あの日のことが忘れられない。
目の前で連れ去られた二人の女の子のことが忘れられない。
涙を流し、叫び、俺に助けを求めたその子達のことが忘れられないのだ。
今でも夢に出てくる。どうして助けてくれなかったのかと。
どうして、助けようともしてくれなかったのかと。
助けようとすれば、俺はこの世にいられないとわかってしまった。
助けようとしても、3人とも死んでしまうのだろうとわかってしまったのだ。
怖がってしまった。恐れてしまった。死を。
そう、俺は自分が助かるために2人の命を見捨てた。
生きるために見捨てた。
あの世で2人は俺のことを恨んで、憎んでいるのだろうと、そう思う。
だからだろうか、生きた俺には今罰が与えられているのだろう。
今ここで俺の体に何かが起きる。何が起きるのかはよくわからなかった。
何かの実験だろうか。大人達は、何を思い、何を作り出そうとしているのか。
昔の俺には何もわからなかった。
-------------------------------------------------------------------------
「おい!レンリ!またこんなところで寝やがって!」
「あー、くそ。今回は見つかるのはやかったな。なんだよおやっさん」
このおっさんはナディ・雪之丞・カッサパという。ここCGS…クリュセ・ガードセキュリティでMWの整備士をしている。
俺達、参番組をCGSの大人の中で唯一好意的に接してくれている。だから参番組のやつらからはおやっさんと呼ばれている。
「参番組に仕事が入ったんだとよ。オルガがさっきマルバ呼ばれていきやがった」
「仕事が入っただと?こんな弾除けくらいの価値しかないネズミ達に頼むとは随分と物好きなやつがいるもんだな」
「それがどうもクリュセ代表首相の娘の護衛だとかなんとか。」
クリュセ代表首相の娘、名前は確かクーデリア・藍那・バーンスタインだったか。
火星の独立運動をしようとしているってことくらいしか知らないが、そんな人がどうして俺達に護衛なんかを頼むのだろうか。
「ふーん…。どうにもめんどくさいことが起こりそうな予感しかしないな」
「まぁ、とりあえずオルガ達のところに行ってみたらどうだ。俺には詳しい話は回ってきてねぇからな。あいつらに聞いたほうがはやいだろ」
「はやくいかないと一軍のやつらがめんどくさそうだしな、じゃ行ってくるわ」
そういってレンリは倉庫から出て行った。
その倉庫には2機のMSがいた。
-------------------------------------------------------------------
参番組のやつらが、訓練などを終えて昼飯を食べているときにオルガに話を聞いたが護衛ということしか聞かされていないらしい。どうやらいつものように仕事をしろとの命令しかない。
自分達はいつものようにやるだけ。何も考えず、命令に従うだけの犬なのだ。
いつも、そうしてきた。何も知らず、何も考えず、ただ生きるためだけに言われたことだけをしてきたのだ。
ここにいるやつらはそうだ。生き残るために必死に足掻いてきてこうして生きてきた。
オルガも、三日月もユージンも昭弘もみんなそうだ。ここで働き、生きるためにまず必要なことは「阿頼耶識」
厄祭戦と呼ばれる300年前に勃発した惑星規模の大戦で行き過ぎた機械文明から産まれた無人兵器MAが暴走し、
殺戮兵器と化した。その時に人類側が対抗手段として投入したのは悪魔の名を持つMS達。そのMS達を動かすために使われたとされている有機デバイスシステム。それが「阿頼耶識」だ。
現在は非人道的なシステムとして、使用が禁止されているが、ここCGSでは非合法に使用されている。
阿頼耶識は成長期の子供でなければナノマシンが体にうまく定着しないため、子供ばかりになっている。
この現状を打開するにはきっかけが必要だ。何か大きなきっかけが。
「レンリ行くぞ。お嬢様に挨拶にな」
「ああ。今いく」
うちの社長とクーデリア・藍那・バーンスタインがいるところに。
--------------------------------------------------------------------------
「いやー、光栄ですな。クーデリア様の崇高な志には私は常々…入れ」
マルバ喋っているときに入ってきてしまって少し機嫌を悪くしたような声でマルバが俺達を中へ入れる。
「参番組、オルガ・イツカ以下5名到着しました」
「こいつらが護衛を担当する予定の…」
すると金髪のクーデリアらしき人が立ち上がり、マルバの言葉を遮った。
「はじめまして、クーデリア・藍那・バーンスタインです」
俺達はなんと言ったらいいのかわからず、黙ってしまっていた。
このような挨拶にはなんと返せばいいのだろうか。
「…あぁはい」
「どーもっす!」
オルガとユージンが適当に挨拶をする。
その挨拶に気に食わなかったのか怒号が飛んでくる。
「てめぇらまともに挨拶できないのか!」
そんな怒号も気にせずそのお嬢様は一番近くにいた三日月に案内を頼んだ。
そしてその夜。
参番組の参謀役ともいえるビスケットと、隊長のオルガと話していた。
「どうにもめんどくさいことになりそうだな。」
「あぁ。胡散臭すぎるな。眠れやしない」
「あのお嬢さんは天然っぽいけど立場とかは本物だ。ギャラルホルンが直接出てきてもおかしくないレベルの大物だ。どうしてそんな人がこんな小さな会社に」
おかしい理由はそれだけではない。小さな会社、CGSの一軍。正規の軍に頼むならまだわかる。だが俺達参番組は非正規の軍だ。あのお嬢様がなぜわざわざ俺達を指名してきたのか。お嬢様が望んでいるのが火星の独立ならば、社会問題ともなっている少年兵の現状を知るためになのだろうか。
「どうであれ、俺らに選ぶ自由はない。」
「罠でも噛み砕く。そうだろオルガ」
「そうだレンリ。俺たちは死なない」
そう。俺たちは死なないのだ。自由を手に入れるまでは。自分たちの望んだ未来を手に入れるまでは。
----------------------------------------------------------------
爆音が鳴り響く。このCGSにギャラルホルンが攻撃を仕掛けてきたのである。
狙いはクーデリア・藍那・バーンスタインと言ったところだろうか。
嫌な予感はしていたが、まさか本当にあたるとは思ってもみなかった。
「ダンジ!何してんだ!」
参番組のシノがMWでの経験が少ないダンジが突っ込んで行ったことを引き留めようとするが、そのまま行ってしまい、相手のMWによる砲撃で足元をやられ、動きが止まってしまっていた。
助けるのは三日月に任せて俺は少しでも相手の数を減らそう。
三日月と昭弘が混戦に持ち込んだところで俺は相手の背後に回り込み銃撃を浴びせていく。
俺の方を向けば三日月と昭弘にやられ、二人に気をとられすぎると俺にやられるという戦法だ。
だが所詮時間稼ぎ程度にしかならない。
さらに、オルガとビスケットの予想が悪いほうに当たり、挟撃する予定だった一軍のやつらはすでに撤退をはじめていた。
だがそこまでオルガとビスケットは読んでいたらしい。一軍のやつらを逆に囮にするために細工を既にしていた。
信号弾を一軍のMWにつけていたらしい。
ここで大きな誤算が起きる。そう、ギャラルホルンの主力量産型MS EB-06グレイズだ。あらゆる環境に対応できる万能機として設計された運用評価が高いモビルスーツだ。
モビルスーツにモビルワーカーが対抗する術はない。モビルワーカーの銃撃ではグレイズの装甲を貫通することはできないのだ。逃げるしかない。死なないために俺が周りに声をかける
「モビルスーツを相手にするな!モビルワーカー隊は全員後ろに下がれ!俺が囮になる!昭弘!慣れてないやつらを誘導してやれ!」
「言われなくても!」
この時に三日月は倉庫に向かっていた。あのモビルスーツの1機を使うつもりだろう。
「レンリ!お前もミカと一緒にそろそろ倉庫に行け!」
「いや、俺は三日月が戻ってくるまでここに残る。囮の俺が行っちまったら仲間が死んじまう。それはだめだ。何があっても」
三日月一人でもこの状況を変えられるだろう。俺はそのために時間を稼げばいい。
「さぁこっちだ。このデカブツが」
相手のグレイズを仲間から引き離すために俺は相手のライフルを破壊することにした。遠距離での武装を失えば必然的に近距離武装での戦闘しかできないと考えたからだ。
「お前の考えは読めているぞ馬鹿が!!」
だが相手も馬鹿ではない。狙うところが分かれば、打たれないように立ち回ればよいのだ。そうしながら俺に銃撃を何度も打ち込んでくる。それを大きく相手の周りを回るように回避していった。
「馬鹿はどっちだくそ野郎」
俺の動いたところに打ち込まれた銃撃によって、相手の足場は崩れ始めていた。そこでできた隙を逃さない。
的確にライフルに銃撃を打ち込み破壊した。
「この虫けら風情が!」
「さぁ、こっちに来い!鬼ごっこと行こうぜ!」
正直これ以上逃げ切るのはきつい。周りのやつらは昭弘達のおかげで被害は少ないが、俺が死んじまうぞこんなの。だから早くしろ!
「三日月!!!」
地下の倉庫から一機のモビルスーツが現れる。白を基調とした厄祭戦時代を経験した機体。ガンダムフレーム。
相手のグレイズのコクピットにメイスが突き刺さる。相手は死んでしまったのだろうか。守るためには仕方なかったのだろか。だがまだ俺には仕事がある。他の人を死なせないために倉庫に向かわなければ。
「三日月少し頼んだぞ。すぐに戻ってくる。」
「うん。任せて」
仲間を死なせないために。もう誰も失わないために。
--------------------------------------------------------------------------------------
「おやっさん!来たぞ!」
「来たか!三日月は大丈夫そうだったか」
「出てきた瞬間、一機ぶっ壊したから大丈夫だろ。いいから早く出してくれ。仲間をもうこれ以上やらせるわけにはいかない」
倉庫にはお嬢さんがいて、何やら思いつめたような顔をしていた。
「あなたは死ぬのが怖いですか…?」
死ぬのが怖い。昔に、そう思ってしまったから、死なないために失わないために力を手に入れた。
だが結局この戦闘で死んだやつはいる。そいつらを守れなかったのだ俺は。力が足りなかった。
「怖いに決まってる。だけど失うほうが、守れないほうが怖いことを俺は知っちまってる。だから戦うんだ。大切なものを守るために」
「もういいか、レンリ。そろそろ出すぞ。はやく行ってやれ」
「ああ、頼む、こいつの名前なんて言うんだ?」
「わからねぇ、三日月のはバルバトスって言うらしい」
俺はさっきの三日月とは対照的に黒をベースとして、朱色のような色がラインに入っている機体に乗り込んだ。
阿頼耶識に接続するといつものモビルワーカーのとは比にならない情報が入ってくる。
身体が悲鳴を上げている。あまりの情報の多さに鼻からは出血してしまっていた。
「大丈夫か!」
「ガンダムアンドロマリウス…」
名前が長い…「ア」ンドロマ「リ」ウ「ス」
アリスでいいか…
これからよろしく頼むぞ。相棒。
「もう行けるな!出すぞ!」
「ああ。網膜投影スタート。」
さぁ行くぞ。アリス。この戦いを終わらせに。
ふぅ・・・やっと投稿できた。最初書いたら1話だけで1万文字くらいになったので読みやすくこれくらいに削りました。削ったことでちょっと表現が曖昧になったところがありますが許してくださいすいません。今回は少しだけ説明を。
アンドロマリウス。ソロモン72柱の序列72番目の悪魔。珍しく正義を司る悪魔で、巨大な蛇を持つ人の姿をしている。正義というのを見てこの名前にしました。ギリシャ語で雄々しい男という意味もあるそうですが、短くするとアリスになったので女の子だと思って書いていきます。※デレマスではありすと文香が大好きです
感想誤字脱字お願いします。