空の花《チェロ・フィナーレ》ただいま更新停止中   作:雪宮春夏

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 あれ? これやばくない?
 書いている途中でそう思ってしまいました、雪宮春夏です。
 今回生々しい表現が文中に出てしまったので急遽タグ追加しました。
 書いててこっちまで顔赤くなりそうだった。
 ……それではどうぞご覧下さい。


♯1 自称神様の勅命

 状況を整理しよう。

 ここはイタリアの中で最大の勢力を誇るイタリアンマフィア、ボンゴレファミリーのボスの寝室である。当然その警備は厳重その者で、ありの一匹でさえ入り込めないほどのものの筈だが。

「……な、何笑ってんだよ? お前頭大丈夫か?」

 そんな部屋の中に何故か入り込んでいる侵入者の方が何故か主である俺の心配をしていた。本来この部屋に入ろうとする奴らの大半って、俺の命を狙おうとする不届き者の筈なのに、何ともおかしな話だ。

「ご……ごめんね。アクセス、だっけ」

 自然と目に堪ってしまった涙を拭いながら、俺は彼が立っているベット脇のミニテーブルの傍らに屈み、彼と目線を合わせた。

 テーブルの上に顎を載せれば、ちょうど彼との目線はピッタリだ。これをミニマムと呼ばずにしてなんと呼ぼう。

「それで結局、君は何なの?」

 不法侵入者であるはずの彼に、俺の超直感は反応一つしていない。たとえ危険で無くてもこれは不審者だ。

 隼人を呼ぶことは確実なのに、何故か俺は呼ぼうという気にならなかった。

 目線を合わせてジッと返事を待っていると、もしや彼自身も勝手に部屋の中に入っていたという後ろめたさはあったのか、少ししどろもどろになりながらも、言葉を紡ぎ出す。

「俺は天使だ。天使って言うのは神界を統治する神によって死した人間の魂から作り出された不思議生命体で、その中でも俺は準天使っていう地位にいる。……この組織で言えば実働部隊? みたいな感じで……」

「……うん。でー、俺に何のよう? 何しに来たの?」

 この時点で俺には色々と突っ込みたいところ満載な内容であったが、あえてその疑問からは一度目を背け、彼に話の続きを促す。

 言いにくそうにしている彼には悪いが、さっきその場の勢いで聞き流してしまった言葉は、早めに聞き直しておいた方が良いという俺の判断である。

「神の勅命を受けて、お前の所に来た。頼む! 怪盗になって、「悪魔」を封印して欲しい!」

「…………」

 その直後、二人の間を支配したのは、何とも言い難い静寂だった。

(怪盗……やっぱりさっきの言葉、聞き違いじゃ無かったんだ)

 信じるか否かは二の次に、取りあえず俺は彼……アクセスの言葉を受け入れた。

 俺の持つ、ボンゴレファミリーボスの血統だけが持つことのできる「見透す力」超直感は、これを偽りでは無いと言っている。

 しかし、本人が嘘をついていないからと言って、それが本当とは限らないのだ。

 考えられるとしたら、勅命を受けている本人が、上から嘘をつかれているケースなどもある。

(大体……神界とか、神とか……でも)

 あり得ないだろうと、思う一方、今までの経験が、あり得ないわけではないと、その考えを否定する。

 過去では、リングの炎やボックスは夢物語だった。別の平行世界の未来ではあり得ないと言われていたタイムトラベルが起きたこともある。

 俺の身に降りかかったそんな前科の数々を考えれば、神様がいて、その勅命を受けた天使が尋ねてきて怪盗をやってくれと頼み込む。

 色々と突っ込みたいところも無いわけじゃ無いが、誰が、何をどのようにと、一部でも分かっているだけ大分マシなのだ。今までとは。

(でもこれ全部……裏付け何てとれないんだよな……)

 そんな不安要素さえ無ければ。

「……話は分かったけど、何で俺?」

 取りあえず会話を進めるために、突っ込みたいところ第一位に俺が認定していた疑問から、俺はアクセスと言う自称天使の少年に投げつけた。

 取りあえず俺が聞く耳を持とうとしてくれている事に安心したのか、アクセスは少し肩から力を抜いて口を開く。

「えっとな……悪魔を封印できるのは、本来ならばある特殊な魂の持ち主である少女だけなんだけど」 

「ちょい待て!! その時点で矛盾してるよねぇ!!!」

 目の前にいる天使様から漏れた言葉に、反射的に彼を手でわし掴んだ事はどうか許して欲しい。しかし、俺にも譲れないものはあるのだ。確かに俺は筋肉があまりつきにくい体で、東洋人であることと、顔立ちが母親譲りの童顔であることも相成り、周りからは格好いいだの凜々しいだのよりも可愛らしいと言われる割合の方が明らかに多いが。

「俺男だからね!?」

「分かってるわ! んなことは!!」

 反射的に力を込めた右手の中でアクセスも暴れながら言い返す。

「だから言ってんだろ! ()()()()()って!」

 暗に現状は例外だと言い含めるアクセスに、彼には悪いが俺の中の彼らへの胡散臭さ度は増した気がした。

 己だけが例外と言われて、喜べるほど、マフィアの世界は甘くは無い。何か裏があると考えるのが妥当である。例えば……。

「もう一度聞く。何で俺だ?」

 例えば俺の持ち物の中で、奪いたいものがある、等だ。

 そして誠に残念なことに、俺には一つだけ、神を自称するような奴が欲するような己の持ち物に、心当たりがあった。

(トリニセッテ……! まさか、それが目的か!?)

 トリニセッテ。それはこの星を正しい方向へ成長させる為に、チェッカーフェイス達、俺達の人種よりも前の時代からこの星で暮らしていた「真性」の地球人達が守ってきた装置を、二十一個の欠片に分割したものである。

 その中でも、縦の時間軸と呼ばれる時間を司る七個の欠片は、適合者であった初代ボスのジョットから百年の間、このボンゴレファミリーで守られてきたのである。

 そして縦の時間軸の要となる大空のリングは、今も俺の指に光っている。

 俺の殺気混じりの声と態度から、状況が己の不利な方へ進んでいると分かったのだろう。慌てた口調でアクセスは続けた。

「あ……特殊な魂を持たない人間で、悪魔を封印できるのは高純度の大空属性の炎を持った、純潔な子どもだけなんだ!!」

「何で?」

 厳しい声音を変えることなく、詰問を重ねると、その気迫に負けたのか、アクセスは言葉に詰まりながらも答え始める。

「そうでなきゃ、封印途中で、逆に悪魔に取り憑かれて、体を乗っ取られるんだ。高純度の大空の炎が持つ、強力な浄化能力だけが、特殊な魂……神から力を授けられた魂と同等の聖気の変わりとすることができるんだ」

「へぇ……でもさ。高純度の大空の炎なら、俺の他にも適任者いるでしょう? 何で俺?」

 俺の言葉に、目に見えてアクセスの体が縮こまっている。

 しかしここまで聞かなければ、俺が納得できないのだ。最もそれで信じるかどうかはまた違う話になりそうだが。

(高純度の大空の炎なら、俺以外にも二人ほど心当たりはあるんだよなぁ……)

 その内の一人は少女だ。そもそもの例外で無い括りが女性ならば、彼女が選ばれるのが妥当だろう。

(それに彼女、元とは言え、大空のアルコバレーノだし。巫女の家系だし、どう考えても適任あっちじゃん)

 膨らむ疑心を表すように、向ける視線もジト目になってしまう俺に気づいているのだろう。

 しどろもどろな様子でアクセスは続けた。

「だから言ってるだろ? 純潔な子どもだって。つまり……二人ともその」

 そこで言葉に詰まったアクセスの顔は、何故か真っ赤に染まっていて。

 そこで俺はまさかと、アクセスが口ごもった理由について、一つの可能性を導き出していた。

(え? もしかして、こいつの上にいる自称神様って、そんなことまで分かるの?)

 プルプルと、体を震わせて、言葉を紡ごうとするアクセスの姿は、見ていてまるでこちらが虐めているような罪悪感を抱かせる。

 彼の上にいるであろうものが何者かは分からないが、少なくともアクセスは嘘をついていない、それは俺の超直感が何よりも証明している事実だった。

(いや、でもさ、俺より年上の白蘭は分かるけど……ユニも?)

 純潔で無い、と言う括りを付けるには、その少女はあまりにも幼いのだ。たしかまだ、十を過ぎた程度の年齢だったはずだ。 

「いや、だからな。……純潔を無くすって言うのは、神の加護を持たない普通の人間だと……」

 チラリと、そこで俺に目を向けたアクセスは、僅かに目尻を赤く染めながら、小さく囁くかのような声で、言葉を続けた。

「自分で……その、……自分の体を……まぁ、するだけでも、ダメなんだよ」

「………………」

 そこに広がったのは、何とも言えない空気だった。

 赤面し続けるアクセスに、顔を引きつらせる俺。

 プライバシー保護などどこ吹く風なその神様に恨み言を零せばいいのか、若しくはあまりにも早い少女の性的行動に苦笑いすれば良いのか。

(曲がりなりにも普通じゃ無いのかなぁ……この世界って)

 一周回った思考が着地したのは、諦観だった。

「そ……それでさ。あの……」

 言いにくそうにするアクセスには悪いが、俺の意見は既に決まっていた。

「却下。その……自称神様に、失敗したって伝えてくれない? そんでお前はさっさと部屋から出てけ。情けで部下には報告しないでやるから」

 そう言いきってからの俺の行動は早かった。目を丸くする彼に構わず、むんずと彼の体を掴んだまま一直線に寝室に付けられている小窓を開け放ったのだ。

「ちょっと待て! 俺は素直に話しただろ! 何で引き受けてくれないんだよ!!」

「話せとは言ったけど、話したら引き受けるとは一言も言っていないし、お前はともかくお前の上にいる奴らが信用できない!」

 俺でも滅多にしない、外面十割の満面の笑みで追い出した唯一の窓を閉めて鍵をかける。さて寝ようと踵を返した俺は悪いとは全く思わなかった。

 リボーンに鍛えられてボス業を継いで、俺とて、単なるいい人でいられたわけではないのだ。ボンゴレという巨大なファミリーの要になっている以上、非情な決断をしなければいけないこともある。

 哀れみや、同情……そんな感情だけで動くことはもう出来ないのだ。

「悪魔の気配はこの敷地内からも感じるんだ! お前の大切な奴らに取り憑いている可能性もある! 封印できるのは、お前だけなんだぞ!?」

 窓枠で必死に言い募るアクセスの声から目を背けて、耳を塞いだ。

 単に逃げたかっただけなのかも知れなかった。

 

 

 

 




 本日まさかの四度目投稿……うん。次は多分間あきます。
 神風怪盗ジャンヌの原作って、怪盗になる二人とも、アクセスやフィンの言動とか神の存在とか年の割には疑うって行為がまるで無いように見える。
 それともそれが神様に選ばれる理由なんだろうか。
 ……でもそれって、今のご時世だと軽く詐欺に引っかかるって事じゃあ……。
 すいません。春夏も歪んでました。(土下座)
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