暴牛所属の偽・獅子王   作:〇坊主

24 / 27
 
 
ω・`)ノ ヤァ 
 



叙勲式

 

 

「う、うぉぉぉお…!!すっげぇぇぇええ!!」

「ちょっとアスタ!恥ずかしいから騒がないでくれる!?」

「あんなデケー建物見たことねぇぞォオオオ!!」

「全くもう…」

 

 生まれ故郷では一切見ることがなかった大きな建物が立ち並ぶ王貴界(おうきかい)

 その王貴界中でも最も発展し、魔法騎士団の本部が置かれている中央都市である王都には平界でも見ることが出来ないくらいの煌びやかな装飾が施されており、田舎である恵外界(けいがいかい)で育ったアスタにとっては別世界にきたと言っても過言ではなかった。

 とある事情でアスタと共に来ているノエルがアスタの声のボリュームを下げるように促すが、周囲の環境に驚いているアスタにとっては馬耳東風といった様子だ。

 それでもそこまで目立っていないのは王貴界自体の人口がそこまで多くなく、一件一件の規模がでかいこともあって、人と出会う頻度も少ないからなのだろう。

 

「騎士団本部に今回の一件で報告ということだったけど、“金色の夜明け”の報告がすでに報告した内容とそう大差ないと思うのだけど…」

「まぁまぁ、いいじゃねぇかノエル。こんなでっけぇ建物がたっくさん建っている場所なんて来る機会が少ないんだからよ!」

「何言ってんのよアスタ。私は王族よ?ここの光景だって見慣れてるわ」

「そ、そうだったぁ~っ!!」

 

 いくら魔法騎士団団員とはいえども、この王貴界に足を踏み入れる団員は極少数。

 今回二人がこの場所に立っているのは、ヤミ団長のお言葉があったためだ。

 

『おう目ぇ覚めたか小僧。だったら魔法騎士団本部が今回の任務の件で報告を聞きたいそうだからちょっと行ってこいや』

 

 そんな軽いノリで行くことが決まり、こうして二人は歩いている。

 確かに報告が必要な内容だろうとノエルは考えていた。

 事の始まりはクローバー王国の国境付近に“魔宮(ダンジョン)”が生成されたことに起因する。

 クローバー王国には敵対し、バチバチに嫌がらせをしてくる国家が存在する。

 それがダイヤモンド王国だ。

 他国や他の領土に侵略を行い、現在まで国土を拡張し続けていた侵略国家。

 幾度となく魔法騎士団団長らが出撃して撃退し続けてきた歴史があるほどには関係が深い国家だった。

 

 これが比較的友好関係にあるハート王国であれば話は別だったのだが、相手は現在進行形で敵対している国家。さらには両者の国境付近ということもあって、呑気にことを見守ることも出来ない。

 そこで白羽の矢が立ったのが黒の暴牛所属のアスタだったのだ。

 どんな因果で魔法帝直々のご指名があったのかは不明であったが、別に調査としてやってきた金色の夜明け団と共に敵対勢力を撃退したというのが結末である。

 

 そこで金色の夜明けに所属していたアスタの親友であるユノがより強くなったり、暴牛所属である雷魔法を操る先輩魔導士ラックと友好的になって危機を脱したり、アスタの用いる剣が二振りになったなどなど色々あったのだった。

 

(あのときに戦ったダイヤモンド王国の魔法騎士…あれ程の強さを持った存在がすぐに死んでいるとは考えにくい…。騎士団本部もそれに関して聞きたいことがあるのかしら…?)

 

 そんなことをノエルは考える。

 対するアスタはそんなことは微塵も考えておらず、一つ一つ歩きながら建物を見ては感嘆の声をあげていた。

 

「お」

 

 故に考え事をしていたノエルよりもアスタが気づく。自分達の前を歩く存在に。

 この前の任務で共に戦い、協力して魔宮(ダンジョン)から脱出を行った仲間。

 

「やぁやぁ金色のみなさんではないですか!」

「おぉ!一週間ぶりだなアスタ!ケガはもう大丈夫なのか!?」

「おう!いっぱい食べていっぱい寝たからな!」

「子供か」

「…………」

 

 アスタに親し気に話す眼鏡が似合う男 クラウスとアスタの言葉にツッコミをいれるユノ、そしてアスタを見て頬を赤らめる女性 ミモザだ。

 

 クラウス・リュネット、18歳。

 王貴界出身で好きなことは読書、建築鑑賞。鋼魔法を操る三等中級魔法騎士だ。

 貴族であることからアスタやユノを下民出身だと見下してはいたものの、魔宮(ダンジョン)探索での他国魔法騎士との交戦を経て二人を認めた経歴をもつ。

 堅物であったが素直に自分の非を認めて謝ることが出来る努力家だ。

 

 ミモザ・ヴァーミリオン、15歳。

 「金色の夜明け」に所属で天然な性格のおっとりした少女。

 植物魔法を用いて回復や探索などのサポートに特化している魔法騎士だ。

 セッケが入団したフエゴレオン・ヴァーミリオンの名からわかる通り、王族二大巨塔であるヴァーミリオン家の一員である。フエゴレオンやノエルとはいとこ同士という親密な関係だ。

 なお作中で最も胸が大きい女性キャラらしい。

 

「どうしたのよミモザ。アスタを見ては顔を逸らして…」

「ノ、ノエルさん…!あの…私、アスタさんを見ていると胸が苦しくて…助けて頂いたあの時からアスタさんのことばかり考えていて…私、どうしてしまったのでしょうか…?」

「え゛え゛え゛~~~!?」

 

 敵魔法騎士の攻撃を喰らったことで戦闘不能になっていたミモザと危機に瀕していたクラウスを助けたのは紛れもないアスタだった。

 通常であれば貴族が敵わない相手に対して下民の者達が対抗できるはずがない(と貴族たちはそう思い込んでいる)が、それをアスタは真正面から撃退した。

 ユノの援護やノエルの魔力も手を貸したとは言えども、そこまで戦況を覆せたのはアスタが(アンチ)魔法の大剣を用いて奮闘したからだ。

 身を挺して守ってくれたその姿は、まだ15歳である彼女を惚れらせるには十分すぎる内容であったようだ。

 

 そしてそんなミモザの反応に驚愕するのはノエルである。

 彼女もアスタに救われた身であり、アスタに好意を寄せる少女だ。

 だが彼女自身自分の感情に対して明確な答えを出せていないこともあって、様々な感情が押し寄せてきてしまい、ミモザと共に頭を抱えて呻くことになってしまったのだった。

 

 

「やぁやぁいらっしゃい若者達よ」

 

 

 そんな会話を行いながら本部へ向かっていた5人へ現魔法帝 ユリウス・ノヴァクロノはまるで友人に語り掛けるように、そう言葉をかけるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 ――――

 

 

 

 

 

 

 

「戦功叙勲式ですか?」

 

 バイオレンスメスライオンことメレオレオナ・ヴァーミリオンと別れ、無事に任務達成を行ったシャムミッドが久方ぶりに暴牛拠点へと帰って来るや否やヤミ団長から叙勲式があると告げられた。

 

 普段の任務態度や功績を表す指標として、『星』というものが授与される。

 これは魔法帝が授与する許可を出した証拠であり、己の活躍が認められたことのなによりの証明。

 故にクローバー王国では『星』の授与は身に余る光栄なことだという認識を持っている。

 その『星』授与取得数が特に多い団員達を集めて行う祭典が戦功叙勲式だという。

 

「おう。クローバー王国魔法騎士団創設から続く伝統的な祭典だ。何度かお前も貰ったことがあんだろ?」

「はぁ…確かに貰った経験は何度かありますが、それが私となんの関係があると…?」

「いい加減お前、受勲式に出てこい」

「え、嫌です。普通にだるいです」

 

 えぇぇぇぇええ!?と驚愕の声をあげるフィンラルと驚くマグナ達を他所に、シャムミッドは心底嫌そうな表情をヤミに見せた。

 普段の凛々しく美しい表情が一変、生理的嫌悪を感じるものを近づけられた時の反応のように絶対に関わりたくないと言葉ではなく、心で理解できるほどに表情が物語っていた。

 

「そんなに嫌なのか」

「えぇ。確実に面倒ごと抱えるじゃないですかそれ。いやですよ、そんなことで貴重な一日を費やすなんてまっぴらごめんです。貴族や王族が大半を占めて厄介事を招くに決まってます」

 

 星を授与されるものはとある事件から身分に関係なく、正当に評価されたものに限るようになった。

 だがそれでも星を授与され、さらにそこから受勲式に参加を許されるものは基本的に貴族や王族といった普段から豊富な魔力を有し、多くの魔法を扱うことが出来る者達だろう。

 そんな中で下民で、自覚しているが色んな意味で目立ったシャムミッドが出たらどうなるのか。

 ある者は妬み、ある者は興味深い目線を送るに違いない。そんなことを行いそうな王族魔法騎士を彼女は知っているからだ。

 

「一日使えばフリークエストを5個ほど消化できるんです。私としてはそちらの方が圧倒的に優先順位が高い以上、受勲式に出席することはあり得ませんね」

「いやぁお前それ……あっ」

「大体なんですか受勲式って…ある程度評価を大々的に行うことで全等級の魔法騎士のやる気を引き起こさせることは理解できますが、それをわざわざ私に出させる必要はないでしょう…もっと受勲式に出たがる方々は多いのですから、そちらを優先すればいいでしょうに。なんでそんな面倒なことを「ほう?いい度胸をしている」……は?」

 

 明らかにこの場に居るはずのない存在から発せられる声が聞こえる。

 まさかそんな…ありえない。

 そう思いながらもギギギギと音を出す錆びた歯車のように、聞きなれてしまった声の方向へ振り向くシャムミッドの視界には明らかに額に怒りのマークをつけたノゼル・シルヴァがこちらを見下していた。

 ヤミ団長の方を見るとウ〇コしに行くかと無慈悲にその場から退出し、他団員も明らかにかかわらない様に部屋の隅でこちらの様子をうかがっている。

 すでに彼女の味方はこの場に居ない。

 

「な…ナゼココニイルノデスカ?」

「魔法帝直々に私に命じられたのだ。シャムミッドを連れてこいとな。貴様はどうせ任務に(かこ)けて出席を断るだろうからとな。戦功受勲式に参加できるという誉れ高き権利を与えて頂きながら、その受勲式を『面倒くさい』『そんなこと』、と…よくそんな言葉を吐けるものだ…!」

 

 獲物を狩りにくる大鷲を幻視するほどに怒りで濃く錬られた魔力が暴牛拠点を覆いつくす。

 ここまで怒りを露わにしているノゼルに対して、シャムミッドがやれることはたった一つだけ。

 この世界に来て、幾度となくこれに近しい状態になったことはあるが、対応しようとしたその全てが失敗に終わってしまっていた。

 普段怒らない人物が怒ると怖いと言われているが、本気でキレたノゼルは一度魔法帝に正座させて説教を説いたほどに手が付けられなくなってしまうのだ。

 故に彼女が行える行動はたったの一つだけなのだ……っ!!

 

 

「来い。貴様に拒否権はない」

「………はい」

「連れていけ」

「「ハッ!!」」

 

 

 素直に連行されること。

 それが彼女が出来る唯一の対応策。

 

 絶望の表情を浮かべながら部下の魔法騎士団員に連れていかれる彼女の後ろ姿はさながら、逮捕されて連行される強盗犯そのものだったとは後に語ったヤミの筆頭舎弟マグナ・スウィングの談である。

 

 

 




 
 
 
 
 
 
 
 
 

・戦功受勲式
 この受勲式に出られるだけで全国民から尊敬を向けられるほどの祭典。
 さらに年に一度、その年の魔法騎士団が取得した星数の発表が行われるイベントである『星果祭(せいかさい)』と呼ばれる催しもある。
 その時は王貴界や平界を巻き込んで大きな祭りが開かれるのだが、恵外界の住民が参加することは少ないと予測してます。


・ラック君とマルス君とロータス氏
 テンポ重視で出番カット。悲しいなぁ。
 でも展開は全く変わらないし仕方ない。
 これを機に“狂喜のラック”と呼ばれたラックは本当の意味で仲間が出来て、マルス君は正気を取り戻したので、結構大事なお話です。
 
 
・キレたノゼルと正座の魔法帝
 上記の祭典とは別に王族らが集まる重要な会合に参加しなかった魔法帝に対して起こった出来事。
 理由は言わずもがな魔法を追っかけてサボったことで、今までの不満がたまりにたまっていたノゼルが静かにキレたッッ!!
 それ以降ノゼルを過剰に怒らせないように魔法帝も意識したという事実…ッッ!
 極度に怒らせないことが、何よりも重要なのだッッ!!

「なんだァ?てめェ…」
 
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。