空の花《チェロ・フィナーレ》ただいま更新停止中 作:雪宮春夏
他の作品に詰まっているときに書きますし、詰まっていなければ書きません。
また、突然消えるかもしれない作品でもありますのでご注意下さい。
prolog
その予兆があったのは、いつからだっただろうか。何度考えても、俺には分からなかった。
「十代目。本日の分の報告書です」
聞き覚えのある声に顔をあげると、俺の右腕を自負する見慣れすぎる程傍らに居続けた男が、心配そうな目を俺に向けていた。
「少し、休憩されませんか? 顔色が良くないです」
敵対ファミリーからはよく、「ボンゴレの狂犬」等といわれる彼だが、俺や、親しい相手しかいないときの彼はまるで子犬のような表情をすることがある。
それは彼がそれだけ俺達を無条件で信頼してくれている証でもあるのだから、俺としても無碍には出来ない。それを知っている上で、お願いの形をとって己の言い分を通そうとするのだから、この数年で彼も随分図太くなった物だと、喜んでいいのが判別のつかない感慨を抱くこともここ最近のことだった。
「分かったよ。じゃあ、君も付き合ってくれる?
悪戯っぽい笑みを浮かべた俺の言い分なども、長年の付き合い故にお見通しなのだろう。彼、
ここはイタリア。そこに本部を置く、イタリアの中でも巨大な規模を誇るイタリアンマフィア、ボンゴレファミリーのその本部である。
何故か言葉が重複しているが、それは俺が口べたなせいなので目を瞑って貰いたい。
俺、沢田綱吉は、日本生まれ、日本育ちの元は普通の一般市民だが、このマフィアの創設者にして、若くしてマフィアのボスを引退し、日本に渡ってしまった初代ボス、ボンゴレ
「……って、今も一応十代だった」
側近にして、マフィア教育を受け始めた当初から、一番の部下……右腕として、また身近な友達の一人として俺を支え続けて来てくれた隼人の入れてくれた紅茶に口を付けながら、俺は思いだしたかのように、言葉を零していた。
「……? はい。十代目は御年十八ですが?」
それが何かと首を傾げる彼に笑って、俺は紅茶を卓の上に戻した。
「……ううん。何か……随分遠くに来ちゃったなぁって」
そこで浮かべた笑みの意味が何なのか。浮かべた俺にもよく分からない。
『俺はお前を立派なマフィアのボスにするために来たんだぞ』
平凡な日本の片隅にいた俺を、そう言ってマフィアの世界に引っぱっていったあいつと初めて会ったのは、俺が中学一年の十三の頃。
あの時は、絶対継がないって思っていた組織をいつの間にか俺は継いでいた。強要された訳じゃ無い。
脅迫された訳でも無い。己の意思で最後はそれを選んだ。
そこにいたるまでの間に、辛いことも悲しい事も理不尽なこともたくさんあって、それは今でも時々ある。どうにかしたいと思うことがあって、どうにかしなければと考えて、我武者羅にやりかけると時々、周りの皆が助けてくれていた。
(そうやって進んできて、今がある……けど)
ふと、近頃頻繁に感じる違和感を、俺は隼人に零していた。
「近頃、皆で集まること……無くなっちゃったね」
無論、ボスである俺が緊急招集をかければ、ほとんどの者達は集まるだろう。しかし、俺が言いたいのはそう言うことでは無かった。
「……あまり都合がつかないだけですよ。山本や、笹川は今がちょうどシーズン中ですし」
隼人の慰めの言葉に、俺は小さく頷く。気分が沈んでいる自覚はあったが、いつまでも逃げることはできなかった。
俺がボス業に就く以前から、俺は多くの抗争に訳あって巻き込まれてきた。
他ならぬこのボンゴレファミリーの後継者問題。
過去の軋轢からボンゴレに恨みを持っていた者達との間に起きた諍い。
そして、俺の導き手であったあいつの望みであいつの代理として戦った虹の代理戦争。
どの戦いも命がけで、当時はとても恐ろしかったけど、その戦いの終わった後は、なんだかんだと敵対していた彼らとは良好な関係を築けるようになっていたと思う。
そんな彼らとはボスになってからも、手紙のやりとりや電話、時には直に遊びに来てくれたりと、その交流は続いていた。……なのに。
「……皆、変わりないといいね」
この数ヶ月、彼らのどこからも、返答が無い。
それは、隼人と同じく、側近である他の六人でもだ。
「大丈夫です。十代目」
僅かな間を置いて、そっと俺の手を包む暖かい感触が返ってきた。
見ると、心配そうな顔を隠しもせずに、隼人は俺の座る椅子の前に膝をつき、俺の両手を自分の両手で包んでいる。
「あいつらは変わりません……誰一人、貴方を置き去りにしたりしない。信じてあげて下さい。十代目」
迷い無く言いきる隼人の手は昔とちっとも変わらない。
それに何かおかしな感じがして、俺は小さく笑っていた。
「ありがとう。隼人」
何も変わらない。その言葉を俺は信じようと思った。
何かが変わる。今思えばこの時既に、俺の中の超直感は、その異変に気付いていたのだ。
有り体に言えばどこかで見たような、きいたようなと思うあれだ。
率直に言えば、あの後就寝のために厳重な警備が敷かれた奥の奥、己の寝室へ辿り着いた俺を待っていたのは、そんな出会いに他ならなかった。
「あんたが、ボンゴレファミリー十代目、沢田綱吉だな!?」
何者も侵入できないほどの厳重な警備が敷かれているはずのその部屋にいたのは、どう贔屓目で見ても人間ではなかった。俺が真っ先に疑ったのが何者かによる幻術による攻撃だが、持ち前の超直感が見事に否定してくれる。
「俺は、準天使アクセス・タイム!!」
そう名乗った天使様とやらは、どう考えてもこびと並みのミニマムサイズ。動きを止めていたら完全に手乗り人形と見まごうべき小ささだ。ばっさばっさと活発に動く白い羽さえ無ければ、まだ何らかの実験や薬によって極小サイズになってしまった人間ではないかと思い込めるのだが、それもどうやら難しいかもしれない。
「沢田綱吉! お前を怪盗にするために来た!!」
『俺の名はリボーン。おめぇを立派なマフィアのボスにするために来た!』
この時俺は、間違いなく笑っていただろう。
その
これが、新たな非日常の始まりになるのだと俺には確信できてしまった。
これが、俺と、俺の新しい相棒、アクセスとの出会い。
俺が、怪盗になった始まりである。
検索結果、ハーメルンに神風怪盗ジャンヌを原作とした小説が見つからなく……無いなら書いてやる!! の精神で始めたのがこの物語を書こうと思ったそもそものきっかけです。
大体原作の連載の期間もジャンルも違うから、あまり混合しようという人も居ないのかもしれないけど。
昔も今もフィンが好きですが、あの黒尽くめの家庭教師様との共通点を作りたく、また元の原作をあまり変えたくないという思いから、相棒は彼になりました。
……大体、同性の方がやりやすいだろうし。多分……。