マルバ・アーケイ、再起する   作:なみ高志

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次話投稿します。





鉄の華は、安かねえぜ その三

 鉄華団で得られた情報をまとめたオルガたちは、今後の作戦を打ち合わせるべくタービンズの艦ハンマーヘッドの応接間へと移動していた。

 名瀬とアミダに加え、エーコがオルガたちに対面し、まずはタービンズの得られた情報とのすりあわせから両者の打ち合わせは始まる。

 先に鉄華団の情報に加え、昭弘からの要望も添えて説明された内容に名瀬は顔をしかめる。

 

 「仇討ちねえ、まあ身内をやられて黙ってられないのはどこも同じとはいえ、逆恨みもいいとこだな」

 

 コーラルの私的な欲望に基づく命令で命を散らす羽目になったのは哀れではあるが、そのためにクーデリア一とCGSの社員達は命を狙われたのであるから、正当なる防衛の結果であるといえた。

 

 「言い方は悪いけど、喧嘩を吹っかけてきた出来の悪い弟が殴られたから、親の命令で兄貴がそいつを殴りに来たみたいなものだね。かっこわるいったら無いね」

 「そうだな。そんなダセエ奴らに弟分殴られて黙ってるわけにはいかねえ、まあ相手の親が出てくるまでは喧嘩に付き合うのも兄貴の役目だしな」

 「じゃあ、今回は」

 「俺らタービンズもお前らの喧嘩に乗ろうじゃねえか。昭弘の件も協力するぜ」

 「かたじけねえ、兄貴」

 

 名瀬の回答にアミダもうなずきで了承を示し、オルガは頭を下げて感謝の意を示した。

 次に、タービンズの知る情報が鉄華団のメンバーにもたらされる。

 今回ギャラルホルンについたブルワーズの戦力は強襲装甲艦二隻と武装輸送船一隻、所持MS数推定15機MW数十機を有している。

 テイワズの情報部門により、今回の航海にあわせ危険度の高そうな組織としての情報として簡単にまとめられたものであるが、信用性は高いと名瀬はいう。

 

「まあ、さすがに数だけならこちらが不利だな。ルックスなら俺らの圧勝だがな」

 

 その情報には、ブルワーズ代表のブルック・カバヤンとNO2のクダル・カデルの容貌データも添付されており、それを受けての名瀬の軽口であった。

 実際両者の風貌は豚と人間のハイブリット生命体と装飾品好きの爬虫類人の如き姿であり、同じ人類かを疑うレベルの容姿であった。

 

 「あ、それとアジーと三日月の鹵獲したMSの分析も、大体出来たから報告しておくね」

 

 タービンズ特有の布面積の少ない制服を着たエーコが、名瀬の軽口を軽く流しつつ報告をする。

 

 「相手のMSはロディフレームだったよ。そこに燃料込みで限界重量ギリギリの装甲をつけて、鈍った動きを各部に取り付けたスラスターで強引に補ってるね。メカニックとしてはどうなんだと思うけど、瞬間的な戦闘力は高そうだね。あっ、あとここら辺の稼動部とかは装甲薄いし狙い目だね」

 「そこまでわかるなんて、仕事が早いですね」

 「そりゃビスケット君、実際ものがあるんだからこれくらいはメカニックなら常識よ」

 

 ビスケットの賞賛に、何気ない風を装いつつも得意げな顔をするエーコであったが、次のマルバの言葉に表情を暗くする。

 

 「中のMS乗りはどんな感じでしたかね?」

 「…破損が大きいから詳しくはわからなかったけど、まだ10台前半くらいだと思うってうちの船医が言ってたよ。阿頼耶識システムを積んでいたし、遺体にそれらしい痕跡があったって」

 「そして、栄養状態も悪かったんじゃねえですかい?」

 「…うん、推測だけどね。胃の内容物が無かったし、残った遺体部分もやせ細っていたって」

 

 ヒューマンデブリであろう彼らの扱いがいいはずは無い、そう思っていた一同も改めて告げられたブルワーズの彼らの待遇は、その中でも最低に近い部類である事が実感される証拠であった。

 

 「そうですかい、であのでかい緑のMSについてはどうでしたか?」

 

 重くなる雰囲気を変えるように、マルバは次の話題に持っていく。

 

 「ああ、でかいあれね。こっちは映像とエイハブリアクターの反応しかないからいまいちわからないけど、ガンダムフレームのどれかね」

 「見た目が大分、うちのバルバトスと違うけどホントすか?」

 「あのねユージン君、ガンダムフレームくらいよエイハブリアクター二基積んでるのは。だからガンダムフレームなのは間違いないわね」

 「ああ、そりゃそうか」

 

 意図してのものかは不明だが、ユージンの反応に一同の雰囲気は幾分明るいものに変わる。

 

 「でもガンダムフレームなら阿頼耶識システムに対応してるだろうし、強敵になりそうだね」

 「いや、それは違うなビスケット。そうだろ顧問」

 「だろうな、連中がガンダムフレームみたいに貴重で強力なMSにヒューマンデブリを乗せるとは考えにくいぜ。むしろ、腕の立つ見張り役を乗せて万が一の反乱に備えさせるだろうな」

 「成る程、確かにそうだね。とすれば僕らが狙うのはギャラルホルンのMS、それに緑のガンダムフレームを重点的にということだね。そうすれば他のMSは戦意が相当下がりそうだね」

 

 ビスケットの指摘通り、大義名分且つ後ろ盾である助太刀の対象と、敵組織で一番強い個体の排除、これが成功すれば戦闘継続を断念させる確率は大きく上がるだろうと、一同はその指摘に頷いた。

 

 「そうすると、後ろの艦を手出し出来なくさせて、その隙にうちの最大戦力でそれらを排除、が一番勝てそうだな。とするとお前ならどう動くアミダ?」

 「そうだねえ、私なら相手が逃げられないような場所で進路を艦で塞いで、相手が転進するために減速したところを伏せていたMSで艦を襲撃するかしら。確か今回の予定航路に丁度良いところがあったわよねエーコ」

 「はい、姐さん。二日後に通過予定の航路にスペースデブリ密集地帯の通過ルートがあります」

 

 アミダの問いにエーコが答えた場所は、厄祭戦時に破壊された機体に搭載されたエイハブリアクターが、今なお稼動する事で発生している重力場により隕石等が引き寄せられ、加えて電波障害のおまけもついてくるので、航行困難の地帯と化してた。

 だが困難であれば、それだけそこを利用できるメリットは大きく、タービンズでは何度かの調査と航海により、その地帯を強襲装甲艦が通過できるルートを見つけ出していた。

 

 「なるほど、先の襲撃から俺たちの航海ルートはどこからか漏れている事は間違いねえ。ならそれを前提に逆に不意をつけば、ということですな」

 「そういうこと、そして情報として知っているだけと、実際使った事のある差も生かせる。何でもやってみないとわからないものよ」

 「となると、まず相手に錯覚させる為に足の長いMSに通過ルートを走らせて、偵察しているように思わせておいて、イサリビとハンマーヘッドを相手の予想外の方向から相手の艦に攻撃させる。というのはどうでしょうか」

 「策としては悪くねえが、それだと問題が二つ。先行するMSが敵の集中攻撃を受けることと、不意をつく為にスペースデブリ帯を突っ切る必要があるってことだな。その辺はどうだビスケット」

 

 ビスケットの提案に頷きつつも、名瀬は指を二本突き出して更に考えるべき点をあげる。

 暫く顎に手を当てて思案していたビスケットは顔を上げると追加の提案を行う。

 

 「先行するMSを二機にして、それぞれに僕たちの最大戦力である三日月とアミダさんに搭乗してもらい相手のMSを釣り出して貰い、その隙にユージンの操作するイサリビを先頭にデブリ帯を抜け敵の艦に突貫する、というのはどうでしょう」

 「え!俺ぇ!?」

 「成る程、阿頼耶識で艦を精密に操縦できるユージンならできるか。どう思うオルガ」

 「そうだなユージンの操作技術はウチでも一二を争うからな」

 「ま、まあ俺らなら楽勝だぜ!」

 

 なおユージンの射撃能力に関してはビスケットよりまし程度なのは、この場合は関係ないのでビスケットもマルバも、オルガですら口にはしなかった。

 

 「あら、ご指名は嬉しいけど、名瀬がうんと言うかねえ。結構心配性なんだよこの人」

 「いや、確かにアミダなら問題ねえよ。うん」

 

 そういいつつも、心なしか浮かない顔の名瀬である。

 

 「まあまあ名瀬さん。一応歳星の整備長に頼んでいくつか新しい武装も用意してもらったんで大丈夫ですよ」

 「ずいぶんと準備が良いな、マルバよお」

 「いやあ、なるべく相手の知らない手を用意してないと不安になるもんで。整備長も面白い仕事だって喜んでましたぜ」

 「まったく、食えねえおっさんだぜ。オルガの将来が不安になるぜ」

 

 そうぼやきつつも、名瀬は弟分の顧問を務めるこの抜け目ない男を信じアミダの出撃を決めた事で作戦は決まった。

 鉄華団とタービンズ、両者の反撃が開始されたのだ。

 

 

 

 

 

 

 




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