暴牛所属の偽・獅子王   作:〇坊主

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 やぁ。
 またサボってたよ。 
 
 


林檎はいずこ

 

 

 

「余は悪くないもん!!」

 

 

「……」

 

「一言で許せるわけないじゃん!なんなの!?いきなり攻撃されて迎撃したらあんなこと言って、カッとなったらなったでボコボコにされるしこんなのあんまりだよぉ!!」

 

「…なんかすまん」

 

 

 場所は“哭襲(こくしゅう)の樹海”であるはずの場所。

 魔力の暴風が樹海を護るように展開され続け、侵入者を拒み続けている樹海であるが今では見る影もない。

 全体図で言えば変わりはしないのだが、彼女らが居る一部の地域だけそのような光景はなく、濃い(マナ)によって遮られていた日差しすら見受けられた。

 

 そんな安全地帯になっているその場所で一人の女騎士が人目が無いことを良いことに滝のような涙を流しながら大声で泣き叫んでいた。

 

 びえええぇえぇぇぇぇぇえん!

 

 こんな表現が相応しいぐらいの泣きっぷりに唯一その場にいる女傑 メレオレオナ・ヴァーミリオンはドン引きしていた。

 普段の彼女を知っていれば愕然とするほどに、彼女が謝罪するのは珍しい。

 最も現在進行形で泣き続けている女性であるこの小説の主人公 シャムミッド・ペンドラゴンが大泣きするのも初めてなのでうまく相殺されてくれればいいのだろうが。

 

「……いやほんとにどうしてこうなった…?」

 

 先ほどまでの尖り切った殺意と魔力は何処へやら。

 只々大泣きするその姿を見ていると彼女を暴王だと思いこまされていたのではないかと考えてしまうほどだ。

 

 周囲の(マナ)を取り込んでさらに巨大化した嵐の槍を真正面から殴り潰して一発、彼女の顔面を殴りつけてからこの調子。

 何らかの魔法で雰囲気を変化させているようだが、精神年齢もその影響で下がってしまったのではないだろうか。

 

「びえぇぇぇぇえええぇぇぇぇぇぇぇ………」

「むっ?」

 

 一通り泣いたためか声が小さくなっていく。

 それに気づいたメレオレオナはシャムミッドの方へ振りかえると黒を主体とした兵装がボロボロと崩れ落ちていく。

 それに伴って覆われていた魔力も消えていき、始めに見た白銀の鎧へと変化していた。

 

(魔法の効果が切れたか)

 

 青白かった肌の色も次第に血色の良い肌色へと戻っていく。

 やはり先ほどまでの醜態は魔法による反動で理性が溶け出していたのだろうとメレオレオナは考えた。

 

 一種の魔力酔いに近い症状。それをさらにわかりやすく言えば酒を飲みすぎて酔っぱらってしまった状態。

 記憶が混濁し、先ほどまでの行動を理解していないという結果を発生させることもあるその症状が彼女に起こっていたというのならば納得がいく。

 泣き止んだ彼女と話を合わせてやれば何故戦っていたのかもわかるだろうと、メレオレオナは行動を移す。

 

「目が覚めたか?」

 

 声をかければこちらを見つめる視線。

 あー…と呟いた彼女は今の状態を理解したのか、立ち上がっておもむろに魔道具からロープを取り出す。

 それを近くの程よい高さの木々にくくりつけたのかと思うと先端を輪っかになるように結びあげて……――――

 

「いやいやいや!何をしているのだ貴様は!?」

「離してください!あんな姿を見られた以上は生きていくことなど不可能です!!」

「待て待て早まるな!流石のワタシでも眼前で自国民の自害を見逃すわけがなかろうが!」

「気にしないでください!あんな醜態笑えばいいじゃないですか!?あんな…あんな…あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」

「うぉっ!?さっきより力強…!!待たんかっ、こんの…戯け者がぁぁあ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大変醜い姿をお見せしました…」

「まぁ確かにあそこまでとは必死に抵抗されるとは思わなかったが…」

「うぅ…」

 

 首吊りを防ごうと悪戦苦闘をしたメレオレオナは先の戦闘以上に疲労を感じた。

 まさか眼前で項垂れている女が、戦闘時よりも身体能力を強化してまで跳ね除けようとするとは予想できなかったのがメレオレオナの敗因である。

 

「さて、そろそろ落ち着いたと思うから話すが、何故戦っていたのか思い出したか?」

「いや理由はわかってもなんで戦ったのかはわからないんですけど」

 

 話を戻すメレオレオナに対してシャムミッドは全くと言っていいほど理解できない。

 

「いやなんでわからんのだ。そもそも“輝きの林檎”の取り方を知っているのか貴様は?」

「??木に生えてるのを取ってくるのでは?」

「はぁ?」

 

 まじかこいつと言いたげなメレオレオナの表情にシャムミッドは首を傾げた。

 林檎なのだから木に生えると考えるのは至って当然なのではないのか?

 そんな考えが顔に出ていたのか、メレオレオナは出会った時よりも疲れた表情で頭に手を当てる。

 

「まさか取り方も知らずに依頼を受けていたとは…見た目からは全くと言っていいほど判断できん大馬鹿者だな貴様…」

「むっ…失礼ですね。私自身知らない事の方が多いと自覚しています」

「いやいや知らんならなぜ正直に依頼主かギルドに何故問わん。聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥ということわざを知らんのか」

「あっ、ここでもその言葉あるんですね」

「?どういう意味だ?」

「あ、いえ。お構いなく」

 

 かつて働いていた時にはよく上司から言われていた言葉。

 それを聞いてポツリと呟いたことが聞かれていたことに対して、雑な反応になってしまった。

 まぁよいと言葉をメレオレオナは続ける。

 

「“輝きの林檎”はそもそも木に生えているものではない。この強魔地帯の(マナ)を特定の方法で凝縮と圧力をかけていくことで生まれる魔力の塊だ。それも樹海を覆いつくす魔力に対抗できるほどの量と魔力操作が必要不可欠でな。“哭襲(こくしゅう)の樹海”と対象者の魔力操作を合わせて生み出す魔力塊、それが“輝きの林檎”となる」

「……あーつまり樹海の凄い魔力と私達のすんごい魔力をぶつけ合って練り合わせて林檎を作るために戦闘を行った。そういうことですか?」

「うむ」

 

 わかりやすく伝えてくれるメレオレオナの話をさらにかみ砕いて解釈するシャムミッドにそれで正しいと頷く。

 だがふと脳裏に浮かんだ疑問を告げる。

 

「ちなみに殴り合った意味あるんですか?」

「あるわけなかろう。貴様の力量が気になっただけだ」

「もうやだこのメスライオン…」

 

 完全に発生させなくてもいい戦闘だっただけにシャムミッドは地に伏した。

 先ほどの戦闘でかなりの体力と魔力を失っただけに辛さが倍増である。

 

「フハハ。その程度で弱音をあげるなど情けない。まだ貴様の団長であるヤミ・スケヒロのほうが叩きがいがあるというものだ」

「…ヤミ団長を知っているのですか?」

「当然だ。あそこまで自分勝手な男はそうそうおらん。団長らの会合で話した事もあれば、戦ったこともある」

「…道理でその圧倒的に理不尽な戦闘能力を持ってるわけですか」

「改めて名乗ろう。私はメレオレオナ・ヴァーミリオン。愚弟であるフエゴレオン・ヴァーミリオン、その姉と言えばわかるか?」

「あぁー……あの生粋の真面目団長さんの」

 

 フエゴレオンと言えば魔法騎士団団長であり、正義感の強い熱血漢だ。

 獅子を模した炎魔法を極めており、王族貴族平民含めて信頼が厚い男。

 シャムミッドが鍛えたセッケが入団を決めた騎士団のトップであるため何度も顔を合わせる機会があり、ノゼル・シルヴァの圧に対しての愚痴を零せる数少ない人物でもある。

 そんな団長の姉がこんな野生じみた存在だとは…

 

「何か考えたか?」

「イエ、ナンデモナイデス」

 

 獅子の腕を顕現させながら威圧してくる女獅子に対して、カタコトの反応になるしかない。

 地面から身体を起こしながら周囲を改めて見渡せば、最初に来た時よりも明らかに静かになっている。

 雨の如く嵐が降り注がれていた状況が雨上がりのような静けさ。

 先程の戦闘で焼失していた木々はすでに修復され、空を覆い隠すように成長しているので空は見えず普通に暗いはずなのだ…が…?

 

「んん?なんだか明るい…?」

「ほう…。もう魔力が凝縮し始めてきたのか。先ほどのじゃれ合いが相当堪えたと見える。見えるか?」

「…はい」

 

 先ほどの戦闘をじゃれ合いで済ませるメレオレオナに頬をひきつらせながらも、正面の変化を見届けた。

 周囲を漂う“(マナ)

 目と意識を凝らせば薄く黄緑色をした光が一か所に集まり始めている。

 木々に果実が実るのと同じ箇所に、それが一つの木に一つずつ集約されてきているのだ。

 高密度に濃縮されていく“(マナ)”から光が発せられ、林檎に近い形に収まっていく。

 時間しては数十秒でしかない光景であるが、確かに幻想的で、ここまでの道中の妨害を忘れてしまうかのような安心感を得られるものであった。

 

「これが…“輝きの林檎”ですか」

「その通りだ。だが今回は大豊作と言ってもいいだろう。普通は一つか二つ、多くても4つ程度しか生まれん。10個ほど実るのは私でも初めての光景だな」

 

 二人の視界には淡く、でも力強く輝く林檎が10個も映っていた。

 一つ一つが大きい影響か、シンプルに光源として利用しても全く問題ないほどに光が主張していた。

 実際の林檎を収穫するように、軸を残した状態になるよう聖槍で丁寧に切り取る。

 (マナ)で出来ているためか、流石にずっしりとした重さを感じることはなかったが、それでもここまで苦労した甲斐があったというものだ。

 

 10個全部収穫した後、シャムミッドは半分をメレオレオナに差し出した。

 

「…なんの真似だ?」

「感謝の気持ちです。貴女の言い方はアレでしたけど、確かにあのままでは任務達成には程遠かったですから。この林檎を見つけることが出来たのも貴女が居たからです。ならば功績者には報酬が与えられるのは当然ではないですか?」

「フンッ。生憎だが私はその林檎を欲してこの地にやってきたのではない。住処として居心地がいいからいるだけだ」

「す、住処って…」

 

 完全に野生児の所業である。

 コレの弟であるフエゴレオンは相当苦労していたのだろうなとシャムミッドは思った。

 

「つまりは私が“輝きの林檎”を手に入れようと思えばいつでもできる。故にその林檎は私にとって報酬にならん。貴様が責任を持って受け取っていけ」

「…貴女がそう言われるのならそうしますが…林檎の使い道なんて私は知りませんよ?」

「使い道なんて食べる一択だろう。貴様も見ていたようにその林檎は(マナ)そのもの。直接摂取すれば失った魔力を瞬時に回復させられる回復薬としても使える。(マナ)であるため、魔力を瞬時に奪われるような場所に置き続けない限り腐るなんてこともない」

 

 ほえーと変な反応をしながら、シャムミッドは暴牛の拠点深部で暮らす青年を思い浮かべた。

 彼の体質が特殊なものの為に外へ出歩くといったことはできないのだが、この林檎を用いれば多少なり改善できると考えたからだ。

 

 顎に手を当てて考える動作をするシャムミッドに対し、メレオレオナは布を投げ渡した。

 

「これは?」

「魔力を抑える布だ。これだけの光量を見せびらかしながら王国に帰るわけにはいかんだろう。それで一つ一つ包んでおけば外部の影響による魔力流出も多少なり抑えられるだろう」

「わざわざありがとうございます」

「原料はこの樹海の木々で簡単に作れる物。なんの手間もかかっておらぬわ」

 

 愚弟に似て貴様も生真面目な馬鹿だなと告げながら王国の方向に指を向けるメレオレオナ。

 最初の邂逅はアレであったが、話してみればちゃんと言葉がわかる女傑で良かったとシャムミッドは思った。

 “輝きの林檎”収穫任務。これにて無事に完了である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「次に会った際、また貴様とやりあうとしよう。それが今回の報酬だ」

「勘弁願います」

 

 

 

 この人と戦うのはもうコリゴリである。

 

 




 
 
 
 
 
・“輝きの林檎”
 作り方は簡単。
①まずは一般人が入ったら魔力濃度で気を失う程度の樹海の深部に入っていきます。
②樹海の魔力に負けないぐらいの魔力を放出します
③それを維持しながら魔力嵐と練り合わせて木々にぶつけます
④林檎の完成
 簡単でしょ?
 
・乳上
 素の乳上:魔力制御に長けており、多少なとも冷静に的確に戦うことができる。
      オールラウンダー。

 変転乳上:内部の魔力を意図的に暴走させて暴嵐の槍を用いる。
      精密さに欠けるが破壊力を重視した魔力操作をおこなう。
      
 ■■乳上:「この乳上は変身をするたびに万能さがはるかに増す…」
      「その変身をあと数回も彼女は残している…」
      「その意味がわかるな?」


 
感想でシャムミッドって実は男だったの?と言った質問がありました。
雌ライオンに対しての口調での疑問とのことでしたが、個人的にはどちらでも構いません。
どちらであっても他キャラとの絡みが変わることはありませんので、お好みで脳内想像されながらシャムミッドを見てくれればと思います。
 
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