東方大魔王伝 -mythology of the sun-   作:黒太陽

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第34話 涙炎(ラストワード)

 

私がもっと強かったら……

 

竜に脅えるお姫様みたいな、か弱い女の子じゃなくて……

 

せめて勇者様を手助け出来るくらいの……誰の足手纏いにもならないくらいの力が有ったら……

 

 

お母さんみたいに私が強かったら……

 

こんな事にならなかったのに……

 

 

 

 

ねぇお母さん……何処に居るの……?

 

言いたい事があるの……あの日からずっとずっと言いたくて……でも言えなかった事……今なら素直に言えると思うから……

 

 

 

 

だから……お願いします……

 

 

 

 

 

お母さんに会いたい……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-ソルパレス「騎士の間」-

 

 

ガウンッ!

 

 

最高峰の剣がぶつかり合う

 

「グクッ……!?」

 

「……」

 

血の勇者ロランと竜の騎士ダイ

 

互いの持つ神の金属オリハルコンから作られた至高の剣が火花を散らす

 

「ヌゥ……オオオッ……!」

 

ロランが唸る

 

「!?」

 

ロトの剣が傷口から血が吹き出る程の力みでダイの剣を押す

 

「オアアア……!!」

 

小さくはないダメージを受けていると言うのに今だロランの力は衰えない

 

「!」

 

ダイが手刀を構え突き入れる

 

ギィン……

 

「そう……何度も同じ手は食わない」

 

手刀はロトの盾によって防がれていた

 

ドズッ!

 

「かはっ……」

 

しかしその直後、盾を掴まれ、引き寄せられたロランの腹を膝が打ち抜いていた

 

「……」

 

だからなんだ?と言う様にダイが見ていた

 

今のダイに隙は限りなく少ない、防がれた際に取る行動までも瞬時に閃き、行動に移せる

 

「く……ぅ……」

 

秘められた戦闘経験がひたすらにロランの上を行くのだ

 

「……ゥオオッ!」

 

振り下ろされたロランの剣、それは容易く剣で受けられる

 

「オオオーーーーッ!!」

 

剣を引きながら勢いを付けた回転横薙ぎ

 

「!!?」

 

それも剣で防ぐものの高い威力に剣が弾かれる

 

「ハアッ!」

 

鳳凰縦一文字斬!

 

「……!」

 

戻した剣に防がれる

 

「アアアーーーッ!」

 

剣を押し込む力が足を陥没させる

 

「オオオッ!」

 

破壊剣一閃!

 

「ハアアアアアッ!」

 

二擊、三擊と続くが剣に防がれる

 

ボッ!

 

四擊目を加えるより速くダイの手刀が腹を狙う

 

「ク……ウゥ!?」

 

放たれかけた三擊目が軌道を変更し手刀を受けた

 

(一撃外されたか……だけど!)

 

手刀に食い込むロトの剣から流れる青き血を見てロランは確信する

 

(やはり剣ならばオーラを貫ける!よし……なら狙いは変えない……!打ち砕く!)

 

剣を引き下ろそうと力を入れる、ダイの体を狙いあわよくば手刀を斬り落とそうとするも力を入れる前にダイが飛び退き失敗に終わる

 

「……!」

 

ダイは青き血が滴る手刀を構え呪文を唱えた

 

「ッ!?」

 

振り抜かれた手刀から風の刃・バギマが放たれロランに向かう

 

「チッ……!!?」

 

切り払ったロランは次の光景に目を見開いた

 

「……!!」

 

ダイが手刀を高速で何度も振り真空の刃を弾幕の如く連射して来たのだ

 

「クソッ!?」

 

切り払いつつ走って避けるも途切れない弾幕に壁際へ追い詰められる

 

「……ウオオオッ!」 

 

意を決したロランは弾幕へ飛び込んだ

 

「オオオッ……!」

 

切り払いながら風の刃の渦中を突き進む

 

ギャギッ!

 

「なッ!?」

 

次の風の刃は斬れなかった

 

(……違う!?呪文じゃない!これは斬擊!?)

 

斬擊を押さえながらダイを見ると剣を持つその手がいつの間にか振られていた

 

(真空の呪文の中に斬擊を混ぜる技量も恐ろしい……けど本当に恐ろしいのはそれを僕に悟らせない事だ!)

 

バギマによる風の刃の弾幕、その中にアバンストラッシュのAタイプを忍ばせる

 

言うのは簡単だがやっているのは魔力と奥義の同時使用、その難易度は系統が異なる分、魔法の同時使用よりも高いかもしれない

 

それを歴戦の戦士たるロランの意識の切れ間を狙って突ける戦闘技量が何よりも脅威なのだ

 

「グッ……ウゥ!!?」

 

バギマを切り払える力しか入れてなかったロランは耐えきる事が出来ず斬擊ごと壁に叩きつけられる

 

「グアッ……」

 

衝撃に苦痛の声が漏れた直後に風の刃が視界に見えた

 

「……」

 

歴戦を越える双竜の超騎士がアレだけで終わる筈がない、既に追撃のバギマは放たれていた

 

「グウウゥ……!?」

 

盾を構えるも体を切り刻まれる

 

「……」

 

再びアバンストラッシュAタイプを放ち、追従する

 

「!?」

 

回避迎撃が間に合わないと直感したロランは盾に剣を重ね完全な防御体勢でその技、アバンストラッシュXを受けた

 

 

ズガガガガガガガガ……!! 

 

 

「ウッ!?ガアアアアアッ!!?」

 

強度で同じオリハルコンに加え盾と剣を用いた完全防御だったから切られはしなかったがあまりの勢いに押され、ロランは自身で壁を削りながら広い間の外周の壁を4分の1ほど削り回る

 

「ッッ……!?」

 

ようやく勢いが止まる

 

「……!」

 

その瞬間には既にダイは更なる追撃に手刀を突き出していた

 

「……ツアアアアアッ!!」

 

ロランが押し出す、突きに向かっていたダイは踏ん張りが効かず浮く

 

 

「古流剣殺法究極奥義!鳳凰十文字……大切断!!」

 

 

そこへ繰り出すは渾身を込めた大魔王と竜の王すら切り裂くロトの血継十文字、断てぬもの無しその神技はロランの膂力も相まったまさに破壊神技

 

それがダイの剣を狙う

 

 

ドギャア!

 

 

剣で防いだダイが凄まじい勢いで吹き飛び床に衝突し爆発を起こす

 

「……ッハッ……ハアッ……」

 

息を切らし剣を杖に片膝を着くロラン

 

(まだ……ダメか……)

 

ついに限界が目前まで迫っていた

 

「ハアッ……ッ!!?」

 

油断無く様子を見ていた粉塵から高速のレーザーが飛び出しロランは盾を構える

 

 

ズオッ!

 

 

着弾したレーザーが爆発を起こす

 

「……」

 

爆煙が晴れ、ロランが見えた

 

「カハッ……」

 

崩れる様に手を着き、血を吐いた

 

「……」

 

同時にダイも姿を見せる、ダメージは感じさせるものの竜闘気によりロラン程ではない、しっかりと地に足が着いている

 

 

「ロランさん!?」

 

ルナが叫ぶ

 

(そんな……ロランさんでも勝てないの……?)

 

あまりに強過ぎるダイが絶望を感じさせる

 

(私も戦えば……そ、そうだよ……!私も一緒に戦えば良いんだ!)

 

幼いなりの考えを出すが所詮はガキの絵空事

 

ルナが行けば斬られて終わり、それは確定事項

 

即斬られて死ぬならばまだマシと言えるが下手をすればロランが庇い状況が悪化する可能性すらあるのだ

 

悪手以外のなにものでもない

 

(わ……私も戦……!)

 

意を決し立ち上がろうとしたルナ

 

「……!?」

 

それはロランのかざされた手によって止まった

 

「君は僕が守るって言ったろ……?格好悪いところは……見せられない」

 

ルナを制したロランは立ち上がる

 

「意地があるんだ……男には……!」

 

傷だらけの体で微笑む

 

 

その体を動かすのは勇気ではない

 

ルナを守るのも遠い親族だからでもない

 

 

(……妹紅)

 

 

一人の女性に抱いた感情が体が屈するのを認めないのだ

 

 

(君は……何処に居るんだい……?)

 

 

「オオオオッーーーー!!」

 

 

いつまでも心に在り続ける彼女の象徴と同じ意匠の剣を構え

 

血の勇者は太陽神の騎士へ挑む……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「反魂蝶 -八分咲-!!」

 

ベグロムを避け、戦線を後退させるもそれが仇となり退きと進みが合わさり急激に押しきられそうになっていた戦線を維持する為に幽々子自身も応戦し死蝶を飛ばす

 

「あらあら……」

 

しかし、効かなかった

 

(ダメねぇ……即死耐性が有るのが多くて全然……)

 

幽々子の能力からなる死蝶は言わばザキと言っても過言ではない、だから耐性の有る者には何千と当てようが効かないし自分より強ければ効かない

 

(随分前に援軍を頼んだけど全然来ないし……そういう事なんでしょうけど、やっぱりもう限界かしらねぇ……)

 

敗北を悟った幽々子であったがこれ以上戦線を下げるつもりは無いし自身も逃げるつもりも無い

 

(じゃあせめて倒しやすく……ね)

 

死蝶をやめて弾幕を繰り出す、幽々子の力量では簡単に倒せないがそれでも無駄ではない

 

(あの子は必ず……来る!)

 

微笑む幽々子に魔物が迫る

 

「そうでしょう!妖夢!!」

 

「当然です!!」

 

楼観剣の一閃が魔物を両断した

 

「遅くなりました幽々子様」

 

幽々子の前に宝剣・妖夢が立つ

 

「いーえー、信じてたわ妖夢!それよりも気を緩めないでちょうだい」

 

「言われずとも!」

 

次に来た魔物を神速の剣閃で細切れにしながら妖夢は頭上を見上げる

 

「……」

 

目を細め睨む様に月の有る場所を見ている、剣士として鍛えた優れた感覚がダイを捉えたのだ

 

(この力……強過ぎる……私では勝てない、ですが……戦っているこの力、これはロランです……が、苦戦している?まさか貴方が……?)

 

月が異常事態にある、今すぐにでも行きたいが地上も見ての通りギリギリ、抜ける訳にはいかない

 

(……大丈夫、貴方なら大丈夫です、その勇気と……その剣が有れば……!)

 

心配要らないと迷いを振り切った妖夢は目前の敵へ集中する

 

「来なさい!我が楼観剣に……断てぬもの無し!!」

 

幻想郷を守る剣は死域へ入る……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっ……!?」

 

魔物の鎌がさとりの肌を切る

 

「はぁ……はぁ……」

 

さとりの回りは魔物だらけ、囲まれている

 

ズドッ!

 

魔物が打ち飛ばされ、さとりの前に藍と橙が立った

 

「大丈夫か!?紫様の命で加勢に……ぐあっ!?」

 

「藍しゃま!?」

 

即座に殴られた藍に橙が悲鳴をあげる

 

「この……ッ!」

 

「よくも藍様を!」

 

さとりが弾幕で怯ませ橙が爪で引き裂く

 

「やって……くれたな!」

 

額から血を流す藍がトドメを刺す

 

「救援感謝します……ですが……」

 

「言うな……わかっている」

 

「でも諦めません!」

 

抵抗を止めない3人、それは死ぬまで止めないだろう

 

「その意気だ……我等の幻想を終わらせるな」

 

御柱が飛来し魔物の1体を押し潰す

 

「私!参上!」

 

緑の風祝が決めポーズを取る

 

「八坂神奈子……東風谷早苗……」

 

来てくれた援軍にさとりに小さな笑みが浮かぶ

 

 

ドーン!

 

 

弾幕が魔物を吹き飛ばす

 

「純狐とへカーティアの隔離は終わったよー……って神奈子に早苗じゃん!こっちに来てたんだ!」

 

遅れて諏訪子もやって来た

 

「意図せず我等3人が揃ったか」

 

「1発やっちゃいますか?」

 

「うーん、神力をかーなーり!使うけど……まぁ良いんじゃない?」

 

「うむ……ではやるか」

 

さとり等に負けない傷を負っている、それでも3人は笑い、神奈子と諏訪子が早苗に力を送る

 

 

「大奇跡「八坂の神風」!!」

 

 

奇跡の力が局所的な大竜巻を起こし飲み込まれた魔物を地空纏めて神の力で消滅させる

 

「流石ですね八坂神奈子……助かりました」

 

「そうでもない、こんなもの一発芸だ……何度も使えんし巻き込んでしまう、今のも周囲に味方が居なかったから使ったに過ぎん」

 

「……そうですか、やはりもう私だけでしたか……」

 

指揮していた者達は既に全滅していたのだと暗に告げられ顔を落とすさとり

 

「下を向いている暇は無い、我等は勝たねばならんのだ……屍を越えてでも……」

 

「……わかっています」

 

皆、幻想郷の為に散って行った

 

止まる事は侮辱、それをわかるからさとりは顔を上げた

 

「今ので僅かだが時間が出来た、敵も来るがこちらの後陣からも来るだろう……少し休むがよい」

 

気休めの様なほんの僅かな時間だろうが無いよりはマシ、またすぐに来る戦いに備え6人は一瞬でも体を休める

 

「……」

 

そんな中で神奈子は月を見上げる

 

(神の意を感じる……平行の神の思惑が宿った竜の騎士……そしてそれと戦う精霊に愛された勇気の血……果たして勝るのはどちらか……)

 

(……わからん、だが奇蹟は起きない、此処に神の涙はもう無く……ルビスも居ないのだ……勇者と勇者が戦えば勝つのは当然勇者……より優れた勇者が勝つそれだけの事……)

 

結論を出した神奈子はそれ以上は考えず、現れ始めた魔物達へ向け戦気を高める事だけだった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

無縁塚の中心でレミリアは運命を感じていた

 

(出会う筈のなかった竜と血、出会いは死合い……これも不死鳥が見せる数奇なる幻想の運命……果ては何を見せるというの……?)

 

類い稀なる可能性の末に出会った二人の勇者の因果が能力に響く

 

(……不死鳥?)

 

感じるままに文字に浮かべたレミリアは理解できない単語に手が止まる

 

(まさか……貴方だと言うの?貴方がこうなる運命に導いたと……?)

 

行方知れずの友へ問うが返ってくる筈も無い

 

(……もしそうなら、この決まってしまった運命は良いの?悪いの?……答えなさいよ……)

 

レミリアは強く槍を握る

 

(ねぇ……妹紅……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ガハッ……!?」

 

強烈な拳を受け血を吐く

 

「クッ……ガアッ!?」

 

剣を受けるも顎を蹴り上げられる

 

「ッ……ガアッ!!」

 

痛みに耐え、足を掴んだロランはダイを床に何度も叩きつける

 

「アアアアッーー!!」

 

一回毎に爆発が起きるという凄まじい威力に床は一瞬にして穴だらけに変わり果てる

 

「ハァ……ハァ……オアアアアッ!!」

 

渾身で叩き着けた後に剣を振り下ろすもダイに剣で受けられる

 

「……」

 

ダイに見張る程のダメージは無い、先の叩きつけも無駄とはいかないがその魔人の竜闘気によって軽減されていてダメージは軽微

 

「アアッ!アアアアーーーーッ!!」

 

そんな事は構いなくロランは何度も剣を振り下ろす

 

「鳳凰縦……一文字斬ッ!!」

 

両手で持った破壊剣がダイを受けた剣ごと深く埋め込んだ

 

「ハァッ……ハァッ……」

 

数歩下がるロランだが息も荒くふらついている、その身にかなりのダメージが有るのは明白だった

 

(まだダメなのか……同じとはいえいくらなんでもおかしい……これ以上は僕が持たな……!!?)

 

歯噛むロランは頭上に雷雲が出現していた事に気付く

 

「チ……ィ……!」

 

飛び退いた瞬間に黒き落雷がその場所に向かう

 

 

ドンッ!

 

 

落ちきる直前に埋まっていた床から溢れた竜闘気が瓦礫を飛ばしダイが飛び出て落雷を剣で受けた、そしてそのまま剣を八相に構えロランへ駆ける

 

「……!!」

 

黒き雷光纏う魔法剣、エビルデインブレイクがロランを狙った

 

「オオオッ!」

 

それを両手を用いた奥義・昇一文字で受けたロラン

 

「ッ……ウガアアアアアアアアッ!!?」

 

剣から伝わる黒雷がロランを焼いた

 

「ゥァ……ッガ!?」

 

激痛に止まった一瞬だったが容赦無く蹴り飛ばされる

 

「グゥゥ……ゥッ!?」

 

更なる追撃に剣が出されるも盾で防いで見せた、だがダメージが重なり過ぎた体は踏ん張れず打ち飛ばされ床を転がる

 

「ハァッ……グッ……ハァ……」

 

苦しく喘ぐロランはすぐには立ち上がれなかった

 

蓄積されたダメージがそこまで来たのだ

 

「……」

 

されどダイに慈悲は無い、動けるならば殺すとばかりに剣を突き刺す為に飛んでいた

 

「グッ……ゥゥ……」

 

狙われた顔を動かし何とか避けたロランの目の前には紫の肌色で無表情にダイが見ている

 

「ッ……!」

 

ダイを蹴り退けたロランは立ち上がる

 

「負けられない……!」

 

ボロボロの体を無理矢理動かしダイに向かう

 

「負けられないんだッ!!」

 

剣がぶつかる

 

「僕は……負けない……!」

 

もはや格付けはついている

 

ダイの方が上、それはルナの目にも明らか

 

なのにロランは諦めない

 

「……!」

 

何がここまでロランを突き動かすのか……

 

(妹紅の為に……僕は……)

 

それは勇気を越えた、ただただ一途で純粋な想い

 

 

「負けられないんだァァァーーーーッ!!」

 

 

己が殉じた愛の為にロランは戦うのだ

 

 

 

「……」

 

「ク……ソォ……!?」

 

ダメージに差がつき過ぎて唯一勝っていた膂力すらもう上回られている

 

「……ロトの剣よッ!!」

 

剣から発生した聖風がダイを切り刻みながら吹き飛ばすも竜闘気に遮られ効いていない

 

「……」

 

ダイの額の紋章が輝きビームを連射する、そういう事(飛び道具)をするのなら付き合ってやると言わんばかりの紋章閃の連射

 

「ッ!?」

 

再びロトの剣から聖風を出しながら逃げるも追い詰められていく

 

「……」

 

「ッッ……!!?」

 

1発が着弾し爆発で床を擦り転がる

 

「カ……ハッ!?ッハアッ!!?」

 

痛みきった体への更なる痛みは吐く血の量を増加させる

 

「……」

 

ロランにどんな事情があろうが、どんな想いがあろうが今のダイに知った事ではないし止まりはしない

 

「クッ……オオッ!」

 

剣を杖にしてでも立ち上がろうとロランは唸る

 

「……」

 

ダイはロランの目を見つめた

 

「……!」

 

ダイが再び紋章閃を連射する

 

「うっ!?があっ!?」

 

もうまともに動けないロランは成す術無く撃たれていく

 

「……」

 

ダイは止めない

 

ダイはロランのその目に諦めない不退転の覚悟を見たのだ

 

 

ドッ……ドドドッ!

 

 

「……」

 

何か狙っているのかもしれない目、もしそうだとしても近接戦闘が主体のロラン、狙う事はロランの間合いでなければならないのは明白

 

 

ズドドドドドドオッ……

 

 

だから闘いの遺伝子が狙いが成功する可能性を遠距離から詰ませようと撃つのだ

 

 

 

「……」

 

連射を止めたダイが晴れていく爆煙を見つめる

 

「あ……あぁ……ロランさん……」

 

ルナも絶望した顔で見ている

 

「……」

 

爆煙が晴れた

 

「…………」

 

ロランはまだ形が有った、盾を構えたままその場で動かないがまだ……生きていた

 

「……」

 

ダイがまた紋章閃を放とうと構えるが何かを思い出した様に止まる

 

「……!」

 

すると紋章閃も呪文も撃たず剣に力を入れロランに歩み寄って行った

 

「ダ……ダメッ!?」

 

トドメを刺しに行くのだとルナは理解し動こうとするも圧倒的なダイに挑む恐ろしさから足がすくんでいる

 

(動け……!動いて!今動かないと……ロランさんが!!?)

 

必死に動かそうとするも体は動かない

 

「……」

 

そして、ダイがロランの前に立った

 

「……」

 

黙するロランに剣を振り上げ

 

「……!!」

 

振り下ろした

 

 

 

ザンッ……

 

 

 

鮮血が舞う、()()()()

 

「負けられない……んだ……」

 

「!?」

 

そう、舞ったのはダイの血、切られたのはダイ、ロランの斬り上げがダイの胸を斬り裂いたのだ

 

「……オオオオオオッ……!!」

 

咄嗟に下がったダイにロランが最後の力を振り絞る

 

 

「オアアアアアアアアッ!!」

 

 

ロトが編みだし、受け継がれてきた剣殺法

 

しかしこれから出される技は……ロランの代で初めて付け足されたロランだけの技……

 

 

「古流剣殺法最終奥義!鳳凰天舞!!」

 

 

想い人と共に天を翔けたいと願う、想いの想剣技

 

 

「ハアアアッ!!」

 

「!!?」

 

受けたダイの剣が飛びそうな程に弾かれる

 

「!?」

 

そしてすぐに来た二閃目に迎撃を余儀無くされる

 

「オオオオオオッ!!」

 

先より力を込めた全力の防御、それさえも優に弾く

 

 

ロランの最終奥義とは覚悟で決める神速の四連斬

 

一瞬だけ妖夢の最高剣速と同等の速さと操剣で限界を越えた力をぶつける鳳凰の天翔技

 

限界を越えたその力は普段の数倍、それを叩き込むのだ

 

 

「……!!」

 

三閃目の直前、ダイが剣に力を込めた

 

「……!!?」

 

刹那の様な時の中、見えるものがゆっくりと動く様に見える凝縮された時の中でロランは気付いた

 

(あのオーラを剣に流して……だからか、だから……この剣を折れ……)

 

三閃目を受けられ、終の四閃目を放つ為に上段に構えた

 

(……妹紅……)

 

 

 

 

「ウオオオオオオオオオオオオッッ!!!」

 

 

 

ズガアアアアアアッ!!

 

 

 

最後の一撃が決まった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……ピシィ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

「……」

 

鳳凰の天舞が終わったその場所

 

「……グフッ!?」

 

血を吐くロランの手にもう剣を押す力は入っていない

 

「……」

 

凌がれていた

 

鳳凰の決死の舞は竜の牙を折る事は叶わなかった

 

「……!」

 

ダイが力を入れるとロトの剣が弾かれ宙を舞う

 

「ロランさんッ!!?」

 

ルナが叫ぶ

 

「……」

 

その前で無慈悲に……

 

 

 

ドスッ……

 

 

 

ロランはダイの剣に貫かれた

 

「…………」

 

剣を引き抜かれたロランはロトの剣と共にその場に倒れる

 

「……」

 

ダイが確実なトドメを刺す為に剣を構えた、首を落とすつもりだ

 

 

バチッ……

 

 

弾幕が当たりダイが視線を向ける

 

「よくも……ロラン……さん……を!」

 

ルナだった、ロランが倒されたのを見てようやく体が動いたのだ

 

「このーーー!!」

 

「……」

 

弾幕を当てるもダイには全く効果が無い

 

「……!」

 

ダイが手を天にかざすとルナの頭上に雷雲が発生し雷鳴を轟かせる

 

「この!このー!コノヤロー!!」

 

わかってはいたがルナは許せなくて攻撃を止めなかった

 

「……」

 

ダイは指をルナに向ける

 

 

ズガァ!

 

 

黒雷が落ちる

 

 

 

「……ッ!?」

 

尻餅を付いたルナは自分が攻撃を受けていない事に気付く

 

「あ……え……?」

 

前を向いた時、理解した、何故自分が無事だったのかを

 

「どう……して……どうしてですか……」

 

自分は守られていたのだ、受ければ死んでしまうから庇ってくれていたのだ

 

「ロランさん……!!」

 

勇者に……

 

「……君が」

 

ゆっくりと振り向いたロランはルナに微笑む

 

「ああっ!?」

 

ロランの体が沈んでいく

 

(君が……)

 

声も出せないロランは静かに想いで答えた

 

 

ロランは敵を倒す為に来たのではない

 

妹紅の為だけに来たのだ

 

 

 

 

 

 

     "僕が愛した人の……娘だから……"

 

 

 

 

 

 

そう……愛した妹紅の愛する娘を守る為、それだけに……

 

 

「……」

 

勇者は地に伏し、もう二度と立ち上がる事は無かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……血の脈動が途絶えた……負けたのか」

 

ゾーマが天を見上げている

 

「血を引いているとは言えど所詮は子孫という事なのだろう、起源にして頂点たるロトには及ばぬか……」

 

ロトに因縁のあった闇の大魔王は不快感を露に天を睨む

 

「ロトの血も堕ちたものだ……いや、そうではないか……ロトの血を凌駕した竜騎士を称えるべき事か」

 

顔を下げ、チルノを見ながらゾーマは呟く

 

「幾度となく魔を討ち払った栄光の御業もついに潰えたか……バーンの縋った希望は竜の牙に噛み砕かれた」

 

この暇潰しも終わりが近付いて来たと悟ったゾーマは静かに笑う

 

「奇蹟は……起きぬ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ロランさん!?ロランさんッ!!?」

 

ルナが抱き締めて呼び掛けるも返事は無い

 

「……」

 

ダイが胸から血を流しながら歩んでくる

 

「く……来るなッ!」

 

ルナの言葉に止まるダイでは無い、確実なトドメとついでにルナを殺す為に無表情でやって来る

 

(ダメだ……私なんかじゃ勝てない……このままじゃロランさんも青娥さんも……皆殺されちゃう……!)

 

それは近付いてくる

 

「……」

 

「ひっ……」

 

絶望が歩いてくる

 

(ヤダ……ヤダよ……)

 

絶望は止まらない

 

(お母さん……お母さん……!)

 

涙を流すその目に光るバーンの御守りは見えない

 

「……」

 

絶望(ダイ)が二人の前に立ち、剣を構えた

 

 

「助けて……お母さぁぁぁぁぁん!!!」

 

 

心の叫びが響き

 

涙が……御守りに落ちた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

         『ピィ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

知らない鳴き声をルナは聞く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ボウッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奇蹟の炎が……燃え上がった

 

    

 

 

 

 

 

 

 

「!!?」

 

突如バーンの御守りから尋常でない炎が溢れダイを押し飛ばす

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-紅魔館・図書館-

 

「!!?」

 

それに一番最初に気付いたのはバーンだった

 

「そうか……」

 

同じモノを象徴としていたバーンだからこそ誰よりも早く知ったのだろう

 

「そこに居たのかお前は……フフッ……見つからぬわけだ」

 

待ち望んだ帰還に笑みが溢れる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遅ぇぜバカヤローが!!」

 

「ヒーローは遅れて来るものと言うけど……引っ張り過ぎよ、まったく」

 

魔理沙とパチュリーも気付く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え……ウソウソ!ねぇ大ちゃん!これって!!」

 

「うん!間違いないよフランちゃん!もう……もうっ!絶対許さないですからね!」

 

長い回廊を進んでいたフランと大妖精も勿論気付く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「バカ……心配かけるんじゃないわよ……子分の癖に……」

 

「……寝言か」

 

ゾーマに見守られて寝ているチルノすらわかる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「導いてなどいなかった……これはなるべくしてこうなった、貴方は……ただあの日に約束した事を守り通そうとしていただけだった……やはり母なのね貴方は……それでこそ……私の誇る親愛なる友人……」

 

優しき炎の運命を感じたレミリアも微笑んで見せた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-ルナの家-

 

置かれていたルナの実母であるローラの指輪が輝き、光を月に飛ばす

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-???-

 

真っ白で何も無い空間

 

そこで二人の女性が顔を合わせていた

 

「初めまして、だな……ローラ」

 

『ええ、初めまして……』

 

二人は友達の様に笑う

 

「なぁ?本当の名前教えてくれないか?ローラが最初に付けた名前」

 

『……嫌です』

 

「なんでだよ?」

 

『私は母として責任を果たせず貴方に押し付けてしまった、私に母の資格はありません、あの子は……貴方の子です』

 

「眠たい事言うなよ、あの状況じゃしょうがなかったろ?」

 

『それでもです……』

 

「まぁいいさ、実の母にそう言われて悪い気はしないしな!でも1つだけ訂正させてくれ」

 

『なんでしょう?』

 

「お前も間違いなくルナの母親だって事だ」

 

『!!……ありがとうございます、二人の母が居るんですねあの子は』

 

「ハハッ……そういう事さ」

 

笑い合うと二人の女性の片方、白髪の女性が背を向けた

 

「じゃあ……行ってくる」

 

『娘を……お願いします』

 

「ああ……任せてくれ!」

 

白髪の女性が消え、一人残されたローラも消えていく

 

『藤原さん……私があの子の本当の名前を言いたくなかったのはね、少しだけ嫉妬していたからなの……』

 

ローラは悔しそうにはにかむ

 

『だって私が付けた名前とほとんど一緒だったから……まるで私の方が母だ!って言われてるみたいで……ちょっと悔しかったの』

 

上を見上げたローラは消える最後に言葉を残す

 

『今……育ての母が行ってくれたわ、もう大丈夫……元気でね……ルーナ……』

 

我が子を不死鳥へ託し、生みの母は満足に消える……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひぐっ……」

 

ルナの前には1羽の炎鳥が背を向けていた

 

「なんで……」

 

信じられなかった

 

この炎鳥は不死鳥だったから、ずっと探していた人の誇りの不死鳥だったから

 

「どうして……」

 

もう涙は止まらない、嬉しくて大粒の涙を流しながらルナは泣いた

 

「お母さん……!!」

 

ルナの声を聞いて不死鳥の炎が燃え上がる

 

「ルナ……わかっているのは1つだけだ!」

 

炎が消えるとそこには会いたかった母が立っていた

 

 

 

「不死鳥は!炎の中から……蘇る!!」

 

 

 

果て無き死闘の末に血の勇者はその想いと共に竜の騎士たる魔勇者に敗れた

 

死の刃が幼き雛鳥の命を刈り取る刹那

 

 

 

奇蹟が起きた

 

 

 

奇蹟の名は藤原妹紅

 

遠い昔に決意した尽きぬ想いが今……奇蹟を起こした

 

 

 

 

 

 

      ""不尽の火から生まれるは

 

       何度でも甦る不死の鳥

 

     甦るたびに強くなる伝説の火の鳥""

 

 

 

 

 

 

 

        フェニックス再誕

 

 

 

 

 

 

 

    時代が望む時、皇帝不死鳥は必ず甦る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




もこたん復活!もこたん復活!

幻想郷の主人公が遂に再誕しました!バーン様の復活と似てる?ダメ……?
初戦闘で敗北してしまったロランは残念ですがせめてかませっぽくはなかった筈だと信じたいです……

・現在の主な犠牲者(リタイア含む)
幻想郷 永琳、咲夜、白蓮、チルノ、にとり、霖之助、アリス、美鈴、幽香、竜王、紫、青娥、芳香、輝夜、常闇ノ皇、忍、バラモス、靈夢、正邪、カメハ、ロラン 計21名

魔王軍 六将(5/6)、キルギル、親衛騎団(6/6全滅)、純狐、へカーティア?、バベルボブル、戸愚呂、戸愚呂(兄)?、テリー、ゴリウス、キル、ガルヴァス、グレイツェル、ヴェルザー、ゼッペル、災厄の王(ジャゴヌバ) 計25名

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