虎と少女は一方の道を三人で進む   作:すこやか茶

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第一話 救出

実験、実験、拘束されてまた実験、暗殺の指示、そしてまた実験

終わればまた拘束

 

俺の毎日はまるで悪夢の様だった

 

「おい!時間だ、さっさと此方に来い」

今日は実験の日だろう、周りに人は居らず身体の至る所に拘束用の鎖で縛られている

能力も同様にだ。それ故俺は素直に従うしか無かった

まるで牙を抜かれた狼のように―――――――

 

「・・・」

 

「早く来い!”一方通行”」

 

「・・・」スッ

 

最初は反抗していたが今では従順になっていた

もう俺はその気力すら残って無かった

 

奴に歯向かえば鞭打ち、高圧電流の刑は軽い方で

酷くなれば絶食や身体の至る所に火傷を付けられた

 

有無を言わさず連れて来られた人は俺だけでは無かった

しかし一人また一人と日が経つに毎に人が減っていった

 

「今日はお前の能力解明の日だ、この薬を飲んで能力を行使しろ」

 

「・・・」ゴクッ

 

「アァァァァァアァァァァァ――――――‼」

 

『能力解明』とは薬を用い能力を最大限まで引き出し能力の構造を理解しようする人体実験だ

飲用薬は副作用が常に存在し周りの人間も苦しみ死んだヤツもいれば飲用した後、直ぐに

死んだヤツもいた

 

「・・・ァァァ」

 

「今日は此処までか・・・おらっさっさと部屋に戻れ‼」

 

「・・・」

鎖で身体を拘束され能力も制限されてる身では如何する事も出来ない

何時もの様に鎖を引きずり部屋へと戻る

 

部屋は入り口を鉄格子で囲み、残りはレンガ造りの壁で囲まれている

 

この街では『異能力』と呼ばれる不思議な力を持った人間が存在する

ある者は正しき事に用いある者は悪しき事にある者は持っている事すら認識していない

 

いつもは栄養剤を注射され就寝するのだが今日は違った

隣室に小さな少女が座っていた

 

歳は8~9歳位だろうか

今ではこんな少女まで攫って実験に使用するのか

 

僅かな怒りが込み上げてきたがその気力も長くは続かない

この様な感情や経験は既に何度も遭ってきた

 

この部屋も前には10人くらいの人間が居り僅かながら交流があった

隣室にも5人くらい居たのだが今ではこの部屋は俺1人だった

 

俺は特に交流する事も無く静かに目を閉じた――――

 

 

1週間が経ち

隣室の少女が此方の部屋に移ってきた

上の命令らしい

邪魔な事この上ない、俺は餓鬼が嫌いなのだ

 

さらに1週間が経った

突如少女が泣き出した

俺は何も言わず就寝した

 

さらに1週間が経った

少女は俺に抱き着いてきた

人の温もりを欲したのだろうか

特に少女の身体を引きはがす事も無く

俺は就寝した

 

さらに1週間が経った

俺もコイツに情が移ったのか少しずつ実験に連行される少女の事を

可哀そうだと思うようになっていた

 

さらに1週間が経った

少女は完全に俺を信用しているようだ

俺も嫌悪感が無くなっていた

 

会話は無くとも居心地は良かった

誰かが居る、そんな小さな事だが心が休まる感じがした

 

そんな時だった

何時もは一人ずつの能力解明が今回はコイツと二人だった

 

ただ部屋は別室だった

 

「今日はこの薬だ」

 

「・・・」ゴクッ

 

「ウゥァァァァアァ――――――‼」

 

「今日は此処までだ・・・おらっさっさと部屋に戻れ‼」

 

何故だか知る由も無いが能力の威力が少し上昇していた気がした

心なしか薬の副作用も弱かった気がした

 

「・・・オイお前は大丈夫か?」

 

「・・・大丈夫かもってミサカは笑顔で答えたり」

明らかに大丈夫では無い

青ざめた顔を少しでも笑顔に見せようと必死に顔を歪ませていた

最初は少女からだった会話が今では俺からも会話をするようになっていた

 

名前はミサカというらしい

まァ俺が名前を呼ぶ事は無いが―――――

 

っ⁉

 

こんな事を考えたのは何時以来だろうか・・・

何故かは分からない―――が、コイツを逃がしてやりてェ

という思いが芽生え始めていた

 

「・・・今日はもう寝ろ」

 

「そうだねってミサカは貴方の隣に寝転んでみる」

 

「・・・勝手にしろ」

 

2ヶ月が経った

何時もの様に実験から部屋に戻った時アイツの姿は無かった

 

「アイツは・・・?」

監視の男に聞いても知らないの一点張り

今日の夜は眠ることはなかった

 

翌日

アイツは部屋に戻って来た

しかし足元はふらついており焦点は合ってなかった

 

「・・・おい‼大丈夫か⁉」

こんなに声を荒げたのは久しい事だ

自分らしくもない―――――――――でも

 

「おい‼誰かいないか‼」

風邪か⁉薬の影響か⁉

こんな所に居なければ直ぐにでも診察して貰いたいのに・・・っ‼

 

「おい‼そこのヤツ!コイツを診てやってくれないか‼」

もう誰でも良かった

コイツを治してくれるなら

 

しかし現実は希望ほど優しくは無い

 

「此奴はもう使えないな・・・捨てるか」

 

「あァ⁉まだ実験を続けるンじゃねェのかァァ⁉」

 

 

「使えなくなったら捨ててまた攫えばいい。維持費や薬代も安くはない」

攫っておいてそんな事も言うのか

俺の叫び声を聞いたのか俺の身体に電流が流れだす

 

身体が動かない・・・

能力も出ない・・・

 

「仕方ねぇ・・・捨ててくるか」

少女の身体に容赦無く鞭を打ち付ける

 

少女は苦しみながらも痛みに耐えかねゆっくりと上体を起こし歩き出した

その顔は泣き出す事も無いながらも悲痛な苦しさを訴えていた

 

 

ふまれても

 

ふまれても

 

我はおきあがるなり

 

青空を見て微笑むなり

 

星は我に光をあたえ給うなり

 

 

 

俺にとってアイツは希望の光の様だった

 

触れ合うに度に光は輝きを増す様だ

 

光が誰かに奪われるのなら――――――――――――

 

 

俺が闇と成り

 

光を照らし続けよう

 

 

「・・・待て」

 

「お前にはまだ働いて貰う、其処を動くな」

 

「って言っても動けないか」ハッ

 

近くに居た監視人と合わせて二人となった

 

身体にはまだ電流が流れている

気を抜けば失神してしまいそうだ

 

殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す

殺斬撲滅殴殺斬首殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺

殺殺殺殺殺殺殺殺

殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺

 

「あdがァgjそghコロあshぎrbァァァァァッッッッ‼‼」

電流の所為では無く殺意で心が吹き飛びそうだ

 

コイツラをコロすコトがデキルノナラ――――――

力が溢れる此の侭何もかもコワシテシマウ

 

 

「はい其処まで~」

 

―――――――異能力―――――――――

『人間失格』

 

眩い光と共に俺の能力が無効化されていく

目を開ければ二人床に転がっていた

 

「いや~君の其の能力は危険すぎる。面倒だが私がやって来たという事だよ」

 

「誰でも良い・・・コイツを助けてくれるのなら」バタ

其処で気を失った

今思えば何処から現れたのか

何故あの瞬間に現れる事が出来たのか

 

不思議に思う事が幾つも浮かびそして消えた

今はこの悪夢から醒める事を祈って―――――――――――

 

「男を抱える趣味は無いんだけどね・・・」ハァ

光を放った男は二人を背負って帰路に着いた

 

 

「此処は・・・?」

眼が覚めると其処は寝具の上だった

 

「アイツは―――⁉」キョロキョロ

 

「君と居た少女なら大丈夫だよ。此処には優秀な女医さんが居るからね」

考えを見透かされ、気まずさを隠す様に掛布団に身を隠す

 

「君の身体も傷だらけだったからね。後で治療を受けるといいよ」

 

「・・・色々と済まねェな」ボソッ

 

「ん~?もっと大きな声で言ってくれないと分かんないなぁ~?」ニヨニヨ

 

「うるせェ」

 

―――――――異能力―――――

『完全感覚』

 

「あっ」

ついいつもの癖で―――――

 

―――――――異能力――――――――

『人間失格』

 

「安心したまえ、ちゃんと君を抑えておいてあげるから」

 

「・・・ッ」

こんな簡単に消されると中々―――

 

 

「うぜェなァ」

 

「それが恩人に対して言う言葉かい⁉」

 

「さぁそろそろ彼女が戻ってくるだろう、治療を終えてね」

 

「・・・元気になるのか?」

 

「な~に、ここの女医はホントに優秀なんだよ♪ただ・・・」

何だ・・・?

 

「元気になったかも~‼ってミサカは傷ついた心を癒すために貴方に抱き着いてみたり~‼」

 

「身体は良くなったんだよな⁉」

 

「身体は本当に良くなったかも‼ってミサカは喜ぶと共に貴方に感謝を伝えてみたり」

そう言ってぴょんぴょん跳ねる姿に微笑みかけたその時――――

 

「次はお前の番かい~?」ガシッ

 

「うん‼宜しく頼むよ与謝野さん‼」

 

「じゃあ特別にフルコースで治療してあげるよ‼」

何か手にチェーンソー持ってるんだが・・・

 

「えっ・・・?普通でいいぃぃぃぃ」

治療を終えると身体は良くなっていた

・・・確かに身体は元気になっていた

 

「オイ・・・アレは本当に治療だよなァ・・・?」

 

「そうだよ~、でも与謝野さんの異能力『君死給勿』は瀕死の人にしか使えないからね、一度瀕死にされるから

皆怖がってるんだよ」

 

「マジで一瞬死ぬかと思った・・・」

 

「まぁこれで君たちの身体は元気になった、さぁ――――ここからどうするんだい?」

 

「・・・」

助けて貰った御陰で今回は助かった

だがもう狙われないという保証は何処にも無い

それに

 

「俺はまだお前の事を完全には信用した訳じゃあねェ、俺を攫ったヤツの能力とテメェの能力が酷似し過ぎている」

能力を封じる能力・・・

 

「確かにその人物の情報は聞いているよ、まぁ信用してくれとは言わない、ただ君は僕に一つ貸しがあるという事を覚えていて欲しい」

コイツ・・・

 

「分かったァ・・・取り敢えずは敵では無いとだけ思っておく」

コイツも今は休息が必要だろう

 

「少しいいか?手や身体の一部の傷跡は完全には消ェねェのかァ・・・?」

未だに俺や俺の身体に抱き着いているコイツの手や背中には火傷や鞭跡が残っている

 

「すまないねぇ・・・それも消したかったんだけど消えなかったんだよ」

先程の強気な性格とは打って変わり少し落ち込んだ表情を見せた

 

「そ、そんな事無いよってミサカは治して貰った感謝を表すかも‼」

 

「じゃあもう一度治療していいかい?今度はスペシャルフルコースでやってみるから‼」

 

「そ、それは勘弁してほしいかも・・・」

俺ももう一回は勘弁だなァ・・・

 

「皆の体調も良くなった事だし、私は少し外に出てくるよ」

 

「そう云えばテメェの名前を聞いてなかったな」

 

「私かい?私の名は太宰。太宰治だよ」

 

「太宰・・・」

 

大人とは、

裏切られた青年の姿である。

 

「君はこんな大人にはならないでくれたまえ。其の子となら大丈夫だろう」

そう言って太宰は部屋を出て行った

 

 

 

「君たちはまだ知らなくていい・・・」

君達に賞金が懸けられている事を―――――――――

次は窮地の虎を救いにでも行こうかな

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