<<──報告、本隊は既に一個航空機動部隊をその搭載機ごと殲滅、此を以て第一段階を完了とする。遊撃戦を開始せよ。>>
「──了解した、こちらゴースト、現時刻を以て作戦フェーズ2に移行。」
演習海域のとある海中、深度は1000。演習開始直後からひたすら潜行し、息を潜め続けていた伊310──伊300型反応推進潜水艦十番艦。合同艦隊に唯一存在する潜水艦である彼女は、その艦級の通り、核融合機関を以て動力源と為している。
現代潜水艦の能力を十二分に発揮して、演習相手の潜水艦も潜ってこれない場所でひたすら待機していた。
それも今を以て終了する。
「急速浮上、メインタンクブロー、深度100、対潜水艦戦用意。」
静かに、急速に深度を上げる。前部に集中配備された6門の魚雷発射管全てに、対潜用魚雷──七式改有線誘導酸素魚雷が装填。甲板に装備されたVLSには対艦巡航ミサイルを搭載。流石に弾頭は通常弾頭である。というよりそもそも、核弾頭は全て伊吹が纏めて管理していた。
キレたときについぶっぱなさないように。
「…航走雑音うるさすぎ…面舵22、魚雷発射管一番より三番、注水。艦首上げ10。……あ、距離が足りないや。巡速前進、静音航行。」
七式改有線誘導酸素魚雷は、文字通り線を牽くため、射程が制限されてしまう。
「十式欲しかったなあ…」
静かに、静かに、呉鎮守府所属潜水艦娘の背後へ忍び寄る。
「一番、発射。メインタンク注水、急速潜行、深度100」
一番発射管からのみ、一本だけ魚雷を放つ。と同時に、二次大戦時の潜水艦の限界深度付近まで一気に潜行。
数分後に、ズンと重い振動が走る。
<<──目標の撃沈判定を確認。>>
『呉鎮守府、潜水艦伊19、撃沈判定。』
「──まず1隻。次は空母か戦艦を喰いたいな。一番再装填。」
そう言ってソナーの探知範囲を最大に拡大、範囲内に、大型艦の反応を捉える。片方は水上砲戦部隊か、単縦陣を組んでいる。もう1つは、部隊2つ分の反応だ。定かではないが機関音が秋月型初期型と酷似した艦が複数みられる。恐らくは対空特化艦。しかし一方で防空巡洋艦のと思わしき機関音はない。聞こえるのは汎用型とはいえ水雷寄りの巡洋艦、そして完全な水雷巡洋艦。大戦後期には対潜もしくは対空艦として改装されたか退役した筈だが、能力は如何なものか。
(駆逐艦に対空型を多く配備してるから巡洋艦は対潜艦かな?対潜ヘリが居れば厄介…観測ブイを上げるか)
「…観測ブイ1号射出。」
艤装の艦橋部から小さなブイが射出された。緩やかに艦隊の方へ向かいつつ深度を上げ、海上に浮上するとそのままアンテナを展開し、周辺探知を開始。
対空警戒──複数の小型目標を探知。移動速度及び経路から上空警戒と対潜警戒と推定。機体の動きから考えて対潜警戒機は九七艦攻か。
(何であんな旧型が……いや、そうか。輝星とか居ないんだっけ。)
つい
「─1号はそのまま展開、両舷全速。」
出力を上げた融合炉から放射されたエネルギーによって、水を沸騰させタービンを回す。それに対応し、速度が急激に上がる。
「──両舷原速、一番から六番、発射管注水。」
目標を射程圏に捉えたところで速度を落とし、狙いを定める。
「狙うなら全部大物、5秒間隔、順次発射、始め。」
5秒の間を置いて魚雷を放つ。狙うは陣形内部の空母。呉鎮守府第四艦隊所属航空母艦、雲龍、天城、葛城、飛鷹、隼鷹、瑞鳳。
「メインタンクブロー、急速浮上深度20、ミサイル発射用意。──止めはしっかりと、ね。」
魚雷命中音が響く。
「ミサイル発射、完了次第急速潜行!」
海面を割って飛び出すミサイル。その数は12。1隻につき1発。伊310はそれで十分だと考えたのだ。そしてそれは間違っていない。
『呉鎮守府、航空母艦雲龍、天城、葛城、飛鷹、隼鷹、瑞鳳および軽巡洋艦阿賀野、五十鈴、駆逐艦秋月、初月、凉月、照月、撃沈判定。』
「あー、五十鈴かあ…なるほど、あれって確か改二?かなんかすると防空系になるんだっけ。ま、いっか。13かあ、喰ったねえ、ふふっ」
<<──ゴーストお前喰いすぎだ馬鹿野郎。一人で2割喰ってどうすんだ。>>
「良いでしょー別にぃ…残りはそっちで殺るの?」
<<一応な。と言うわけでお前は
「ゴースト了解。オーバー」
「もうお仕舞いかあ、ま、丁度良いかな?そう言えば相手ってまだ潜水艦5隻居るよね…えっと、8、13、14、168、58だっけ。それも来たら喰えるかなあ。じゃ、戻りますか。面舵135、両舷全速前進!」
何気に今回のMVPはこの娘かも…
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