東方大魔王伝 -mythology of the sun-   作:黒太陽

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第28話 王華絢爛

 

 

王という位が有る

 

 

世に多大な影響を与える権力の頂

 

 

その世界、または領土で一番強い者が持つ力

 

 

それは時に法であったり軍であったり様々、その気になれば世界を救った勇者すらもその一声で破滅へと追いやれる程の力が有る

 

 

有り体に言えばその世の支配者と言えるが同時に王が悪ければ民が死に国は滅びる

 

 

だから王を決める際は慎重に行われる、民の総意であったり血筋であったり……

 

 

そうして王は決まり繁栄していくのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……人間に限っては、だが

 

 

そう、それは人間の王の事であり魔族にとっての王は意味が異なる

 

 

血や総意など関係無い、力で捩じ伏せ従わせた一番強い者が王であり全てを支配出来るのだ

 

 

魔王、冥竜王……弱肉強食の魔族にとっての王とは力の頂なのだ、強ければ得られ、弱ければ失う

 

 

人間など比にならない強さをもった魔族の中で最も優れた力の頂点

 

 

そして

 

 

そんな常軌を逸した王すら越え、畏敬の念を持って従わせる者も中には存在するのだ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドウッ!!

 

 

 

強力なブレスがぶつかり合う

 

 

「竜王ーーーッ!」

 

「ほう……」

 

 

余波が巻き上げた粉塵から2体の竜が姿を現す

 

「随分とやるようになったなヴェルザー、羽虫も殺せぬ様なあの弱竜がよくぞここまで力を着けた……竜を統べる儂も鼻が高い、褒めてつかわそう」

 

「オノレ……!嬲るか竜王!?いつまでも頭に乗るなよ!!」

 

余裕の有る面の竜王と激昂するヴェルザー

 

「受けるがいい!」

 

ヴェルザーの周囲に雷が発生する

 

「冥竜王のいかずち!!」

 

荒れ狂う雷を竜王へ放つ

 

「これはボリクスの技……奴を倒してモノにしたか」

 

迫る雷に竜王は波動を放ち難無く打ち払う

 

「そんな児戯では……なぁ?」

 

全ての竜の覇者たる竜王は楽し気に笑っていた

 

「ヌゥゥゥ……オオオッ!」

 

ヴェルザーの出した闘気流が竜王を襲う

 

「フン……」

 

余裕気に鼻を鳴らし魔力で身体を覆い闘気流を受ける、並みの魔物どころか軍団長ですら無事には済まない威力の闘気の嵐だったが竜王は難無く佇んでいた

 

「この程度は当然だろうな……ムゥン!」

 

ヴェルザーは更に闘気の力を上げる

 

「……ヌゥ」

 

竜王の表情が初めて曇り、体を小刻みに震わせている

 

 

バチィッ!

 

 

力が弾け竜王が後退った

 

(……これが限界か、脆いものだ……いや、儂の力を考えれば上出来と言えるか)

 

これも仕方ない事だと納得している竜王に焦りは無い

 

「どうした!その程度か竜王!」

 

冥竜王たる力を遺憾無く発揮しながらヴェルザーは攻撃をする

 

「……!?」

 

尾の一撃を防いだ竜王の目に巨大な顎が開き、肩に食いついた

 

「このまま食い千切ってやろう……!」

 

力を入れ刃のごとき歯を食い込ませる

 

「……」

 

竜王は動じず口を大きく開きヴェルザーへ向ける

 

 

「竜王の煌炎」

 

 

ボウッ!

 

 

凄まじき灼熱の炎がヴェルザーを包む

 

「これしきでオレは止められんぞ!」

 

その炎は並み以上の者はおろか炎に耐性が有る者ですら一瞬で消し炭にする必焼の王炎だったがそこは冥竜王、強靭な竜鱗で耐えたヴェルザーは構わず更に歯を食い込ませる

 

「ほう……そうか?」

 

ニヤリと笑った竜王が炎の勢いを一気に強めた

 

 

ゴオオオオオオッ!!

 

 

およそ一般的な竜が出す炎とはイメージが異なる勢い、まるでレーザーを撃っているかの様な炎勢は浴びせているが正しい表現に見える程に強烈

 

「グゥゥ……ガアアアアッ!!?」

 

零距離からのそれは流石のヴェルザーと言えど耐えきれるものではなかった、堪らず口を離し炎から逃れる

 

「これが竜の王が持つ炎……か……?」

 

広がった炎が燃え盛り、数里を炎獄に変えた相手の前で軽い火傷を負ったヴェルザーが睨む

 

「……わかってはいるが……情けないものだ」

 

竜王は呟くと回復呪文を掛け傷付いた肩を癒す

 

「……」

 

それをヴェルザーは阻止もせず見ていた

 

(あれは……ベホイミ、だと?見張るダメージは与えれていない筈だ……何故あの程度をすぐに回復させる……?)

 

竜王に違和感を感じたのだ

 

(それに……そうだ、奴にしてはあの炎は温い……仮にも竜の王が出す炎がこんなものではない筈だ、オレですらまともに受ければ大火傷を負う熱が有るのは間違いない筈……)

 

「……オオオッ!」

 

感じた疑問を確かめる様に再び攻撃を仕掛ける

 

「3割と言ったところか……精々楽しむとしよう」

 

竜の王は愉快気に迎え撃つ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全てを滅ぼす者……ゾーマ……!?」

 

グレイツェルは震えていた

 

「大魔王と……呼ばれていたな」

 

現れた王を越えし王、闇の大魔王・ゾーマに

 

「見に来ただけだったが、そうだな……折角だ、氷の申し子を倒せしそなたの力を見ていくとしよう」

 

当のゾーマはほんの気紛れと言わんばかりに見ている、グレイツェルなど炉端の小石を見るのと同じ目で

 

 

スッ……

 

 

向けられた指から冷気が迸る

 

「!!?」

 

気付いたグレイツェルは慌てて冷気を放ち相殺する

 

「……流石大魔王というところかしら、冷気を極めた私のヒャダインと同レベルのヒャダインを簡単に撃つなんて……」

 

寒過ぎて汗は出ないがグレイツェルに確かな動揺と焦りが見える

 

「……今のはヒャダインでは無い」

 

そんなグレイツェルへゾーマは告げる

 

「ヒャドだ」

 

初級呪文なのだと

 

「……ヒャド?」

 

「そうだ、同じ呪文といえども使う者の魔法力の絶対量によってその威力は大きく異なる事くらい知っていよう」

 

「……ッ!?」

 

事も無げに語るゾーマにグレイツェルの顔は歪む

 

(知ってるわよ!!)

 

グレイツェル程の魔法使いがわからない訳がない、ゾーマが放ったのはヒャドであったのもわかっている

 

だがグレイツェルが内心で叫ぶ程にゾーマの絶大な威圧感が黙らせるのだ

 

(それよりも今覗けた秘めた魔力……底知れない深さ……ソル様に勝るとも劣らない、それこそまさに匹敵……)

 

そして垣間見た大魔力はグレイツェルをいつもの間合いから更に下がらせるに充分過ぎた

 

「くぅ……!」

 

グレイツェルはメラゾーマを唱えた

 

「……」

 

迫る大火球を前にしてもゾーマに焦りは無い、返した一指を軽く伸ばすと火球は止まった

 

「……」

 

指を弾く様に戻すとメラゾーマの火球は天高く飛んでいき一瞬で見えなくなってしまう

 

「なっ……!?」

 

驚愕を見せるグレイツェル

 

(わ、私の制御の上から無理矢理……そんな真似を息をするみたいに当然の様に……)

 

杖を突き出しメラゾーマを連射する

 

「……」

 

ゾーマはまた指を軽く伸ばし、横に振る

 

 

ビシッ

 

 

メラゾーマの火球は全て凍りつき地に落ちた

 

(ッ!?だけど予想はしていた!今のは……囮!!)

 

グレイツェルは既に魔術の準備を完了させていた

 

「パンパカパーン!」

 

チルノに掛けたパンになる魔術、それをすかさず放った

 

「……」

 

ゾーマに不可視の魔力が侵入する

 

「油断したわね!これで終わりよ!それっ!パンになぁれ!」

 

高らかに叫びグレイツェルは勝利を確信する

 

「……これで氷の申し子は負けたのか」

 

ゾーマに変化は無かった

 

「嘘……な、何故……パンになる筈なのに……」

 

「愚か者が……」

 

信じられないと狼狽えるグレイツェルにゾーマは語る

 

「こんな子ども騙しが通用すると本気で思っていたのか?」

 

(こ、これは……魔力で抵抗してるわけじゃない、ただ魔術自体が全く利いていない……逆に飲み込まれた……!?)

 

状況を知ったグレイツェルの頬をついに汗が流れ、凍りつく

 

「これが……大……魔王……!!?」

 

「終わりか?これではバラモスにも劣る……興冷めも過ぎると言うものだ」

 

「……ギラグレイド!!」

 

ゾーマの言葉を掻き消す様にグレイツェルは極大閃熱呪文を放つ

 

「健気なものだ……」

 

かざした手から冷気が放出されギラグレイドを相殺する

 

「……ムッ……」

 

相殺の最中、ゾーマの表情が一瞬だけ固まった

 

 

バシュッ!

 

 

「ッッ!!?」

 

相殺され歯噛みながら狼狽するグレイツェル

 

「……」

 

ゾーマは手を見ていた

 

完全には相殺しきれず突き抜けた僅かな熱線を受け焼けた手を

 

「くっ……うぅ……」

 

恐ろしい魔力だとグレイツェルは戦慄している

 

「そう怯えずともよい」

 

そこへ視線を戻したゾーマが言った

 

「今のが我がマヒャド……と言いたいところだが、今のヒャダインが限界だ」

 

「……どういう事かしら?」

 

気になる言葉にグレイツェルは情報を引き出そうと問う

 

「実に数百年振りに現界したが枷有りなのだ、残念ながら本来の力は出せん」

 

「枷……?」

 

闇の大魔王は悠長に己を縛る枷について語り始める……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴様……!」

 

攻防の最中、ヴェルザーが言った

 

「どうした?」

 

「どうしたではないぞ!オレをナメているのか!?」

 

悠長な言葉を吐く竜王にヴェルザーが怒鳴る

 

「真の力を出せ!貴様の力はこの程度なわけがあるまい!」

 

体の衝突に竜王が打ち負け後退する

 

「そうしたいのだが生憎と出せる力に限りがあってな」

 

「限り……だと?」

 

訳がわからずヴェルザーは問い質す

 

「この身体は真の身体ではない」

 

「何!?どういう事だ!」

 

「儂等は本来まだ復活の最中でな、肉体がまだ無い言わば魂の状態なのだ、そこへ協力を願ったバーンが現界させる為に魂の器であるこの身体を作ったのだ」

 

「仮の……肉体か」

 

真実を知ったヴェルザーはすぐに納得していた

 

(ソルも精神と魔力を別の肉体に入れている……平行のバーンなら可能な事か)

 

「……貴様が真の力を出せぬ理由がそれか」

 

「良く出来てはいるが本来の身体ではないからな、全力に耐えきれんし脆い……6、精々7割が限界だろう」

 

(それでか……)

 

ヴェルザーは全て理解した、竜王が思っていたより強くなく小さな傷すらすぐに治す理由の全てを理解したのだ

 

「そういう訳でな、貴様が儂を越える事は今は不可能だ……最も今の儂でも勝つ可能性は有るがな、3割程……な」

 

「……」

 

黙り考えるヴェルザー

 

越えると言う話なら全力を出せない竜王を倒したところで意味は無い、全力の状態でなければならないのだから

 

「どうする?」

 

自身の状態を良く知っているから竜王も態度に余裕が溢れているのだ

 

こんな身体では負けるのは当然、バーンに協力するとは言ったが死力を賭ける必要は無いと思っているから

 

「……決まっている」

 

ヴェルザーは答えた

 

「今のオレは冥竜王ではなく魔王軍の軍団長!超竜の長だ!如何なる理由だろうが矛を納める道理は皆無!ソルの意思の元にただ眼前の敵を蹴散らすのみ!」

 

これが竜王とヴェルザーだけの話ならば勝負を預けても良かった

 

しかし今は違う

 

どんな事情が有ろうが関係が無いのだ、魔王軍の一人なのだから

 

「消えていろ竜王……オレはバーンの所へ向かう」

 

「フフフ……良い目だヴェルザー、仮にも王を名乗る貴様が我を通さず服従しているにしては良い目をしている」

 

最早眼中に無くなり進もうとするヴェルザーに竜王は立ち塞がる

 

「通してやっても良かったが……気が変わった、貴様を葬るとしよう」

 

逆にそれが竜王の興味を惹かせた、ヴェルザーを通さんと意思を向ける

 

「そんなに不様な死を望むなら……叶えてやろう!」

 

ヴェルザーが肩を怒らせ突進する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「仮の肉体……」

 

「そう……全てにおいて劣るこの肉体、魔力に耐えきれずそして脆い、闇の衣も纏えぬ脆弱な仮初めの器……それこそが枷、故にそなた程度が今だ息をしていられるのだ」

 

グレイツェルもゾーマから真実を聞いていた

 

「……ウフフッ!」

 

突然グレイツェルが笑いだす

 

「可笑しいだろうな、大魔王と呼ばれし我がこの姿が」

 

「ええ、可笑しいわ……貴方のマヌケ加減にもね!」

 

グレイツェルに焦りは無くなっていた、それどころか調子を取り戻し余裕すら見える

 

「バカみたいに話してくれてありがとう!お陰で貴方を消す目処が着いたわ!」

 

「ほう」

 

声高に宣言されるがゾーマの表情は変わらない

 

「力を使わせれば自滅する……こんな楽なものはないわねぇ!放っておいたらソル様に不利益を持たらすかもしれないしここで消してあげるわ!」

 

グレイツェルは呪文を乱射する

 

 

 

「……」

 

「……」

 

 

 

 

その時、二人の王の言葉は重なった

 

 

 

 

 

「「誰を相手にしていると思っている……」」

 

 

 

 

 

 

次の瞬間

 

竜王がヴェルザーを組伏せ背を踏みつけ、ゾーマの放った氷柱がグレイツェルの呪文を突き抜け頬を掠めた

 

 

「「!!?」」

 

 

驚愕したヴェルザーとグレイツェルは思い違いを理解する

 

(そうだ……いくら力を出せないとは言え相手は全ての竜の覇者、竜王……!簡単にいく筈がないのだ!?)

 

(そうだった……!ソル様に匹敵する大魔王が相手だと言うのに何を私は気の抜けた事を……!?)

 

力が抑えられていようが相手はあくまで格上、その名を世に知らしめた王達なのだ

 

下手をすれば殺られてしまう程の化物を相手にしていたのだと思い直すには充分過ぎる一撃を二人は受け拳を握り締める

 

 

「そう甘く見られては困るぞヴェルザーよ?」

 

「グゥゥ……グオオッ!」

 

足を押し退け竜王から距離を取るヴェルザー

 

「ならば……この冥竜王の名に懸けて全力を持って排除するのみ!」

 

「そうこなくてはな、よかろうヴェルザー……竜の王に挑める最大級の栄誉を噛み締めてかかってくるがいい」

 

 

2体の竜はまたぶつかる

 

 

「うぅ……」

 

グレイツェルは完全に気圧されていた

 

「我こそ全てを滅ぼす者、魔族に成り損なったそなた程度を滅するのに全力は要らぬ、今のままでも事足りる」

 

ヴェルザーとは違い実力の劣るグレイツェルではゾーマの相手は荷が重過ぎるのだ、力が抑えられていようとも……

 

「……いい顔だ」

 

そんなグレイツェルを見てゾーマは笑う

 

「まだ薄いが絶望が見える……フッフッフ……」

 

好ましくなってきた生贄に嗜虐的な笑みが出る

 

「……貴方なんてね」

 

蛇に睨まれた蛙の様だったグレイツェルの表情が突然変わった

 

「ソル様に比べたら全然大したことないわ……!」

 

それは魔王軍の軍団長たる意地か、はたまた別のものか

 

「御為に私が討つ!!」

 

何にせよ絶望を払いグレイツェルは戦う意思を見せた

 

「楽しみだ……なけなしの勇気を振り絞ったその顔が再び絶望で染まる時が……王直々に介錯されるという身に余る幸運を抱いて綺麗に逝け」

 

頂に名を列ねる大いなる魔の王

 

誰よりも不気味で、何よりも禍々しく、それでいて格位有る闇の王

 

「ッッ……!?」

 

同じ魔でありながらその構図は同族争いではなく、何か違う

 

「ハアアアアッ!!」

 

まるでグレイツェルが勇者のごとく難敵へ挑むかの様に見える

 

「死にゆく者ほど美しい……さぁ、我が腕の中で息絶えるがよい」

 

これは氷絶の大魔女(勇者)が起源たる大魔王へ挑む

 

勇者の挑戦と言えるのかもしれない……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ソルパレス

 

「……やはり奴等は王を冠せし者か、王竜に王魔、そして此処へ来た2体の魔と妖……成程、これが貴様の切り札かバーン」

 

神妙な顔で4人の王の映像を見るソル

 

(行動に作為を感じぬ、各々が好き勝手をしている様に見えるな……そうだとすればこれは命令ではなく頼みか、助けてくれと縋ったのだろうな……)

 

王座の腕置きを不機嫌を表す様に指で叩く

 

(そこまで堕ちたか……頼むなど……余ならばそんな真似は絶対にせん、力で従わせる……美徳すら捨てたか……恥晒しめが)

 

「……」

 

叩く指は止まった

 

(敗北とは信条すら変えてしまうのか……力こそが正義、それが絶対の信条ではなかったのか貴様も……)

 

もう一人の自分に返らない疑問を投げ掛ける……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「張り切ってるわねあの二人」

 

「そうだな……だがゾーマはともかく竜王は厳しいだろう」

 

復活の時を待つ王の魂が居る空間で二人の王は映像を見ながら話していた

 

「枷さえなければ造作も無い相手だと言うのに……醜態を晒す可能性も有るのに何故あやつ等は行ったのだ」

 

理解出来ぬと幻の大魔王・デスタムーアが言う

 

「全力を出せないから負けても言い訳が立つ、っていうのもあるんだろうけど……単純に暇だったんでしょうね」

 

天に座す大魔王・オルゴ・デミーラが答える

 

「フンッ……まぁ見る分には面白いか、我等の代理はどうなっている?」

 

「まだ移動中ね、もう少しよ……ん?あら……?」

 

オルゴ・デミーラが何かに気づく

 

「……アレをご覧なさい」

 

「……ほう、あのゾーマが目をかけるだけはある、見物だな」

 

面白い者を見つけ二人の王は禍々しく笑う

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァ……ハァ……」

 

さとりが息荒く戦っている

 

「!……んっ!!」

 

倒れていた妖怪を守る為に結界壁を作り魔物を押さえる

 

「大丈夫……!!?」

 

駆け寄ったさとりの言葉は止まった

 

(もう既に……)

 

骸だった事に気付き歯を食い縛る

 

「……」

 

周囲を見渡す

 

「ク……ソォ……」

 

「みんな……すまん……」

 

異次元からの凶刃で一人、また一人と倒れ、次々と作られていく仲間の骸

 

「これを地獄と言うのですよ……」

 

惨状に目を伏せてしまいそうになる

 

「……コノォ!」

 

だが戦う、そんな暇は無いのだ

 

戦わなければもっと酷い事になるのだから

 

「……?」

 

その最中さとりは不意に聞こえてきた言葉に反応し目を向ける

 

「なんだこのガキ……ボロボロじゃねぇか」

 

「こんな奴と戦えるか……オラ!どっか行ってろ」

 

フラフラと通り過ぎようとした妖精を魔物が止めていた

 

 

 

「……どきなさいよ」

 

「危ねぇからどっか行ってろって」

 

「おい、こんなのに構ってたら面倒だ、気絶させて向こうに放り込めよ」

 

「……そうだな、可哀想だけど仕方ねぇ……痛くしないからじっとしてろな」

 

魔物が妖精を気絶さそうと手刀を振り上げた

 

 

キンッ!

 

 

次の瞬間、魔物は凍りついた

 

「なっ!?こいつ……アッ!!?」

 

驚いたもう一人の魔物も次の瞬間には凍りついた

 

「邪魔すんじゃ……ないわよ……バカ……」

 

妖精はおぼつかない飛び方で遮る障害を冷凍しながらゆっくりと進んでいく

 

 

「今のは……倒された筈では……」

 

見覚えの有るさとりは追いかけようとするが仲間の妖怪に叫ばれる

 

「正面が崩壊寸前!至急増援を!!」

 

「くぅ……わかりました!私が行きます!それまで戦線を下げて持たせて!」

 

それどころではない戦況に流されさとりは渦中へ戻って行った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「グオオオオオッ!!」

 

「フハハハハハッ!!」

 

ヴェルザーと竜王が苛烈な勝負を繰り広げる

 

 

ドウッ!

 

 

「竜王ーーーッ!!」

 

押しているのはヴェルザー

 

「フッ……ハハハッ……!楽しいなぁヴェルザーよ!」

 

押されているのは竜王

 

「久方振りの闘争……楽しくてかなわん!」

 

「グゥ……オオオオオオッ!」

 

なのに異様な程に違って見えた、押しているヴェルザーが余裕無き全力に対して押されている全力を出せない竜王が余裕を持っている

 

「貴様にはわからんだろうなこの愉快さが!不死身の魂などという竜にあるまじき保険を持つ貴様にはなぁ!」

 

「グオオオオオッ!」

 

互いに放った炎が吹き荒ぶ

 

「だからこれが限界なのだ!弱った儂すら楽に倒せぬ貴様の!」

 

「ガッ……グオオッ!?」

 

竜王の尾がヴェルザーを打ちのめす

 

(強い……)

 

罵られていたヴェルザーだったが怒りは無かった

 

(ソルよ……お前はこんな化物達に勝ち続けたのか……)

 

その胸中はある感情で満ちていた

 

(勝ち続けた孤高の強者、強過ぎた故に孤独になったお前の周りには誰も居ない)

 

いつしか感じる様になったソルへの不器用な想い

 

(オレは……お前の……!!)

 

ヴェルザーの目に力が点り竜王を闘気で押し返す

 

「ヌゥ……!」

 

負けじと竜の魔力で対抗する竜王

 

「オレは……負けるわけにはいかんのだ!」

 

更に増した力が荒れ狂い二人の周囲を力場が覆う

 

「真竜ならぬ王竜の戦い、とでも表するべきか……よかろう、前哨と思い来るがいい!勝って見せよ!」

 

「グオオオオオオオオオオオッ!!」

 

2体の竜の力が最高潮に達する

 

「!!」

 

その時、竜王が気付いた

 

「……ヴェルザーよ、この勝負預ける」

 

「なんだと!?」

 

突然の宣言に怒りを滲ませヴェルザーが怒鳴る

 

「……先客が戻って来た」

 

「先客……?」

 

ヴェルザーが問うた瞬間

 

 

 

ズドオォォッ!!

 

 

 

力場を突き抜けた流星がヴェルザーを吹き飛ばした

 

「グッ……オッ……!!?」

 

 

スッ……

 

 

不意打ちに悶えるヴェルザーの目の前に花が投げられた

 

 

「その花の名はスノードロップ……花言葉は希望、慰め……」

 

 

投げた花の前に長い緑髪の女が傘を構えて立っている

 

「だけど……贈り物にする場合は特別な意味を持つ花」

 

「貴様は……!?」

 

驚くヴェルザーに女はとても女性が出すものではないだろう冷たく、そして満開の殺意を孕んだ猟奇的な笑みで告げた

 

 

「その意味は……「貴方の死を望みます」……」

 

 

受けた屈辱を返すべく彼女は戻った

 

 

「トカゲ如きには勿体ない葬花だ……!」

 

 

花の大妖怪・風見幽香が!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァ……ハァ……ウアッ!?」

 

「まだ死ぬには早いぞ、もう暫し楽しませよ」

 

「ウウウゥ……」

 

グレイツェルは嬲られていた

 

ダメージこそ与えられるが遥かに上回るゾーマからのダメージが死に近づけられていた

 

「コノ……!?」

 

「……まだ折れてはおらぬか、では続きだ」

 

「ウッ……キャアアッ!!?」

 

王か否かの格の差

 

それが実際にはそこまで力の差が無い二人の決定的な差になっていた

 

「ハァ……ハァ……」

 

息も絶え絶えのグレイツェル

 

(ソル様……)

 

その胸に秘めるは歪な感情

 

(私は……貴方様を……!)

 

 

ズズズッ……!

 

 

グレイツェルの魔力が最大に高まる

 

「これが……私の持てる魔氷の深淵!これで終わらせてみせる!極死の冷気に抱かれて果てろ!!」

 

魔力を冷気に変え己が撃てる最高呪文を構える

 

「……無駄足に終わった事だ、これで終わろうがどうでもよい事よな」

 

それでもゾーマの表情は変わらない

 

「感謝するのだな、我が力の深淵を垣間見て、死ぬがいい……」

 

4本の指しかないその手をかざす

 

 

「これが……我がマヒャドだ、その想像を絶する凍気と、無慈悲なる光景から……我が世ではこう呼ばれる……」

 

 

王位の大魔力からなる究極の冷呪

 

 

「……シュヴァルツヴェルト」

 

 

暗黒世界

 

死を持たらし世界を闇で染めあげる王位の闇冷が放たれる

 

 

 

 

「オマエーーーーー!!」

 

 

 

 

その刹那に割って入った者が居た

 

「なっ!?貴方……!?何故生きて……!?」

 

グレイツェルが驚愕する

 

「ほぉ……」

 

ゾーマは僅かに笑みを見せる

 

「あんただけは……絶対許さない!あんただけはッ!!」

 

ボロボロで息も絶え絶えの弱りきった体、闘志だけが体を突き動かす覚悟の妖精がそこに立つ

 

「そうでなくてはな……」

 

望んだ者へ闇の大魔王は満足な笑みを向ける

 

 

「氷の申し子……チルノよ」

 

 

可能性が連れた大魔女、幻想が呼んだ大魔王

 

奇しくも同じ氷魔に割って入るは幻想が誇る復活せし最強の氷精

 

 

 

「あたいが……倒す!!」

 

 

 

王華絢爛の戦場に幻想の氷花が咲く……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




サブタイ通り王華絢爛な話でした。

でも残念なお知らせ、ゾーマ様のマヒャドは見れる事はありません。


そして11月16日に投稿した理由……それは東方大魔王伝を投稿してから三年経ったからです!
我ながら長く書いたものです、無印は未だに感想をくれたりして書いて良かったと思うものです。
しかし、それだけに続編を書くべきではなかったのかな?と思ったりする時もあります、評価や感想なんかを見ると終わらせておくべきだったのかな?と……

だけど望んでくれる人もいるのは確かな事ですし初期から読んでくれていると知った時はとても嬉しく思ったのも確か、それに元は妄想を文にした自己満足なだけだったのでこれからも変わらず書いていきたいと思っています

今作で東方大魔王伝は終わりとなりますがまだ終わりません!もう少しお付き合いしてくだされば幸いです。

次回も頑張ります!
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