東方大魔王伝 -mythology of the sun- 作:黒太陽
「バーン……だって?」
暫くの間、静寂に包まれていた図書館に魔理沙の声が響く
「何言ってんだミスト?バーンはここに居るぜ?疲れてんのか?……もう一回言うぜ?何言ってんだミスト?」
変なものを見る様に魔理沙は問う、そしてその問いは今この場の誰もが思っていた事の代弁でもあった
「……嘘ではない、敵の正体は老いたバーン様が率いる魔王軍だ」
「……ホントにそうなのか?」
まだ信じられない魔理沙の問いに
「嘘ではない!!」
ミストが出した本気の怒声が真実なんだと改めて思い知らされる
「……そうか、余か……」
悟ったバーンが目を閉じる
(にとりは時空が異なる場所に有ると言っていた……その時点で余の居た世界ではないとわかってはいたが……まさかヴェルザーではなく余自身とは……)
受け入れるとは言ったが中々に重い事実、自分が敵だなどと言われてはさすがのバーンにもくるものがある
「……」
目を開けたバーンは口々に話し合う皆を見る
「つまりどういう事なんだぜ?」
「さっぱりわかんない!誰かさっさと説明しなさいよ!」
「実はバーンさんが昔に生き別れた双子の弟だったとかかな?……違うよね」
「わかった!クローンだよ!バーンの血とかから作ったクローン魔族!バイオバーン!ゴル○ムの仕業だよ!」
魔理沙や幼い3人が投げたり予想を飛ばす中
「……平行世界か」
謎を解いたパチュリーが呟いた
「パチュリー!お願い!あたいにわかるよーに説明してよ!頭がバカになりそーなの!」
「落ち着きなさいチルノ、なりそうじゃなくてもうなってるから心配しないの」
「……?……うん!」
笑顔で笑うチルノの後ろでは涙の止まらない大妖精にハンカチを渡す紫が見えた
「そのソルと呼ばれるバーンは平行世界の同一人物でしょうね」
「平行世界の同一人物?」
「……チルノにわかるようにって無理よ……そうね……とても似てるだけの別人ってところかしら」
「偽物って事?」
「偽ではないのだけど……まぁそんなところね」
説明は不可能と知ったパチュリーは適当に納得させるとバーンへ向く
「そうでしょう?」
問われたバーンは頷く
(そうだ、知ってしまえば違和感は無い、何故なら余は既に同じ存在を知っているのだから……)
バーンにそこまでの動揺が無かったのは過去に幻想郷で会った3人が理由だった
(ハドラー……キスショット……暦……)
そう、ここで出会ったあの3人も平行世界から来た者達だった、平行世界に直に触れていたからこそバーンはすんなり受け入れたのだ
(……平行世界のハドラーが居るのだ、同じく平行世界の余が居てもなんら不思議ではない)
そうなると気になる事が出てくる
「知ったところで意味は無いけどソルはいつの貴方が分岐した貴方なんでしょうね」
(それだ、パチュリーの言う通り知ったところで意味は無いがいつの余から分かれたのか……ミストによれば老人の姿、更に軍団にも差異が有るがミストを知っている、それにキルの余を見た反応……余を古くから知る反応ではなかった……わからぬな)
平行世界のバーンであるソルについて皆が考えているそんな中
「……」
言葉も耳に入らずミストはバーンを見ていた
(ソル……奴にはとても懐かしいものを感じた……今のバーン様には無くなってしまわれたものが……)
あの後、ソルの正体を見て帰ってくるまでの事を思い出す……
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
大魔宮・謁見の間
「どうしたミスト?よもや余の顔を忘れた訳ではあるまい?」
グラスを片手に微笑むソル
「ああっ……貴方は……!?」
激しくミストは狼狽える
何故なら目の前には自分の良く知るあの老人の姿のバーンが居るのだから
「まさかお前が生きているとは思わなかった……何があったか知らぬが幻想郷とやらで生き延びていたのだな」
どうやらソルはミストを平行世界のミストだとは知らないらしく本人と思っている
「バ……バーン……」
ミストが溢した言葉にソルはピクリと反応を示した
「しばらく見ぬ内に呼び捨てに出来るようになっていたか……」
ズンと来る威圧をぶつけられる
「……」
怯みはしたがミストは黙り訂正しなかった
「まぁいい……久方振りにお前に会えて余は気分が良い、少々の無礼は多目に見よう」
「……」
そう言いながら酒を一口飲むと告げる
「ここで再会したのも運命だろう……帰ってこいミスト」
しわがれた老人の見た目からは想像も出来ない程の艶のある声がミストに染み渡る
「お前が戻ってくるなら余は嬉しい……それにまた預けたいものもある、お前に預けるならば余も安心だ」
昔に感じたものより更に高くなっているそれに思わず見とれてしまう
「また余に力を貸すがいい」
頼みではなく命令、なのに魂が拒絶を感じない、それが正しい事だと思ってしまっている
(これはまさしく……私が仕えたバーン様……)
ミストがソルに見たのは魔王軍時代のバーンそのもの
あの得も言えぬ魅力に溢れた偉大な大魔王の姿を見たのだ
「人を消し、神を討ち……天魔を統べた今ではさしたる意味も無くなってはいるが……」
「……?」
その姿の中にミストは何か虚しいものを感じる
「まぁそれはよい、お前が戻ってくるのなら以前と変わらぬ地位を約束しよう」
「……ッ!?」
心が揺れる
「さぁ……また余の為に働いてくれ」
「……わ……わかり……」
思わずそれが溢れてしまいそうになったミストは悪くない、同一人物からの命令だったのだから
「その死に損ないを捨てて……」
だがそれはその後に続いたソルの一言で止まった
(美鈴……!)
背に持たれる瀕死の美鈴の存在を思い出す
「優れた肉体だったのだろうがそれはもうダメだ、捨てるがよい……お前にはもっと相応しい肉体がある」
ソルは目配せすると頷いたガルヴァスが槍を構え美鈴に歩み寄っていく
「……」
ミストは目を閉じ想いを巡らせる
「……ソルよ」
目を開けたミストの放った言葉にガルヴァスは止まった
「断る……!!」
そして答えを言った
「……なに?」
またの呼び捨て、まさかの返事にソルの目付きが鋭くミストを射ぬく
「私が忠誠を誓ったのは……貴様ではない!」
「……何を訳のわからぬ事を言っている?」
誓ったのは自分の筈、なのに妙な事を言うミストがわからない
「貴様は美鈴を捨てろと言った……私の仕えるあの方なら決して出る筈の無い言葉だ」
「さっきから何を言っているのだミスト……」
ミストらしかぬ言葉に洗脳が頭を過るソルだったが語るその目が本心であると疑いようが無いのが余計にわからなくさせる
「ではミストよ、お前は余に敵対する……そう言いたいのだな?」
最後通告とも言える問い
寛大な心を持つソルだからこそ出した最後の確認
「一度では理解出来ないのなら何度でも言ってやろう……」
それにもミストは一切の迷い無く言い放った
「貴様は幻想郷の敵だ!!」
そこに行くつもりは無いと……
「……残念だ」
ソルのミストを見る目が変わった
興味の無い玩具を見る様などこまでも冷めた瞳に……
「愚かなりミスト……再び魔王軍に戻れとソル様の誘いを蹴るばかりか卑下にするとは……万死に値するぞ貴様!!」
ガルヴァスが槍を構え怒りを滲ます踏み込みで詰め寄ってくる
「よいガルヴァス、この場は見逃してやろうではないか……それを別れの餞別にしてやろう」
「なりませぬ!件の戦地の原住民ならいざ知らず!こやつはソル様の腹心だった者!裏切りには死を与えねばなりません!!」
ソルの提案をガルヴァスは聞かなかった
ガルヴァスからすればミストは件の戦地である幻想郷の原住民の一人だったが蓋を開ければ以前に魔王軍に属して居た者でありソルに忠誠を誓っていた最古の男
それが軍を、主を裏切ると言うのだ、例えソルが許そうと軍を任されている立場からも個人的にも許せはしなかった
「……好きにするがいい」
ソルは止めなかった
自分の言葉を悪く言えば無視したガルヴァスを止めなかった
それは既に戻っていた空虚な瞳によるものなのか……
「あの世で後悔するがいい!!」
「くっ……」
衰弱した体では戦う事はおろか帰還用のスキマ球に触れるのにさえ遅い、かといって念じるだけで可能なパレス内転移をするにしても潜入がバレているのだから探し回っているだろう事は確実であったしどこに敵が居るかもわからないため迂闊に転移出来ない、もしテリーやグレイツェルの居る場所に行ってしまえば即座に終わりなのだから
もはやミストに退路も進路も無く、有るのは美鈴共々の死路だけだった
「ちょっといいかねぇ」
間の入口から響いた声に槍はミストの目の前で止まった
「……何の用だ戸愚呂」
ガルヴァスが声の主、戸愚呂を睨む
「俺からも頼みたい、そいつ等を逃がしてやってくれないかね?」
頼みにより一層槍を持つ手に力を入れガルヴァスは睨む
「……気に入ったのか?」
「まぁそうなりますかね、その女が本命なんだが出来ればそいつも逃がしてやって欲しい……兄者が目をつけるだろうからねぇ」
「……」
「あんたが嫌なら諦めるが……ダメかね?」
数秒ガルヴァスは沈黙すると大きく息を吐いて槍を仕舞った
「……ソル様の頼みでもある、好きにしろ」
「苦労ばかり掛けるなガルヴァスさん」
「ふん……そう思うなら自重しろ」
ガルヴァスが身を翻し離れると唖然とするミストへ戸愚呂が歩み寄っていく
「そういう事だ、本当に死ぬ前にさっさと帰るんだな」
「……感謝はせんぞ」
「そんな事はしなくていい、代わりにそいつが目覚めたら伝えといてくれないかね?」
「……何をだ?」
それを言う瞬間、ミストでさえ戦慄してしまう程の笑みで戸愚呂は笑った
「次はいい「死合い」をしよう……とな」
その後、ミストと美鈴はスキマを使い幻想郷に帰ってきたのだった
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ミスト……」
「……ハッ!?」
バーンの呼び掛けでミストは我に返った
「どうした?暗黒闘気の減少以外にどこか痛むのか?」
心此処に在らずだったミストが心配で声を掛けたのだ
「いえ……心配要りません」
「そうか……色々と気になる事はあるがまずお前達が生きて帰ってこれた事を喜ぶとしよう……よくぞ美鈴を見捨てなかった、そうなってくれたお前を余は誇りに思う」
「勿体無き御言葉です……」
もう治療も終わる頃、ミストはバーンをじっと見つめていた
(そうだ……ソルは昔のバーン様そのものだった、私が死んでも良い手駒が消えたくらいにしか思わない、言葉の1つも無いだろう非情な……)
バーンがとても眩しく見える、いつも見ているのに今は余計に……
(バーン様は幻想郷に来て情を知った、友情や愛情……引き換えに非情が無くなった、魔王軍が無くなり大魔王ではなくなった事も関係あるのだろうが幻想郷の者や知古に対等に接する様になられた……失態を犯した私の願いを即座に聞いてくれたのが私すら対等に見ている何よりの証)
まるで太陽の様に……
(やはり私の主は貴方以外に有り得ない……貴方に諭され真に友や仲間と呼べる者が出来るまでに変わった私の仕える主はやはり同じく変わられた貴方以外に有り得ないのだ……)
(改めてわかった……私も貴方が良いのだ……)
優しい友の様な主にそっと頭を垂れる
(しかし……ソルに惹かれてしまったのもまた事実……)
それが不甲斐なく思うからミストは言うのだ
「申し訳ありませんバーン様……私はいつまでも貴方だけの黒い霧で在り続けます」
謝罪と覚悟を
「……そうか」
ミストの心中を察したバーンは何も言わず微笑みを返すのだった
「大丈夫かいミストー!!」
「美鈴さん大丈夫なんですか!?」
図書館のドアが勢い良く吹っ飛び萃香とルナが飛び込んで来た
「喧しいのが来たぜ……おい
「永遠の17歳である私をババァ呼ばわりとはなんて失礼な……ミストが怪我したんだもの、盟友の萃香に伝えるのは当然でしょう?ルナは永琳と一緒に来たんでしょ」
「勘弁してくれよ、ただでさえ訳わからん状況なのによ」
面倒な奴等が来たとうんざりする魔理沙に紫は楽しそうに微笑み様子を見る
「ドアを壊すな萃香……」
「知ったこっちゃないよんな事ぁ!ってあんた小さくなってんじゃないか!誰にやられたんだい!?私がぶっ殺してやるからさっさと言いな!」
「やったのは違うバーン様が率いる魔王軍だ」
「は?バーンだって?……おいバーン!良い歳こいて舎弟集めてリンチたぁどういう事なんだい!えぇ!?」
「違う!よせ萃香!違うバーン様だと言っただろう」
「喧しい!引っ込んでなミスト!私はバーンと話してるんだ!オラ何とか言いなロリコン大魔王!ぶっ殺されたいのかい!?」
「黙っていろ萃香ぁぁぁぁ!!」
「美鈴さん大丈夫なんですか!?」
「ああ、怪我はバーンが治したからな」
「やっぱり病気の方はよくないんだ……」
「はぁん?病気ぃ?」
「え?永琳さんが美鈴さんは怪我と一緒に「くるぶしつやつや病」が再発してそっちで苦しんでるって……」
「……そうだったな(くるぶしつやつや病ってなんだよ……心配かけまいと言ったのはわかるけどよ、天才なんだからもっとましな嘘言えよな)」
「パチュリーさんどんな病気か知ってますか!?」
「くるぶしつやつや病とはその名の通りくるぶしがつやつやになってしまう良性の重病よ、昔に何処かの異世界に居た高名な武道家が発症した奇病……治すにはこの「涙のどんぐり」を食べさせないといけないの」
「それください!私が食べさせて来ます!」
「じゃあ頼むわね……それと声をかけてあげなさい、そうすればもっとよくなるから」
「わかりました!行ってきます!」
「……お前、子どもあしらうの上手いな」
「チルノで慣れてるからね」
「へっへーん!そんなに褒めてもカエルくらいしかあげないからね!」
「褒められてないよチルノちゃん……」
「良いじゃん大妖精!チルノはこうでなきゃ!」
こんな時でも明るく笑う
それだけ皆に情が有り、絆が有る証拠なのだ
「はぁ……もう少し緊張感を持って欲しいものね……」
そうは言いながら咲夜に人数分の紅茶を用意するよう言うあたりレミリアもこの紅魔館が笑顔で溢れるのが満更ではないのだ
「今くらいしか笑えぬかもしれんのだ……直に笑えなくなるかもしれん」
そう、まだ何も解決していないのだ
今回は敵を退け親玉の正体を得たがそれだけなのだ
敵のほんの一部を削っただけであるしこちらにも被害がある、まだ敵がどれだけ存在しどれだけ強いのか、更には目的さえも知らないのだから
「笑える内に笑っておけ……余もその方がよい」
出来る事が少ないバーンはソルについて考えるのだった
大魔宮・謁見の間
「余……だと?」
ソルもガルヴァスからバーンの事を聞きその目を僅かに見開いていた
「はっ……幻想郷に居るのはソル様自身……この際バーンとしますか」
ガルヴァスから再確認するとソルは眉間に皺を寄せる
(……考えられるのは平行世界……あぁなるほど、あのミストも平行世界のミストという事か、ならばあの言葉も理解出来る……あやつらしい)
ミストが断った理由を知り納得する、本当は違うのだがソルにはどうでもいい事
「しかし余自身とはな……」
軍をガルヴァスに任せ空しい時を過ごし気にもしていなかったソルにとっても相手が己自身と聞けば感じるものがある
「平行の異世界に居る余……ガルヴァス、お前はどう見る?」
腹に大穴が空いているキルにキルギルの所へ行ってこいと命令を下したガルヴァスにソルは問う
「はっ、数回に渡る幻想郷との接触でわかったのは幻想郷に軍は存在しないという事、連携は上手く出来てはいますが統率が無いのです、全く無いとは言いませんが我等に比べれば非常に拙いもの……つまり率いる者が存在しないのです」
「ならばあちらの余は支配もせずその幻想郷に住むただの住民と言うのか?」
「おそらくは……ですが、なにぶん情報が堅く守られていて何故幻想郷に居るかなど経緯はわかりません」
「ふむ……支配する気はないが重要な位置に居る、そんなところか……ならばそれから導き出されるお前の意見を聞こう」
「これらから考えるにあちらのバーンは……」
ガルヴァスの口角が吊り上がる
「勇者に敗北した……と私は思っております」
その予想は合っている
バーンは勇者に敗北した後に紫によって幻想郷に連れてこられ紆余曲折を経て今を生きているのだから
「そうか……敗北した余か……」
ソルは背もたれに腰を深く落とすと目を閉じた
「……くくっ」
吊り上がった口から僅かに漏れる
「フハハハハハッ!」
押さえられない声が間に響き渡る
(おお……数年振りにソル様が笑われた!)
興味を持ってくれたのだとわかりガルヴァスは嬉しそうに笑みを作る
「これがお前がいつになく慎重になっていた理由か……!なるほど……確かに面白い!敗北した余が居る戦地か……くくっ!これほど愉快なのはあの時以来……いや、それ以上か……!」
これ程面白い事は無いとソルは笑う
「ハーッハッハッハッ!!」
その瞳にはいつ以来かわからぬ生気が灯っていた
紅魔館・図書館
「ソルはいつのバーンから分かれたんだろうなぁ……」
落ち着いて皆で紅茶を飲む中、ずっと考えていた魔理沙が口に溢した
「考えても仕方無い事だけど今はそれぐらいしか出来ないか……そうね……ミスト、貴方もわからない?バーンパレスに潜入した時に何かヒントになりそうなの見たりしなかった?」
パチュリーに問われてミストは考え首を振る
「無いな……私が見た事で強いて挙げるならバーンパレスは劣化が激しく外部も内部も傷だらけだった事と明るい魔界の空を飛んでいたくらいか」
「そう……」
何の気なしに言ったミストの言葉に誰も何も思わなかった
「……何?」
バーン以外は……
「魔界が……明るかっただと……?」
説明を求められミストは話す
「はっ、私が見た魔界……おそらくはソル、つまり平行の我等の世界の魔界、そこは太陽の光が射し草木が生える場所でした」
まだミストはわからない、知っている筈なのに気付かない
自分がどれだけ凄まじい事を言っているのかを
「……なるほど、ソルはいつの余から分かれたのかこれでわかった、おそらく間違いあるまい」
「なんと!?」
「いつなんだぜ!?」
バーンの言葉にミストは驚き他の皆が答えを求める
「……ミストよ、お前は魔界に太陽の光が射していると言ったな?」
「……はい」
「では我等の知っている魔界とはどのような場所だった?」
「それはもちろん暗い場所です、マグマがたぎる見渡す限り不毛の大地、地上という蓋のせいで魔界には太陽の光は……ッ!!?」
そこでようやくミストも気付いた、太陽の光がいつも有る幻想郷に長く住み、当然と思っていたから気付けなかったのだ
ソルの世界の魔界の異常な事態を……
「ああああっ……ソルとは……まさか!?」
「そういう事なのだろうな……それ以外に考えられん」
戦慄するミストと静かに目を閉じるバーン
「わかる奴等で話を進めるんじゃねぇぜ!魔界に太陽があるからなんなんだ!言えよ!」
そう魔理沙は怒鳴るが一応魔理沙も知ってはいるのだ、魔理沙どころか皆も一応知っている、ロン・ベルクから聞いた事でもあったしある紙芝居からも見た事なのだが過去を気にしない魔理沙達には思い至らなかった
(魔界に太陽……?……!!なるほどね、そういう事……)
唯一直接バーンから聞いた事のあるレミリアだけは気付くもバーン本人の言葉を待った
「……魔界に太陽の光が射している、それは余の計画が成就し地上が消滅している事を意味するのだ」
数秒の沈黙の後、ようやくバーンは答えを語りだした
「……あ……」
それだけで皆は全てを理解した
「そう……ソルは勇者に勝利した余と言う事だ」
言葉を失う皆を前にバーンは想いを巡らせる
(以前感じた奇妙な感覚はこれだったのか……酷く懐かしく、それでいて称えたくもあり、同じ様にも全く違う様にも感じた感覚……)
(なるほど確かにそうだ、昔の余なら懐かしくあるのは当然でありそれが余が為し得なかった勝利を体現しているのなら称えたくあるのも当然の事……そして敗北した余と勝利の先を進む余では同じ様で全く違うのは至極当然の事なのだからな……)
謎を解いたバーンだったがそれが逆に得も言えない感覚を持つ事になる
(勝利した余……勝てていればの先へ進みし
幻想の郷が最後に見るのは王の夢幻
儚くも壮絶に散った野望の果てが見せる可能性の白昼夢
負け、それでも生き永らえしかつての王
勝ち、その果てに神へと至りし天地魔統の王
敗者と勝者
分かれた可能性の王が互いを深く知ったこの時が……一月にも満たない僅かな大冒険の本当の始まりであり……
終わりが決まった瞬間なのだ……
一万字無いと短いと思うのは変なのか……
ソルがどんなバーンであるか、その解答回です。
互いに確認してないし確証は無い筈ですが互いにそうであると確信しています。
次はソルの過去編をしようと予定しています。
余談ですが今作のプロットやキャラ設定を書いてたメモがスマホごと壊れて消えちゃいました……2000字くらい書いてたのに……
次回も頑張ります!