Fate/GODEATER   作:ユウレスカ

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雁夜さんを主人公っぽくしてみた(たぶん)
切嗣さんをちゃんと書いたのは多分これがはじめてな気がする


第21章―しっぱい―

 断りの返事が返ってきたことに対し、雁夜はやはり、という気持ちがあった。聖杯戦争に、聖杯に彼は強い願いを持って参加しているのだろう。雁夜と同じまっとうな魔術師でない人間が参加している理由は、それ以外あり得ない。

「話はそれで終わりかい?」

 表情を変えることなく、切嗣はそう訊ねる。

 彼は状況を判断しかねていた。間桐 雁夜は昨年に戻ってきた――戻されたとも考えられる――人間だ。その1年で魔術師として鍛え上げられるとは到底思えず、何らかの改造や肉体の酷使は行われているだろうと、切嗣は予想していた。風貌が痛々しいのは恐らく、無理な鍛錬が祟ったのだと。

 だが、それにしたってこうやって1人、ここにやって来れているのはおかしい。間桐の魔術はそれほどに高度なものだったのだろうか。

 一方、雁夜はそれでも食い下がる。

「今は敵だとか言ってる場合じゃないだろ。聖杯に異常があったら、アンタの願いもかなわない可能性があるんだ」

「だが、異常がないかもしれない」

「ただの屁理屈じゃないか!」

「そっちこそ、そう主張するならきちんとした物証を出してくれ。……ああ、サーヴァントが証拠とか言うなよ、あれが抑止力の側かどうかなんて、誰にも立証できないんだから」

 言おうとしたことを先回りされ、それでも雁夜は黙らないように何を言うべきか考えを巡らせる。こういう時は黙った方が負けだ。たとえどんなくだらない主張でも、言い続けることが大切だ。

「キャスターのマスター。あいつが殺人鬼だって言うのは知ってるな」

 雁夜の確認に、切嗣は無言で肯定する。

「あいつには聖杯にかける願いがない。ただ儀式殺人を行っていたら、キャスターを呼び出せただけだ」

「へぇ……?どうしてそう断定できるんだい?」

「ライター舐めるな。独自の伝手くらいある」

 無論、嘘だ。間桐の家に戻る前に、以前の仕事先の人間とは縁を切っている。死ぬ可能性が高いと思っていたから、頼る伝手は、今は持っていなかった。

 だが、それを知っているのは雁夜のみ。切嗣がそんなのいるわけないと言ったところで、この1年連絡していなかっただけだと返せばいい。

「聖杯戦争なのに、数合わせだとしても殺人鬼、それも願いを持ってすらいない人間が召喚できるなんて、おかしいと思わないか?」

 嘘を本当にするには、真実を一部分に混ぜ、なおかつ堂々と論じること。根拠としては正しいが、雁夜は件のマスターが願いを持っていないかどうかは知らない。そこを気取られたら、この論拠は崩れてしまう。

 切嗣は雁夜の主張をしっかりと聞き届け、しかし首を横に振る。

「だとしても、君の言うことは信用できない」

「俺が、敵だからか」

「ああ」

 それは正しい主張だ。敵だから信用できない、だからマスターに会わせない。至極シンプルで真っ当な意見。

 ()()()()()()()()()

「っだー、もう!お前なんだ!なんだよその融通の利かなさは!少しくらいこっちの話も聞け!ていうか主張を聞いた挙句信用できない!?こう、大人らしく「いったんこっちで預かっておく」とか検討するくらいの誤魔化しをしろ!取り付く島なさすぎだ!」

 雁夜は真っ当な一般人だ。血なまぐさい現場に赴いたことはあれど、戦闘を行ったことは無い。魔術師ではない、という点では切嗣と同じ立場だが、見てきた世界も、価値観も違う。ある意味時臣とは違う意味で、分かり合えない相手だった。

 たとえ戦いの最中であっても、情報の真偽を考えて精査し、場合によっては敵であろうと手を組む(時臣は除く)。雁夜の在り方は、ライターとしての価値観だ。

 対して切嗣は、血生臭い環境の中で過ごしてきた。魔術師の内情も、その在り方も十分に知ってしまっている。だからこそ、魔術に関わっている人間の言葉は、到底信用できなかった。

「君だって急造とはいえ、魔術師だろう?目的の為ならなんだってするのが君達だ、信用なんて――」

「俺を他の魔術師と一緒にす、る、な!」

 ダンッ!と勢いよく地団太を踏む。床がわずかに罅割れたのを見て、切嗣の警戒心が高まる。が、雁夜はそれどころではなかった。

 この場にシオがいたなら呟いていただろう。

「マスターのじらい、ふみぬいたぞ」

 と。

「確かに俺だって1年とはいえ、正直嫌だったけど修行した魔術師だよああそうだよ魔術師だ!だがな、それは桜ちゃんをあんな家から助け出すためだよ!あんなクソみたいに非道な修行とかいう建前の虐待からあの子を救うためだよ!あとあんな家に娘寄越した時臣ぶっ飛ばすためな!そんなことをする時臣と俺が同列!?ふざけんじゃねぇ!」

 発言は先ほどまでとは違って、まとまっているとはお世辞にも言えない。今まで色々あって溜まりに溜まっていたものが、いわば八つ当たりとも言える形で爆発したのだ。

 一気に言い切ったからか、雁夜の呼吸音だけが響く。切嗣は一見落ち着いた様子だが、内心では驚いていた。彼の主張が本当ならば、雁夜は一度は逃げた魔術の道に、桜と言う幼子1人の為だけに戻り、その上聖杯戦争と言う殺し合いに参加したというのだ。それほどまでに、その幼子が大切なのだろうか。

 幾分かして落ち着いたのか、一度深く深呼吸をすると、雁夜は切嗣を見据える。

「……あんたがどんな強い願いを持ってるかは知らん。この場で受けてもらえないのは可能性として考えていた。だから、一旦持ち帰ってセイバーとそのマスターと話し合ってくれ。その結果答えがノーなら、俺たちだって納得するさ」

 また、沈黙が続く。今度こそは色好い返事がもらえないだろうか、と雁夜が考えていると、切嗣が応えを返してきた。

「――一応、彼女には伝えておこう。が、僕らは聖杯を確認しない限りは納得しない。それだけは覚えておくといい」

 及第点――いや、それ以上の返事だ。途中強引に推し進めてしまったり、暴言を吐いてしまったことを考えると、問答無用で戦闘を仕掛けられなかったというだけでも上々の結果だった。

 ほっとした様子で、雁夜の表情がほころぶ。心臓がバクバクと鳴っているのに気づいた。かなり緊張していたらしい。

「ありがとう、それで十分だ。じゃあ、結論が出たら使い魔か何か寄越してくれ。えっと……」

「――衛宮 切嗣だ」

「衛宮さんだな、分かった。じゃあ、これで失礼するよ……っと、ん?」

 切嗣の名前を聞いて、雁夜は立ち去ろうとしたが、途中で止まってしまう。サーヴァントから何か連絡でも入ったのだろうか。不意をうって彼を撃とうかと考えていた切嗣も、その様子に引き金を引くのを止めた時。

「――おいそれ本当か!?」

 慌てたような言葉と共に、雁夜が切嗣に向き直る。

「あんたのとこのマスターが、森の中で戦ってるって」

「!」

「バーサーカー、耳がいいんだ、だからどっからか戦闘音が聞こえてきた、女の声も――っておい!」

 雁夜の言葉を、切嗣が最後まで聞くことは無かった。全速力で駆け出す。

 このタイミングで、誰が来たのか。心当たりは1人しかいない。

「言峰 綺礼……!」

 彼がまた、やってきたのだ。

「衛宮さん、そんなにマスターの人が大事なのか……」

 一方、置いて行かれた雁夜は、どうしようか考える。このまま彼を追いかけて、恩を売る形で手を貸すという手段もあるが、襲撃者が誰なのかが分からない以上、深入りは禁物だ。おとなしく、バーサーカー達と合流するために走り出した。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 時は少しさかのぼり、キャスターと対峙するセイバー、ライダー、バーサーカー達。

 周囲の海魔はケイネスの魔術礼装、そしてライダーが操る戦車によって大多数が蹂躙されているが、それでもキャスター本体に辿り着くのは至難の業だった。ライダーとの相性の悪さを早々に見切ったキャスターが、狙いをマスターの2人に変更したためだ。戦車は真正面の敵ならば容易に蹴散らせるが、全方位から絶え間なく攻撃をくわえられては、いくら何でも動きは鈍くなってしまう。

 バーサーカーとセイバーも、苦戦を強いられていた。斬っても喰らっても、次から次へと海魔が召喚される。ジリ貧ともいえる状態だった。シオからしてみたら、魔力のいい供給源でもあったが、それにしたって限度がある。

 礼装で応戦するケイネス、拙いながらも魔術を繰り出すウェイバーも、打破できない状況に歯噛みしていた。キャスターの素振りから、彼の宝具と思われる書物がこの海魔の源泉だろうとは誰しもが気づいていたが、突破口が見つからない。

 海魔を斬りつける中、セイバーとシオが偶然にも背中合わせになる。

「バーサーカー、あなたの身体能力の高さを見込んで、お願いがあります」

「なんだー、セイバー」

「――風を踏んで、走れますか」

 その言葉に、シオはきょとんとするも、だいじょうぶだぞ!と笑う。飛び回るのは得意だ。

 しかし、その前に準備がいる。シオは素早く海魔に接近すると、右手を変化させた武器――一応宝具扱いをされている――神機(偽)でもって、それを喰らった。直後、自身を構成するオラクル細胞が活性化する。

 バースト状態。宝具とされた神機での捕食行動のみで起きる、身体能力を爆発的に上昇させる能力。彼女の敏捷の、高いプラス補正の所以である。

 セイバーにアイコンタクトを取ると、彼女は不可視の剣を構える。直線コースにいるのは海魔、キャスター、そしてシオ。

「風よ――!」

 その声と共に、”風王鉄槌(ストライク・エア)”が発動。風の鞘は、暴風となって直線状の敵を切り裂く。だが、それが収まればすぐにでも海魔が召喚されるだろう。それを阻止するは――シオ。

 キャスターの眼前に、白い何かが映り。

 直後、彼の右腕の魔導書――”螺湮城教本(プレラーティーズ・スペルブック)”が嚙み切られた。シオがその神機でもって、ギリギリの距離で喰らったのだ。

 直後、海魔が四散する。

「お――おのれおのれおのれおのれぇ!許さぬ、許さぬぞバーサーカーァッ!!」

 多少の損傷があっても自動修復するとはいえ、これほど深く傷つけられれば、大量の海魔の召喚、維持は難しい上、修復にも時間がかかってしまう。蛇蝎のごとく睨みつけてくるキャスターに対し、シオ達はさらなる追撃を駆けようとして、それは第三者の追撃によって妨げられた。

「!」

「んおっ!?」

 シオ達を狙って投擲されるダガー。キャスターを庇うかのようなそれに気を取られている隙に、キャスターは姿を消してしまった。たとえ怒り狂っていても、引き際を心得ているのは元軍人としての気質だろうか。

 襲撃者の追撃に備え身構えるが、何もやってこない。

「今のは一体……」

「バーサーカー、匂いや物音はしなかったのかね」

「ごめんな、サーヴァントのシオ、あんまりはなもみみもよくないんだ。さっき、なげるまえにやっときづいたぞ」

「いや投げる直前に気づいた時点ですごいって」

 ケイネスからの問いに肩を落とすシオに対し、ウェイバーがフォローを入れる。

 セイバーも警戒を解くと、ライダーたちに向き直り、頭を下げてきた。

「ライダー、バーサーカー、助太刀ありがとうございました。私1人では、キャスターにやられていたでしょう」

「きにしなくていいぞー、こまったときはおたがいさま、だ!」

「うむ、その通り。ついでに、余の軍門に下ってくれれば、」

「くどいですよライダー」

 ばっさりと誘いを断るセイバーに、シオとライダーは笑う。

 が、シオの表情が曇る。何かに気づいたのか、ある方向を見つめ、指さした。

「あっちから、セイバーのマスターがたたかってるおとがする」

「!」

「おんなのひとと、おとこのひと!」

 その言葉に、セイバーが駆け出そうとして、再度シオ達を見る。

「今宵あなたがたが何をしに来たかは分かりませんが、次に会ったときは敵です。――覚悟しておいてください」

 そう言い残し、セイバーはシオが指さした方面へとかけていった。

 

 

 

――セイバー陣営、説得失敗

 

――キャスター陣営、捕縛失敗

 

 

 




「追いかけなくていいのかよ」
「ここから先はあ奴の陣営の問題だからのう」
「これ以上深入りすれば、厄介なことになるだろう」
「マスターがこっちもどってくるっていってたもん!」

Qなんでシオはアサシンに気づかなかったの?
A気配遮断舐めるな

Qなんでアサシンは追撃しなかったの?
A隠れ場所が見つかった瞬間倒されるし生存が周知されてしまうため

そんな感じでキャスターはまだ無事です
尚螺湮城教本(の一部)をシオは食べたので、次回からどうなるやら

ちなみに
Qこの後のセイバー陣営の展開は?
A原作とほぼ変わらず。先にセイバーが辿り着くので、切嗣さんと綺礼さんは遭遇しません
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