東方大魔王伝 -mythology of the sun-   作:黒太陽

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第8話 落月

 

大魔宮・謁見の間

 

「月を献上……だと?」

 

ソルの瞳が妖しく光り純狐を捉える

 

「……」

 

提案と言っておいて献上すると言う、しかも献上するモノとはモノと言えるかわからない月、それを言うのは敵地のしかも神

 

「女狐、何を企んでいる……」

 

疑心を抱くには充分過ぎる材料がソルの警戒を解かせない

 

「企みなどございません、ですが献上とは些か言い過ぎました、訂正しましょう」

 

同時に圧を掛けられていた純狐だったが臆せず妖しい瞳で微笑み返す

 

「正直に話します……月に存在する隠された都、そこを是非とも貴方様の御力で完膚なきまでに叩き潰して欲しいのです」

 

「……何故に?」

 

純狐の話とは頼みであった

 

神が魔族の神に頼み、有り得ない事だ

 

それを行う純狐にソルの興味を持ったから理由を聞く言葉を出した

 

「相応の理由があるのだろうな……」

 

頼みと言えば聞こえは良いが要は利用、しかし幻想郷の神が月とは言え幻想郷に攻撃を願い出る理由が気になったのだ

 

「それは……」

 

純狐は言い淀む

 

「理由は……わからないのです」

 

そして出た言葉はふざけているととられるような言葉だったがソルは鋭く睨むだけで何も言わない

 

「ですがもし頼みをきいてくださるなら制圧した暁には都をお好きにお使いください、狭い幻想郷にこの鳥宮を転移させるのは無謀……なれば前線基地にでもされればよろしいのではないでしょうか、もちろん私達も協力しますし幻想郷との争いも力を添えましょう」

 

「ふん……口の回る……」

 

黙って聞いてみれば中々良い話

 

キルギルの報告によれば幻想郷は今までの戦地とは異なり結界に囲われた世界であり広くはない、そんな所に大魔宮を転移させれば蜂の巣になる可能性は高く純狐の言う通り無謀だった、ここまで狭い場所を攻めるのは初めてだったのだ

 

何か良い案をキルギル等が考えていた所にこれはうってつけの提案と言えた

 

更には都を攻める協力をするだけではなく来る幻想郷との戦にも協力すると言った、だがこれはおまけ程度、ソルはこの二人は自分には劣るが確かに強いのは感じ取っている、しかしだからと言って協力が必要かと言われればどうでもいい事だからだ

 

唯一気掛かりを挙げれば不鮮明な月の都の戦力の強さくらいだった

 

「どうでもよい……どうでもよいのだ、そんな事はな……」

 

グンッ!

 

ソルが魔力を放ち純狐を引き寄せ首を掴みあげた

 

「……なるほど、純粋な恨み……貴様の能力によるものか……貴様は恨みが純化し一人歩く怨神、もはや己が何者であるかなど知らずともよいし恨みの理由さえもはやどうでもよい、恨む相手への復讐のみを求めているか……」

 

純狐の瞳を真っ直ぐ見つめ呟く

 

ソルはその卓越した感覚から純狐と言う存在を直に感じ取ったのだ

 

「……」

 

純狐はただ見つめ返すだけ、幾千、幾万の時が経とうが消える事の無い想いを秘めて

 

「……濁った目だ、神でありながら恨み狂う憎しみの目と心……気に入った」

 

手を離すとソルは言う

 

「その提案、受けてやろう」

 

純狐を面白そうに見ながら酒を持ってこさせる

 

「ようこそ魔王軍へ……歓迎しよう、純狐、ヘカーティアよ」

 

酒を持たせると乾杯した

 

「ガルヴァス……戦の準備をするのだ」

 

「どの程度を?」

 

「全軍だ……餓えている者達に前菜を与えてやらねばな」

 

「フフッ……承知しました」

 

ガルヴァスの笑みにソルも応えて微笑む

 

「肩慣らしといこうではないか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日

 

紅魔館・図書館

 

 

今、この場所にはいつも以上の者達で溢れていた

 

 

「皆に紅茶を出して咲夜、ウォルター」

 

紅魔館にいつも居る頂点の6人にバーン

 

「茶菓子もくださいな♪たくさんたくさんくださいな♪」

 

「やめてください幽々子様!もぅ!恥ずかしい……」

 

「捨食の法を施してもらうか……いや、それだと幽霊魔女になってしまうからダメか、ババァの魔女なんぞ誰も得せんからな……食費を取るか尊厳を取るか……こいつは究極の選択だ……」

 

「聞こえてるわよロン……?」

 

白玉楼から幽々子、妖夢、ロン

 

「私達はお茶にして」

 

「無料で診察してあげたのだから玉露くらいは当然出ますよ姫様」

 

「お茶苦いから私はジュースください!」

 

「ワガママ言うなら幽香か霊夢の所に出稽古に行かせるわよ?」

 

「え~……」

 

「幽香~?霊夢~?ちょっと相談が……」

 

「お茶ください!」

 

永遠亭から輝夜、永琳、ルナ

 

「どうすれば守矢に信仰が集められるかしら?」

 

「難しいよね~、信仰を得る為に私が作った特製Tシャツもヘカーティアが買っただけだったし」

 

「良い事考えました!博麗神社を潰して博麗大結界を守矢大結界に変えるんです!そしたら「守矢スゲェェェェ!!早苗さんマジ現人神!!」って感じで信仰総取り間違いなし!!名付けて逆襲の守矢計か……」

 

「……そこまで言うなら霊夢を倒せるんでしょうね早苗?」

 

「く……さぁて早くコミケに出すバーンさんとロンさんの同人誌を完成させないと!」

 

「……どうしてこの子はこうなっちゃったのかしら……目眩がしてきたわ諏訪子」

 

「……守矢の未来は暗いね」

 

妖怪の山から代表で神奈子、諏訪子、早苗

 

「どうだいさとり?」

 

「……大丈夫です、なりすましている者は居ません」

 

地霊殿から勇儀とさとり

 

「あら、霊夢だけなのね……ついに追い出された?」

 

「退治するわよレミリア……?博麗神社は大結界の要所なんだから手薄には出来ない事わかってて言ってるでしょ?」

 

「そうね、念を入れて博麗神社にはにとりに警備をお願いしてあるしね」

 

「人里の方は咄嗟に隠せる慧音が離れる訳にはいかないから来れないんでしょ?ついでにルーミアを見てるみたいだし鈴仙、てゐ、白蓮、霖之助にアリス、更には青娥と華扇が警備してくれてるし、紫が式を神社と里に分けて配置してるから何かあればすぐ連絡が来る……大丈夫でしょ」

 

「幻想郷全域を文が指揮する天狗達に任せてるしね」

 

博麗神社から霊夢

 

「おつまみ持ってきな幽香!」

 

「自分の角でも食ってなさい腐れ酒乱」

 

「おいおーい!腐れ酒乱腐れ酒乱って……それしか言えないのかい風見幽香ちゃんよぉ?語彙が少な過ぎて私ゃ悲しいよ!」

 

「死にたいらしいわね」

 

「おおっと!やるのは良いけど変身はするんじゃないよ?V3になられちゃ流石の私も勝てないからねぇ!」

 

「風見違いよツルペタ……泣かす!」

 

 

「……お前等ホント仲良いよな」

 

萃香、幽香、正邪

 

「そろそろ良いんじゃないかしら?」

 

そして紫

 

幻想郷を代表するそうそうたる面子が顔を合わせていた

 

「そうね……パチェ!結界は?」

 

「大丈夫よ、空間転移を阻む結界はとっくに張り終えてるからここは今、誰も侵入出来ない場所になってるから安心して話していいわ」

 

「では始めましょう」

 

レミリアの宣言の瞬間、つい今まで喧騒だった場が瞬時に静まり返った

 

「各々が得た情報の共有、今後の対策を話し合いましょう」

 

ここに集まった理由は幻想郷を攻めてくるソル軍に関しての会議

 

早い内に情報を共有し今後をどうするか話し合う為に主な者に出来るだけ召集をかけたのだ

 

「まず、伝わってると思うけど敵の正体は平行世界のバーンが率いる魔王軍、これはミストが確認した間違い無い事実だから異論は認めないわ」

 

「聞いた時は半信半疑だったけど……とんでもないのに目をつけられたわね」

 

「そうね……」

 

敵が平行のバーンだと改めて知らされ皆の顔を曇らせる

 

「だけど今それは置いときましょう、考えたところで意味は無いからね」

 

それ以上の事を知らないし確かめる術も無いソルについて語る事は無い

 

「問題はソルの持つ軍の戦力よ」

 

ならば問題になるのはソル以外、どれ程の数、強さ、ボスクラスの数をなるべく把握しときたかったのだ

 

「妖怪の山に来たのはもっと居ましたが確認したので150、紅魔館にも来たらしいですが?」

 

「ええ、パチェが言うには数は50で引率していたボスクラスを倒したそうよ」

 

「一般兵一人一人のレベルが高く苦戦させられました、私が見た限りになりますがエスタークが連れてきた魔界の魔物より強く、連携を取るのでかなり厄介です」

 

「規模はそこまで多くはないと思うわ、全員がそこまでのレベルなら数は少ない筈……量より質ね、それでも昨日来た確認した200の30倍くらいは最低見といた方が良いわね」

 

「最低6000か……こちらは数で言えば上回るけど戦えない、それに準じた者を除いて純粋な戦力を出したら半分の3000くらい……更に地力の差も激しいし……」

 

「そうね……強いのから弱いのまでピンキリだから平均が高い相手だと厳しいわね……」

 

「更に軍団長や兵長クラスね、わかる範囲で教えて」

 

「私が戦ったテリーと言う青い服を来た剣士が青剣士団の団長と言ってました、実力的にも私とほぼ同等なので皆さん気をつけてください」

 

「軍団長……って感じじゃなかったけど科学者っぽい魔法使いのジジィが居たよ、名前はわかんないけどそいつもそうだと思う、ただそいつは他とは毛色が違っててなんていうか……卑怯なんだよ、だから会った奴は嵌められないようにね」

 

「……そういえばそれっぽいのが二人逃げていったわね、他よりちょっとだけマシな程度の雑魚だから気にしなくていいわ」

 

「あ、そうそう!にとりが言ってたけど機甲師団って言うのが居るみたい、話の流れ的に自称勇者って奴が居てそいつが団長じゃないかって」

 

「ここには二人来てたわ、一人はパチェが始末してもう一人なんだけど……一人と言うか一体ね、キルって言うなんとも言い難い格好の奴が居るわ」

 

「……剣士と科学者らしき魔法使い、それに少々強い二人……おそらくダブルドーラとザングレイか……ならば私が本拠地で会ったのは4人だ、筋肉を操作する妖怪とその兄である肉体操作と再生能力を持った妖怪、赤い服装の魔女……そして豪魔軍師ガルヴァスと言う魔族の男だ、居るかは不明だがべグロムと言う部下も存在する」

 

「こんなところかしら……」

 

レミリアが聞いた情報を纏める

 

「敵の戦力は少なく見て6000以上、軍団長、兵長クラスが最低10以上……ね」

 

「かなり苦しいですね」

 

「それに純狐とヘカーティアの動向も気になるし……」

 

そんな中、ルナがパチュリーに耳打ちをしていた

 

「その純狐って人とヘカーティアって人は誰ですか?」

 

「ルナは知らなかったのね、神様よ、神奈子や龍神と同じ神様……少し恨みを拗らせ過ぎた危ない奴よ」

 

「ほぅほぅ」

 

「純狐は恨み以外は普通の神様よ、常識はあるし服装も普通だしね、ヘカーティアも……普通の神様ね、服装以外は」

 

「へぇ~」

 

「……ヘカーティアに関しては普通じゃないのがまだ有ったわ、その実力ね……神奈子が言うには異変の時は実力を全く出してないらしいの、本気を出せば当時最強だった永琳より強いかもと言っていたわ……早苗に変なTシャツヤローなんて言われてたみたいだけど侮りは禁物ね」

 

「そうなんですか……んぅ?Tシャツ?」

 

そこでルナはふと思い出した

 

「あの……もしかしたら……もしかしたらですよ?私、昨日その人見たかもしれません」

 

「どういう事?」

 

ルナは話す、昨日、竹林の自分の家で見た幻かもしれなかった出来事を

 

「それらしい二人が魔族と会っていた……」

 

パチュリーは考える

 

「……皆、純狐とヘカーティアはソルと接触しようしていると見て間違いないわ」

 

そして結論を告げた

 

「えっ!?でもちゃんと確認した訳じゃないですよ!?」

 

ルナが訂正するがパチュリーは首を振る

 

「この際、楽観的な希望は捨てた方が良い……もう二人はソルの仲間になろうとしてる、いえ、仲間になってるくらいの事態を想定しておかないといざという時の対応が遅れてしまうからね」

 

それについて誰も異を唱える事は無かった

 

甘い考えがどれだけ危険かを充分に知っているのだ、最悪を常に想定して備えるのが当たり前になるくらい戦いを経験しているのだから

 

「とすれば二人が狙うのは月なんだけど……」

 

「そうね、さすがにそう上手くいってるとは考え難いけれど……非戦闘員を避難させるのが終わったら偵察を出してみましょう、あちらが気になる人も居るでしょうけど元々月と幻想郷は不可侵の対立国家の様なもの、こちらの安全が先なのは理解して頂戴」

 

何よりまずは幻想郷の安全が優先される

 

もう戦は避けられない事態だと皆は考えているから戦える者と戦えない者を分け、戦えない者を安全な場所へ避難させる事が決定していた

 

人里に集めて隠すなり守るなりの方法があったが隠す慧音がもしやられれば危険だし守るのもエスタークの異変の際は紙一重だった事を反省し有事の際は白蓮が開いた幻想郷の魔界に避難してもらう事になっていた

 

 

「最後に控えるのはソルだというのを忘れるでないぞ」

 

バーンの言葉により一層表情が引き締まる

 

「わかっているとは思うがソルは余……少なくとも鬼眼王の強さを持つ事は明白」

 

どういった経緯かは不明だが敵がバーンである以上、その強さの最低値はわかる

 

「更に余がそうである様に更なる力を得ている事は充分に考えれる」

 

バーンは幻想郷に来てからの経験で実力を更に上げている、それが勇者に勝利したバーンでありその後も勝ち続けたのならばそれだけ経験を多く積み底を上げていると思うのは当然の事だった

 

「……余では敵わぬかも知れんな」

 

そう呟いたその言葉に皆は黙る

 

幻想郷で一番強いバーンがそう言うのだから不安を感じている

 

「だったら私がぶっ倒してやるぜ!」

 

事などなかった

 

「魔理沙は引っ込んでなさい!あたいが倒す!」

 

「あたしだよー!!」

 

魔理沙、チルノ、フランが声をあげる

 

「おうおう!ミストの借りを返すから私がやるんだからお前等こそ引っ込んでな!」

 

「面白そうじゃない、約束代わりに私がやってやるわ」

 

「私だってもちろん!……そうですね、早い者勝ちにしませんか?」

 

萃香、幽香、妖夢の3人も口々に言う

 

誰も恐れてなどいなかった

 

バーンを倒すのが目標である皆にとってソルは言ってみれば最高の相手とも言える、むしろ望むところだとばかりの勢いだった

 

「誰も逃げるわけないの知ってて言ったでしょ?」

 

「フッ……戦意を高く保つのも大事な事だ」

 

微笑むバーンは回りに聞こえないようにレミリア言う

 

「すまぬな、本来なら余が相手をすべきなのだろうが何があるかわからぬゆえ迂闊な事は出来ん」

 

相手が己であるなら自分が相手をするのが筋だと考えるバーンだったが幻想郷に縛られる理由がそれを許さなかった

 

ソルが幻想郷に姿を現さずパレスに籠城されてしまえばバーンには手は出せない、直接来た場合であっても異界に転送させる術を使われれば終わり

 

だから容易に対峙する事は出来ないのだ、ソルの事を何も知らず、ましてや軍の理念など知らないバーンにソル軍がそういった手段を取らずに戦うなど考えられなかった

 

「気にしなくていいのに……」

 

レミリアは呆れたように言った

 

「貴方は少し背負い込み過ぎてるのよ、大切に思ってくれているのはわかるけどもう少し私達を信用しなさい」

 

「……」

 

「何よその顔?文句があるのかしら?信用出来ないならそれこそ私達への侮辱よバーン、私達は最初から貴方をアテにした戦略をしていないわ」

 

そこまでハッキリ告げるとバーンはようやく肩を落とした

 

「苦労を掛けるな……」

 

戦力になり難い現状を噛み締める

 

「余は……この中の誰が欠ける光景を見たくない」

 

出来る事なら危険から遠ざけたい

 

そんな想いが今のバーンにはある

 

「そんなところまできてしまっているからな……」

 

もう離れられない程の絆を育てているのだから……

 

「わかってるわよ……心配しないで、私達は必ず勝つわ」

 

「ああ、余も出来る限り力を添えよう」

 

 

その後に決まった事は敵の目的が不明な事を鑑みて行動を今まで以上に警戒して待ち、その目的を知るのを優先する事になった

 

同時に攻める事態の時も考え、紫がにとりと協力し敵本拠地に人数を送れる大規模な転移装置の開発を行う事が決まりその場は解散となった

 

 

 

 

 

「……レミリア」

 

皆が帰った図書館でバーンが不意に声を出した

 

「これからしばらくの間、時間が空いている時に咲夜を借りてもよいか?」

 

「それは構わないけど……何をする気なの?」

 

「知らん方がよい、まだ出来るかわからぬ事だから無駄な希望を持たせるのは避けたい……余に出来る事を試して足掻いておきたいのだ、構わぬか?」

 

「まぁ良いけど……無茶はさせないでね?」

 

「わかっておる……ではさっそく借りるとしよう、咲夜、来い」

 

バーンは咲夜を引き連れて自室へと向かって行った

 

 

「何なのかしら?」

 

「さぁ……また私達には到底出来そうもない事やろうとしてるのは間違いなさそうね」

 

「あ……今思い付いたんだけどさ、黒のコアあるだろ?ほら、神奈子の持ってるやつ!アレをスキマから向こうに投げて爆発させたら全員とはいかなくても大打撃じゃねぇか?」

 

「残念だけど黒のコアはバーンが帰ってきたから神奈子がもう必要無いってとっくの昔に処分してるわ……まぁ……有効な手だとは思うけれど向こうも知ってるし無効化されるのは目に見えているわ」

 

「それだぜレミリア!私が言いたいのはソルもバーンなわけだろ?なら当然黒のコアを知ってる、つまり使ってくるかもしれないんじゃないかって事だ」

 

「言われてみれば確かにそうね……パチェ、何とかならない?」

 

「また難しい事言うわねレミィ……むきゅー……黒のコアの原材料である黒魔晶に反応して被害の影響が無い宇宙に転移させる魔術式を幻想郷に展開すれば防げるわね」

 

「流石パチェ!頼りになるわ!じゃお願いね!」

 

「私かバーンくらいしか出来ないからって簡単に言って……幻想郷の事だからやるけど人は貸して貰うからね?レティにアリスと白蓮に手伝ってもらうわ」

 

「わかったわ、頼むわね」

 

「頑張れよパチュリー!」

 

「……何言ってるの魔理沙?当然貴方もやるに決まってるでしょ?」

 

「え?ヤダ!」

 

「言い出しっぺが何言ってるのよ、さっさと来なさい」

 

「イヤだぜ!向き不向きってのがあるだろ?私は不器用だし足を引っ張るだけだからやめとくぜ!」

 

「珍しいキノコが手に入ったからあげようと思ったんだけどいいか……食べたら体が大きくなるキノコなんだけど……しょうがないか」

 

「体が大きくなるキノコだって!?なんだそれ!?くれくれ!」

 

「じゃあ手伝ってくれたらあげるわ」

 

「よっしゃ!ソッコーで終わらせてやるぜ!さっさと行くぜパチュリー!!」

 

「じゃあ行ってくるわねレミィ」

 

「ええ、頼むわねパチェ」

 

 

幻想郷は備える、己に出来る事を

 

いつ来ても良い様に

 

いつ向かっても良い様に

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「準備はどうだ?」

 

「全軍、滞りなく準備は出来ております、後は合図を待つのみです」

 

「では行くとしよう……大魔宮を転移させよ、全軍出陣だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同じ場所、しかし過去の遺恨から立つ隔たる壁に遮られて見えないところを除いて……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

永遠亭

 

「ふぅ~!」

 

お風呂からあがったルナは縁側に座り込んだ

 

「今日は何にも起きなかってよかった……」

 

この日、幻想郷は何も起きてはいなかった、いっさい敵は現れず無事に終える事が出来そうでルナは嬉しそうに足をパタパタ振る

 

「戦いかぁ……」

 

急に足が止まり不安気に呟く

 

「やっぱり死んだりするんだよね……」

 

ルナはまだ本当の戦いというのを経験していない、10年前の事件以降、幻想郷では小さな異変はあれど戦いは起こらなかったのだ

 

戦いを知らないから不安だけが募る

 

「恐いよ……」

 

いつも誰かが助けてくれた、輝夜や紅魔館の皆、幻想郷の皆、そしてとっても強かった母が……

 

「……」

 

でも今はその皆にいつもの余裕が無い、表面上はそう見せてもやっぱりいつもと違う、何より母が居ない

 

まだ10歳のルナにはキツイ事だ

 

「こんな時お母さんが居てくれたらなぁ……」

 

誰よりも頼りになる母を想い月を見上げた

 

「……?」

 

月を見つめていたルナは異変に気付く

 

(とっても小さくだけど……なんか……光ってる……?)

 

月の一部分が目を凝らさなければ気づけないほど微かに光を放っては消えている

 

「……!?」

 

見続けていたルナの顔が歪む

 

歪んだのは何故かわからないがそんな風に見えてしまったから

 

「あ……ぁ……」

 

光の点滅から赤が生まれ瞬く間に月を赤く染め上げた様に見えたのだ

 

「う……ぅ……」

 

それだけならまだルナは驚くだけ、恐怖を感じるくらいに怖いのは赤が血によるものだと思ってしまったから

 

「……」

 

もちろん今だ光が点滅しているが月は赤く染まってはいない、ルナにはそう見えてしまっただけなのだ

 

戦いを目前にした緊張感が見せた幻覚、それほど不安だった

 

「…………」

 

立ち上がったルナは急いで走っていった

 

 

 

 

 

 

「輝夜さん……!」

 

ルナが向かったのは輝夜の部屋だった

 

「どうしたの?」

 

碁盤に置いた石を睨んでいた輝夜は様子がおかしいルナに気付き駆け寄っていく

 

「……!!」

 

その瞬間、抱きつかれた

 

「どうしたのよ……」

 

強く抱き締めるだけで何も言わないルナに困惑する輝夜だったが体が震えているのに気付き目を細める

 

(そうよね……この子はまだ心が成長しきっていないし経験も無い……私達の戦いを御伽噺のようにしか知らなかったこの子が今を怖がるのは無理もない事よね……)

 

優しく手を回し抱き締める

 

(でも母であり頂点の一人だった妹紅の娘である誇りから弱さを見せれない……バレバレなのにね……無理して強がらなくてもいいのに……貴方はまだ10年しか生きていない子どもなのよ?)

 

言いたくても言えない未熟な葛藤を察して輝夜はルナを抱き上げ布団に一緒に入った

 

「今日は一緒に寝たい気分だから付き合いなさい」

 

「……はい……!」

 

恐怖に凍える雛鳥の夜は優しく輝く夜と共に過ぎていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんな……そんなバカな……」

 

「こんな事が……」

 

吹き荒ぶ厄災が駆け巡った彼の地

 

「それなりに楽しめた……よくやったがこれ以上は無意味だ、我等の軍門に下るがよい、悪い様にはせん」

 

幻想郷で最大の規模を持つ穢れ無き浄土

 

そこは今や風前の灯火

 

威を借りた怨念の鉄槌に悉くを破壊され、直に照らす太陽の火に全てを焼き尽くされていた

 

「有り得ない……都が……私達が……こうも容易く……」

 

栄華を極めたその場所にかつての面影は既に無い

 

「……貴方は逃げなさい」

 

「何をお姉様!?敵に背を向けろと言うのですか!?」

 

「わからないの?私達ではこの魔族に勝てない……」

 

「ッ……!?ですがどこへ逃げろと……!?」

 

「……地上しか無いわ」

 

「ッッ……!?」

 

「……貴方はこの事を地上に知らせて頂戴、そして可能なら助けを頼んでみて欲しいの」

 

「正気ですかお姉様!?私達が……月の民が罪人に助けを求めるなんて!?」

 

「もうそんな事を言っていられる状況では無い筈よ……このままでは私達の都は歴史に幕を閉じてしまう」

 

「……でしたらお姉様も一緒に……」

 

「それは無理、使いは貴方一人居れば事足りる……月の使者の長である私達が揃って逃げるなんて出来ると思う?」

 

「ではお姉様は……?」

 

「……私は残る、だから……お願いね」

 

「そんな……お姉……!!?」

 

姉の能力により妹はその場所から消えた

 

「……もうよいか?」

 

「見逃すなんて油断が過ぎるのではなくて?」

 

「違うな、これは余裕というものだ、子どものする事にいちいち本気になる大人は居まい?うぬら程度本番前のただの余興、いかに気張ろうが余の前では児戯に過ぎぬのよ……一人逃げようが逃げまいが些細な事だ」

 

「……そうね、そう言える程の力を持っているものね……」

 

姉はボロボロの体を奮い立たせ扇子を構える

 

「我、月の使者、綿月豊姫!!穢れ深き人外の者よ!夜月の王・月夜見の名において貴様を討つ!!」

 

たった一人で……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日

 

永遠亭

 

「んぅ……ん?」

 

小さな物音に気付いてルナは起きた

 

(誰かが玄関の戸を叩いてる……こんな早朝に……誰か来た?)

 

起きていない輝夜を起こさない様にそっと布団から抜け出し玄関に向かう

 

(叩いてるのは確かなんだけど……不規則でとても弱い……もしかして怪我人?)

 

玄関に近付くと微かに声が聞こえた

 

「誰か……居ませんか……八意様……は……居ませんか……」

 

消え入りそうなくらい弱々しい声だった

 

もしかしたら敵の罠かもしれないと思ったルナは恐る恐る玄関の戸を開いてみた

 

「わわっ!?」

 

開いた瞬間に向こうに居た誰かが倒れて来た

 

(知らない人だ……って血!!?)

 

受け止めた人からは大量の血が流れ息も絶え絶え、よく見ると背後に滴る血の道も出来ていた

 

「だ、誰か来てくださーい!!」

 

危険な状態だと知ったルナが叫ぶと永琳を先頭に皆がすぐに来た

 

「依姫じゃない……どうしたの?」

 

「……お久し振りです、八意様……」

 

「挨拶は良いわ……何があったか言いなさい」

 

手早く応急処置をしながら永琳が問うと依姫はその気丈な顔を涙で濡らし答えた

 

 

「月の都が……落ちました……」

 

 

深き業と交じった不退の怨念は全てを巻き込み留まる事を知らない……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




月の都陥落……

では捕捉を少々

○純狐、ヘカーティア

お馴染み紺珠伝から登場の二神

設定はおそらく原作に準拠していますが純狐のみ恨みが5割増しくらいになっています、原作での曖昧な台詞に目をつけてこの展開を思い付いたわけですが……二人と言うよりは純狐がメインなのでヘカーティアはそんなに目立ちませんね。
仮に最後に生きていたとしてもA級戦犯ですねぇ……恨みは怖い。

次回も頑張ります!
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