暴牛所属の偽・獅子王   作:〇坊主

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やぁ。 
コンタクトレンズが無事に外せたので買えたよ。
 
 


暴牛での交流

 

 

「そもそも魔法騎士団って何するんスか?」

 

 

 新たに入団し、数日間のいざこざを終えたその翌日。

 今『黒の暴牛』の拠点にいる面々は食堂に集まって朝食を摂っていた。

 そのなかでふとアスタの疑問が問いかけられた。

 

「マジで言ってんのか?テメ――…」

 

 その衝撃の問いにマグナがいち早く反応する。

 どんな活動をしているのかも知らずに魔法騎士団に入った者はこの王国を探してもアスタだけであろうことは明白だった。

 

「国を護ったり、警備したりの世界一(おとこ)らしい仕事だぞボケェェ!!なんで入ろうと思ったァァ!コラァァァアア!!」

「すみまっせぐぇぇぇぇええ!」

 

「そんなこともあるのねぇ~。まぁ市民の安全を守る~みたいなぁ?」

「敵と戦える面白い仕事だよ。犯罪者相手だったらどれだけボコボコにしても怒られないしぃ~!」

「妹に尊敬されるどんな職業よりも素晴らしい職業だ。給料もいいから好きなもんを買ってやれる」

「ごはんも沢山食べられるよ~」

「ま、とにかくいい仕事さ!そのうち任務を共にする時はよろしくな!」

 

 掴みかかられたアスタは返事につまりつつも、他の団員らは各々の意見を述べてきた。

 最後にアスタに声をかけたグレイはアスタに変身しての返しだったためかものすごくフレンドリーに接している。

 

((へ、変な人ばかりだぁ~~))

 

 この場に居る二人の新人は彼等を見て、そんな感想を浮かべた。

 

「なぁノエル。オマエはどんな事するのか知ってたのか?」

「ハァ?当然でしょ。前にも言ったけど私はこの国の王族よ?魔法騎士団がどんな活動をしているのかなんて知らないはずないでしょ?」

「そ、そうだったァ~~!」

 

 アスタの問いに何を言っているのかと銀髪の少女は答えた。

 自分の知識の無さを露呈させてしまったアスタは地面を見ながら嘆くがすぐに立ち直り、食べきっていなかった食事に手を付け始める。

 そんなアスタの姿を眺めながらノエルは食べ終えた食器を片付け始めた。

 

 

 銀髪の少女の名前はノエル・シルヴァ。

 彼女が先ほど発言した通り王族の出である。その中王族の中でも最高位の権力を担うのがシルヴァ(・・・・)家だ。

 この王家の名を聞いてピンときた方がいるかもしれない。

 彼女が魔法騎士団に入る原因になった『試験襲撃事件』。その時に入団試験の進行役をしていたのが現『銀翼の大鷲』団の団長 ノゼル・シルヴァである。

 

 出会い頭に敵意を向けるのは当たり前。

 ネチネチと小言を言うこともしばしばで、常に一定距離を保ち続けるその男はシャムミッドがこのクローバー王国の中でも一位二位を争うレベルで苦手としている人物だ。

 その団長も苗字の通り『シルヴァ家』の出身である。

 ノゼルとノエルは実際に血縁関係でもあり、ノエルは末子にあたる。

 

 なぜそんな王族が問題児集団の『黒の暴牛』に在籍しているのかというところなのだが、彼女は魔力のコントロールが壊滅的という問題を抱えている。

 当然彼女自身もそれを克服しようと日々特訓に明け暮れているのだが、この年になっても克服出来なかった。

 その結果シルヴァ家の大半から出来損ないの烙印を押されて実質的に追放扱いを受け、『銀翼の大鷲』に入団することを拒絶されたところでヤミに誘われ、裏口入団という形で暴牛の仲間入りをした経歴がある。

 

 

「―――そういえばシャム姐さんはどこに行ったんですか?一昨日辺りから姿見えないッスけど」

「ハァ~~?そんなの任務に決まってるダルルォ!?姉貴は常に身を粉にして国のために働いてくれてる魔法騎士団筆頭なんだぞコラァ!!」

 

「……シャム姐さん?誰よそれ」

 

「ハァッ!!?マジかよテメェ!姉貴の事知らねぇのか!?」

「し、しょうがないじゃない!『黒の暴牛』に入団してからまだ会ったことないんだもの!」

 

 アスタとマグナのやり取りに対してノエルは問いを投げかけた。

 裏口入団を行った彼女は魔法騎士団の入団試験にはおらず、先に暴牛の自室で待機していたのだ。

 アスタ達が暴牛にやってきたのはそれから少ししてであり、洗礼の儀を無事に終えた事を確認したシャムミッドはそのまま自室の掃除をした後すぐに娯楽(任務)を探しに出かけていた。

 その結果シャムミッドとノエルは会うことはなく、面識がないまま数日が経過していたのだ。

 

「しょうがねぇなぁ…オレが姉貴をわかりやすく説明してやんぜぇ!!」

 

 親指を上に立てながらマグナはいかつい顔でどんな存在なのか、暴牛だけでなく国にどれだけ貢献しているのかを懇切丁寧に教えた。

 アスタはそんな功績を聞いて頭がパンクしそうになり、ノエルはふと思い当たる人物がいたのかあの人のことだったのかと一人で納得していた。

 

「うぉぉおおおそんなにスゴイ人だったのかぁ~~!」

「そうだよ~。魔力だけでわかる。あの人絶対に強いんだ。戦ったら絶対に楽しそうだなぁ~」

「…そうだな。シャムミッドさんは良い人だ。なぜなら愛しの(マリー)の贈り物を選ぶのを手伝ってくれただけでなく、とても喜んでもらえたからな」

「ん~~でも彼女、仕事熱心すぎてこの拠点にいる方が珍しいぐらいだから会えてないのも仕方ないのかもしれないわね」

 

 ラックは相変わらず戦闘面での意見を述べ、常に妹の写真を見せつけてくるゴーシュは前に選んでもらった贈り物がすごく喜んでもらえたことが理由で好感度が高い様だ。

 ただ朝から酔い続けているバネッサの言う通り、シャムミッドは仕事で自室を空けていることが多いのでそれは仕方ないことなのではとの意見も上がる。

 

「そういえばそうだな!大体任務だからオレもそこまで長く話した事ないし」

「だよね~僕も戦いたいんだけど気づいたら出掛けたりしてるし」

「あぁ、(マリー)…今日も天使だ」

 

 ゴーシュはすぐに会話に興味を失ったのか妹の写真を眺め始めたが、ラックやグレイなどはバネッサに追従するように肯定する。

 最も彼等は酒を飲んだり、隣にいるマグナにちょっかいをかけたりと大して問題視していない様子であるが。

 

「…そうなんスか」

「なにかあったの?」

「シャム姐さんはオレの夢を後押ししてくれた先輩なんだ」

「アスタの夢…魔法帝になるって夢を…?」

 

 今ではノエル自身もアスタの事は受け入れている。

 これは入団試験が終わってから彼女の魔力の暴走が起こったことが理由だった。

 暴走した莫大の魔力が一個の爆弾となって起爆しそうになったところに魔力を消せるアスタが一刀両断。その後にノエルを称賛したところから彼女はアスタに対しては多少心を許していた。

 

 魔力コントロールが出来ないノエルとは違ってアスタは魔力が一切ない存在である以上、魔法帝になるというのは普通ではありえない考えだった。

 アスタは上下関係なしに王国で暮らせる人々が努力次第で報われることを証明すべく鍛錬を続けようが魔力を持たなければ魔法騎士団への入団なんて認められない。

 そもそも魔導書に認められなければ騎士団に入る以前の問題になるのは明らかで、彼の夢を現騎士団員が受け入れるなんてことは信じられない話だ。

 魔導書に選ばれる前からその夢を認めたことは普段であれば悪意に満ちた肯定に成りうるものだが、彼女の経歴や話を聞くとそのような感じはしない。

 

(アスタのことを認めたシャムミッド先輩…本当にどんな人なのかしら…)

 

 ノエルは脳内でシャムミッドの姿を想像する。

 

 騎士団の任務だけでなく、フリーの時間を見つけてはギルドの任務を率先して瞬時にこなす。

 若くして魔法騎士団として大胆不敵に活動し、小規模であれば他国の侵略を単独で防ぐことが出来る実力者。

 基本ソロ活動かと思いきや現場では攻撃を受けて慌ただしくなっていた下級~中級魔導士達を瞬時にまとめて陣を敷き、敵を跳ね返したとも聞く。

 獅子を象った鎧に身を纏い、突撃槍(ランス)を片手に騎乗して突貫する戦い方を好み、数多の障害を薙ぎ払う。

 それだけでなく入団試験会場に突撃をかまし、魔法帝を思いっきりぶん殴ったともいわれる…。

 

「―――――もしかしてヤミ団長みたいにゴリゴリな感じなのかしら…?」

 

 ノエルの中で、シャムミッドの容姿が決定した瞬間であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フハハハ!会場で感じたこの感情は間違いではなかったわ!」

「フッハ!それはありがとうございます先輩」

 

 場所は変わって『紅蓮の獅子王』

 高らかに笑うレオポルドとセッケは風呂に浸かって任務でついた身体の汚れを洗い流し、リラックスしていた。

 団長 フエゴレオンの審判の元行われた御前試合から2週間ほど。

 先の一件からレオポルドはセッケを気に入ったのか、事あるごとにセッケと競い合っていた。

 

「フハハハハ!オレ達がこうして切磋琢磨するのも一回や二回ではない!セッケよ!オレのことは親しみを込めてレオと呼ぶがいい!!」

 

 中級魔導士であるレオポルドがセッケを贔屓しているのは同じ団員の目からしても明らかであるのだが、他の団員らはレオポルドの性格を知っているのか微笑ましく見ている。

 新入団員らもセッケの実力を評価しており、むしろ彼に負けてなるものかと奮起しているため全く悪い影響はないのであるが、如何せん親しくなるのが早すぎるのではないのかとセッケは思った。

 

「セッケよ気にすることはない。レオの奴は普段からこんな感じだ」

「兄上!」

「フエゴレオン団長…!」 

 

 セッケの考えを読んだのか共に風呂に浸かっていたフエゴレオンはいつも通りだという。

 むしろ彼はヴァーミリオン家ということもあって他の団員らから一目置かれていることもあり、ここまで素で対応してくれる者が少ないのだとか。

 

「正直貴族ってそんな悩むような事は少ないのかと思ってましたけど、そういうことではないんですね」

「その通りだ。確かに一部の貴族は王国民を下民と蔑み問題を起こすことがあるのは事実だ。だが貴族というだけで妬みや悪意を持つ者もいる。身内ですら完全に信頼を置くことが難しい一族もいるぐらいだ。最もこのヴァーミリオン家にはそんな下種な行動を起こすような者は誰一人としていないが」

 

 今は大分安定しているクローバー王国であるが、今の魔法帝 ユリウス・ノヴァクロノがその地位に担うまでは醜い争いも行われていたらしい。

 魔法帝に即位してからはそういった輩は排除されたようだが、それを恨んで水面下で行動を起こしている集団もあるとのことで公式に発表できない裏事情も絡んでいるらしい。

 

「そんなことが…」

「ちなみにこういった事情は普通は団員に伝えることはない。下手にこの情報を言いふらさないようにな」

「…んん?」

「フハハハ!兄上!それはつまりセッケも巻き込むということですよね!」

 

 フエゴレオンの言い方に嫌な予感がしたセッケをレオポルドは追撃する。

 団長へと顔を向けるといい笑顔を浮かべていた。

 

「ふむ、察する機転もある。そういうわけだセッケ。これからは私達との任務も増えていくだろう。何、案ずるな。試験会場ですでに目をつけられているオマエだ。こういった事情に巻き込まれるのは時間の問題。我々と共に歩むかそうではないかの違いだ」

「フハハハハハ!これからよろしく頼むぞセッケ!!」

「……嘘やん」

 

 これまでレオポルドや団長との任務同行回数が多く感じていたセッケであったが、このためだったのかと理解する。

 ポツリと漏れた彼の呟きは周囲から聞こえてくる水音がかき消していくのだった。

 

 




 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
・シャムミッドと暴牛団員の交友関係
 必要最低限よりも少し進んだことまでは実行するが、それ以上は進まない。そんな感じ。
 仕事をするならよし。しないのならしないでそこまで関わりを深く持たずにやりくりしていく。
 彼女からすれば日常生活で支障が出ないぐらいには好感度を稼ぎつつ、任務に注力できれば問題ないという考えなのではないでしょうかね。 
 自分で解決できると判断すれば一人で全て引き受けるのが彼女の欠点。自覚なし。
 それでも高密度の経験を糧に解決できているのがまた問題でもある。

・王国の裏事情
 少年漫画ということもあり、こういったことはほとんど本作では書かれませんでしたが、一つの国家であり神様や国王といった崇拝対象を例外なく全国民が崇めていなければ絶対にあるだろうなと。
 貴族関係だとそれはもう顕著に、そして陰湿な内容になっていくのだろうと思います。
 王撰騎士団(ロイヤルナイツ)編で某キャラにぼこされた副団長も裏で黒いことやってそうでしたしありえそうだなっていうことでセッケが巻き込まれました。
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