マルバ・アーケイ、再起する   作:なみ高志

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次話投稿します。

投稿時間を間違えていたのは、ここだけの秘密。






汚い手だと思うかい? その四

 一機のグレイズを倒した、三日月の乗るバルバトスに対し、残った二機が迫ってくる。

 MWの体勢を立て直したオルガは、未だ転倒したまま動かない一軍隊長機を気にしつつも、残り二機のグレイズ迎撃を優先する。

 この二機をなんとかしなければ、CGSの皆に先が無い。

 

 「ミカ、俺達の施設から、あいつらを離せ」

 『うん。じゃあいってくるよオルガ』

 

 そう告げるとバルバトスはスラスターを吹かし、南へ跳躍する。

 グレイズ二機もバルバトスを最優先の排除対象と考えたのか、その後を追いCGS施設から離れていく。

 

 「よし、参番組!今のうちに負傷者を回収だ。急げ!俺はミカのフォローに行く!」

 

 施設に残る参番組に指示を出すと、オルガはバルバトスの跳躍した方へと、MWを走らせた。

 

 

 

 『くっ、歩兵を盾にするとは卑怯な!』

 

 激昂した声で、グレイズの一機がバルバトスに叫ぶ。

 バルバトスの跳躍した先は、ギャラルホルンの無力化された歩兵達が集結している場所。

 追ってきたグレイズ二機が、友軍を気にして攻撃を控えると予測したからだ。

 そして、激昂する声のまま、もう一機の制止を聞かず接近してきたグレイズに三日月は思う。

 ああ、こいつ『新品』か、と。

 ルイスさんが、同じ装備なら『新品』を狙えって言ってたな、とも。

 そして、ルイスの教えに従い、三日月は扱いやすい新品から狩ることを決める。

 バルバトスが手にしてメイスで、歩兵ごと地面をなぎ払う。

 赤黒い液体にまみれた土ぼこりが派手に舞い、バルバトスの姿を覆い隠す。

 

 『目くらましのつもりか!無駄だ!卑怯ものめ!』

 

 無論、MSのセンサーには影響なく、グレイズはバルバトスの位置を見失っていない。

 が、そんな事は三日月も承知の上で土ぼこりを上げた事に、激昂した新品は気がつけない。

 

 『下だ!アイン!』

 

 もう一機のグレイズからそう声がかかり、反応を見せる新品であるが、もう遅かった。

 土ぼこりをかいくぐるように、地を這うような前傾姿勢のバルバトスがメイスの先を槍の様に構え、新品のグレイズのコクピットを襲った。

 最後の踏み込みから、バルバトスのスラスターを使った高速突撃の勢いに、新品の乗るコクピットは原型を留めることなく叩き潰された。

 

 『おのれ、アインを!』

 

 残る一機のグレイズが、攻撃を加えようと動き出したときに、後方から接近する物体をセンサーに捉え、その速度に思わず振り返る。

 それは限界速度一杯で走るオルガの乗るMWであり、その機体から射撃音とともに弾丸がグレイズに発射された。

 グレイズの頭部に命中したそれはダメージは与えなかったが、命中箇所に白い粘着性の液体が付着し、グレイズの視界を塞ぐ。

 反射的に、機体の手で液体をぬぐおうとするも、その液体は手にも付着しぬぐった手の動きも制限させた。

 

 『これでは視界が!まずい!』

 

 一番安い白い塗料入りのペイント弾、それに整備のヤマギ・ギルマトンが細工を加え、強度の粘着性をもたせた特殊な弾丸。

 MWでMSにダメージを与える事は困難、なら戦いにくいようにしてやれというマルバの発案により開発された弾丸は、確かな効果を発揮していた。

 そこに、新品の乗るグレイズからメイスを引き抜いたバルバトスがスラスターを吹き上げて、残る一機に突撃をかける。

 その事を察知したのか、最後のグレイズは咄嗟にもう片方の手に持った斧をバルバトスに投げつけると同時に、後方へと全速で後退する。

 視界を防がれつつも、投擲された斧はセンサーと恐らく長年の戦闘への勘により、バルバトスを正確に捉えていた。

 メイスで斧をはじいたバルバトスは、すぐさま追撃に移るも加速の途中でいきなり減速し、その場に跪いて活動を停止させた。

 

 「おい、どうしたミカ!大丈夫か!?」

 

 あわてた様子でオルガが三日月に声を掛けるも、応答は無い。

 最後のグレイズの撤退にあわせ、歩兵達も撤退していく様子から、今回のギャラルホルンの襲撃は中断されたと判断したオルガは三日月の乗るバルバトスを回収させるべく、昇り始めた日の光の下、CGSへと急ぎ戻るのであった。

 

 

 『よし、一軍と参番組は負傷者の回収と応急手当、整備班と教導隊はMWとMSの回収とその警備に当たれ。一軍と参番組は三人一組で行動しろ。かかれ!』

 

 襲撃を凌いだCGSでルイスが全体の指揮を執り、立て直すための命令を下すと、社員達は一斉に動き出す。

 

 「あの、僕とデクスターさんは?」

 「ああ、ビスケットとデクスターは、監視塔から周囲を見張っていてくれ。何か変化があれば連絡するようにね」

 「わかりました。向かいます」

 

 見かけによらず、俊敏な動きを見せて走り去るビスケットと入れ違いにマルバがルイスに近づく。

 

 「俺はどうする?ルイス隊長さんよ」

 「マルバはそこでみていなよ。下手に動き回られても邪魔だしね」

 「へっ、そりゃ俺の仕事は戦闘になるまでと、その後の尻拭いだがよ」

 「悪いけど、そういうこと。僕と一緒に結果を待っていなよ」

 「そうするよ…だいぶいっちまったな」

 「そうだね」

 「…つれえな」

 「…そうだね」

 

 立ったまま、社員達の報告を待つルイスの横で、マルバは胡坐をかいて座り込んだ。

 その後オルガの報告により整備班らに回収された、三日月とハエダの容態確認を待つルイスとマルバのもとに、ビスケットから連絡が入る。

 北から逃げた逃走組の生き残りらしきものが五名ほど、こちらに徒歩で近づいてるとのことだ。

 

 「何だよ、生き残ったならそのまま逃げりゃいいのに。面倒かけさせやがるな」

 「マルバ、僕も行こうか?」

 「いらねえよ。ああインカムだけ貸してくれや」

 

 マルバはそういうと、ルイスからインカムを受け取り装着しつつ北の裏口へと向かった。

 

 

 

 「おい、そこで止まりな」

 

 北の裏口前に近づく薄汚れた五人に、インカムをつけたマルバが声をかける。

 ササイに率いられた、一軍でも態度の悪かった連中はその声に応じるように、その場に止まる。

 

 「おう、アーケイさんよ。よくも俺らをはめやがったな!」

 

 前に立つ四人の後ろに隠れていたササイがマルバに叫ぶも、マルバは呆れた顔で五人に告げる。

 

 「はあ?俺ら見捨てて逃げたのはお前らだろ?だから有効活用してやっただけだ」

 「ふざけんな!おい、おまえら。こいつを締め上げてやれ!それから俺達への謝罪と賠償を絞ってやっからよ!」

 

 ササイの掛け声に、ここに来るまでに消耗したのか武器ももたずに、残りの四人がマルバに向けて走り出す。

 と、それと同時に銃声が響き、走り出した男の一人が倒れる。

 その出来事に驚いた男たちの耳に次の銃声が響き、また一人倒れる。

 

 「ちくしょう、狙撃か!」

 「俺がただ何の備えも無く、おめえらみてえなのの前に出ると思ったか?しかもご丁寧に俺に危害を加えようとしやがるときた。もう、大人しく裏切り者としてここで終わっておけ」

 

 

 会話が続く間にも、銃声は響き裏切り者たちを地に伏せさせ続け、残るはササイのみとなる。

 顔を青ざめさせて逃亡を図ろうとしたのか、回れ右をしたササイの頭に、銃声と共に赤い花が咲いた。

 

 『もう隠れてる奴はいないか?』

 『ここから見る限りでは、そこの五名だけですね』

 『んじゃ、そこの奴らの生死確認すッから、見張っててくれ』

 『了解です、社長』

 

 彼ら五名の裏切り者たちの生死をマルバが確認する間、デクスターは監視塔の上でスナイパーライフルを構え続ける。

 狙撃の非人道な面に嫌気が差し前線から退いていたデクスターであったが、CGSの子供達に接する機会が増えた事により仲間を守るための技として、再び銃を手に取ったのだ。

 CGS最高の狙撃手といわれた男も、再起していたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 




ご意見ご感想、誤字脱字のご指摘、評価等あればよろしくお願いします。

一般人に溶け込めるスナイパーって、怖いですよね。
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