やぁ。
コンタクトを上手く着脱できる方々に敬意を評します。
眼が痛い…
『黒の暴牛』へと無事に加入することが出来た魔力を持たない少年アスタ。
なんの因果か、五つ葉の魔導書を手にしただけでなく、あらゆる魔法を断ち切ることが出来る大剣を手に入れた。魔法が使えなくても魔法帝になれることを証明すべく日々修行や任務を行いながら、これまで行く機会など一切なかった王都への買い物などに他の団員と行く日々だった。
無事に騎士団加入したアスタに待ち受けていたのは、数年早く加入した自称ヤミの筆頭舎弟 マグナ・スウィングが自発的に始めた洗礼の儀。
それはマグナが得意とする炎攻撃魔法を防ぐ、又は避けることでクリアという条件の元で行われるというもの。
空間魔法で物体を別の場所へ転移することが出来るフィンラルがいつもギリギリで魔法を飛ばして助ける流れだったのだが、アスタは投擲された魔法を斬って消すのではなく、剣脊に当てることで反射するという芸当をして見せた。
これによりアスタは放たれた弾幕をそっくりそのまま打ち返すという芸当を覚え、より対魔導士の能力を高めたのだ。
普段の態度はよくないが、マグナの炎魔法は野球ボールほどの火の玉を剛速球で投げる。
それを瞬時に打ち返せるだけでも実はハイレベルなことなのだが、この団ではそのレベルが平均的。
才能や魔力は他の魔導士を越えているのに、粗暴や性格の悪さが仇となって他の騎士団に入れなかった者達のたまり場とも言っていい。
わかりやすく『黒の暴牛』の団員を軽く紹介しよう。
名家出身なのだが追放されており、酒が大好きすぎて任務で酔いが回って使い物にならなくなる魔女 バネッサ・エノテーカ
貴族以上に
膨大な魔力を用いて強力な魔法を連発し、戦闘ではかなりのレベルに位置するが全てにおいて優先順位を妹に置く超絶ドシスコンである元囚人 ゴーシュ・アドレイ
任務よりも食事、使命よりも食事の大食漢。小柄であるが破壊力では暴牛随一の食いしん坊 チャーミー・パピットソン
常に誰かの変身をしており、本当の姿は暴牛団員でも知らない変身魔法の使い手 グレイ(本名不詳)
先ほど紹介したマグナ以外にこの場に集まっている団員らは以上の面々だ。
他の団員もしっかりいるのだが、彼等は用事だったり任務を行っている。
アスタ達が本拠点に到着したと同時に入口が爆発したところから普段の行いがわかるというもの。
喧嘩で壊れるのは日常茶飯事。ヤミ団長自身も殴って壊すことがあるし、罠魔法を誰かが踏んで爆発することもしばしばだ。
こんなことをしていてよく拠点が持つなと感じた人もいるだろうが、この拠点はとある団員の魔法で組み立てられたもので、多少の破損であってもすぐに修繕されるのが特徴だろう。
なおその魔法の使い手は今度姿を見せた時に紹介しよう。
そんな変人達が集まっている場所なのだが、アスタの前向きな姿勢にとって些細なものらしい。
「ハージ村から来たアスタです!よろしくお願いしゃァァーーす!!」
「団員は他にもいるが今は任務に行ってたり、休暇中だったり、サボったりしてる。テキトーに仲良くなっとけ」
「ハイ!めっちゃ仲良くなります!!」
「今日はこれと言った任務はねぇーからな。親睦でも深めとけ」
ヤミはアスタ達にそう言うとと用事があるのか、出掛けて行った。
元々騒がしい騎士団であるのだが、アスタが加わったことで騒がしさが一層増した。
だがそれに対してシャムミッドが悪く思うところはない。
むしろ
自分の部屋へと戻り、数日掃除できなかった汚れを取っていく。
各団員たちにそれぞれの部屋を与えられているがシャムミッドも例外ではない。
12畳ほどの広さの質素な部屋。
それがシャムミッドに与えられた空間だ。
女性であるが物を多く置いても埃を被るからという女性らしさの欠片もない理由であるが、部屋を空ける団員としては多少許容される理由だろう。
ベッドにタンス、長机に椅子が一つ。あとは衣装棚と壁に鏡と時計を置いているぐらいの部屋であるが、数は少ないがインテリアが置かれていた。
前に
形状はあちらに存在した聖杯に似ているのだが、魔力を流してみてもそこまで変化なし。
そのため食器として使うこともあるが、基本的にはこうやって飾っている。
他には
魔道具に詳しければ意味が分かるのかもしれないが生憎そんな知識があるわけでもなく、なんとなくで手元に置いている彼女にとって唯一の部屋を飾る存在だった。
久々にそんな金の杯を手に取ってまじまじと見つめる。
特に意味はないが魔力を流してみるがいつも通り反応はない。
「本当に私はなぜこの杯を持って帰ってきたのでしょうかね…」
ポツリと呟く。
直感ではないただの気まぐれ。
なのだがなんなのだろう。何かが引っかかっているような、そんな感覚。
肉を食べていたら歯の間に挟まって取れない繊維に気づいたときのような地味なもどかしさを感じる。
「…このまま眺めていても仕方ないですね。
先ほど置かれていた杯を元の位置に戻す。
コトッと音を鳴らしながら置かれた杯はいつも通りの置物になった。
「――行ってきます」
背を向けたシャムミッドの言葉に反応するかのように、僅かに光を生み出したこと以外は――。
「さて、依頼があった場所はここですか」
そうしてやってきた場所は
視界に収まる場所全てが木々に覆い隠されており、空から見ても緑の絨毯が敷き詰められているようにしか見えないだろう。
強魔地帯とは
魔力濃度が強くあるため自然現象として可視化されやすく、一般国民は入ることを禁じられている特定地域だ。
竜巻や渦潮など地帯によって発生する現象は様々であるが、そのどれも魔力を含んだ現象のためか魔導士であっても対処は難しい。
一定レベルの実力が無いとその場に立つことすら許されない弱肉強食の世界であるが、そんな場所にシャムミッドがわざわざやってきたのは当然依頼があったからである。
それは強魔地帯の魔力を吸い続けた木々から育つと言われる果実“輝きの林檎”の採取。
木々によって日が入らないこの地区は視界が悪い。
暗さもあるが魔力濃度が高いため、魔力感知も普段より信頼性に欠けるこの場所になる果実には魔力が凝縮されているとされ、果実がなる場所だけ光源を設置しているかのように光り輝いているといわれる。
最も見たことがないため話でしか聞いたことはないのだが。
正式な魔法騎士団としての任務でもあるのだが、ギルドでもこの地域でとれる植物を採取する依頼があったため、ついでで受けているシャムミッドにとっては一石二鳥の場所であった。
普段通り足を踏み入れ、木々の中へと進んでいく
樹海ではなんの目印も無しに進めば方角の感覚が麻痺し、元来た道がわからなくなるとされる。
だがこの場所は悪質だ。
只々直線に進んでいるのにも関わらず、曲がっているような感覚に襲われる。
濃すぎる空気が平衡感覚をも乱しているのだ。
「ここは…こちらですかね」
便利屋と化した直感を駆使して歩みを続けるシャムミッド。
ところどころ道を塞ぐように成長していた木は仕方なしで削りながら進んでいく。
ただの樹海でないのは百も承知。
魔力を吸い続けた木々は肉食植物となり、幾度と獲物に襲い掛かっている。
そしてこんな場所で生きる動物たちも普段よりも凶悪だ。
蜃気楼で分身は当たり前、擬態してやり過ごすものもいれば、皮膚から分泌された液体が瞬時に魔力を吸収して固めるものまで様々だ。
常に誰かが食われ、断末魔を上げ続けていることから“哭襲の樹海”
先ほど削った木もすでに修復され、別の獲物を狙っていることだろう。
「ふむ…。直感頼りに進んできましたが…流石に無理がありましたかね?」
顎に手を当てながらゆっくりと進んできたが魔力が乱される現状、感知は大した意味はなし。
周辺に納品目標を見つけれたのでそれを適当に採取しながら、改めて辺りを見渡した。
襲撃をかましてきた虎に似た猛獣に突き刺した槍を引き抜き、野宿の準備を始めていく。
一定数のアイテムを保管できる魔道具を常に持ち運んでいることが功を奏した。
アウトドアグッズを一定数入れてるのもそうなのだが、水資源はここでも貴重。
必要最低限だけ摂取し、野獣を手慣れた手つきで捌いて焼いていく。
(“輝きの林檎”という名前ですから目立つかと思っていましたが、今のところそんな感じはしないですしどうしましょうか)
肝心の直感先輩は一定数進んだ後、反応が鈍くなった。
進むべきだという直感はあるのだが曖昧だ。
木々や地面、岩などにある程度傷をつけながら進んでいたのだが、修復速度を見るにすでに消えているだろうことをほぼ確信した。
焼きあがっていく肉を一口大に切り分けつつ、これからどうしようかと空を見上げて考える。
頭上は樹海へ入ったまま変化なし。枝と葉で木漏れ日すら入らない状態。
道標はすでに隠れた状態で、直感も不安定。
まぁ何とかなるだろうと、シャムミッドは悟った。
“哭襲の樹海”へ突入から8時間経過報告
~無事遭難~
「むっ旨そうな臭いがするな」
「へっ?誰ですか貴方は」
・樹海
素人が安易な気持ちで入るのは絶対にやめましょう。
・“輝きの林檎”
金の林檎。
ひとかじりするだけで魔力と疲労を回復させると言われている魔法の林檎。
貴族や王族が特別な日に食すこともあるとされ、無事に摂れるものも限られているため超高額で市場に出回ることがある。
モチーフは言わずもがなFGOにおける周回のお供。
・金の杯
独りでに輝きを放った。
この現象はなにをもたらすのだろうか…