暴牛所属の偽・獅子王   作:〇坊主

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やぁ。連投する予定だったのにこの回書いてなくて急いだ結果一時間ズレたよ。
 
 


入団試験終了

 

 

 ちょっとしたハプニングがあったがあれからは実に平和的であった。

 初戦の戦いを見て魔力がなくとも勝利を収めたアスタの姿に奮起した受験生が格上であった貴族を倒す大番狂わせもあったりした。

 だがやはりというか団長らの意識は初戦の二人であるアスタとセッケ。そして最後の戦いで貴族を瞬殺したユノに向いているようだ。

 

 ユノに関しては四つ葉の魔導書に選ばれた神童としての興味、セッケは戦闘魔法を使いこなした技量に、そしてアスタに関しては魔力を持たずに勝利したという気味の悪さにだろうがヤミ団長の御眼鏡には無事に適ったようだ。

 その証拠にニヤニヤしながら彼らを見てる。

 

 他の団長が手を上げなければ確実にアスタは『黒の暴牛』の仲間入りだろう。

 ユノは全騎士団が欲しがっているので本人次第のところがあるが、セッケはどうなるか。

 正直先ほどの告白を受けてシャムミッドは少し…いや結構今後の対応に困っている。

 素直に答えを返したらいいのか、彼が文字通りの男となった時に答えを返せばいいのかわからない。

 

(とりあえず待ってもらう様に伝えておきましょうか…)

 

 少し考えてシャムミッドは日和った。

 告白という一大イベントを年下の弟子にされたのだ。

 このまま素知らぬ顔で会うことなぞ不可能なのだ。故に仕方ないのだ。

 そう。きっと。メイビー。

 

 高らかに宣言したセッケ自身もやはり後になって恥ずかしかったのかこちらを見ない。

 いや見ようとする素振りはあるのだが、やはり自分と目が合いそうになるとすぐに真逆の方向を向いてしまう。

 

 すこし複雑な気持ちになったが、セッケ自身は先の敗北お受け入れることが出来たのか、ユノとアスタに負けない宣言をしていた。

 あの三人だ。今後も切磋琢磨して成長を続けてくれるだろう。

 

 

「みんな。良く頑張ってくれた。以上で試験は終わりだ」

 

 

 『金色の夜明け』団長であるウィリアムが試験終了の宣言を行い、これから結果発表となる。

 試験番号を呼ばれ、団長らが挙手することで挙手した団へと入団できるシステム。

 誰も手を上げないこともあるため、ある種の公開処刑に等しい結果発表だが、その程度で心が折れてしまう団員なぞ不要ということだろう。

 

 

「番号を呼ばれた受験生は前に出て来てくれ。その受験生の入団を望む騎士団長は挙手をお願いする。

 挙手した団に入団するか否か、そして挙手した団が複数であった場合はどの団に入るかは受験生の自由だ。だが挙手した団が無い場合は魔法騎士団へは入れない。

 では受験番号001番、前へ――」

 

 

 その試合結果に涙する者がいれば、逆に喜ぶものもいる。

 格上を倒した受験生もちらほらいたが、その者達は複数の団長が手を上げていた事で喜びを噛み締めていた。

 

 

「――次…164番」

 

 

 番号が呼ばれ、周囲がざわつく。

 164番は最後の試合で貴族を一蹴したユノの番だ。

 静かに前へと足を進め、挙手した団は―――

 

 

『全団…挙手――!!?』

 

 

「まじかよ……!」

「………!!」

 

「すっすげぇぇぇええ!」

「フッハ!流石だな」

 

 受験生が驚く中にはライバルの二人も入っていた。

 全団挙手など至極稀。

 しかし先ほどの実力の高さを見せれば納得と言ったものだ。

 

「―――『金色の夜明け』団でお願いします」

 

 ユノの宣言にウィリアムは笑みを浮かべ、他の団長は多少なり悔しそうな表情をしたが、騎士団の名声を考えれば妥当だと受け入れた。

 

「スッゲェなユノ!全団挙手なんて!」

「フッハ!おめでとうユノ!」

「ありがとう。……アスタ、セッケ」

 

 ライバルの素直な言葉に多少照れ臭そうにしながら、ユノは伝える。

 

「魔法帝になるために、オレは最善の道を行く。勝負だ」

「「おう!!」」

 

 

「――次は165番」

 

 ユノにだけは負けられない。

 アスタも緊張しながら目を瞑って前へと進む。

 

 

「では入団を希望する団長は、挙手を」

 

 

 確かに最後以外の試験は最低点だろう。

 だが最終試合でのセッケとの戦いは評価してくれているはず。

 そう落ち着かせて目を開くと―――

 

 

 

 シ・・・・ン・・・・

 

 

 

 誰も挙手をしていなかった。

 先ほど拍手をしてくれていた団長だけでない。

 アスタを認めてくれていたシャムミッドも静かにアスタを見据えるだけだ。

 

(………!)

 

 流石のアスタもこの光景に対し、言葉がすぐには浮かんでこなかった。

 『黒の暴牛』が行動に移さなければ。

 

 

「そりゃそうだわな」

 

 静まり返った会場に響く声。

 だれもが団長であるヤミを視界に収める。

 

「たとえ高い戦闘能力を持ってようが、それが得体のしれない力じゃ誰も手を出さねぇわ」

「!…ヤミさん!」

 

 側近のフィンラルが慌てて声を挙げるがそれで止まる彼ではない。

 

「なんやかんやで、結局のところ魔法騎士団に求められるのは…

 

 

 魔力だ

 

 

 立ち上がり、ヤミが有する膨大な魔力を開放する。

 それはかつてシャムミッドがアスタに行った問いかけ。

 会場を支配するかの如き重圧を、まさに息を吸う様に出す魔力は、ヤミの実力を裏づけていた。

 

 

「魔力を持たないオマエなんざ誰も欲しがらねぇ…これが現実だ……!!」

「……」

 

 

 その重圧を放ったまま会場へ飛び下りるヤミをフィンラルは止めようとするが、シャムミッドに止められた。

 あれも一つの試験なのだ。

 他人が勝手に止めてよいものではない。

 

「お前、さっき魔法帝を目指してるって言ってたな?つまりは俺ら魔法騎士団長を超えるってことだな?

 今、オレを目の前にしてもまだ――魔法帝になるとほざけるか?」

「勿論です!!」

「!」

 

 手心は加えても、加減はしなかった圧力をアスタはすぐに跳ね返した。

 それにヤミは多少評価を引き上げた。

 嘘でもない。虚勢でもない。本心から、そう信じている。そんな目だ。

 

「前に、シャムミッドさんに同じような事を言われました。団長らを越えることがどれだけ厳しいものかも理解しています…!だけど決めています。ここで魔法騎士団に入れなくても、誰に何を言われようとも――!

 

 オレはいつか、魔法帝になってみせます!!」

 

 

「フッハ…アイツらしい」

 

 騎士団の団長にあそこまで啖呵を切れる者は早々いない。

 セッケはアスタの芯の強さを褒め、ユノはアスタの姿に笑みをこぼす。

 

 対するヤミはアスタがはっきりと宣言したことで高らかに笑い、アスタの入団を決定した。

 魔法帝になるという夢を正規の騎士団から認められたのはこれで二人目。

 その喜びを乗せて、大きく返事を返すのだった。

 

 

 

「次は166番前へ」

「はい」

 

 番号を呼ばれ、返事をしたのはこの試験を賑わした最後の一人、セッケ。

 最終試験ではアスタに敗北こそしたものの、巧みに魔法を操る技量を見せた。

 試験を見ていた受験生も彼がどんな判断がされるのか真剣に見ていた。

 

「それでは彼の入団を希望する団長は、挙手をお願いする」

 

 ざわっと会場が驚愕する声を聞いて、セッケはゆっくりと目を開くと…

 

―――!!

 

「ま、また全団挙手……!??」

「すっげぇ…!」

 

 そう。セッケの入団を希望したのは全団長だった。

 周囲は驚愕しているが、先ほど圧倒的な実力を見せたユノとそのユノにタメを張るセッケはすでに即戦力の有能株という認識だった。

 そんな美味しい存在を引き入れれば騎士団としても利が多い。

 その光景を見たセッケは悩んだ。

 

 セッケはシャムミッドを師として鍛えられた魔導士だ。

 もとより彼女を支えたいと願って騎士団に入ることを決意したのだし、それでいけば『黒の暴牛』に入るの自然の摂理だ。

 しかしそれで彼女を護る存在になれるのかと問われれば否だ。

 確かに暴牛へ入れれば今後も鍛えられる。だが自立はしていない。

 

 一人立ちせずして、彼女を護れる存在になれるのか。

 それを悩むセッケに対し、誰も急かすことはしない。

 人生でも大事な場面だ。後悔しない選択をするためにも、受験生達だけでなく団員らも静かに見守るのは暗黙の了解であった。

 そして少しして、セッケは決めた。

 

 

「オレが入団を希望する団は―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 あれから少し慌ただしくなったりしたが無事に入団試験は終了した。

 これから入団した団員は己を高めてクローバー王国を守護していくことを願うばかりだ。

 

 

「オレを待たせるとは良い度胸だな…!!どんだけ長いウンコしてるんだテメェ……!!」

「いやホンッットすっごいのが出たんすよ…!もうこ~~~んな極大な」

「誰がテメーのウンコの話をしろっつったよバカタレ」

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」

 

 試験が終わったばかりだというのに漫才を始める団長ヤミと新米団員アスタは仲がよさそうだ。

 フィンラルが少し呆れているが、嫌悪の仲よりは断然良い。

 

「団長、そろそろ行きますよ。フィンラル、お願いします」

「ウッス姐さん」

 

 空間魔法

 “堕天使の抜け穴”

 

 フィンラルが手を開くと空間にひびが入り、異空間へつながっていそうな穴が生まれる。

 実際はマーキングした地点へとワープする魔法なのだが、転送先が見えないのはやはり勇気がいるところだ。

 

 今回の試験で『黒の暴牛』に入ることを決めたのはアスタを含め数人。

 自分の弟子であるセッケの姿はいない。

 だがシャムミッドはそれに関して追求はしなかった。

 セッケも自分の力で進む良い機会なのだ。

 

 このままではいつか詰まると本人が判断したのだのであれば、彼女はどうこういうつもりはなかった。

 他の団へ歩を進めたユノとセッケ。

 

 ユノはご存知の通り『金色の夜明け』

 そしてセッケは『紅蓮の獅子王』

 

 それぞれの騎士団へと入団した彼らは実に良い顔をしていた。

 二つの団長は団員への気配りもしっかり行える良識者であるため、負の空気に負けることはないだろう。

 

 

(今後彼らが成長し、団長を担えるほどに成長できますように…)

 

 

 シャムミッドはそう静かに呟いて天を見上げる。

 これから来る三人の成長を願いながら、新たに配属される団員を歓迎するのだった。

 

 














・団長の挙手制
 誰もいなかったら相当心に来るものがあると思う。
 しかし改めて考えるとその程度で心が折れるのなら団員として相応しくないという篩なのかもしれない。


・セッケがまさかの
 正直悩んだ。3分ぐらい。
 暴牛でもよかったけどそれだとほぼ確実にセッケがシャムミッドにべったりだろうなと。
 アスタと関わり合って強くなるとかでもよかったが、それ別に同じ団じゃなくてもよくねと思った次第。
 なぜこの団にしたのかと言われたら団の名前で。
 蟷螂さんどんまい。
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