補足 アドラーグレイズ…猛禽類の鷲(わし)の名を冠したグレイズ。
厄祭戦初期にガンダムフレーム等に施された可変機能を現代に再現した機体。
脚部の大型クローを展開する事で、対MS,MAへの近接戦闘力を向上させる。
加えて、継続戦闘能力、回避力も通常のグレイズを大きく上回る。
公式開発者は、マクエレク・ファルクとなっているが、実際の開発はギザロ・ダルトンによるものである。
「まず確認しやすが、エドモントンまで蒔苗先生をお送りすりゃその代表選挙に勝てるんですかい?」
「そうじゃの、まずは我がアーブラウの今の状況を簡単に説明しておくかの」
マルバの問いに、蒔苗はアーブラウの現状を説明する。
まず前提として、ギャラルホルンを支配するセブンスターズにアーブラウ出身者が一人としていないことと、その為にギャラルホルン設立当初から不公平な扱いを受けていたことをあげる。
各経済圏が負担するギャラルホルン基地の維持費を含む供出金は他の経済圏と比較しても割高であり、その割りに、配置される人員装備ともに他の経済圏よりも質が落ちるものしか派遣されない事、経済圏間の争議をギャラルホルンが調停する際には常にアーブラウに不利な条件を提示されること等だ。
「つまり、セブンスターズの威光で、それぞれの出身の経済圏に対しての配慮のしわ寄せが全部アーブラウに来るわけですかい」
「まあ、ギャラルホルンに経済圏を挙げて賛同したのが、アーブラウが一番最後じゃったのを今だ引きずっておるのもあるだろうのう」
要は勝ち馬に乗るが遅れたのだなと、マルバは心中に思うが相手の心証を悪くするだろう為に、口には出さない。
とはいえ、アーブラウ全体に反ギャラルホルン志向があることは理解できた。
続けて蒔苗は、最近ギャラルホルンへの積極的協力により融和すべし、とする意見で纏まったフリュウの一派が急激に力を伸ばしてきた、という事を語る。
「とすると、そのフリュウ女史は積極的にセブンスターズへ擦り寄ることで、そこらへんを何とかしようってんで?」
「それならば、まだよかったんじゃがの。アレはただの売国奴よ」
そういって蒔苗は、長いアゴヒゲをさすりつつ、顔をしかめる。
マルバの言うとおりであれば、それはそれでアーブラウの未来の為の選択であり、敗北し亡命した蒔苗も復帰にそこまではこだわらなかった。
「あの雌狐は、自身と子飼いの利権さえ保証されればよしとし、アーブラウ全体をまとめてセブンスターズの一角、ファリド家に売りとばす算段よ」
「そこまで調べが付いていて、亡命せにゃならんかったのですかい?手持ちの武力が無いと惨めなもんですなあ」
「君、先生に失礼だぞ!」
「よい、事実だからの。ギャラルホルンの持つ力を振るわれれば、ワシもただのジジイじゃったわい」
会話を聞いていた年若い秘書が、マルバの言動に制止の声を上げるも、蒔苗はそれを押し留める。
「ギャラルホルン、各経済圏を外部から監視すると言う大前提を自ら放棄するのですか…」
「お嬢様、落ち着いてください」
話を聞いていたクーデリアは唇をかみ締めるのを見たミストは、そっと諫める。
「まあ、そんなわけで議員の大半は、フリュウの台頭を望んではおらんよ。ただギャラルホルンのごり押しがその無理を押し通しておるだけじゃ。よってワシは色々な手を使うべくここミレニアム島へとやってきたわけじゃ」
「で、その成果はあったんで?」
マルバの問いに、蒔苗はにやりと笑う。
「他の経済圏首脳部からのギャラルホルンへの抗議活動と、加えて別のセブンスターズの一角と非公式ながら協力の約束を取り付けておる。加えて残してきたワシの派閥のものも動かしてアーブラウ駐在の基地司令官らも治安維持の名目で、基地周辺から動かぬという約束までは取り付けた」
「よくギャラルホルンに対して、そこまでの約束を取り付けられましたね」
「同じギャラルホルンというても、本部と支部に温度差が出るのは、お前さんたちのおった火星と基本変わらぬよ。まあ火星よりは無茶はできぬがな」
思わず驚きの声を上げるビスケットの声に、蒔苗は短く告げる。
詳しくは言葉には出さないが、アーブラウ内の基地司令官らにはそれなりの付け届け等の高待遇を、恒常的に行っていたのであろう事を匂わせた。
更にいうならば、各地の基地に派遣されるのは本部基地での政争より落とされたり、出自がセブンスターズ累系でないものが大半であり、本部への潜在的な不信感と敵愾心を抱いていることも大きい。
それらはマルバらの知るところではないが。
「で結果はどうなりやした?」
「ファリド家の当主、イズナリオ・ファリド自らが動くことで選挙監視に加えて身辺警護の名目を利用し、本部から一個連隊規模のエドモントンへの動員を行うそうじゃ」
「そんな中に飛び込もうたあ、正気ですかい?一部とはいえギャラルホルンの相当な武力が、狙って来るんですがね」
「無茶な事を言っとるのは、理解しておるよ。で、何が必要かね?」
テイワズからの資料によれば、ギャラルホルンの編成上で連隊は三個大隊に相当する。
ドルトコロニーで掃討したドルト人民軍がおよそ中隊規模であったから、およそその九倍か十倍だ。
確かに、セブンスターズの当主の一人が出張ってきたにしては小規模であろうが、虎の代わりにオオヤマネコが来たとして喜ぶネズミはいないのと同じ事だ。
「…無茶ではあるが無理ではねえってところか。まず、前提となりやすが、計画は俺達で立てますが、現地の情報が欲しい。現地と連絡を取れる人員を貸してくだせえ。そして、こちらの計画に全面的に従ってもらいますぜ」
「もっともな話だ。了解した」
「次に報酬ですが、この作戦に参加する団員がもし作戦中に負傷や死亡した場合の補償をお願いしてえ。できれば十年かそこらは本人と家族が生活に困らない額が欲しい。無論、誰も無駄に死なせる気はねえですがね」
「ふむ、ならばワシの私財から用立てよう。ついでに、成功したら全員にアーブラウの名誉市民としての資格を贈らせてもらうとしようかの」
名誉市民、アーブラウへの貢献が著しい人物に送られるそれは、生涯に渡り年金が支払われるだけでなく、公的サービスも優先的且つ無料に受けられる身分であり、それなりに厳しい審査を必要とする資格。
それにねじ込む事を、今、蒔苗は約束しているわけである。
「そして最後ですが、蒔苗先生が政権を取った暁には、ここにいるクーデリアの後見人となってもらいてえんですよ」
「ふむ、それは大きく出たな。ワシが二十前の娘さんの後見をせいと?」
「火星からアンタらの前まで、色々と面倒を潜り抜けてこれたんですぜ?その資格は充分あるんじゃねえんですかね」
ジロリと睨む蒔苗に目をそらさず見つめ返すマルバ。
暫くの間、誰も一言も発しない重たい沈黙が続き、やがて蒔苗が大きく息を吐く。
「そうじゃな。それにお主らを頼るより、現状を速やかに何とかできる手もなし。よかろう」
「では、商談成立ということで」
先ほどまでの緊張が無かったように、にこやかに握手を交わす両者に、秘書を含めて周囲は呆れ気味に大きく息を吐く。
「では早速、仕事にかからせてもらいやすぜ」
「よろしく頼むぞ。ああ、現地との連絡役は坂浦、お前に任せる」
「分かりました。業務を引き継いだ後にそちらに加わります」
蒔苗に声をかけられた秘書が、頭を下げて了承の意を示す。
「鉄華団の皆さん、蒔苗先生の第二秘書、坂浦 譲次郎(さかうら じょうじろう)です。よろしくお願いします」
「鉄華団顧問、カリー・ジャワナンだ。よろしく頼むぜ」
坂浦に対し、その場にいた鉄華団の面子が各々の紹介をした後に、マルバたちは仲間達の下へと戻り、作戦を練ることとなる。
そして皆が部屋から退出していく中、ふとクーデリアは振り返り、室内に残る蒔苗に向けて口を開く。
「なぜ、蒔苗さんは、そこまでされるのですか?このままここで過ごせば、余裕のある余生をまっとうできるのではないですか?」
クーデリアは心中の疑問を素直にぶつけると、蒔苗はくつくつと笑う。
「クーデリアお嬢さん、その考えは死人に等しい。生きている以上は、まして自分ならばできることがあるうちは足掻かずにはいられない、それが人の業と言うものじゃよ。お前さんもそう考えたから、火星から今ここに来ておるのではないかな?」
蒔苗の言葉に、一瞬はっとした表情になったクーデリアは、次の瞬間に美しい笑みを浮かべる。
「そうですね。人というものは理屈に合わないです。だからこそ素晴らしいと思います」
そう言い残し、クーデリアが去っていくと部屋に残った蒔苗は楽しげに秘蔵していた日本酒の封を切り、盃に手酌で注ぐとひと息で飲み干す。
「成る程、あのカリーという男が推すだけあって、面白い子じゃ。これならばもしかするかも知れぬな」
誰に聞かせるでもなく、一人部屋で呟く蒔苗は、政治家としての活力が、ふつふつと己の身の内で騒ぎ出していくのを感じるのであった。
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原作と比較して、エドモントンに展開できるギャラルホルンの戦力は三割程度になります。
不足した戦力は質を高める事で補われます。
黒い巨大グレイズ「おっ、そろそろ俺の出番かな?」