東方大魔王伝 -mythology of the sun-   作:黒太陽

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第45話 永遠の中の刹那

 

 

-無縁塚-

 

「こちらです、ヘカーティア様、純狐」

 

激戦のあったその場所で9人は居た

 

「縁を無くすから無縁塚……洒落ているわねヤマザナドゥ」

 

「……」

 

「元気出してください友人様~!」

 

映姫、ヘカーティア、純狐とクラウン・ピース

 

「それにしても死刑じゃなくて流刑なんて甘過ぎじゃない?ねぇ神奈子?諏訪子?」

 

「お前が不死身の妖怪を始末して幻想郷を救っていたからこその減刑だ」

 

「それでも軽くはないよ?万年の枷を付けて神力は人間と同等の存在に抑えて幻想郷から永久追放、例え刑期が終わって以前より更に力を持とうとも此処にはどうやっても戻ってこれないんだもの」

 

「優しいのね~」

 

「……映姫に感謝するのね、彼女の嘆願がなければお前達は無に帰していた」

 

「こんな事言ってるけど神奈子も同じくらい嘆願してたんだよ?怒り心頭の紫や幻想郷の賢者達に「純狐に時間を与えてくれ」って頭まで下げたんだから」

 

「……そう」

 

神奈子と諏訪子

 

「ごめんねお姫様方」

 

「……貴様ッ!」

 

「剣から手を離しなさい依姫、私達は見届け人……罪人の処遇は地上に任せた筈よ」

 

「……申し訳ありませんお姉様」

 

月から豊姫と依姫

 

「温情ありがと!感謝感激雨霰!……本当に感謝しているわ、言葉も出ないくらい……」

 

「……」

 

「何か言いたそうね八雲紫?言っても良いのよ?これが最後なんだから」

 

「……では言わせて貰いましょう」

 

そして氷の様に冷たく睨む紫

 

「私は貴方方を許すつもりなど微塵も無かった、僅かな可能性も考え存在を消して差し上げたかった……私の愛する幻想郷を破滅と遊ばせたのですから」

 

「……今から死刑でも私は一向に構わないわ、だけど純狐とクラウンピースは……」

 

「ですが私とて過去に幾度も過ちを犯した身、責めれる資格を有しておりませぬ、ですので私からは恨み言だけ……幻想郷を殺そうとした大いなる罪神、幻想郷を救っていただき……感謝します」

 

ケジメというモノがある

 

あの時、ヘカーティアが兄を始末しなければ確実に幻想郷は滅んでいた、それを防いだヘカーティアは幻想郷の平和を作った影の功労者と言える

 

しかし、幻想郷の為とは言え純狐に協力して月を落とし、幻想郷に破滅を持たらそうとした事は無視出来ないし帳消しにはならない

 

「どうか良き旅路を……」

 

紫としては枷を付けるくらいで許しても良かった、すぐに消すのではなくチャンスを与え可能性を消さない、それがバーンから学んだ事でもあったからだ

 

だが仕出かした事が大き過ぎた、それでは元に戻ったとは言え民の不満と不安が消えない、納得出来ぬ者も恨む者も怯える者も必ず出てくる

 

だからこうするしか無かった、可能性を残し、民を無理矢理でも納得させるには……

 

「だってさ……純狐」

 

ヘカーティアは笑みを向ける

 

「……どうして……こんな事をする……」

 

純狐は言う

 

生気も覇気も無い、まるで脱け殻の様な乾いた顔で

 

「外になんか出ても……私に希望など有りはしない……何故殺してくれなかった……生きる価値も意味も無いと言うのに……」

 

「それが罰だからだ、永劫に続く時の中で答えを探せ」

 

「そんなものは無い、答えは既に出ている……私は……私はどうやって生きれば良いの……」

 

純粋と化した復讐を成した彼女に生気は無い、生きる理由、心の在処を失っているのだから

 

「大丈夫、私が居るから」

 

そんな彼女にヘカーティアは言う

 

「……貴方まで付き合う必要は無かった筈よヘカーティア、貴方だけなら幻想郷に残れたと言うのにどうして……」

 

「聞きたい?」

 

二人は異界の扉を前に幻想郷での最期の言葉を交わす

 

「貴方が幻想郷より大事な私の神友だから……かしら」

 

「!!」

 

純狐の心が揺れた

 

「それじゃあ……ダメ?」

 

「……」

 

何かに気付き、ヘカーティアを見つめている

 

(気付けたか……)

 

神奈子は背を向ける

 

(それこそがお前の新たな生きる意味、気付けなかった生きる糧……ヘカーティアがお前の為に生きる様に、お前もまたヘカーティアの為に生きれば良いのだ)

 

望み通りになった事が嬉しく口元が緩む

 

「行きましょ純狐!遥か遠き理想郷へ!」

 

「ええ……!さようなら幻想の郷、神々が恋し……誰しもが愛した……幻想郷!」

 

「あたいも居ますよ~!待ってくださいご主人様~!友人様~!」

 

光の中へ3人は消えていく

 

 

 

見つかった……心の在処と共に……

 

 

 

 

「これで、全て終わりましたね……」

 

「気持ちはわかるがそう気落ちするな映姫」

 

「わかっています……これからは私が最高責任者としてヘカーティア様に代わり地獄を納めなければならないのですから」

 

「「正しい友人というものは、間違っている時に味方してくれる者の事」……こんな言葉が外には有る、ヘカーティアは純狐が間違っているとわかってそれでも味方をした……間違いは正すのが友人だと大勢は言うだろうが、それもまた友の在り方だと私は思う」

 

「……変わった神でしたからね、ヘカーティア様は……」

 

「私にとって早苗と諏訪子が何より大事な様に、神としては間違っているが人としては……素晴らしき事だ」

 

「……ですね」

 

「だから心配は要らないわ、純狐は本当に大切なモノに気付けた、ヘカーティアが純狐を想う様に……純狐もまたヘカーティアの為に生きるのだから……」

 

「……さようならヘカーティア様……いつまでも御元気で……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえばソルが月に作った建物はどうされるのですか?壊すのですか?」

 

「収容所の方は壊しますがソルパレスは修繕して残すつもりです、都の外観には合いませんがあれだけ立派な建物ですからね……月の皇族の居城にするという話が出てますがよろしいかしら?」

 

「そちらの事ですから好きにしたら良いでしょう、誰も何も言わぬでしょうしね」

 

「……月を救っていただき感謝が絶えません、八雲紫、本当にありがとうございました」

 

「それは私ではなく地上の民に言って貰いたいですわ、と言う事で遅くなってしまったけれど行きましょうか、貴方方も月の代表として参加なさってください」

 

スキマが開かれ、紅き館へ6人は向かって行く……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-紅魔館-

 

「ふえ~ん……ケーキ食べたかったよぉ……」

 

ハドラーの特製ケーキを食べ損ねた大妖精は涙目でイジけていた

 

「あら美味しそうな妖精ね……食べるのだー!ってね?がぶー!」

 

「ひゃあ!?」

 

突然耳を噛まれ顔を真っ赤にして飛び上がる

 

「もうルーミアちゃん冗談はヤメ……」

 

プンスカ怒りながら振り向いた大妖精

 

「冗談と思う?」

 

「!!?」

 

笑顔の常闇ノ皇と目が合った

 

「アイエェェェ!?ナンデ!?ルーミアサンナンデ!!?」

 

「落ち着きなさい妖精、凄い顔してるわよ?」

 

余りの驚愕に大妖精は混乱している

 

「一人分肉体が余ってたのよ、デミーラもムーアも行かないって言ってね、せっかくだから私が使ったってわけ」

 

「ひえぇぇ……た、食べないでください~!」

 

「……食べないわよ、バカな餌ね」

 

冗談とわかってようやく大妖精は落ち着いた

 

「ルーミアちゃんと会っていかないんですか?」

 

「会う理由が無いわ、私にとってアレは邪魔者だったしアレにとっても私は邪魔だったでしょうから」

 

「……そんなのは良くないですよ」

 

「要らない世話よ妖精、それより久し振りに食べるより飲みたい気分なのよ、付き合いなさい」

 

「良いですけど……私お酒苦手なんです、前に飲んですぐ酔っちゃって……」

 

「貴方の都合なんて知らないわ、私は妖怪の王……王様の命令は?」

 

「絶対です……ってそんな王様ゲーム絶対おかしいですよ!?」

 

「いいから飲みなさい」

 

「あぅ……わかりましたぁ……」

 

気に入られたのか偶々居たからなのかはわからないが見事に大妖精は厄介な女皇に捕まってしまった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オイ、トカゲ」

 

ジゼルへの洗礼を終えた竜王を殺気が振り向かせる

 

「死に損なったか、ヴェルザー程度にようやく勝利した得意気な小娘よ」

 

「……!!」

 

幽香に青筋が浮かび更に殺気が膨れ上がる

 

「どうした?儂の下に付き世界の半分が欲しくなったか?」

 

「死にたいらしいわね……!!」

 

泣く子ももっと号泣する幽香の満開の殺気を受けても竜王は涼しい顔をしている、これも竜の王故か

 

「表に出ろ、殺してやるわ」

 

「フン……儂に物怖じせぬその威勢だけは認めてやろう、が断る、出直して来い花の妖怪」

 

「ここでやってもいいのよ……?」

 

「場を弁えろと言っているのだ、だからお前は愚かなのだ」

 

「関係無い……!」

 

「それに儂は本来の体ではない、今の儂はヴェルザーと戦った時より更に弱い、1割が精々……そんな儂と戦って気が済むか?済むなら相手をしてやるがな」

 

「……」

 

「そしてやるならばお前も全力の儂に叩きのめされるが本望なのだろうが?」

 

「……あぁ?」

 

幽香の髪がざわざわと蠢きだす、完全にキレる寸前

 

「叩きのめす?何?お前……それは私を……」

 

「舐めているのだ風見幽香、ヴェルザーに偶然勝てた程度で調子に乗れるとはおめでたい奴よ、此処で頂点にもなれぬ程度が生意気に吠えるでない……己の器を知れ、片腹痛い」

 

「ッ……!!?」

 

王故の傲慢とも言える態度が幽香を黙らせる

 

何故なら竜王の言った事は歯に布を着せなかっただけで本当の事だったから

 

「ッ~~!!」

 

幽香とヴェルザーならヴェルザーの方が強い、100回やれば99回は勝てるまでに差は有った

 

勝ったのは偶々その1回だっただけ、竜王はそう見ている

 

そしてその1回すらも竜王と軽くだが戦い手負い、しかも幽香に対する油断も有った

 

そんなおこぼれの様な勝利で誇れるのかと竜王は言ったのだ

 

「……復活は?」

 

幽香は問う

 

「復活はいつ?」

 

「あと2.3千年と言ったところだが……それがどうした?」

 

「それまでにお前の前に立てる様になってやるわ、それまで首を洗っておくのね」

 

「フフフ……そうか、ならばその時は褒美として世界の半分をやろう」

 

「要るのはお前の命だけよ、世界なんて私には必要無い」

 

「ハハハ……よく吠える女だ」

 

「覚えておけ……!必ず殺してやる……!」

 

布告した幽香は背を向け萃香の所へ戻っていく

 

「……良いのかじい……竜王?風見幽香は冗談を言う奴ではない、必ず殺しに来るぞ」

 

いざとなったら間に入ろうと身構えていたハドラーが竜王に問う

 

「あーん相手してよハドラ~!」

 

「貴方まだ竜王様にそんな口を!申し訳ありません竜王様!今すぐ黙らせますので……コラッ!悪いのはこの口ですか!」

 

「ええい鬱陶しいぞ幽々子!聖母竜!」

 

二人を投げ飛ばして改めて竜王に並ぶ

 

「そうでなくてはつまらんからだ、仮にもこの竜王が目に掛けた者……それくらいでなければ面白くない」

 

「ではさっきの意地の悪い言葉は発破という事か……」

 

「まがりなりにもヴェルザーを討った奴に大いなる可能性を見た、まだ芽だが成長すれば比類無き大輪となろう……故に現状で満足をさせたくはなかった」

 

「その目論みは成功だ、だが対価は命で支払いかもしれんぞ?」

 

「フン……負ける気など微塵も無いが、払わされるまでになれるのを期待しておこう」

 

竜の姿から人型に戻った竜王は遠いその日を思い、邪な笑みを見せる……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「立ち話もなんだ、座るがいい」

 

「そうさせてもらう」

 

テーブルを挟んでバーンと同じ身長の体のゾーマが座る

 

「……パーティーの様子を見てくるわ」

 

ゾーマを見てレミリアが席を外した

 

「気立ての良い女だな」

 

「アレは余が選んだ女、あれくらいは当然だ……それで何の用だ?祝辞を言いにわざわざ肉体をねだったのではない事はわかっている、いったい何用だ?」

 

「流石は同じ大魔王、話が早い……」

 

二人の周りには誰も近付かない、大いなる魔の王達が醸し出す荘厳な空気が人を遠ざける

 

「バーンよ……」

 

ゾーマが本題を語ろうとした瞬間だった

 

「あんた来てたんだ!」

 

チルノがゾーマの頭に乗った

 

「何やってんだバカ!殺されるぞ!!」

 

戦慄すら覚える光景に見ていた周囲がざわめきだす

 

「大丈夫よみんな!だってあたいの友達だからね!」

 

「と……友達ィ……?」

 

全く気にせずゾーマの頭を揺さぶるチルノに周囲はハラハラしている

 

「……降りろ氷の申し子」

 

意外にもゾーマはチルノに力ではなく言葉で応える

 

「お断りってヤツね!なんかあんたの体居心地良いんだもん!」

 

氷精であるチルノには氷魔たるゾーマは近しきモノがあるのだろう

 

もっとも最高位のゾーマの圧に耐えられる者は極僅か、氷帝のチルノだからこそ居心地が良いのである

 

「……」

 

不遜な態度を取られたゾーマだが怒りは感じられなかった

 

「あ!まだあんたの名前聞いてなかったわね!あたいはチルノよ!あんたの名前教えなさいよ!」

 

「……」

 

「……ゾーマだチルノ」

 

バーンが代わりに答えた

 

「ふーん、ゾーマね……よし!あたいが遊んであげる!なんか向こうですっごい竜が現れたらしいのよ!だからさっそく伝説の竜を成敗しに出掛ける!後に続けゾーマ!」

 

1人勝手に喋って何処かへチルノは飛んで行った、無論、ゾーマが続く筈が無い

 

「随分と気に入られた様だな」

 

「……」

 

「ククッ……友、か……祝ってやろうか?」

 

「くだらぬ余興はもういい、本題に入らせてもらう」

 

愉快気なバーンを睨みながらゾーマは言った

 

「チルノをよこせ」

 

それがわざわざ肉体を得てまでバーンに直接会いに来た理由

 

ゾーマはチルノが欲しかった

 

「……理由くらいは聞いておこうか」

 

「世界を闇に閉ざす為、チルノには我が復活の際に片腕として力を添えてもらう」

 

「世界征服の為に……か」

 

「アレは貴様の下で納まる器ではない、我が元で更なる高みへ昇華させてやる」

 

「……フム」

 

理由を聞いたバーンは可笑しそうにグラスを回す

 

「出来ぬ相談だな、と言うより余に決定権が無い」

 

「……」

 

「チルノと余は対等の存在だ、余の所有物ではない……アレは余の友だからな」

 

「……」

 

「本人に聞け、それでチルノが望むなら余は何も言わぬ……好きにするがいい」

 

その顔は確信に満ちていた

 

どんな甘言で誘おうがチルノがそんな道に行く事は無いと……

 

「だが貴様がチルノを奪う、と言うのならば黙ってはおらぬがな」

 

そして無理強いならば相手になる、と

 

「……貴様等と構える気は無い」

 

もしチルノを奪おうと言うならバーンだけでなく幻想郷も相手になるのは確実

 

そこまでしても良いと言える程の価値をゾーマはチルノに見ていたが既に決めていた事柄から潔く身を引いた

 

「……邪魔をしたな」

 

ゾーマはそれ以上は言わなかった

 

 

 

「世界征服……諦めるつもりはないようだな」

 

帰ろうとするゾーマにバーンは問う

 

「世界を闇に、それこそが我が大いなる望みであり存在理由、それを果たしこの飢えと渇きを満たすまで止まる気は無い」

 

そう言って踵を返すゾーマ

 

「我等は永遠になれぬ刹那……どれだけ憧れ、どれ程求めようが……幻想にはなれぬのだ」

 

呟く様に吐かれた言葉にゾーマは立ち止まる

 

「幻想には……なれぬか」

 

叶わぬ夢想、叶えたとて永遠に続かぬ刹那の望み

 

そう言われたゾーマ

 

「成程、確かにそうだろうな……何事にも永遠は存在しない、例え蓬莱だろうが……だが、我は止まらぬ、永遠の中の刹那に消え行く望みだろうが我が道を行く……そう、決めているからだ」

 

それでも構わないと闇の大魔王は答えた

 

「もう会う事もあるまい……良き余生を過ごせ、バーン……」

 

肉体を崩壊させ、ゾーマの魂は幻夢空間へと静かに帰って行った

 

 

 

「こらゾーマ!あたいに付いて来いって……あれ?ゾーマは?」

 

「帰ったぞチルノ」

 

「はぁー!?何よそれ!あたいが遊んだげるっていうのにー!」

 

「残念だったな」

 

「まぁいいわ!友達だから許してあげるわ!またそのうち遊べるでしょ!」

 

「友だから、か……ククッ……奴を友と呼ぶのはお前だけだ……いずれは誰も並べぬ大物に成れるやもしれんなお前は……フハハ!」

 

「よくわかんないけど当ったり前じゃん!あたいったらサイキョーだからね!」

 

次の遊び相手を探しに飛び立つチルノを見送り、グラスを見つめる

 

(ゾーマよ……)

 

別れを交わした魔族の王、友ではない、ではないが他人でもない

 

そんな、遥かな旅路を経て知り合った奇妙な知古にバーンは想いを馳せる

 

(大魔王と呼ばれようが我等は所詮、流れ星……ソルと同じくいつか墜ちる運命(さだめ)の星屑……ならばこそ、だからこそ、その刹那を真摯に生きるのだな、魂が望むままに……それが生有る者の務めなのだから……)

 

(余が、この素晴らしき時を求めたように……)

 

力の高が違えど本質は人と同じ、限り有る命を燃やし、永遠の中で一瞬の幻想を求めるのだ

 

そう、閃光のように……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へぇー凄い奴等が来てんだな」

 

バラモスと話す妹紅は感心していた

 

「まだ我等の空間にあと二人大魔王が存在しているぞ」

 

「まるで大魔王のバーゲンセールだな……」

 

他愛ない会話をしていた二人

 

「あの、バラモスさん!」

 

「なんだ?藤原妹紅の娘……ルナよ」

 

「天魔王とか幻魔王とかたくさん居ますけど、誰が一番強いんですか?」

 

好奇心からルナがとんでもない事を聞いた

 

「……無知とは恐ろしいものだな」

 

「そういう事をこういう奴等に聞くもんじゃないぞルナ」

 

「ご、ごめんなさい?」

 

もし王達の耳に入れば闘争不可避の禁句

 

「我風情が口にするのは畏れ多い事だが……それでも敢えて言うならやはり我が主、ゾーマ様だろう」

 

「主従抜きにしてか?」

 

「ああ、通常の状態ならば互角だろうが闇の衣を纏った真のゾーマ様ならば話は変わる、バーンも敵わぬだろう」

 

「凄いんだなそのゾーマ様って」

 

「当然だ、ゾーマ様はその偉大な御力で精霊ルビスを……」

 

主がいかに凄いかを力説し始めるバラモスの体がピクリと動く

 

「……ゾーマ様から全員に帰還の命が出た、名残惜しいがこれまでだ」

 

「そっか……また会えるんだろ?」

 

「いや、これが今生の別れだ、我とゾーマ様は幻想郷と関係を断つ、他は知らぬがな……少なくとも我とゾーマ様は今後一切関わらん」

 

「……そうなのか」

 

「藤原妹紅……我が誇りを守ってくれた不死鳥よ……娘と共に永久の壮健有らんことを願っている」

 

「じゃあなバラモス……ありがとう」

 

「さよならだ……最初で最後の……我が友よ」

 

闇に包まれたバラモスは幻想郷から消え去り、一切の魔力の残り香も無い事が永遠の別れだと妹紅に深く実感させた

 

「良かったのお母さん?もう会えないんだよ……?」

 

「そりゃ良いって訳じゃないけどさ……それがバラモスが決めた事なら私は何も言えないよ」

 

「友達なのに寂しくないの?」

 

「寂しいさ、でもちょっとだ……友達ってのはいつも一緒に居るから友達って訳でもないし、離れているから友達じゃないって事もないんだルナ……だからお母さんは平気さ」

 

妹紅はバラモスの居た場所を見つめる

 

「心は……置き合ったから……」

 

微笑みを友への餞別に、奇妙な縁からなる友へ別れを告げた

 

 

 

 

 

 

「さって……私は用事が有るからルナは誰かと遊んできな、酒は飲むなよ」

 

「えっ?う、うん……わかった」

 

ルナを置いて妹紅は1人人混みの中へ消えて行った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう戻る気?まぁ仕方ないわね、そう……」

 

常闇ノ皇は不満気に、だが納得した様子で大妖精を見る

 

「なぁんか気分良くなって来ました~歌いたい気分ですぅ~」

 

「こいつも酔っちゃって相手にならないし丁度良いかしらね」

 

立ち上がった常闇ノ皇は大妖精を鋭く睨み付ける

 

「バーンに伝えときなさい、「いずれ預けている幻想郷(モノ)を返して貰う」ってね……」

 

「はぁ~い!わっかりましたぁ~!」

 

「……フフッ、頼んだわよ」

 

微笑した皇は頭を撫でる

 

直接バーンに言えば良いのに酔った大妖精に伝言を頼んでも伝わる可能性は低い、なのにそうしたのは何故だろうか、何故それでいて笑っているのだろうか

 

「またね……私の愛しい()達……」

 

わかっているのは常闇ノ皇だけ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「帰るのか竜王?」

 

「そうだ、最初から長居をする気は無かった、各々が用で来ただけに過ぎん、ゾーマはバーン、バラモスは不死鳥の小娘、常闇ノ皇は唯一死合いと共闘を行った下等種の妖精、儂は風見幽香に……な」

 

「たった一夜の宴だ、長居にはならんだろう」

 

「我等は本来幻想郷とは無縁の関係、せっかくの宴も我等が居ては楽しめんだろう、身を引いてやろうと言っているのだ……有り難く思え」

 

「まぁ確かにお前が居れば聖母竜とジゼルは心労で倒れてしまうかもしれんしな……」

 

「……最後にハドラーよ」

 

「なんだ?」

 

「貴様の娘の事だ、あの火竜は神にも悪魔にも成れる可能性を秘めている」

 

「……悪魔とはお前の事か」

 

「そうだ、儂の様に人に仇成す邪竜となるか母の様に人を守る竜神に成るかは貴様の育て方次第、どちらも間違いではないが父は貴様……ならば良き方へ導いてやれ」

 

「わかっているが……その道に進むとは限らんぞ?」

 

「それもまた良し、ただ望むままに生きれば良いのだ、儂の様に……ではさらばだ異次元の魔族よ」

 

「ああ……またもし暇ならオレの家に遊びに来い、竜の住む町コーセルテル、そこにオレ達は住んでいる、バーン様に聞けばわかる筈だ、本来は招いてはいかんのだがお前は竜の王だからな何とかなるだろう……その時はお前の口に合う料理を振る舞ってやる」

 

「竜の住む町、コーセルテル……フン、行ってやろう……気が向けば……な」

 

竜王も消え

 

こうして王達の僅かな時間は終わりを告げたのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・宴は進む・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

相手が誰も居なくなったバーンは少し考えた後、立ち上がる

 

(探しに行かねばな……余の心が望むままに……)

 

平和を祝う民衆の中へ消えて行った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-紅魔館・客室-

 

「……うぅ……」

 

ベッドで寝ていた勇者が目を覚ます

 

(赤い……知らない天井……紅魔館……か……)

 

あの戦いから3日、ロランは眠り続けていた

 

(僕が紅魔館で寝ているという事は……勝てたんだな……みんな……)

 

ロランは生死を彷徨っていた

 

幽香と変わらぬ瀕死の重傷を負っていたがバーンが回復呪文で治して傷は塞がった、しかしすぐに目は覚めなかった、力の源である血を流し過ぎた事が原因だった、そしてすぐに治療を受けれた幽香と違いスキマを施されておらず長時間放置されていた事も眠りに拍車をかけ今まで眠り続けていたのだ

 

(体は……問題無いな、早く確認しないと……ルナは無事だろうか……)

 

寝続けた事による倦怠感があるがベッドから降り服を着替える

 

 

 

「入るぞー」

 

 

 

着替え終わる間際、ドアが開き、一人の少女が入って来た

 

「お!目が覚めたんだな!良かった良かった!永琳がその内目を覚ますって言ってたから心配はしてなかったけどあぁ良かった!」

 

笑顔を見せる少女

 

「……妹紅……」

 

ロランの時が止まっていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ぷくぷく膨れ上がって更に分ける事になりました……一応保険で?付けといて良かった……

他のキャラにスポット当てるとか言って大魔王達メインになっちゃいましたね、申し訳ありません。

今回で大魔王の内、チルノがゾーマと、バラモスが妹紅と、竜王が幽香とハドラーと、常闇ノ皇が大妖精と接点を持ちました、でも伏線でもなんでもないです、何かあっても語られざる一幕として終わる想像のお遊びみたいなものです。

次はラブコメ!そして本当に最終話……次回も頑張ります!

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