これからどんな展開にしてこうかな
等級。
わかりやすく言えば称号。
その者の実力を示す指標としてクローバー王国には「等級」というシステムが存在している。
大まかに記載するのであれば
①魔法帝
②大魔法騎士
③上級魔法騎士
④中級魔法騎士
⑤下級魔法騎士
となるのだが、叙勲式でも述べられていたように③~⑤の中でも1等~5等にランク分けされている。
魔法騎士団に入りたての新人は5等下級魔法騎士として活動を始め、成長や功績を認められていけば1等下級魔法騎士に上がり、その次は5等中級魔法騎士と言った形で上を目指して活動している。
トップはこれまでの流れから知っているだろうが魔法帝。
クローバー王国魔法騎士団のトップであり、最高責任者だ。
各魔法騎士団を率いている魔法騎士団団長は②である大魔法騎士の称号を授与された者達のみが成れる最高名誉と言ってもいい。
戦闘能力の高さだけでなく、団員たちをまとめ上げるカリスマ性も必要になってくる。
騎士団を率いるために見た目は粗暴であるヤミ・スケヒロも相当の学を頭に叩き込んでいるのは必然であろう。
では一等上級魔法騎士とはどれほどの立場なのか。
それは簡単。次の団長候補でもあり、場合によっては魔法帝の側近という重役も任されることもあるかなり貴重な存在である。
最初の話でユリウスに散々にやられていた側近 マルクス・フランソワを覚えているだろうか?
おかっぱの髪型をした偶に魔法帝に暴言も吐ける苦労人なのだが、彼も一等上級魔法騎士の称号を授与されている。
ようはそれぐらいの権威を得られ、そして相応の責任も負うことになる立場なのだ。
当然このレベルにまで到達できる魔法騎士は一握り中の一握りの逸材であり、その大半が貴族や王族が占めているのが現状。
(ユリウス…この場じゃなければ確実にぶん殴ってましたよ…ッ!)
そんな立場を王族でもない下民が、本物の王族がいる場で授与されればどんな反応が起こるのか。
それは明らかだ。
「粗暴の暴牛から…一等上級魔法騎士だと…!?」
「下民風情が…」
「なにかの間違いではないのか…?」
「ホホホ。これは素晴らしいですね…」
「フハハ。セッケが言っていた女傑とはアイツか…凄まじい武勲だな…!」
彼女の功績は追随を許さない31。
これは年に一回、それも不定期に行われる授与式までに31もの功績を残したということであり、いくら贔屓したとしてもここまでの功績を叩き出せるものはいない。
その上であっても、心のない言葉をかける者という存在はいるのが世界の常である。
以外にも好意的に捉えられていることにシャムミッドは驚いたが、場が場なだけに魔法帝の言葉を待つ。
「いやぁここに居るみんなは驚いたことだと思うけど、これは私の独断というわけじゃないんだ。国王からもこの件は了承を得ている」
本来では無礼に値する叙勲式での騒めきも、魔法帝は当然の反応だと諫めなかった。
それほど異例であることは自覚しているらしい。
「国王陛下からの許可も頂いていると…?魔法帝、恐れながら申し上げます。下民たる者がそれほど評価されている訳を教えていただきたく」
恐れながらと遠まわしに否を告げる者は先ほど魔法帝より授与を受けていたアレクドラ・サンドラーという男。
『金色の夜明け』団員であり、かつて団長であるウィリアム・ヴァンジャンスに命を救われてから団長に心酔する砂の魔法を用いて戦う優秀な騎士である。
「平均所得数29」
そんな彼に応えるように魔法帝ユリウスは告げた。
ふと言われた数字にきょとんとする者達であるが、出席している団長ら一部は「まさか…」とその数字で冷や汗をかく。
「これはシャムミッド・ペンドラゴンが叙勲式までに
『 !? 』
ありえないと否定する者達は言いたかった。
だが彼等は真を知るものは少ないながらも噂や報告を聞いて知っている。
曰く、任務を達成することはあれどすぐに別の任務へと向かい達成報告を怠る。
曰く、
曰く、彼女の影響で黒の暴牛の星マイナス取得記録更新が途絶え、白星へ回復した。
曰く、休まない彼女に対して国民から休ませてくれと嘆願書が届く。etc...
もしそれらが事実であるのならば、あり得るのだ。
なにせ今迄の黒の暴牛は星取得数マイナス40などという記録を叩き出しており、黒歴史を毎年塗り替え続けていたのだ。
それが最近目立たない。
それを考えると、ありえない話ではない。
「私自身本来彼女の星取得数はもっと多いと考えている。なにせ功績を譲ったことも一度や二度ではないらしいからね」
「………」
ハハハと笑うユリウスと目を合わせないようにするシャムミッドは内心でなぜバレたという気持ちが渦巻いていた。
バレないように一兵卒と同じように動いていたというのにと。
調子に乗りやすい団員がいたから功績も含めた事後処理を押し付けて現場から離れたことがあるのももしかしたらバレているのかもしれない。
「知っての通り私が魔法帝になってから星の授与は上級下級関係なしに評価を行うようになった。今までは戦闘能力が大きく評価されていたが、内政や事故処理能力に評価を入れ始めたのも私の代からである。“星”とは如何に王国に利をもたらしたのか、もたらすのかを示す簡単な指標にもなる。それを考えると普段から
ユリウスの考え、そして国王のお墨付きということ。
そしてユリウスがしゃべる後ろで彼女が行ってきた功績内容を表示されてしまえば、否定的であった者達も口を閉じざるを得ない。
かつてシルヴァ家が関わった
彼等の中にも彼女に助けられたこともあれば、気づいていないだけで力添えを受けている者もいるため尚更である。
「確かに彼女は貴族ではない。王族でもない。だがそんな彼女はこの場に居る誰よりも実績を積み上げている。もし彼女のような功績者に対し、否定的な意見を述べたいというのであれば、私から言えるのはただ一つだ。彼女以上に実績を積みなさい。それが騎士団同士を切磋琢磨させることにも繋がり、結果的にクローバー王国をより一層平和にさせることにも繋がっていくだろう…。さて長話はここまでにしようか。かんたんな席も設けているから楽しんでくれ。あ、そうそう今日は特別ゲストも呼んであるから大いに交流してくれたまえよ!」
はっはっはと笑う魔法帝の言葉に対し、全魔法騎士団員一同は一斉に頭を深く下げるのだった。
「やぁシャムミッド君。久方ぶりだね」
「そうですねユリウス。あの場でなければぶん殴ってました」
「ははは!キミの拳はかなり効くから勘弁願いたいものだね」
叙勲式が終わって少し。
他の者達は設けられた会場で食事を楽しんでいるところだろう。
アスタ達はユリウスが呼んでいたらしく、今回の授与者たちとの交流を目的に呼んだらしい。
この前発生した
下民と蔑む者達が王族貴族たちにまだ根強く残っているなかで、アスタ達は冷たい目で見られるかもしれないが、彼等であれば問題ないだろう。
でなければ魔法帝になるという大きな夢と目標を掲げて今まで努力をし続けることなど無理だ。
なんか室内が少し騒がしい気がするが気のせいだろう。
シャムミッドは魔法帝であるユリウスと共に食事の席を離れ、バルコニーに足を運んでいた。
本来であれば一番の功績がいち早く会場から離れるのは良くない事なのだろうが、ユリウスはシャムミッドの在り方を知っている。
ノゼル・シルヴァという
これ以上強要すれば流石の彼女も怒りを抱くだろう。
「でも今回は済まなかったね。前に拒絶された時に無理強いは良くないとはわかっていたんだけど、国王とその側近のみんなが君を評価しないといけないと言ってきてね」
「はぁ…?何故国王等が私を評価しようとするんですか?特に接点ないでしょう?」
「うーん。それなんだけどさシャムミッド君、この前
「…いやそうですけどなんで知ってるんですか」
素直に謝るユリウスの言い分が気になったシャムミッドであるが、この前に受けたクエストが原因であるという。
それよりも何故魔法帝ユリウスが
もしや彼はストーカー気質なのではないだろうか?
そんな考えを脳内に抱く。
「私はメレオレオナ・ヴァーミリオンとの関わりも持っている」
「察しました」
だがすぐに解決した。
あの
シャムミッドは激怒した。
確かに隠すつもりはなかったが、彼女が言わなければもっと穏便に事が済んでいたのではないかと。
だが今度敵対した場合はボコボコに負ける未来が見えたので泣く泣く矛を収める。
魔力強化してるとは言えど、聖槍の突貫を素手で掴むとか頭おかしい。
「いやぁ彼女の魔法も凄くてねぇ。勢いも火力も王国でも群を抜いた実力者だ。そんな彼女が君の事を楽しそうに話すものだから、僕も同じようにマルクス君に話していたんだよ」
「いや仕事してくださいよ魔法帝」
「そしたらそれを国王の側近に聞かれてたらしくてね。それで今回の一件というわけさ」
「すいません。やっぱりぶん殴っていいですか?」
やっぱりお前が情報を漏らしてんじゃねぇかとシャムミッドは激怒した。
軍部のトップが口を滑らせた影響で厄介事が身に降り注がれるなど、全く以て酷い話である。
「いあやぁすまないすまない。でも正直それはあくまでも一つの理由に過ぎなくてね。彼等が君をここまで評価しているのはさっきも言った“輝きの林檎”が要因なのさ」
「食べたら体力や魔力回復に用いられるという林檎ですよね?確かに報酬は高額ではありましたが…それが王族の方による依頼であったと?」
「結論で言えばそういうことだね。騎士団たちにも依頼していたようだったんだけど、場所が場所なだけに率先していく人が少なかったようでね。式典で用いるために必要だからということで
実際に向かった団員もたどり着けずに断念したという話も聞いたことがあるしね、なんていうユリウス。
ここ最近は隣国である侵略国家ダイヤモンド王国がよくちょっかいという名の侵略行為をすることで“輝きの林檎”をとってくる者達の手が足らなくなり、困っていたとのこと。
何十人もの魔法士が向かって一個か多くて二つ持ってくれば良いものを、向こうでメレオレオナ・ヴァーミリオンの力を借りたと言えど依頼結果は4個も持ってきた。
しかもクエストを受けたのはなんとたったの一人という。
慌てて誰が依頼を完了させたのか依頼した王族が
それによって驚き、感謝したものが奮起し、受注者を評価するように呼び掛けた…ということである。
(まぁ確かに何十人使う依頼を一人で完了させるほどの実力者で、尚且つほとんど無名の存在だったのなら恩を売ろうとする気持ちはわからなくもないですけどね…)
要するに王国も凄く感謝しており、誉れである勲章や報酬たんまり払うから今後もクローバー国家に尽くしてクレメンスという意味なのだろう。
小競り合いとは言え、負傷者死者共に出てる実質戦時中の状態で一定以上の実力者が他国に流れていく事は王国としてもあってはならない事。
有能優良優秀な人材の大切さはシャムミッドも良く知っている。
「まぁそういうわけで僕の口から情報が抜けていなかったしても今回の授与は確定的。ましてやそれを受け入れないとなれば王国としても大きな問題になってしまう。素直に受け入れてくれれば助かるよ」
「まぁ受けてしまったものは撤回するつもりもありませんが…」
「あとは星の取得数が他の団員よりも圧倒的なのに何故授与を行わないのかと結構な批判をしてくる者達もいたほどさ」
「それは…すいませんでした」
「はははっ、気にしてないさ。ただそれだけ君はクローバー王国でも必要な存在になっているということは理解しておいてほしい。体調不良で戦線離脱なんてことがあったら大変だしね」
「…しっかり休んでますよ」
「ヤミからは休めと言っても休まないからどうすればいいかと相談を受けてるんだけど?」
「うっ……」
休みを取らないシャムミッドはアスタ達と出会ったあの一週間の休み以外は相変わらず取ることはなく、毎日任務消化の日々である。
魔法帝直々に苦言されてしまえば流石のシャムミッドも言葉が詰まるというもの。
自然体で接しているがユリウスはクローバー王国の魔法帝。
元帥クラスの存在から直々のお言葉を言われれば返答に困る。
「…以後気をつけようと思います」
「…それ、いつもヤミに返す返答らしいね」
まぁ君らしいやと話題を変えられた。
言葉だけで休めるのなら働きづめになっていない。
今バルコニーからはクローバー王国が見渡せる。
昼間が近いこともあって王貴界と平界、そして恵外界に活気がより溢れてきているのがここからでもわかる。
そんな光景を視界に収めながら、たまには休んでみようかと思うシャムミッドであった。
王都襲撃まで、残り20分。
・“輝きの林檎”
超高級食材兼実質的なエリクサー。
そんなものを4つも納品してきたらそりゃ依頼者も受注者を慌てて探すでしょう。
今後のためにね。
・禁忌の一言「休みます」
なお実際にシャムミッドの口からその言葉が出た瞬間、