補足で現セブンスターズの当主一覧を追加。
補足 セブンスターズ 当主一覧(今作品)…カルタ・イシュー(代行 マクギリス大好き)、イズナリオ・ファリド(マクギリス義父 ショタホモ)、ガルス・ボードウィン(ガエリオ父 善人)、ラスタル・エリオン(肉の人 貪欲)、アリー・クジャン(クジャン父 腹黒名君)、ネモ・バクラザン(仙人ぽい爺さん)、エレク・ファルク(肥満おじさん ギザロ・ダルトンの宗家)
『アグニカ・カイエルは神話?つまりお伽話…プロパガンダだったと!』
『そうだ、我がダルトン家に伝わる記録、技術開発部に残る秘匿されたデータ、それらを統合した結果、今日アグニカ・カイエルの功績とされているものをなした人物の該当者が少なくとも三人はいる』
『そんな、俺の夢、希望は偽りの光だったとッ!』
『…セブンスターズの直系ならば、より詳細な情報を秘匿しておろう。まずはイズナリオからそれを引き出してみてはどうだ?それで貴様の心も定まるであろう』
マクギリスは、自身に近づく規則正しい足音に思索の中から我に返る。
ギャラルホルンの本拠である海上基地ヴィーンゴールヴ、その通路の一つから外洋を眺めるマクギリスは振り返り、足音の主と相対する。
「久しぶりだな。カルタ」
「そうね、マクギリス。二年振りかしら」
カルタ・イシュー、セブンスターズ筆頭であるイシュー家の一人娘であり当主『代行』、 『前』地球外縁軌道統制統合艦隊の指揮官であるマクギリスの幼馴染だ。
「そういえば、貴方も昇進だったわね。おめでとうマクギリス一佐殿」
「ありがとう、カルタ火星統制統合艦隊司令。貴女は准将だったな」
「フン、相変わらずのにやけ顔と嫌味だこと。貴方の差し金なんでしょ、そんなに私が目障りなのかしら?」
カルタが今日ヴィーンコールヴに来た理由、それはマクギリスにも関係のあることであった。
マクギリスの行った火星支部の査察、その成果が火星支部が運営に困難をきたすほどに苛烈なものであったせいである。
とはいえ、火星本部長コーラル・コンラッドの汚職に支部の半数が彼の私兵として加担し、残りの大半がそれを黙認。
僅かにその汚職を弾劾しようとした者らも配置換えや事故による死亡により処理されたという結果が判明した以上、そのままの放置はギャラルホルンの勢力外からの監視組織としての建前上、できぬ相談でもあった。
先ほど急遽開かれたセブンスターズの会議により、その対策が討議された結果、カルタ・イシューが増強一個大隊を率いて火星支部の残存兵力を統合した新組織、火星統制統合艦隊を統率することが決定された。
「腐敗した組織の引き締めにセブンスターズ自らが出向く、別段の問題は無いと思うが?」
「白々しい!ガエリオ坊やの妹との婚約発表までに私を遠ざけたかったのでしょう!」
「義父上に助言したのは認めるよ。でも、その意図は違うな、カルタ」
詰め寄るカルタに、マクギリスはその涼しげな笑みを変えることなく応じる。
「カルタ・イシュー。イシュー家の美しく誇り高い一人娘である君だからこそ、私は君を推薦した」
「な、何を…」
マクギリスの言葉に僅かにほほを朱に染め立ち止まるカルタにマクギリスは言葉を続ける。
「私の調査した火星は各経済圏と火星本部による圧政と搾取により、虐げられていた。本来それらを正すべきギャラルホルンすらまともに機能せず私欲による圧政と搾取を人々に強いていたのだ。そのような状況を正せる人を、私は君しか知らない」
「あ、相変わらず、口だけは上手いわね」
「本心だ、幼き私を出自ではなく私として公平に見てくれた、当時と変わらぬ君にこそこの大任を務めて欲しいのだ」
そこまで語るとマクギリスはカルタの手を取り、そっと自身の両手で包む。
「どうか、火星の人々に示して欲しいのだ。真のギャラルホルンとしての高潔さと公平さを」
「…わ、わかったわよ!わかったから、その手を離しなさい!」
口調こそはきついが、マクギリスの手を自らは振りほどこうとしないカルタにマクギリスは笑みを崩さず、ゆっくりとその手を離した。
「すまなかった。つい子供の頃に戻ったような気がしてしまった、許して欲しい」
「い、いいわよ。確かに火星支部の建て直しは急務、私としても前の閑職よりは腕が振るえるもの。けど礼は言わないわよ」
「それで構わないよ。もし何かあれば連絡をしてくれ。私のできる限りにおいて、力を貸すことを約束するよ」
「そ、そう?ま、まあそんなことは無いと思うけど、その時はお願いするわね」
まだ若干赤い顔のまま、マクギリスに別れを告げ、カルタはその場から軽い足取りで離れていった。
「たいした人たらしぶりだな。マクギリス一佐殿」
「盗み見とはお人の悪いことですね、ギザロ副長殿」
カルタの姿が見えなくなるのと前後するように、技術開発部副長、ギザロ・ダルトンが姿を見せる。
「貴様一人に任せたほうが、話が早く片付くであろうから待機してたまでだ。それより、確認だが彼女の後任は貴様になると考えて良いのだな?」
「ええ、義父上には『家で』よくお願いしましたから、大丈夫でしょう。もとより閑職扱いの部署ですから、さほどの反対も無いでしょう」
「ならば良い。いずれ月の獅子と狐を狩る時に、その地位は役に立つであろうからな」
「やはり、彼らとの対立は避けられませんか」
「我らの望みは、現体制で潤ってる連中とは基本的に対立するものだ。特に月で大戦力をもつあの二家であれば尚更であろう。さて、続きは歩きながらでよかろう」
このエリア一帯に盗聴装置の無いことを知り、なおかつ盗聴防止の装備も持つ二人は人目のみを注意して二人は歩き出す。
「例の仇討ち部隊、上手くいってますか?」
「鉄華団か、連中の足取りは掴めたから、今頃交戦しておるだろうな。これでガンダムフレームと阿頼耶識システムの戦闘データが間も無く届くだろう」
「実際の機体が届くとはお考えでないのですね」
「無理だろうな、阿頼耶識システムとガンダムフレームの二つを揃えた者に、ただMSの扱いが上手いだけではどうにもならん。グルーガの機体にもデータ収集用の機材を搭載しておるから、精々長く交戦して戦闘データ収集の役に立てばよい。最悪コクピット周りの回収は命じてある」
そう告げるギザロの表情に、死に逝くであろうステンジャ家の若者への思いは一片たりと浮かんでいない。
「貴方は恐ろしい人だ。全ては自分の目的のために使えるかどうかでしか、判断をしていない」
「フッ、貴様も同類であろう。全ては己を飾る装飾程度にしか感じておらぬではないか」
「これも、貴方に教えていただいたアグニカ・カイエルの真実のお陰ですよ。アレがなければ、俺は今頃アグニカにとり憑かれていたでしょう。助かりましたよ」
「構わんよ、あのままでは使い物にならぬ可能性が高いと思ったので、修正を加えたまでの事よ」
会話の間も二人は互いの顔を見ることは無く、ただ己の前だけを見つめただ歩調のみを、互いに合わせて進んでいく。
「それでも、その貴方の冷徹さのお陰で己の価値と、欲望を見つめ直せた事は感謝しますよ」
「フッ、それがワシの目的の邪魔にならなんだのは感謝してやっても良いがな」
「その時は俺を始末していたでしょうに」
「その手間を考えれば、だ。貴様を仕留めるのはそれこそ骨であろうからな」
マクギリスとギザロ、その両者の間には情は無く、ただ互いの目的を果たすための有効な存在である、そういう認識しかない。
が、それ故に互いに飾ることの無い心からの言葉を相手にぶつけていた。
「では、ギザロ殿。また次の機会に」
「うむ、データの解析後にでもまた連絡をいれよう」
互いの目的の場所への岐路に近づき、二人は再び顔を合わせる。
「貴方が、ガンダムフレームを超える機体を開発できるように」
「貴様が、アグニカ・カイエルを超える英雄となれるように」
金髪と銀髪の怪物は、互いの野心の成就を祈り、互いの目的の場所を目指しその場を離れていく。
互いにその野心の成就の障害となるならば、何者をも葬る決意を秘めて互いの道を歩む。
それが、例え先ほどまでの同盟相手であっても、と。
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マクギリスのともだちが増えたよ。よかったね!