愕に顔を歪めるのを皮切りに、身動ぎする男達が、一人、また一人と呻き声をあげる。
「悪いが、そこでジッとしていてくれ……」
顔をあげたその人物はそう一言だけを残し、己の目的を果たすために歩みを進めた。
カチャリと、扉を開けた先に見つけた人物を見て、橙の目を伏せる。
「この……不届き者が! 俺の絵は渡さんぞ!?」
その相手は、表に屯していた黒服の男達のボスだ。
「知っている奴か?」
耳元で囁かれた相棒の言葉に頷く。
「ボンゴレの同盟ファミリーだ。……俺の代で調印した人で……俺を孫のように可愛がってくれた。身寄りと呼べる身寄りがいないからと言って」
相棒の言葉に答える声は平淡とした声音だ。小声なのも相まって、彼ら以外の人間には何を話しているのかは分からないだろう。
「な……何だお前達は…誰か! 誰かいないのか!!」
己に迫る危険は分かるのか、声を上げて外にいるファミリーの者達を呼び寄せようとする。
「大丈夫ですよ。ドン」
張り上げる己の声以外、物音一つしない現状に、最悪の事態を想像したのか、顔を青ざめさせていく。
それに薄く微笑んで、言葉を紡いだ。
「誰も死なせません。貴方も……俺が守ります」
迷いの無い、曇りの無い視線に射貫かれ、呆けたように男の動きが止まった。
「《
そこに朗々と紡がれるのは小さな相棒の声だ。それに答えるように手の中にある剣に填め込まれた石が光を放つ。
「《
相棒の声に答えるように紡げば、体中が総毛立つ感覚に襲われる。
悪魔。そう呼ばれるものを倒すためには仕方のない過程だと分かってはいるが、この嫌な感じはおそらく決して慣れることは無いだろう。
己の持つ容量限界ギリギリの炎を無理矢理吸い上げられるこの感覚が平気になれば、それは生物としての生存本能の欠損に他ならない。
己の中をスッカラカンにされるのと引き替える様に
それと対峙するここのドン……正確にはその彼に取り憑いている悪魔が、目に見えてビクついた。
明らかに動きが悪い。
「……っ! 狗がっ…!!」
逃げようとする相手を一睨みすれば、動くことさえ出来ないのか、恐怖に顔を歪めてこちらを見据えていた。
「……チェック・メイト」
光の軌跡を残しながら剣で絵を切りつける。
その直後、男はまるで糸が切れたかのようにその場に倒れた。
「……大丈夫か?
相棒の声に頷いて、
「……見つけた。駒の欠片だ」
呟いて立ち上がった
「小せぇなぁ。あれだけやって、たったこれっぽっちかよ」
つい口を曲げてしまう相棒に、漸く
「あの程度の相手だったんだ。予想は出来てたさ」
でもよぉと、まだ不満げな彼を軽く撫でながら、一人歩く
「仕事は終わりだ。……帰ろう。アクセス」
一夜明けたイタリアンマフィア、ボンゴレ本部にて、荒々しく足音が響き渡った。
「十代目! 申し訳ございません!!」
時間はまだ朝。丁度朝食を摂っていた俺……ボンゴレ十代目、沢田綱吉は、入ってきた途端に垂直九十度のお辞儀を繰り出した右腕、獄寺隼人の姿に、思わず咽せて咳き込んでしまった。
因みに吞んでいたのは食後の紅茶だったので物的被害はそこまで多くない。
「……い、いきなりどうしたの? 隼人」
息も絶え絶えになる綱吉の姿に目もくれず、獄寺隼人は続けた。
「昨日もボンゴレ同盟ファミリー所有の絵画を狙う、あの憎ったらしい怪盗
無念さを隠しきれないのか、ギリギリと歯を食いしばりながら、隼人は俯いているが。
(そりゃあ、とうの俺にご丁寧に全部教えてくれるんだもん。ギリギリの体力でやっている俺としては避けるよ。勿論)
狙われている本人にして、彼に守られている本人という、何ともおかしな立ち位置に俺は空笑いを溢すことしか出来なかった。
「まぁ……次頑張ればいいんじゃない?」
「……申し訳ありませんでした! 次こそは必ず御前にあのクソ生意気な怪盗のツラ引き摺り出してみせます!」
俺の言葉で元気になってくれるのは良いが、それは無理な事なのでは無いかとは思わずにはいられない。
そう。昨夜あのファミリーに盗みに入った怪盗とは、俺、沢田綱吉なのである。
何で俺が
「……何ぼけっとしてやがる。ダメツナ」
拳を握る隼人を見ながら、物思いに耽っていた、俺は俺の右隣……そこに置かれた椅子に座るおよそ五歳程度の少年に目をやった。
「さっさと食え。この後の予定は分かってんだろ?」
ちろりと、こちらを見やったのは、嘗て俺の家庭教師だった存在。そして先日からボンゴレ十代目相談役に着任した、俺の頼れる相棒の一人。
「分かってるよ。ヴァリアーとの会談だろ?」
そう言った俺に満足そうに笑う顔には、嘗ての様な薄気味悪さは無い。
(……そう言えば、いつも始まりはこいつなんだよな)
ふとつい先日と、そして彼と初めてあった四年前を思い出す。
(……いつもこいつがいるから、俺は動き出せるのかもしれない)
最も、そんなことを話す気は無いのだけれど。
「分かっているなら良いぞ……獄寺! テメェもさっさと食っちまえ! ボスを待たせんなよ!」
矛先を変えたリボーンの説教を聞きながらしながら、俺は数日前の事を思い出した。
(本当に変わったよな。あの時は隼人と二人っきりだったのに)
あの時は漠然と胸の中に空洞が出来ていたように感じていた。
しかし、今は違う。
それは……俺が
俺が仲間全員に、秘密を抱えることになってしまった始まりの話とも言える。