この作品だけでなく、他の作品もサボっているのに感想をくださる方もいまして本当にありがとうございます。
折角ですし、ちょこちょこと執筆してます。
今後ともよろしくお願いします。
「と、いうわけなんですよ…」
「「そ、そうなんですか…」」
戦功受勲式へ案内されたアスタ達。
そこでまず彼等が見たのは、明らかに憔悴しきったシャムミッドの姿だった。
ボクシングの試合で全てを出し切って精魂尽き果ててしまったかのような、まさに燃え尽きた姿。
先輩魔法騎士からは仕事の鬼だと聞かされていたアスタとノエルであったが、眼前の姿からは全くそのように思えなかった。
それに同意するかのようにほかの魔法騎士たちは彼女に近付いて下手に刺激をしないよう、距離をとったまま叙勲式まで待機していた。
困惑する二人の代わりに『金色の夜明け』に所属するユノが挨拶を行い、アスタ達が正気に戻り理由を聞いたことで今の現状に移る。
「い、いやでもすごいじゃないっスか!戦功叙勲式に出れるってことは魔法帝に認められるほどの活躍を行っている証拠!オレだったらすごく喜びますよ!」
「普通であればそうなんでしょうけどね……」
「ここまで出席を嫌がる人がいるなんて思いもしなかったのだけど…」
「ま…まさか誇り高き戦士と聞かされていた“民の守護者”と言われるお方が、このような人物だったとは…」
「流石の
壁に寄りかかって項垂れるシャムミッドを励ますアスタに元気を貰っている姿を見て、ここ数年で頭角を現して圧倒的な戦果を挙げている魔法騎士なのだとクラウスは全く思えなかった。
身分関係なく国民の為を想い、国民の為に身を粉にして活動するその姿から、彼女の預かり知らぬところで“民の守護者”と呼ばれるようになり一層彼女を慕う者達が増えたと聞く。
そのような話を先輩や同期の者達から聞いていたクラウスの中で、己の中で彼女を一方的に神聖視していたのだろう。
元々下民と蔑んでいたクラウスは最初は嘘偽りだと信じることはなかったのだが、他の先輩たちの言葉を聞くにつれて彼女の活動を評価していった。
王族が民を護るのは当然。だが下民がそこまでして国のために、国民のために動いていることに対して彼なりに思うところがあったのもまた事実。
一度は実際に会ってみたいとそう考えていたものだ。
そんな民のために活動する誇り高き魔法騎士団が、全騎士団員の誉れである受勲式に対し、肩身が狭く息苦しいなどといった理由で出席を拒否を願うとは想像もしなかった。
だがそれと同時に、民を想う考えは紛れもなく本物だと理解出来たことに安心感を覚える。
これはここにいる時間を
「う、うむ。しかしどのような姿や理由であれ、“民の守護者”と呼ばれる魔法騎士と出会えたことはまさに僥倖。これからもよろしくお願いしますシャムミッド殿。私も『金色の夜明け』の団員。貴女と肩を並べられる事が出来るよう、精進させていただきます」
「そこまで硬くならずとも大丈夫ですよクラウス殿。私の方こそ先ほどの醜態は失礼しました。全騎士団員の憧れでもあり、目標点でもある戦功受勲式を私個人の勝手な主観で貴方達の前で貶してしまった事を謝罪いたします」
「そ、そんな事思ってもいませんわ!頭をあげてくださいませ!」
「そうよ!早く頭をあげてちょうだい!」
なんとか生気を取り戻して本来の姿に戻ったシャムミッドは己に敬意を向けてくれる魔法騎士に謝罪を述べた。
それにミモザとノエルが慌てて頭をあげるように促し、すぐに従い姿勢を戻す。
些か名の知れた騎士として腰が低すぎるのではないかとクラウスは思った。
対するシャムミッドからすれば王族の者達といざこざを起こさぬように低姿勢で対応しているだけであるのだがクラウスが気づくことはない。
大体は彼女に王族と関わると面倒なことになるという苦手意識を刻んだシルヴァ家のせいであるのだが、ノエルに関しては『黒の暴牛』の一員ということもあってそこまで気にしてはいないようだ。
ある意味ヤミ団長の人を見る目を信じているということでもある。
「改めてましてアスタにノエル。入団してまだ間もないというのに、受勲式に出られるほどの活躍をされたるとはすばらしい行動力ですね。同じ団員として鼻が高いですよ」
「うぉぉ!!ありがとうございまぁぁす!魔法帝になるために、もっともっと努力して活躍しちゃいます!!」
「あ、ありがとうございます…(わ、私はそこまで活躍できてないのだけれど…言ってもいいのかしら?)」
「魔法帝だと?下民風情が何を言っている…」
「オホホホ。随分と活気がある団員たちではないですか」
アスタの大きな宣言に対してピクリと反応を零す者達がチラホラと。
中には陰口をたたくような者達もいるが、魔力を持たないことで苦労をしてきたアスタには全くと言っていいほど聞いていない。
散々な言われようだな―程度である。
「よくほざいて…アイツは…、チィ」
(ソリド…成長したわね…)
本来であれば他の者達と同じように見下し、そして侮蔑の言葉をかけていたシルヴァ家の面々は少々違った様子だ。
シャムミッドの姿を見て舌打ちをしただけのソリド・シルヴァを見て、姉のネブラは弟の成長を内心で喜んだ。
意気揚々と
王族の椅子に座っているだけでなく、ソリド自ら訓練を始めている事をシルヴァ家の者達も察していた。
彼等にも早い段階で良い風が入ってきたということだろう。
そんな会話を行いつつも、アスタ達がやってきてから10分経った頃か。
再び会場の扉が開き、入ってきた男を見て会場の空気が一気に引き締まった。
「みんなよく集まってくれたね。では、戦功叙勲式を始めよう!」
クローバー王国所属
現魔法帝 ユリウス・ノヴァクロノ
その人である。
――――――
「紅蓮の獅子王団レオポルド・ヴァーミリオン!星の授与数9!君に二等中級魔法騎士の称号を授与する!
兄である獅子王団団長と同じく君の炎魔法の威力は圧倒的だね~!ただやりすぎには注意が必要かな」
「ありがとうございます。悪に容赦など必要ありません」
「続いて星取得数6!碧の野薔薇団ソル・マロン!三等中級魔法騎士の称号を授与!
男性に負けない行動力と独創的な土魔法は凄いけど、ちょっと自由すぎるかもね!」
「私を縛れるのは姐さ――団長だけです」
「ほえーなんだかよくわからないけどここに居る奴等って凄いんだな」
「当たりまえでしょう。そもそも星の授与をされること自体王国に幾多の貢献をした上で魔法帝に認められることで与えられる名誉なのよ。一般の魔法騎士だったら個人で星一つ貰うだけでも数年かかれば早い方。前回『黒の暴牛』に星の授与がされたのだってテロ組織を見つけて撃退するっていう危険度が高い任務として承認されたからなんだから」
「団体で危険な任務を受けることで星の授与をされるというのは多いのです。しかし個人での星授与となると敵国の侵略を防ぐ、多くの国民を窮地から救いだすなど王国の為に尽くした偉業でなければ早々授与までいくことはないんです…」
(……そうなのか)
星の授与を後ろで見ていたアスタも空気を読んで小声でつぶやいた言葉にノエルとミモザが説明を行う。
今回の授与式では少し前にダイヤモンド王国の侵略があったことでその旨に関する星の授与が多いが当然それだけではない。
敵国とのイザコザで荒れてしまった土地の修復などに貢献した魔法騎士もおり、魔法帝の優秀な者達に星の授与を行う行動は魔法騎士団に憧れる青年たちの信頼と尊敬を集める。
星一つ授与されるだけでも出身地の村に話が飛んでいき、盛大に祝いの席が設けられるなど国を挙げた武勲の証なのである。
そんな説明を横で聞きながらアスタとユノは『星』という実績の重みを感じていた。
魔法帝になるためには少なくともこれから彼等以上の実績を上げ、数多くの『星』の授与を受けていかなければいけないのだ。
目に見えた目標に対しアスタとユノは拳を握り締め、より一層奮起することを誓った。
そんな彼等を他所に星の受勲式は進んでいく。
今個人最高の星取得数は11。
クローバー王国において最強とまで言われる精鋭『金色の夜明け』団員 アレクドラ・サンドラーが魔法帝の言葉に対し、生真面目に返答を行っている。
「続いて、黒の暴牛団シャムミッド・ペンドラゴン!」
そうして最後に呼ばれたのはシャムミッド。
名を呼ばれ、彼女は魔法帝の正面に立った。
多少の緊張があるのか、彼女の表情は少し固くなっているようにも見える。
「そういやシャム姐さんってどれぐらい星取得してるんだろ?」
「さぁ?でも受勲式に呼ばれるほどなんだから5以上は確実よ」
「名前は聞いたことはあれど、受勲式に参加されるのは初めて…一体どれほどの武勲を得られたのか非常に気になるな…!」
アスタのふとした疑問にノエルが答えてクラウスは彼女の武勲に興味を持った。
ユノも何もしゃべってはいないものの、魔法帝とシャムミッドから目線を外していないことから興味深々と言った様子。
話を聞くに彼女が黒の暴牛に入団して5年は経っていると聞く。
そんな彼女は一度もこの叙勲式には出席していなかった。
これまでの功績に関しては全くと言っていいほどわからないが、少なくとも暴牛団員の中ではトップクラスの功績を建てているのは確実。
おしゃべりをやめて叙勲式を再度見るアスタ達を他所に、授与される等級を再確認した魔法帝が向き直り、そして告げた。
「星取得数
五等下級魔法騎士から一等上級魔法騎士へ。
その宣言に驚愕する他の魔法騎士団員。
言葉を失って驚愕するアスタ一同。
「…身に余る光栄。今後も一層奮起させていただきます」
彼等の反応を知ってか否か、魔法帝へそう返したシャムミッドの瞳は完全に死んだ魚の目をしていた。
・民の守護者
本人に預かり知らない間で言われていた二つ名。
他にも他国魔法士からクローバー王国の
厨二心がわかる御方。
・受勲式の評価
約一年で表彰されるものを月に2~3回個人で受けてると考えればどれだけ異常なのかわかってもらえるだろうか。
表彰に出ないだけで毎年それだけの功績を叩き出す者を評価しないとあっては運営に対し不平不満を上げる者が増えて大変な事になる。
故にこれ以上五等下級魔法騎士のままに出来るかという強い意志で無理やり一等上級へ。
4等上級に上がった人が年に11個の星を授与してるのに、2~3倍の功績出してる人が最下級の役職とかあり得ないので仕方なし。
・ソリド・シルヴァとネブラ・シルヴァ
今後活躍していくかはまだ未定。