東方大魔王伝 -mythology of the sun-   作:黒太陽

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第9話 魔の月、光の地

 

紅魔館・図書館

 

「……」

 

そこにはレミリアを始めフラン、パチュリー、魔理沙、大妖精、チルノの6人とバーン

 

「……それで?」

 

永琳とルナ、そして依姫が居た

 

「わざわざお前がいったい何の用なのかしら綿月妹?」

 

毒のある口調でレミリアが問うと不機嫌そうに睨みながら依姫は答えた

 

「……月の都が……」

 

「落とされたんでしょ?そんな事お前が来た時点で想像がつくわよ」

 

簡単に告げられ悔しくて唇を噛みながら依姫は言う

 

「わかっているなら……私が何を言いたいのかわかるでしょう?」

 

それにレミリアは溜め息を吐き紅茶を啜る

 

「お前立場がわかってるのか?前みたいに捻り潰してから叩き帰しても良いんだぞ?」

 

返した指を刺しながら鋭い威圧を依姫に向ける

 

115年前は敵わなかった月の姉妹だが魔帝異変の後に雪辱を果たしていた

 

だがその後は会っていないので互いに良好な仲とは言えなかった

 

「……」

 

そのレミリアにそう言われて依姫は返す言葉が無い

 

自分もあれから鍛えたつもりだったが今の威圧を受けて思い知ったのだ、遥か上に居ると……

 

「頼みだろうが何だろうがお前の口から話すのが筋と言うものでしょう?」

 

レミリアも今この状況で意地悪をするほど馬鹿ではない、ただ美徳を通したいのだ、どんな状況であろうと筋を通した事をしたい、言わば性であり嫌味からでは無い

 

「月の都で何があったか言いなさい、話はそれからよ」

 

「……わかりました」

 

意地を張るべき時では無いと悟った依姫は昨夜に起きた事を話し出した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昨夜・月の都

 

「……!?」

 

豊姫は持ち前のその感覚から突然に感じとる

 

(穢れが……迫ってくる!?)

 

「依姫!玉兎に連絡を!巨大な穢れが群れを成して近づいてきているわ!」

 

次元の先からも感じる事が出来た豊姫のお陰もあり綿月姉妹の率いる防衛隊はすぐに都全域に展開された

 

「……またあの仙霊でしょうかお姉様?」

 

「わからないわ……はっきりと言えるのはこの穢れは今までとは比べ物にならない程に凄まじく、禍々しいものよ」

 

その直後、都の上空で空間が歪んだ

 

「来ましたね……」

 

「なんて大きな歪み……何が出てくるというの……?」

 

空間の歪みが治まるとそこには巨大な飛行要塞が浮かんでいた

 

二人は知る事は無いがまさしくそれこそソルの主城を兼ねる移動要塞、大魔宮だった

 

「……行くがいい」

 

謁見の間からソルが告げると大魔宮から夥しい数の魔物達が都へ降り始めた

 

「防壁結界はどうなってるの!?」

 

「大丈夫ですお姉様!問題無く機能しています!」

 

「よし……ならば直ちに迎撃!月の都を攻める身の程知らずを後悔させてやりなさい!」

 

強力な結界を盾に迫り来る魔物へ攻撃を開始する防衛隊

 

「な、なにこいつら!?中々死なない!?」

 

「防壁に取り付かれたよ!?壊そうとしてる!?」

 

玉兎等一般兵の攻撃では有効打に欠け数が減らせない、だが最初にして最後の防衛ラインである結界の強さは伊達ではなくソル軍の魔物でも壊す事は不可能だった

 

 

 

 

 

 

「思ったよりもやりますな」

 

謁見の間でガルヴァスが映像を観ながらソルに呟く

 

「そうだな、前菜にしては中々に隠し味に手が込んでおる……アレは知恵の結界だ、結界に知恵を組み込み攻撃に対して無類の耐性を付加しておる、特定の解き方をせねば突破もままならん」

 

「どうされますか?そういった分野に明るいキルギルかグレイツェルを向かわせますか?」

 

ガルヴァスの進言を受けたソルは髭を擦りながら小さく笑った

 

「それには及ばぬ、知恵比べも良いがここは幻想郷に気付かれ手を打たれる前に早めに落としておきたい……奴に向かわせろ」

 

「わかりました」

 

ソルの命を受けガルヴァスは魔力による通信で出撃を言い渡した

 

 

 

 

 

 

「中々数は減らせませんがこれならなんとか……」

 

魔物を切り捨てる依姫

 

「そうね……ッ!?」

 

豊姫が気付き大魔宮を見上げた

 

「アレは……何?」

 

巨大な影が大魔宮から翼を広げ急降下してきた

 

 

ズンッ!!

 

 

結界に着地した衝撃で都が揺れる

 

「ドラ……ゴン……?」

 

現れたのは黒い体表と鱗を持った巨大な竜だった

 

 

ドン!!

 

 

竜が雄叫びを挙げると尾を振りかぶり結界に叩きつけた

 

「ッッ!?お姉様!?」

 

「大丈夫よ依姫……この八意様の叡智が込められた結界は力で壊せるものではない、例えドラゴンと言えど無駄よ」

 

その言葉の通り竜尾の一撃でも結界にはヒビ1つ入っていなかった

 

「しかし玉兎達ではアレは無理でしょうね……私達が仕留めるわよ」

 

「わかりましたお姉様!」

 

二人が向かおうとした瞬間だった

 

「フン……小賢しい」

 

竜が言葉を発したのだ

 

「知恵とは古きより賢者が考えし力への抵抗の術……だが……」

 

竜がその両手に力を込めると漆黒の炎の様なエネルギーを纏い、結界へ突き入れた

 

 

ガガガガガガガガガ……!!

 

 

異様にして異常な竜の力が結界と弾き合い削る様な轟音をあげる

 

「ッ……無駄な事を!いくらドラゴンと言えど破れるものではッ!!」

 

「……いえ!お姉様!アレを!!?」

 

二人の目の前で竜の両手が結界に亀裂を入れながら食い込んだのだ

 

 

「所詮は弱き者の知恵に過ぎん……真の力の前では脆く!拙く!弱いのだ!!」

 

 

「なんて事……強引に力で抉じ開けようとしている……まるで知恵の輪を無理矢理引き千切るみたいに……」

 

 

この結界を作るまでの苦労を嘲笑う様な光景に豊姫は狼狽え止まってしまう

 

当然だ、この結界は月の頭脳と呼ばれる永琳の叡智が籠った至高の防壁結界、都の生命線であるこれを破られる事は都の死に直結する、だから生半可な事では傷すらつかない強度を誇っているのだ

 

それを正攻法ではなくあろうことか愚かとも言える力による解き方で突破しようとし、それを成そうとしていたのだから

 

「今のうちにッ!!」

 

止まってしまった豊姫の代わりに攻撃を加えようと依姫が切りかかる

 

 

「グオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」

 

 

竜が咆哮を上げた瞬間

 

 

パァン……

 

 

ガラスが弾けた様に結界は壊された

 

「そん……な……」

 

信じられない顔で立ち竦む依姫、こんな事になるなんて思いもよらなかった驚愕からくる思考の停止が彼女の足を止めた

 

その間に無情にも魔物は都へ大挙して降りていく

 

「依姫!!」

 

姉の声で我に帰った依姫に豊姫はすかさず告げる

 

「玉兎達に通達しなさい!徹底抗戦よ!こうなってしまった以上被害は承知で敵の殲滅を優先するわ!急ぎなさい!!」

 

伝えた直後、豊姫は降りてくる魔物の大軍に向かって扇子を勢いよく振った

 

 

サァァァ……

 

 

扇子が放った風が向かう方向に居た魔物達を一瞬にして粒子に変え宙に霧散させる

 

森を一瞬で素粒子レベルで浄化する風を起こす扇子

 

伝説の武器にも匹敵する豊姫の持つ月の都最大最高の武器、その名の通り広範囲に有る穢れを一瞬にして浄化する風を穢れそのものである命の塊の魔物に向けて放ち浄化させたのだ

 

「私がこれで侵攻を押さえるわ!貴方は既に都に降りた魔物を玉兎達と協力して殲滅を!そしてあのドラゴンを討ちなさい!」

 

「わかりましたお姉様!」

 

依姫が都に降りるのを確認すると豊姫は扇子を構え魔物達に向かって風を放つ

 

「やらせは……しない……!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「むぅ……厄介な物を持っていますな」

 

大魔宮ではガルヴァスが唸っていた

 

「うむ、言うならば全種族に通用するニフラムを起こせる扇子、と言ったところか……戦力は想定内であったが神器クラスの物を持つとは想定外であった、アレは軍団長クラスでなければ無駄な戦死者を作るのみ」

 

ソルも意外といった表情だったがそれだけで焦りも何も無い

 

「兵を一度下がらせます」

 

「そうしろ、一緒に奴も帰還させておけ、奴が居ればそれだけで勝負が決まってしまい面白くない、それに奴はお前達とは違うからな」

 

「わかりました、ですがよろしいのですか?早めに落とすのでは?」

 

「派手にやって反応を見たが純狐の言った通り月は簡単に幻想郷に助けを求める気は無いらしい、キルギルが純狐から聞いた話によれば幻想郷には八雲紫と言う空間使いが居るらしいがそれらしいのがいまだに来ない時点で時間が出来たとわかった」

 

「では少々……と言うわけですな?」

 

「そうだ、純狐の頼みを存分に応えてやるとしよう……」

 

ソルはスッと立ち上がる

 

「余興がてら余があの二人の相手をしてくる、供は要らぬ……お前は頃合いを見て全軍を率いて月の都を蹂躙せよ」

 

謁見の間から出ようと緩やかに足を伸ばす

 

「なりませぬソル様!何があるかわからない場所へ供を付けずに向かうなど……」

 

そう言いかけたガルヴァスの言葉は次の瞬間に止まる

 

「心して答えよ……ガルヴァス」

 

ズズズ……

 

溢れ出る魔力

 

「余が……万が一にも前座に後れを取る恐れがあると申すか?」

 

ズオオオオオオッ!!

 

天地魔統の大魔力

 

その凄まじさたるや大魔宮を揺らし老朽化した場所に亀裂を入れてしまう程に高く、濃く、強く荒れ狂う至上の力

 

「ゥ……!?」

 

それはガルヴァスの今日まで培った力と泰然なる誇りを気圧し、一歩下がらせる程の絶対的とも言える圧威を発していた

 

「滅相もございません……ソル様は唯一無二の存在!間違いございません!!」

 

ガルヴァスは言う

 

「されど貴方様は我等の神……万が一が無くとも御一人で行かせるわけにはまいりません!」

 

常人どころか魔族すら廃人になるような圧を受けてそれでも言う

 

「それでも行かれると言うならこの首を刎ねてから行かれたし!!」

 

強き意思を持って

 

「……」

 

それがソルの魔力を静めた

 

「流石だガルヴァス、それでこそ余が魔軍司令に選んだ男……我儘を言って悪かった」

 

臆す事なき気概に微笑んだソルは身を翻しながら告げた

 

「ゆくぞガルヴァス、供をせよ」

 

「はっ!!」

 

ソルとガルヴァスは間を出ていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「敵が退いて一旦は落ち着いたわね……」

 

豊姫は都を見下ろす

 

(依姫と玉兎が迅速に動いたお陰で大した被害は無く済んでるわね……敵が退いたのはおそらくこの扇子があるから……なら私達が出来る次の手は……)

 

思案しているところへ都から依姫がやってくる

 

「お姉様!御無事ですね!」

 

「貴方もね……良いところへ来てくれたわ依姫、今から私達二人で敵へ攻め入るわよ」

 

「勝算が?」

 

「有る……とは言えないわね、さっきのドラゴンより強い者が居ないとも限らないし……でも攻めるなら今しか無い、この扇子の存在から敵は退いたのでしょう、手を打たれる前に先にこちらから行くのよ」

 

「わかりました、玉兎達はどうしますか?」

 

「都で待機させておきなさい、生半可な者を連れていっても足手纏いになるだけ……では行くわよ!」

 

「はいッ!!」

 

月の都で最高の力を持つ姉妹が大魔宮へ突撃を仕掛けようと決心し構える

 

 

「それには及ばぬよ」

 

 

異空間の扉が開きそこから二人の魔族が姿を現した

 

「貴様は……!?」

 

剣を構えた依姫の問いに従者を控えさせる魔族は答えた

 

「余はソル、軍を率いる者と言えばわかるかな?」

 

「なっ……!?」

 

さすがの依姫も驚きを隠せなかった、まだ余力を十分に残してあるだろう敵の様子なのにいきなり大将が目前に姿を見せたのだから

 

もちろん敵の策略で嘘かもしれない、だがソルと名乗る男から感じる物が嘘とは思わせなかった

 

「……これは好都合」

 

次に声を出したのは豊姫

 

「貴方を倒せば勝ったも同然……そうでなくて?」

 

扇子を持つ手に力を入れ構える

 

「さてな、死んだ後の事など知るよしもない、だがまぁ……」

 

ソルが指を軽く振るとそれを合図に大魔宮から再び魔物が飛び出して来た

 

先程退いた者達に一際異彩を放つ数名の者達を加え月の都に向かっていく

 

「やってみるかね?」

 

雨の様に降りしきる魔物の大軍を背景にソルは問う

 

「くっ……」

 

都の危機を前に大将を討つか守りに向かうかで依姫が葛藤に苦しむ

 

「どうした?来ぬのか?グズグズしていると機を失ってしまうぞ?」

 

それすら楽しむ様にソルは嫌らしく笑う

 

「依姫!」

 

豊姫の一喝が響く

 

「私は言った筈よ、被害は承知すると……責任は全て私が持つ、今はこの大罪人を倒す事に集中なさい!」

 

それが依姫の迷いを晴らした

 

「わかりましたお姉様……覚悟!!」

 

二人はソルだけを見据える

 

「では相手を仕まつろう」

 

いつでも来いと二人の気迫に対して不適な笑みでソルは構えもせず言葉のみを送った

 

「浄化せよ!!」

 

豊姫が扇子を振るい粒子に変える風を嵐の如く放った

 

ゴウッ!!

 

穢れの存在を許さぬ浄化の嵐

 

昔とは言えあの八雲紫すらも恐れ、頭を垂れた恐るべき月の兵器

 

その慈悲無き浄風がソルを襲う

 

「……ふむ」

 

その嵐の中から声が響く

 

「こんなものか……」

 

バシュ……

 

嵐は打ち消された

 

「そんな……嘘……」

 

「浄化が……効かないなんて……」

 

二人にはそれが信じられない事だった

 

効かなかった、今までこんな事は一度も無かった、誰だろうと何だろうと穢れならば浄化させる力を持った武器が効かない

 

ある種の必殺であった武器が全く意味をなさないのはこの上無く受け入れ難い事実であった

 

「その様子では今まで雑魚にしか使ってこなかったと見える」

 

その反応を面白そうに見ながらソルは言う

 

「知っておけ、そこまで強力な能力を持つ道具とは上限が決まっているのだ、あるレベルを越えた者には効かぬという事だ、神器クラスと言えどその上限が高いというだけで無制限では無い……相手が悪かった、それだけの事よ」

 

あまりの事に戦意すら下がりかけている二人に見る様に指を向ける

 

「よいのかな?そのまま呆然としていて?」

 

二人が見たのは既に降り立った魔物達が都を荒らす狂乱の様

 

今は防衛隊が頑張っているがどれだけ持つか……

 

「ッ……貴様ァァ!!」

 

それに激昂した依姫が剣を両手で持ち正面で祈る様に構える

 

 

「祇園様の力!!」

 

 

剣を返し宙を地と見立て突き刺すとソルの回りを無数の刃が突き出て取り囲む

 

「ほぉ……その身に神を降ろす事が出来るか」

 

依姫の持つ神霊の依代になれる能力、それを使い神の力をソルへと向けたのだ

 

「今すぐ魔物共を止めろ!!さもなくば体がバラバラに泣き別れる事になるぞ!!」

 

持つ剣を突き立て依姫は怒鳴る

 

 

 

 

「貴方も動かないでちょうだい……消えたくなければね」

 

呼応した豊姫がガルヴァスを制する

 

「随分と舐められたものだ、オレならば消せると思ったか……」

 

侮辱されているにも関わらずガルヴァスは動じず動こうともしない

 

「ソル様が遊ばれると仰ったのならオレは見ているのみ、最初から動くつもりなど無い」

 

「……そちらこそ随分ね、見ての通りあの子は神をその身に宿す事が出来る、如何に強い魔族と言えど八百万の神々を相手に勝てるものか」

 

自信有り気に豊姫は言う

 

依姫は月の都において最高の力を持つ者なのだ、武器という点から見れば豊姫の持つ扇子が最高だが人材という点では依姫が誰の追随も許さない月の都最高の戦力だった

 

神々の力を操る以上、ソルは神々を相手にするに等しい事態に陥っていたのだ

 

「フッ……フフッ……」

 

ガルヴァスは不適に笑う

 

「……何が可笑しいのかしら?」

 

睨む豊姫にガルヴァスは答えた

 

「可笑しいに決まっている、神を宿せる?八百万の神々が相手?貴様等が余りに不憫で笑えてしまうだけだ」

 

一切の疑い無く言葉を続ける

 

「ソル様が相手をする以上、貴様等程度に万が一も無い」

 

「ッ……負け惜しみを!?」

 

「ならば見るがいい……我が主は既に神すら超越しているという事を!!」

 

「ッッ……依姫!?」

 

淀む事無く言い切られた事が豊姫を堪らなく不安にさせ視線を依姫とソルに向けた

 

 

 

パァン!

 

ソルを囲む刃が全て爆ぜた

 

「なっ……!!?」

 

驚愕に染まる依姫の前でソルは鼻を鳴らす

 

「終わりかな?」

 

「くっ……舐めるなぁ!!」

 

すかさず次の神を呼び攻撃をする

 

「ふむ」

 

それも容易く防がれ次の神へ

 

「これは中々……」

 

次の神、また次の神へ

 

「多芸だなそなた」

 

次の神、次の神、次の神……

 

 

 

 

 

 

 

「ハァー……ハァ……ハ……ァ……」

 

時間にして数分

 

「そろそろ良いのではないか?」

 

既に優劣の差は明らかだった

 

依姫が神を降ろすとソルが瞬時に無力化する

 

次の神を降ろした先から無力化され続けた絶望のレースの果てに僅か数分で先に依姫の精神が限界を迎えたのだった

 

「準備運動はこれぐらいでよかろう、そろそろ本気でやってもらいたいものだ」

 

ソルは言う

 

「それとも本気でやってこのザマだったかな?ならば失礼な事を言って悪かった、謝ろう」

 

わかっていて言う

 

「く……そぉ……」

 

向けられる怒りすら楽しみながら

 

 

 

 

 

「理解したか小娘?神を越えているソル様にとって八百万の神など烏合の集に過ぎんのだ」

 

「う……うぅ……」

 

余りにも圧倒的過ぎた結果に豊姫も声を失っていた

 

「さて……いい加減オレも小娘に睨まれている状況に我慢出来なかった所だ」

 

「……はっ!?」

 

豊姫が気付き扇子を振るうより速くガルヴァスの放ったイオナズンが豊姫を爆煙に包む

 

「うあっ……ッ……!!?」

 

爆発から豊姫が依姫の近くに飛び出る

 

「お姉様ッ……オノレェェェェェ!!」

 

それが引き金か依姫が限界を顧みず最後の神を降ろそうと能力を高める

 

「~~~~ッッ!!」

 

使い過ぎた精神を更に限界を越えて使用した為か身体中から血を吹き出すも止める気は無い

 

「む……?ほぉ、これは……」

 

依姫の出す神にソルは今日一番の関心を見せた

 

 

「愛宕様の火!!」

 

 

依姫の右腕が炎に包まれる

 

「火の神……」

 

最後に依姫が降ろしたのは火を司る神、別名「火之迦倶槌神」

 

「これが……貴様を黄泉比良坂へ送る神の炎ッ!!」

 

これぞ神すら焼き殺す神殺の火

 

「これで終わらせる……!!」

 

その劫火をソルへと構える

 

「ふっふっふ……」

 

だがソルは笑っていた、神々からしても恐れる程の火を前にしてもソルの余裕は崩れなかった

 

「よもや余に対して火とは……ならば余も相応の技で相手をしてやろう……光栄に思うがいい」

 

手を出し魔力を集中させる

 

「これが……余のメラゾーマだ」

 

集中していく魔力が火を発生させる

 

「その想像を絶する威力と……優雅なる姿から……太古より魔界ではこう呼ぶ……」

 

大魔力が集まった手は激しく炎上し荒ぶる

 

 

「これで最後だァァァァッ!!」

 

 

先に撃ったのは依姫、炎を巨大な火球に変えてソルに放つ

 

 

「……カイザーフェニックス」

 

 

迎え撃つ様に撃ったのはソル、火の魔力が自然と形を成した不死鳥を象りし魔炎が迫る火球を前に翼を広げ、静止した

 

 

ボウッ……

 

 

火球は不死鳥の炎の前に燃え尽きた

 

「!!?」

 

依姫はその結果に激しく狼狽する

 

(そんな……そんな!?有り得ない……!!?打ち消したならまだわかる!でも今のは……燃やした!!?)

 

そう、火球を威力で消したのではなく燃やし尽くしたのだ、それが依姫を狼狽させた原因

 

(あの炎鳥は神の火すら容易く焼く炎だというの……!!?)

 

格の違いを一番わかりやすく見せられてしまった事で完全に痛感してしまったのだ

 

「もう少しマシかと思ったが……期待外れだったか」

 

何をどう足掻いても敵わない存在を相手にしてしまっていた事を……

 

「そんな……そんなバカな……」

 

「こんな事が……」

 

二人の眼下には惨劇が広がっている

 

 

 

 

「そーれ!キャハハハハハ!!」

 

「あまりやり過ぎないでくださいよ?ここはまだ使うのですからね」

 

「我こそはと思うものは来ーい!魔界の勇者と機甲師団が相手をしてやるぜー!」

 

「向かってくる者だけにしておきなさい、わかってますね?」

 

「戸愚呂とテリーはどうした?」

 

「気が乗らんから参加せんらしい、まぁ兄が再生中で参加しないのは幸いだったな、あいつは関係無く殺し過ぎる」

 

 

 

 

もう都が落ちるのは目に見えていた

 

「……貴方は逃げなさい」

 

そして依姫は地上に逃がされる事になる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フフフッ……ウフフッ……」

 

 

 

 

 

その敗走の際には響いていた……

 

 

 

 

 

離れた場所で都を見下ろす2つの影

 

「アハッ……アハハ……」

 

1つは無名の神

 

「純狐……」

 

もう1つは地獄の神

 

「アハハハハハハハハハハ!!」

 

月の都全てに轟くと思わせる狂喜の笑い

 

「嫦娥よ!見てるか!!」

 

純粋に、それでいて黒く歪に昇華された闇はより強く恨みを言霊に乗せて放つ

 

「貴様の都を地獄に変えてやったぞ!!ハハッ……見てるか嫦娥よ!!見ているよなぁ嫦娥!!ハハハハハハハハハハ!!」

 

栄華を誇った月の都が落ちる時のそれはまさに

 

 

「ウフフ……アハハ……アーッハッハッハッハ!!」

 

 

いつまでも……

 

 

 

「アハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」

 

 

 

いつまでも響き渡る落月の狂唱(バックコーラス)……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これが昨夜、月の都で起きた出来事……です……」

 

話を終えた依姫は震えていた

 

「くっ……」

 

話をした事で無念と悔しさを改めて実感し涙を流していた

 

「……それで?」

 

しかしレミリアは気にもせず問う、そんな事が起き、そうなってしまった現状を改めて思い知った上でどうしたいのかを聞きたいのだ

 

「……」

 

依姫は意を決し椅子から立ち上がる

 

「こんな事を……頼める関係に無いのは百も承知しています……」

 

その頭を下げ、依姫は言った

 

「どうか月の都を救ってはくれないでしょうか……お願いします」

 

恥や拘りを捨て願った、己の大好きな場所、愛する姉を助ける為に……

 

「ええ良いわ、その言葉が聞きたかった」

 

レミリアはすぐに指示を飛ばす

 

「咲夜、ウォルターと一緒にこの事を幻想郷に今すぐ知らせなさい、バーン、紫に連絡を取って月への偵察を出してみる様に伝えて、パチェ、前に使ったロケットまだ有るでしょ?もしもの時の為に改造して準備しといて」

 

依姫が顔を上げるとレミリアは笑っていた

 

「心配しなくても良いわ、月の都は必ず取り戻すから」

 

「あ……その……」

 

あまりにも早い対応が依姫を混乱させていた

 

「ど……どうして……?」

 

「ん?貴方が助けを求めたから応じた、それだけよ」

 

レミリアは続ける

 

「まっソルが私達にとっても敵っていうのもあるのだけどね……離れていても同じ幻想郷に住む者同士でしょう?助けるわよ」

 

「……」

 

「皆もそうでしょう?」

 

問われた皆は微笑みながら頷く

 

幻想郷はずっと前から月に対して敵対心など無かった、むしろ離れているが同じ仲間と思っているくらいに

 

離れているし親交も無かったから紫は不可侵の対立国家の様だと表現したがそれはあくまで月側の意思を尊重しての言葉

 

月がどう思っているかは知らないが1つになり、絆で繋がる幻想郷はそう思っていたのだ

 

(私達は……穢れを忌む余り知ろうとしなかったのかもしれませんね……)

 

依姫は見る、目の前に並ぶ者達を

 

(穢れすら霞ませる魂の光……これが……)

 

幻想郷に存在する6人の頂点を

 

「安心なさい、貴方は正しい選択をしたわ、勝利の栄光を与えてあげる」

 

最高の者達を……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大魔宮・会議室

 

「どうだ?」

 

参じたキルギルにガルヴァスが問う

 

「損壊は見た目程ではないのですぐに改修は出来るでしょう、ですが捕虜が想定より多くそちらの収拾に時間が掛かっている状況です」

 

「捕虜はどうしている?」

 

「司令殿の言われた通り都より離れた場所に収容所を急ぎで建設しております、もう完成するかと」

 

「捕虜の扱いは手厚くな、自殺者が出んように目を光らせておけ」

 

「……そこまでする必要は無いと思いますが」

 

「ここを前線基地にするとしたがあくまで幻想郷との戦いが終わるまでだ、終わった後は返還する、それまで我慢してもらうだけなのだから当然の配慮だ」

 

「慈悲深いですねぇ司令殿は」

 

「本来なら月の都は候補に無かった場所、純狐の頼みから攻めたイレギュラー……つまりとばっちりだ、だから我等の理念によって倒したのは向かってきた者に限定し必要以上の破壊や殺戮を禁じ、こうするのだ」

 

納得したキルギルは椅子に座り出されていた飲み物に手をつける

 

「……純狐と言えば今、血眼になって誰かを探していますね」

 

「おそらくは恨みの根源だろう……面倒になる前に奴には主だった者は殺していると伝えて呼び戻しておけ、収容所の場所は絶対に教えるな」

 

「……良いのですか?あんな神を仲間に引き入れて……いつ謀反を起こすか……」

 

「お前の気持ちはわかるがな、だが引き入れたのはソル様自身だ……そのソル様が言っていたが昔に恨みに狂う軍団長が居たそうだ、確か魔剣戦士……だったか」

 

「ほぅ、それで?」

 

「その魔剣戦士は恨みを絆されソル様の敵に回った、ソル様が言うには恨みの中に光の可能性があったかららしい」

 

「……話が見えませんね、それが純狐の信用と何の関係が?」

 

「恨みの中に可能性が無いと言う事だ、純粋になっている純狐の恨みはもはや可能性すら消し去った恨みの闇、裏切るなど有り得ないとソル様は言っていた」

 

「なるほど……わかりました、ソル様がそう言うのであれば儂も信用しましょう」

 

「では頼んだぞ」

 

キルギルが会議室を出ようとした時、ガルヴァスはポツリと呟いた

 

「お前も勝手はするなよ……」

 

「……わかっていますよ司令殿」

 

 

 

 

 

月と地上

 

遠く離れた場所で進める互いに最後への準備の時

 

月を破った太陽神が率いる魔王軍か、それとも頂点と大魔王を擁する幻想郷か

 

終わりは死によるものでしか着かないかもしれない、それでも互いに勝つ為に最善を尽くす

 

 

何にせよ

 

 

互いが顔を見合わせるまでもう少し……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




綿月姉妹は犠牲になったのだ……ソルの強さを表現する為の……かませと言う名の犠牲にな……

はい、ソル無双でした。
チートと名高い扇子のドラクエ的解釈とよっちゃんの悲しいまでの戦いでした。
……八百万の神を降ろそうと神を越えているバーン様の設定からよっちゃんの勝ち目なんて最初から無かったのだ……

シリアス全開……と思いきやちょくちょくネタが入ってます、気付いてくれたら嬉しいです。

次回も頑張ります!
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