東方大魔王伝 -mythology of the sun-   作:黒太陽

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-外伝- さらば東方不敗!紅美鈴、暁に死す!

 

 

 

 

「貴様の腕前……見せて貰おうか」

 

 

 

           「相手に取って不足無し」

 

 

 

 

 

 

 

 

紅魔館の門前にて

 

誇りを賭けたファイトが行われようとしていた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「師匠、ここはいったいどこでしょう?」

 

迷いの森を二人の男が歩いていた

 

「うむ……ドモンよ、どうやら儂等は神隠しにあったのやもしれん」

 

師匠と呼ばれる初老の男の名はマスターアジアと言った

 

落ち着きはらった佇まい、体の一挙一動の綺麗かつ流麗な所作から武に身を置く者だと一目でわかる

 

武が服を着ている、まさにそう表せた

 

「そんな!?ではここはネオジャパンではないのですか!?」

 

対称的に動揺している青年はドモン・カッシュ、マスターアジアの弟子である

 

歳も14でまだ弟子入りして日が浅く未熟を絵に書いた様な感じだがそれでも大の大人よりは余程強い

 

「うむ、儂等の住む場所とは似て非なる、不可思議な場所だ……まるで古き日本の様な……いつの間に……」

 

迷いの森を迷いの森と知らず進む師弟

 

「……止まれドモン」

 

不意にマスターアジアがドモンを制止した

 

「どうしましたか師匠?」

 

「たわけ、まだ気付かんのか?儂等を囲む異様な気を持つ気配が?」

 

「ッ!?」

 

マスターアジアに告げられすぐさま臨戦態勢を取るドモン

 

「出てこい」

 

マスターアジアがそう言うと大勢の妖怪達が姿を現した

 

「ば、化物!?」

 

「ふん……化生の類か」

 

初めて見る妖怪に驚くドモンと対称に面白そうに笑みを見せるマスターアジア

 

「とんでもない闘気を感じたから見に来れば……やはり知らない顔だな、外来人か」

 

「大結界が綻んで迷いこんだみてぇだな」

 

「この近くならアリスが適役か、付いて来て貰うか」

 

「さっき誰かが伝えに行ってたぞ」

 

「そうか……なら!」

 

妖怪達が異様な形相を浮かべ二人に近付いてくる

 

「下がっておれドモン」

 

「しっ、しかし師匠……!?」

 

見た事も無い化物に動揺するドモンを制しマスターアジアが前に出る

 

「儂が相手をしてやる、妖怪変化は散滅せい!」

 

妖怪の群れに飛び込んで行った……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この先に居るのね?」

 

案内をされながらアリスは問う

 

「急にすまねぇ、俺達妖怪だと危害は加えないって言っても信用されないだろうからな、元人間のあんたに来て欲しかったんだ」

 

「別にいいわ、暇だったしね、それより……変な音しない?」

 

「……確かに、まさかあいつら虐めたりしてねぇだろうな……」

 

木陰から恐る恐る様子を見てみた二人

 

「なん……だと……」

 

「うそ……でしょ……」

 

光景に絶句した

 

「なんだこの人間はー!?」

 

「た、助けてくれぇー!?」

 

「美鈴!美鈴を呼べー!?」

 

妖怪達が蹂躙されていたのだ、たった一人の男によって

 

「ウハハハハ!どうした!妖怪とはこの程度のものか!ヘソが茶を沸かすわぁ!」

 

妖怪を殴り、蹴り、投げ、絞め倒す

 

マスターアジアの一方的な蹂躙劇が繰り広げられていた

 

「……何アレ?アレが人間?馬鹿言わないで、魔人の間違いでしょう?」

 

「……あとは任せた、じゃな!」

 

「あっ!?待ちなさい!?」

 

案内役の妖怪は逃げていった

 

「あんな人外私にどうしろって言うのよ……」

 

アリスが惨劇の場所に視線を戻した瞬間

 

「次は貴様が相手か?」

 

「きゃああああああっ!!?」

 

マスターアジアが目の前に立っていた、勿論妖怪は全滅させている

 

「むっ、貴様……少々儂等とは異なる力を持つが人間?の様だな」

 

「え、えぇ……魔法使い、魔女だから人間よ……元だけど」

 

「うむそうか、貴様は話が出来そうだな、ではいくつか質問をしたい、よいな?」

 

「いい……わよ、私もそのつもり……だったし……私の家に招待するわ……」

 

結構ビビリながらアリスは二人を連れて帰った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんと!?さっきの奴等は儂等を保護しようとしていたのか!?」

 

「そうよ……貴方達は知らなくて当然だけど今の幻想郷で人間を襲う奴は本当に極一部だけなの」

 

「しかし食い殺さんかのごとき形相であったぞ?」

 

「妖怪だからわかりにくいと思うけどアレは笑顔のつもりだったのよ……」

 

「確かに敵意は感じられなかったから妙だとは思ったが……何にせよ儂等の不手際、詫びよう……すまなかったな」

 

「理解してくれたようでよかったわ」

 

誤解が解けて物腰が柔らかくなるマスターアジアとドモンと安心したアリス

 

「貴方達の事は八雲紫に頼めば帰してくれる筈よ、連絡を取ってみるわね……ところで貴方達は何をしている人?なの?」

 

「頼む……儂等は武道家でな、流派東方不敗という武術を修めている、今は修行の旅に出ていたところだったのだ」

 

「武道家?十傑集とかではないの?衝撃のマスターアジアみたいな?……ん?あれ?流派東方不敗?どこかで聞いた様な……」

 

「何を言っているかよくわからんが違うな」

 

「まぁいいわ……今日は泊めてあげるからゆっくりしていくといいわ、明日に八雲紫に会いに行きましょう」

 

「かたじけない……ところでアリス殿、この地に強者が居るか知っているだろうか?もし居るのであれば会わせて欲しい、妖怪でも何でも構わん」

 

「強い人……ねぇ……」

 

マスターアジアの頼みにアリスは思案する

 

「うーん……難しいわね、幻想郷は色んな力を持った人が住む場所だから……大魔王となんて戦わせれないしかといって頂点も貴方とは毛色が違うし……鬼なら……ダメね、地力が違い過ぎる……あ、でもこの人もロボット生身で倒しそうなくらいおかしいし大丈夫……かしら?」

 

「……この際、少々の無礼は許してやる、で?どうだ?大魔王とやらは気になるが誰か居るのか?」

 

マスターアジアが出されていたお茶を啜るとアリスは思い出した様に手を叩いた

 

「ねぇマスターアジア、貴方の流派、東方不敗だったわよね?」

 

「いかにも」

 

「なら貴方にピッタリの相手が居るわ!色んな意味で!」

 

「ほう……」

 

マスターアジアはニヤリと笑う

 

「明日連れていってあげるわ、きっと気に入る相手だと思うわよ?」

 

「それは楽しみだ、なぁドモン?」

 

「師匠が負ける筈ありません!師匠は最強のキングオブハートです!」

 

「ハハハッこやつめ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

そして次の日

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-紅魔館・門前-

 

「……」

 

いつもの様に門番に立つミスト

 

「……暇ですねぇ」

 

いつもの様子の美鈴

 

「あ~!誰か挑戦者とか来ないかな~!」

 

「確か10年前に迷いこんだ外来人が最後の挑戦者だったな、鬼のごとき男だった……名はハンマ・ユージロー……だったな」

 

「ありましたねぇ、あの人、人間なのにホントに強かったですね、地上最強の生物なんて呼ばれてたらしいですし」

 

「凄まじい男だった、人間の身でよくぞあそこまで鍛え上げたものだ……」

 

「私も楽しかったんですけどねー、八雲紫さんが慌ててやってきて「息子さんが待ってる!早く味噌汁作ってあげなさい!!」とか言ってすぐに送り返したから決着つかなかったのは残念でした」

 

「あのまま続けていたら勝てていたか?」

 

「わかってないですねミスト~!私の流派は東方不敗!読んで字の通り不敗を掲げているんですからその問いは愚問!勿論勝ってましたよ!」

 

「ふっ……そうか」

 

美鈴を見てミストは微笑む

 

「……!?」

 

美鈴の目が一瞬見開かれた

 

(誰か来ている……気は3つ、1つはアリスさん、もう2つは知らない気……知らない2つの片方、なんて落ち着いた気……まるで明鏡止水……)

 

ミストは気付いていない

 

「!!?」

 

美鈴の眉が僅かに跳ねた

 

(強い気当たり……あの距離から気付いた私に向けて……試されましたか)

 

ミストにバレないようにニヤっと笑った美鈴は返事を返す

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぬぅ……フッフッフ」

 

霧の湖の畔を歩いていたマスターアジアは静かに笑った

 

(儂に気付くだけでなく気後れる事なく即座に気当たりを返すか……気に乱れは一切無い、見事なる武よ……アリスの言う通り楽しめそうだな)

 

 

 

 

 

 

 

 

そして龍虎は相見える

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……美鈴」

 

「ええミスト……私への客です」

 

マスターアジアのただならぬ雰囲気を察したミストは場の主導権を美鈴へ委ねレミリアに報告する為に中へ戻る

 

「!!……フンッ!」

 

「!!……フフッ!」

 

相対し互いを見た両名は実力を読み測り、笑みを浮かべ合い、同時に叫んだ

 

 

儂は             マスターアジア!

   「「流派東方不敗!」」

私は             紅美鈴!

 

 

「何だと!?」

 

「ウソッ!?」

 

そして同時に動揺する、ついでにドモンも

 

「……」

 

「……」

 

睨み合う二人

 

己が創始者故にその流派を名乗る者は居ないと知るから偶々なのはわかっている

 

故に何も言わない、互いに本物だから

 

「貴様の腕前……見せて貰おうか」

 

マスターアジアが門から離れていく

 

「相手に取って不足無し」

 

呼応して付いていく美鈴

 

紅魔館から充分に離れた平野にて二人は止まった

 

 

「間に合ったみたいね」

 

紅魔館の面子がギャラリーとして集まる

 

「なんだ、どんな奴かと思ったらじいさんかよ……って普通は思うよなぁ」

 

「ヤバイなアレ……人間かホント?」

 

頂点達も一目でマスターアジアがただ者ではないと見抜く

 

「面白い……これが人の持つ可能性の1つか」

 

バーンも興味深く見ている

 

 

 

「そろそろ始めるとするか」

 

「ですね」

 

マスターアジアが構えに入る

 

「この東方不敗が……」

 

体を半身に両手を顔の前で1回転させビシッと静止し完成される流派東方不敗の、いやマスターアジアの構え

 

「打ち砕いてくれるわぁ!!」

 

「……!!?」

 

美鈴に激情が走る

 

「……誰だって……その道では……負けたくないって事がありますよね」

 

普段見せない明確な意思、ミストですらほとんど見ない美鈴の武道家としての真顔

 

「「その構え」には……私は……負けられないですよね、言いたい事はいくつかあります……まぁ一言で言えば……!」

 

そして美鈴は構えを取った

 

「本気にさせたな……!!」

 

マスターアジアと同じ()()を!

 

 

 

 

ドウッ!

 

 

 

 

地を割る踏み抜きから二人の武道家の戦いは始まった

 

 

「……!!」

 

「……!!」

 

 

全く同じ構えから繰り出された互いの正拳がぶつかり見る者に走る雷を見せる

 

「……」

 

「……」

 

弾き、引き合った二人の武道家は拳の間合いを維持したまま睨み合う

 

「……フッ!」

 

美鈴の右腕が消える

 

「むうっ!?」

 

マスターアジアが目を見開きながら顔を僅かに逸らす、その頬には拳が擦れた跡

 

「……ヌンッ!」

 

それに応える様に次はマスターアジアの右腕が消える

 

「ッ……流石ですね」

 

同じく回避しきれず掠めた頬の感覚に笑う美鈴

 

「ではそろそろ……」

 

「ですね……」

 

互いに示し合わせる様に微笑み合うと二人の両の拳が一挙に消える

 

 

パンッ

 

 

破裂するような乾いた音が響く

 

 

パパッ

 

 

腕が消えたまま音だけが響き続ける

 

「は、速い……!?」

 

ミストが思わず狼狽えてしまう程にそれは武道家にとって凄まじい事

 

 

パパパパパパッ……!!

 

 

並みの者なら一撃で倒せる速拳をそれが標準だと言わんばかりの連打、それが互いに出来、その上で相手の拳を見切り合い、互角に打ち合っている

 

 

今、武の頂達が真の最高を決めているのだ

 

 

 

 

「ハアアッ!」

 

「セアアッ!」

 

続く乱打戦、見る者もその凄まじき速さに慣れ始めていたがそれでも拳は見る者に残像を見せ、まるで腕が幾つも有る様にすら見せている

 

「ぬぅ……なんという速さ、なんという技量だ……!」

 

ミストは驚愕しながらも糧とするべく凄絶な武の応酬を食い入る様に見つめる

 

「この場合、褒めるならあのマスターアジアって方を褒めるべきよね」

 

「美鈴は妖怪だからな、妖怪故に初めから優劣が出来ている、にも関わらずその美鈴と互角の打ち合いを出来るのだ……魔力を持たぬ人の身でよくぞここまで練り上げたものだ」

 

レミリアとバーンが忌憚無く称賛するまでにマスターアジアは強かった、異常なまでに

 

「勝てるかしらね美鈴は?」

 

「……聞けば互いに不敗を名乗る武矜者、不敗と不敗がぶつかり合えば勝つのは真の不敗……余にも勝敗は読めぬ」

 

皆が見届ける中、二人の戦いは更に白熱していく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「セアアアアッ!!」

 

美鈴の気合いの入る連打

 

「……フッ!」

 

マスターアジアが小さく笑う

 

「見切ったわ!」

 

宣言と同時に応酬は終わり、マスターアジアが手を出さず美鈴の拳を全て避けていく

 

「速さと威力は認めるがそんな真っ直ぐな拳ではなぁ!」

 

マスターアジアは余裕気に回避し続ける、その間に反撃をしないのは美鈴を舐めているからだろう

 

「読めさえすればこの通りよ!」

 

なんと目を閉じたまま回避している

 

「……セヤッ!」

 

美鈴の正拳

 

「フン……うおおっ!?」

 

得意気に回避したマスターアジアの頬を打ち抜いた

 

「見切りが甘いですねぇ、もう数瞬だけ速く出来たんですよ、駆け引きって奴ですねぇ!」

 

捉えた美鈴は一気に攻勢に出る

 

「肘打ちッ!裏拳、正拳トォリャアアアアッ!!」

 

拳の弾幕でマスターアジアを滅多打ちにする

 

「ぐおおっ!?ぬくっ……なんだとぉ!?」

 

驚きながらもそこはマスターアジア、すぐに拳を防ぎ体勢を整える

 

「つけあがるなぁ!」

 

拳を弾き後方に跳び手を眼前で回し気の陣を発生させる

 

「秘技!十二王方牌大車併!!」

 

気が凝縮し、小さなマスターアジアが何体も飛び出し美鈴を襲う

 

「気を擬人化!?なんて非常識な技……ッウ!?」

 

数体を捌くも防ぎきれずミニマスターアジアの飛び蹴りを頬、鳩尾、大腿に受け吹っ飛ばされる

 

「帰山笑紅塵!」

 

気を回収した瞬間、反転し地を蹴った美鈴が神速で詰め寄った

 

「地龍天龍脚!!」

 

「ぬぅおおっ!?」

 

震脚で浮かせてからの飛び蹴りを十字受けで防ぎ、蹴り押す反動で美鈴は後転しながら距離を離し、マスターアジアは忌々しそうに十字を解く

 

「やるな紅美鈴ッ!」

 

「そちらこそッ!」

 

二人の闘気が更に高まる

 

「超級!覇王!電影弾!!」

 

自らを回転させ、弾と化す(マスター)なる東方不敗の奥義

 

「極彩「彩光乱舞」!!」

 

金色に輝く闘気、聖光気の渦を纏い突進する紅き東方不敗の奥義

 

 

「でぇりゃああああッ!!」

 

「はあああああああッ!!」

 

 

同時に撃ち出された弾丸は炸裂し、行き場を失った闘気が嵐の様に見る者の体を揺らす

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なんつーかさ、いや……素直に凄いってのは認めるんだけどよ……」

 

「わかるわ……武道家って何だっけ?でしょ?」

 

見物していた妹紅とパチュリーが呟く

 

「あ、ありのまま今起こった事を話すぜ……武道家の決闘を見ていると思ってたらいつの間にか万国ビックリショーを見ていた……頭がどうにかなりそうだった……手足が伸びるヨガだとか音巣対流拳(ネスツリュウケン)だとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねぇ!もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ……」

 

魔理沙が◯ルナレフ状態に陥る程二人の戦いは常識を外れていた

 

「あの老人に比べれば美鈴はまだ武道家寄りだな」

 

「確かにそうだけどまだ武道家寄りって何よ、美鈴を変態呼ばわりしないでよね」

 

冷静に指摘するバーンにツッコミを入れるレミリア

 

「スッゴーイ!!」

 

「わぁ!カッコイイです!!」

 

「イケー!メイリーン!!」

 

「シショオォォォォォォ!!」

 

フランと大妖精とチルノは楽しげに見入り、ドモンはマスターアジアを応援している

 

「……ついてけないわ」

 

アリスは呆れて帰って行った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハアァアアアアッ!!」

 

「セアアアアアアッ!!」

 

息もつかずに再び乱打戦

 

だが次は様相が違った

 

「ぐぬおっ!?……ハアッ!」

 

「うくっ!?……セアッ!」

 

打ちつ打たれつの攻防

 

互いに相手の攻撃に慣れ、完全に見切った故にこうなっている

 

(よもや儂にこれだけ食い下がる者がいるとは……!偶然でも感謝せねばなるまいな!この出会いに!)

 

マスターアジアは当初持っていた僅かな侮りもとうに消え全身全霊

 

(ハンマ・ユージローとも戸愚呂とも違う強さ!この緊張感……貴方は最高の相手です!)

 

美鈴も強き武道家と戦える事に喜びを感じ全力を持って戦う

 

 

 

             儂だがな!!  

       勝つのは       

             私ですがね!!

 

 

 

流派東方不敗の名に懸けて……!

 

 

 「私の拳が……

         真っ赤に燃えるぅ!!」

 「儂の拳が……

 

 

打ち合いの最中に同時に叫ばれる気迫の声

 

 

 「勝利を掴めと

          轟き叫ぶ!!」

 「奴を倒せと

 

 

右手に紅き闘気と黒き闘気が灯される

 

 

    「メイリーン

             フィンガー!!」

    「ダークネス

 

 

必殺の掌打が交差する

 

 

「グオオオオオオオオッ!!?」

 

「ウアアアアアアアアッ!!?」

 

 

頭部を掴み合った手から闘気を流し合い激痛を与え合う

 

「ヌンッ!」

 

「ハアッ!」

 

必殺が必殺に成り得なかったからか痛みに堪えかねたのかはわからないが同時に繰り出したハイキックが互いを打ち合いよろめきながら二人は後退する

 

「フゥ……ハァ……ウッハッハッハ!やりおるわ!見事!全く持って見事!」

 

「ゼッ……ハァ……貴方こそ!」

 

息こそ切れ始めたがまだまだ闘志萎えない二人の不敗、寧ろ勝ちたい気概が更に闘志を膨らませている

 

「お前になら……儂の本領を出しても良いだろう」

 

「……?」

 

不意のマスターアジアの宣言に疑問を浮かべながらも警戒する美鈴

 

「ハアアァァァァ……!!」

 

マスターアジアが唸る様に全身の気を高め続ける

 

「こ、これは……!?」

 

周囲の小石を引き寄せるまでの気の高まりに冷や汗が自然に流れる

 

(やはりこの人も……明鏡止水の境地に……!?)

 

 

「ハアアアアアアッ!!!」

 

 

マスターアジアの気が爆発する様に解放される

 

(ウソ……これ……聖光……)

 

そこには黄金の気を纏い、黄金に輝くマスターアジアの姿があった

 

「儂も不敗を掲げる身、敗北する訳にはいかんのだ」

 

これぞマスターアジアの真の全霊

 

スーパーモードと呼ばれる高めた気が体を黄金に染めあげる短時間のリミッター解除

 

その気はまさに究極の闘気である聖光気だったが体内に強く留めた使い方は美鈴とも戸愚呂とも違うマスターアジアだけの闘法

 

「……阿呆が」

 

未だ驚く美鈴を鼻で笑い、マスターアジアは消えた

 

(速いッ!!?)

 

目で追えた美鈴だったが動揺から体の反応が一瞬遅れた

 

「未熟!」

 

背後を取られ打ち飛ばされる

 

「未熟千万!儂を前に隙を見せるとはな!だからお前は阿呆なのだぁ!!」

 

高速移動で追い付き連擊を食らわせる

 

「くはっ!?くぅ……天剣絶刀!虹色の脚!!」

 

痛みに耐え、七色に輝く蹴脚の舞を繰り出す

 

「温いわぁ!」

 

残像を残す程の速さで全て避けられた

 

「ハイパー紅色の脚!スペシャァァァルッ!!」

 

紅い光を纏う渾身の飛び蹴り

 

「温いと言ったぁ!」

 

紙一重でいなし懐に潜り込む

 

酔舞・再現江湖(すいぶ・さいげんこうこ)!」

 

動きを読ませぬ華麗な舞いのごとき流れる動きに合わせ美鈴に剛擊を与える

 

「デッドリーウェイブ!!」

 

最後に練り上げた黄金の気を美鈴の拳を避けながらすり抜けざまに流し込む

 

「爆発ッ!!」

 

締めに構えを取ると流し込んだ闘気が大爆発を起こした

 

「この機は逃さん!」

 

爆煙で美鈴の姿は見えないが勝機と見たマスターアジアは構わず突っ込む

 

「……私も、言わせて貰います」

 

「!?」

 

爆煙の中に入った直後、接近までのほんの僅かな刹那の時間の狭間でマスターアジアは確かに美鈴の声を聞いた

 

「図に乗るなぁ!!」

 

次の瞬間、黄金の聖光気が爆煙を晴らし、授けられた構えからなる究極のカウンターがその姿を焼きつける様にマスターアジアに見せつける

 

 

「構符「天地魔闘」!!」

 

 

出されていた拳を眼前にして、美鈴は動いた

 

「気符「地龍天龍脚」!!」

 

神速の抜刀の様に出された垂直蹴りがマスターアジアの拳を弾き飛ばし、無防備なまま両者は肌が触れ合う程に接近する

 

「星気「星脈地転弾!!」

 

置く様に触れた両の掌から無拍子で気弾が撃たれマスターアジアごと吹き飛ばす

 

「打ち貫く!華符「彩光蓮華掌」!!」

 

それに瞬時に追い付くまでに力を込められた掌底が気弾ごとマスターアジアを打ち抜いた

 

「ごはッ!?ぬぅくくッ……こ、これ程の技を持っていたとはぬかった……ガフウッ!?」

 

血を吐きつつよろめきながら立ち上がるマスターアジア、スーパーモードはまだ切れていないがダメージが激しく動きに精彩が無い

 

「……くっ!?うぐぅッ!?」

 

美鈴も先に与えられていたダメージが酷く、残心を決める事が出来ずに膝から崩れそうになるのを堪えるのが精一杯

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お互いかなりのダメージだ!」

 

「まだ動けそう……だけど……」

 

見守る者達も読めない勝敗に緊張している

 

「……次が最後になるか」

 

「そうね……あと一撃ならまだ互いに全力を絞れる瀬戸際、懸けない手はないわね」

 

バーンとレミリアの二人は決着の時を見ている

 

「……」

 

戦う二人を見るバーン

 

(不敗とは負けぬ事、どんな時だろうが何があろうが負けれぬ宿命……それを心の芯に背水に構える、個がかざす意地の極致……負ければ不敗ではなくなる、それは不敗にとって死と同義……)

 

誇りを賭けて戦う者達の結末を予期し

 

拳を握り締めた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クハハハッ!どうした紅美鈴!酔っているのか?足を踏ん張り、腰を入れんか!」

 

先にダメージから抜けたマスターアジアが渇を入れる様に怒声を浴びせる

 

「言われなくとも……ッ!」

 

気を落ち着かせ、しっかりと立って見せて構えを取る美鈴

 

「ウハハハ!流石だ紅美鈴!それでこそ東方不敗を名乗るに相応しき武道家よ!」

 

「ありがとうございます、ですが……それだけに残念でなりませんね」

 

美鈴の言葉にマスターアジアの表情に哀愁が漂う

 

「そうだな……どちらかが消えねばならん」

 

二人にとって名乗りをあげた時からこれはただの試合ではない、いや……不敗を掲げる以上、常に負けられない世界に居る

 

故にこれは最初から誇りと生死を賭けた決闘だったのだ……

 

「難儀なものだな……お前とは違う形で会いたかったわ」

 

「これも運命です、不敗の二人が出会った……であるなら成す事は、決める事はただ1つしかありません」

 

「そうか……ならば儂かお前、どちらが真の不敗か……決着をつけてくれるわッ!!」

 

「望むところッ!!」

 

 

「「ハアアアアァァァァアアッ!!」」

 

 

二人の気が高鳴りを始める

 

「流派!東方不敗はァ!」

 

マスターアジアが叫ぶ

 

「王者の風よ!」

 

美鈴も応えて声を張り上げる

 

「全新!!」

 

「系裂!!」

 

 

「「天破侠乱!!」」

 

 

 

 

「「見よ!東方は赤く燃えている!!」」

 

 

 

気が最高潮まで高まる

 

 

「ハァァァァ流派!東方不敗がぁ!」

 

気の全てが集まっていく

 

「最終ゥゥ奥義ィィ!!」

 

膨大な気が大地を揺らす

 

それだけの気を余す事なく拳という一点に集約し発射体勢にマスターアジアは構えを取る

 

 

 

「我が心……明鏡止水!されど!この拳は烈火の如く!!」

 

同じく地を鳴動させるまでの気の全てを体内に凝縮し、納めた美鈴は地に影響を与えず静かなる闘志を滾らせる

 

「ゆくぞォ!流派!東方不敗の名のもとに!!」

 

そして構えずに、鳴動する大地の中で一人揺られずに一歩、一歩とゆっくりと進んでいく

 

 

「……!!」

 

「……!!」

 

 

地を揺らす震撼のマスターアジアと極めて静謐の美鈴

 

まさに静と動の極致

 

二人の培い、鍛えた究極の武が今まさに、雌雄を決しようとしていた

 

 

「……」

 

美鈴が止まった

 

己の間合いに入ったからだ

 

構えはしないがいつでも良いぞと顔が言っている

 

「ゆくぞォッ!!」

 

「来いッ!!」

 

そして同時に不敗の技を繰り出した

 

 

 

「石破天驚拳!!!」

 

 

「紅符「天地魔闘」!!!」

 

 

 

マスターアジアの百邪必倒、拳を型どる闘気の波動弾

 

美鈴の無構の武神技

 

不敗の最後にして最高が勝利を求め衝突する

 

 

 

 

 

 

 

 

バシュッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

二人の間を闘気の壁が遮った

 

「双方手を引け、悪いがそこまでにしてもらおう」

 

「何奴!?」

 

「バーンさん!!?」

 

闘気の壁、カラミティウォールを消したバーンが二人の間に立つ

 

「何の真似だ貴様ァッ!!」

 

マスターアジアが隠さぬ怒りをぶつける、明らかに決闘に乱入してきたバーンに向けて

 

「……私も同じ意見です」

 

美鈴も鋭く睨み付けている、矜持を賭けた死合いを邪魔したのだから当然

 

「このままではどちらかが死ぬ、故に勝負無効で終わりとする」

 

この答えにマスターアジアは更に怒った

 

「寝言は寝てぬかせッ!そんな決定権は貴様には無い!つまらぬ真似をしおって!今すぐそこを退けい!」

 

「……バーンさんの頼みでも聞けません、退いてください」

 

当然の反応だった

 

バーンの行為は矜持を賭けていた二人にとって余りに無粋、侮辱の極みとも言える行為

 

 

 

 

 

「オイ……ヤバイぞ」

 

周囲もバーンの行動がもたらした不穏な空気に驚きと焦燥を見せている

 

「……」

 

その中でレミリアと

 

(美鈴……!)

 

人知れず拳を握るミストだけは違う事を考えていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「誇り高き不敗の矜持には素直に尊敬の念を抱く」

 

バーンはマスターアジアへ語りかける

 

「負けは死と同義……それは余にとって許せぬ事態」

 

マスターアジアに向かって語っているがそれは背の美鈴に言っていた

 

「余は……この中の誰が欠ける光景も見たくはない、美鈴が死ぬ可能性が僅かでも有るならば、防ぐのが余の定め」

 

誇りも矜持も何もかも理解出来る、尊重してやりたいとも思う

 

だが死ぬのだけは、それだけは許せなかった

 

共に歩みたいが故に……

 

「責任は全て余に有る、咎はいくらでも甘んじて受けてやる……その代わりに……!」

 

バーンの魔力が上昇していく

 

「この場はこれで幕とする、不服がある者がいればかかってくるがいい」

 

流麗に動く両手が定位置にて定まった

 

「余が相手を仕まつろう」

 

天地魔闘の構えで告げた

 

「!!?」

 

それに驚愕するわマスターアジア

 

(こやつ本気で……!?それだけの覚悟と意思が有る……!そして……あの構えは先の紅美鈴と同じだが奴よりも……遥かに……ッ!!?)

 

自分を含んで全員を相手にしても構わない覚悟、それを成し遂げるかもしれない底知れぬ力をバーンから感じたのだ

 

 

「……」

 

一方で渦中の美鈴は静かにバーンの背を見ていた

 

(お嬢様……)

 

ここまで来ては最早自分の判断では動けないと悟った美鈴は主たるレミリアを見た

 

 

「……」

 

僅かに見つめ合った後、レミリアは横に首を振る

 

「引きなさい美鈴」

 

美鈴の想いは当然理解しているレミリアは本当は気の済むまで戦わせてやりたかった、だがバーンのあれだけの覚悟を見せられては美鈴の望む戦いは出来ないと諦めそう言わざるを得なかった

 

「わかりました……バーンさんの顔を立てて引きましょう」

 

美鈴は闘気を消し、戦意を納め深呼吸をして息を整える

 

「紅美鈴……!ぬぅぅぅ……!!」

 

誰よりも勝ちたい相手が引いた事が信じられず、だから悔しく、そして原因を作ったバーンはより憎く、マスターアジアは表せない怒りに打ち震える

 

「……貴様、名は?」

 

誰が見てもわかる怒気を形相に表しバーンに歩んでいく

 

「……バーンだ」

 

構えを解いたバーンにマスターアジアは眼前に立つ

 

 

 

 

ズドオッ!!

 

 

 

 

「……ぐっ」

 

マスターアジアの拳がバーンの腹部を打ち抜いた

 

「バーン……これで勘弁してやろう、感謝するがいい」

 

「……すまぬ」

 

スーパーモードを解いたマスターアジアはドモンを呼び、去ろうとする

 

「まぁ待ちなさい……客人をもてなさず帰すのはスカーレットの恥、泊まっていきなさい貴方達、バーンの非礼の詫びも兼ねて、ね?」

 

レミリアが呼び止めるがドモンが一瞬振り返っただけでマスターアジアは止まらない

 

「まっ……帰さないけどね?」

 

魔理沙達が二人に立ち塞がった

 

「泊まってけって、な?」

 

「今日の宿のアテなんか無いんだろ?遠慮するなって」

 

「あの……来てくれませんか?御弟子さんもまだ子どもですし……」

 

妹紅と魔理沙と大妖精が笑いかける

 

「スゴイスッゴイスゴーイ!ねぇなんであんな事出来るの!?人間なのに!なんでどうして教えて!?」

 

「やるわねあんた!あたいと枕投げする権利をあげる!ありがたく思いなさいよね!」

 

フランとチルノがせがむ様に腕を引っ張る

 

「師匠……」

 

ドモンが困った様に見上げるがマスターアジアは構わず進む

 

「マスターアジアさん」

 

美鈴の声で足は止まった

 

「私からもお願いします、泊まっていってください……お話もしたいですし……」

 

「……」

 

激闘を演じた過去最強の武道家からの言葉はマスターアジアの心を強く打つ

 

「よかろう……世話になる」

 

まだ機嫌は直っていないが宿泊が決定した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「良かったのか美鈴?」

 

その日の夜、紅魔館から離れたいつもの鍛練場に向かいながらミストが問う

 

「残念ですよ、でも仕方ありません……私でもマスターアジアさんの立場だったら仲良くなんて出来ないでしょうし」

 

マスターアジアは打ち解ける事はなかった

 

最低限の会話だけで食事を済ませた後、ドモンと共に部屋へ行ったきり出てくる事はなかった

 

「だからと言ってこんな時にまで修行をしなくともいいだろうに」

 

「こんな時だからこそですよミスト!こんな貴重な体験をした時こそ忘れない内に己の武の糧にしなければなりません!」

 

「わかった……では今日も指導を頼む」

 

「ハイッ!では行きますよ!」

 

二人は構え、組み手が始まった

 

「すまなかった美鈴」

 

最中、ミストが突然謝った

 

「あの決闘の最後、私は動けなかった……お前が死ぬかもしれないというのに……動きたくなかった……私の役目だというのに……」

 

ミストは止めなかった事を悔いていた

 

頭では止めねばと思っていたが何故か体が動かなかったのだ

 

「それは貴方が武道家になったからですよ」

 

美鈴は嬉しそうに笑った

 

「剣士なんかもそうですが求道者というのは皆、自分が最強と思っている人ばかりです、私やマスターアジアさんはそれの最上位みたいなものです」

 

我が事の様に美鈴は喜んでいる

 

「どちらが強いか、それを確かめずにはいられない馬鹿な人達……ミストはそんな人達の仲間になったから止めたくなかった、結末を知りたかった……そうでしょ?」

 

「……止めればお前は喜ばないと思った、だが止めたい気持ちも強くあった……決めかねているうちにバーン様が止められた……」

 

「それでいいんです、貴方も武道家なら……」

 

そっと手をミストの頬に添える

 

「それに……ミストは私の勝利を信じて疑わなかったでしょう?」

 

「当たり前だ!あのまま続けていれば勝っていたのはお前だ美鈴!」

 

「それが聞ければ充分ですよミスト!」

 

組み手を再開する二人

 

 

「ほう……休まず鍛練とは流石だな紅美鈴!」

 

 

一際大きな木の天辺から声が響く

 

「ハッ!」

 

「トォ!」

 

天辺に居た2つの影が飛び降りた

 

「それでこそ東方不敗を名乗るに相応しき武道家よ!!」

 

「うおおっと!?」

 

華麗に着地した老人と少し失敗した少年

 

「マスターアジアさん!」

 

「それと弟子の小僧……」

 

そう、あの二人だった

 

「貴方も居たんですね、御弟子さん一人と思ってました、御弟子さんは頑張ってましたが気配を絶ち切れてませんでしたからすぐわかりましたけど……」

 

「ふん!まだまだヒヨッ子だからな」

 

「ゲッ……バレてたのか……」

 

(弟子にも気付けなかった……私もまだまだだな……)

 

焦るドモンと戒めるミスト

 

「どうして此処に?」

 

「お前の弟子が無様に闘気を垂れ流しながら出ていったから気になったのだ」

 

「あ~……まぁミストはまだ武を修行して日が浅いですからね、仕方ない……事もない、かな?私の指導不足かこれ」

 

「……面目無い」

 

「常在戦場!武道家とは常に如何なる時も修行と心得よ化生の男よ!」

 

ミストに渇を入れるとドモンを指差す

 

「お前は奴と遊んでおれぃ、未熟者同士ちょうどよかろう!儂は紅美鈴と話をする」

 

「わかりました師匠!……来い変な奴、オレが遊んでやる!」

 

「いいだろう……思い知るがいい、己の未熟さを……!暗黒真空拳の力を見せてやる」

 

二人は離れて対峙する

 

「ガンダムファイトォォォォ!!」

 

「待て!なんだそれは!?」

 

「レディー……!」

 

「待てと言っている!ガンダムとはなんだ!?答えろ!!」

 

「ゴォォォォッ!!」

 

ファイトと言う名の組み手が始まった

 

 

 

 

「さて……何を話しましょうか?」

 

弟子の組み手を見ながら美鈴は言う

 

「たわけ、あれ程拳で言葉を交わしてこれ以上何を話す事がある」

 

「まぁそうですよね……わかってますよ、では言葉を変えます……何の用ですか?」

 

「紅美鈴……拳を出せ」

 

「こうですか?」

 

言われるまま拳を差し出すとマスターアジアが拳を合わせた

 

「えっ!?何コレ……!?」

 

両の拳が光り美鈴は慌てるが痛みも何も無い

 

「何か浮かんで来た……紋章?」

 

手の甲に見た事の無い模様が刻まれている

 

「これはキングオブハートと呼ばれるシャッフルの紋章……偽物だがな」

 

「キングオブハート……」

 

不思議な紋章をまじまじと見つめる美鈴に己の紋章を見せながらマスターアジアは言う

 

「何の効力も無いがこれを同じ不敗を掲げる儂からの友誼の証としたい……どうだ?嫌なら消すが?」

 

「嫌なんてとんでもない!嬉しいですよ!格好良いですしね!」

 

出したり消したりしながら喜びを見せる美鈴

 

「……継ぐのはあの子ですか?」

 

「さよう……今はまだまだだがいずれは本物のキングオブハートの継承者として成長させるつもりだ」

 

「その時は御弟子さんに挑みに来てくれるよう言っといてくださいね」

 

「たわけが、またあのバーンという大魔王を相手にするつもりか」

 

「冗談ですよ、本気の様な……冗談です」

 

「ふん……」

 

それから二人はもう話す事はなく、二人の弟子を見守るだけだった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「世話になった」

 

「ありがとうございました!」

 

次の日、バーンが紫を呼び二人は帰る事になった

 

「強くなれ小僧……誰よりも……お前の成長を此処より祈っている」

 

「お前もなミスト!……じゃあな」

 

強敵(とも)と握手を交わして別れを告げる

 

「ではな紅美鈴……もう会う事はなかろう」

 

「ええマスターアジアさん……御元気で」

 

紋章を見せながら微笑む美鈴に微笑で返したマスターアジアはドモンと共に元の世界に帰って行った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

誰も居なくなったその場所で美鈴は一人叫ぶ

 

 

 

「流派!東方不敗はッ!!」

 

 

 

同じ不敗を背負う友へ贈る今生の別れの言葉

 

 

 

「王者の風よ!全新!系裂!」

 

 

 

「天破侠乱!!」

 

 

 

 

 

「見よ!東方は赤く燃えている!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

       血 看 石 全 王 東 新

       染 招 破 新 者 方 一

       東 ! 天 招 之 不 派

       方   驚 式 風 敗  

       一              

       片             

       紅 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                  東方武闘伝 完

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




やりたかったネタです。

またガンダムかよ……と思われるかもしれませんがガンダムと言うよりは師匠だけがメインです。

今さらですが美鈴が一番優遇されてる様な気がしますね、ギャグもシリアスもバトルもこなせて喋らせやすいし美人だし……もしかしたら東方キャラで一番好きになったかもしれません。

次はルナの外伝ですがその前にちょっとエピローグに関わる小話を1話分入れる事になりましたのでご了承ください。

次回も頑張ります!

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