キャスター?いいえバトラーです!   作:鏡華

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バニヤンちゃん可愛い……可愛くない?

あまりに可愛すぎて勢いのままに書いてしまいました。後悔はしてない。
美味しいもの食べて幸せになってほしいキャラが多すぎる……。


天を突くパンケーキ

カルデアでは、新しいサーヴァントがいつの間にか闊歩していることが多い。

 

マスターが召喚した者もいれば、あちらから勝手に押しかけて来た者まで。

 

 

そして今日も、新しい仲間が増える。

 

 

 

「アンシャンテ……私、ポール・バニヤン」

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「バニヤン!バニヤン!えへへ、新しいおともだちだ!」

 

「ええ、新しいおともだちだわ!なにをして遊びましょう?」

 

「うわー……目が回るよう……」

 

 

くるくると、バニヤンと両手を繋いで喜色満面に回転するのは、アサシンクラスのサーヴァント、ジャック・ザ・リッパー。

 

本来なら山にすら匹敵する巨体のサイズを縮め、ごく普通の幼子のような体格のバニヤンは、なされるがままに振り回されている。

 

それをニコニコと見守っているのは、フリルがあしらわれた子供らしいドレスに身を包むキャスタークラスのサーヴァント、ナーサリー・ライムだ。

 

 

「おままごと?おえかき?ああ、パジャマパーティーなんていうのもいいわ!考えるだけでウキウキしちゃって、お空に飛んで行ってしまいそう!」

 

「鬼ごっこも楽しいよ!かくれんぼも!ねえねえ、バニヤンは何が好き?」

 

「好きなこと……みんなが笑顔なら、何でも好き。あと、パンケーキ」

 

「「パンケーキ!」」

 

 

全力の歓迎にやや照れたようにはにかみながら答えるバニヤンに、ジャックとナーサリーは輝かせた目で顔を見合わせ、お互いの考えを全て理解したようにニッコリと笑う。

 

 

「じゃあ、決まりだね!」

 

「決まったのだわ!最初はお茶会にしましょう!紅茶を飲んで、お菓子を食べて、たくさんおしゃべりするのよ!ああ、なんて素敵!バニヤンのために、コックさんにたっぷりパンケーキを焼いてもらわなきゃ!」

 

「うん!バニヤン、行こう行こう!」

 

「パンケーキ……!たくさん、食べれるの?」

 

 

2人に手を引かれながら、バニヤンは好物への期待に目を煌めかせる。

 

その様子に、ジャックとナーサリーの笑みも自然と深まった。

 

 

「もちろん!」

 

「なんてたって──」

 

「「わたしたちのコックさんは世界一のコックさんだから!」」

 

 

 

***

 

 

「「コーックさん!!」」

 

 

綺麗に揃った、子供特有の甲高い声に、カレームは振り返った。

 

食堂の扉は開いているが、そこに人の姿は見えない──と、思っていると、死角となる壁から、ひょっこりと3つの頭が縦に並んで飛び出てきた。

 

そのあどけない仕草に顔を綻ばせつつ、手に持っていた食材を調理台に置き、手をエプロンで拭きながら厨房を出る。

 

扉の前まで近づいたところで身を屈め、中腰の姿勢で3人に笑む。

 

 

「これはこれは、随分と可愛らしいトーテムポールですね。そちらの緑帽子のお人形さんは初めましてですか?」

 

「バニヤンだよコックさん!」

 

「新しいおともだちなの!」

 

 

喜々として答えるジャックとナーサリーとは対照的に、バニヤンは壁に顔を隠しつつ、おずおずとカレームを仰ぎ見る。

 

 

「あ……アンシャンテ……ポール・バニヤン、です」

 

「Enchanté!私はアントナン・カレームといいます。よろしくお願いしますね。

 普段はここで皆さんにお料理を作るコックなんですよ。」

 

「コックさんのお料理、とってもおいしいんだよ!」

 

「コックさん!バニヤンはパンケーキが大好きなんですって!お茶会をするから作っていただけないかしら?たくさん食べるバニヤンのために、山のように!絵本で出てくるような、ふわふわがいいわ!」

 

「それはそれは、素敵ですね!では、小さなお姫様たちのために腕によりをかけて作りましょう!

エミヤさんから貴女の健啖っぷりはお聞きしています。藤太さんのご協力で材料もたっぷり揃えていますから、遠慮なくお食べくださいな。」

 

「「やったー!」」

 

 

手を振り上げて喜びながら、カレームの脇を抜けて食堂に駆け入る2人に続き、バニヤンも壁から身体を離して食堂内に踏み入る。

 

カウンターに備え付けられた脚の長い椅子によじ登ったところで目に入ったのは、厨房に戻り、両腕でようやっと抱えられる程の大きなボウルを出してきたカレーム。

 

片手で2個も3個も卵を持って次々に割入れていき、もう片手で粉を振るう。

 

流れるような動作に、3人が3人とも目を輝かせて魅入った。

 

あっという間に大量のタネが出来上がり、お玉でひとすくいしたものを熱したフライパンに投入すると、生地の香りと、溶けたバターの香りがぶわりと立ち上がる。

 

ぷつぷつと気泡を立て膨らむ生地を返すと、ムラのないきつね色に、歓声が上がった。

 

二枚、三枚と焼きあがったものをそれぞれ皿に移し重ね、再びバターを一欠片。

 

とろりとハニーディップに絡められた蜂蜜が滴り、琥珀が側面の階層を滑り落ちる様を三人同様にまじまじと見つめながらも、その緩慢さすらじれったいように、カウンター下でぱたぱたと足が動く。

 

 

「早く!早く!」

 

「ふふ、はいはい、もうじきに出来ますよー。

――どうぞ。おかわりもどんどん焼いていきますからね!」

 

「わーい!なのだわ!」

 

 

3人各々の前に出される、分厚い三枚重ねのパンケーキ。

 

焼く片手間に作られたホイップクリームと、飾り切られた果物、そしてミントが添えられている。

 

 

「ふわぁ……すごい。美味しそう……!」

 

 

目にも美しい皿を前に、バニヤンは甘い匂いを肺いっぱいに吸い込んで、期待と感嘆に目を輝かせた。

 

 

「コックさんの作るごはんは何でもおいしいんだよ!」

 

「ああ、もう待ちきれないわ!早く食べましょう!」

 

「うん!じゃあ──」

 

「「「いただきまーす!!」」」

 

 

手に持ったナイフでパンケーキを大きく切り分け、口に頬張る。

 

 

「……すっごいふわふわ!おいしい!」

 

 

たっぷり空気を含んだスポンジ状の生地が、卵とバターの風味を口中に振り撒きながら優しく歯を押し返してくる。

 

蜂蜜が滲みこんで色が変わった箇所を食べると、きめ細かい気泡に詰まっていた蜜がじゅわりと溢れだし、口が蕩け落ちるような甘さがペッタリと舌に張り付いた。

 

生地の温かさで溶けたバターの塩気が時折やってきて、飽きることなく両手を動かしてしまう。

 

 

「あま~い♡ おいしいね!」

 

「おいしいわねジャック!このフルーツも可愛くてとってもすてき!」

 

 

花弁のように切られた色とりどりの果物を、純白のホイップと共にパンケーキの上に乗せると、それはいつかの絵本で見たような、憧れの姿のパンケーキ。

 

ベリーの甘酸っぱさ、バナナのもったりとした甘さ、オレンジの爽やかさ、クリームの口当たりの良い柔らかさが、パンケーキの素朴な味を彩る。

 

 

「おかわり!もっとちょうだい!」

 

「はい、どうぞ」

 

 

バニヤンたちがぺろりと平らげる端から、カレームは持った手首にスナップを効かせてフライパンを振り、焼き上がったばかりのパンケーキたちを寸分違わぬコントロールで皿の上に飛ばしていく。

 

ポンポンと、焼きあがっていくパンケーキが次から次に積みあがっていき、やがて塔の如き様相に。

 

バニヤンはその大量のパンケーキを、追加されたチョコレートソースやベリーソース、そしてダージリンと共に、ミントも残さず余すことなくたいらげていった。

 

 

 

***

 

 

「はふぅ……おなかいっぱいだよぉ……」

 

 

ボウルいっぱいに作った生地のほとんど全てを見事に飲み込んだ腹を撫で、バニヤンは満足げに息を吐く。

 

 

「おいしかったわコックさん!素敵な時間をありがとう!」

 

「いえいえ。またお茶会をする時にはお声掛けくださいね?」

 

「もちろんよ!また甘いお菓子を作ってちょうだい!」

 

「ふぁー……ねむくなってきちゃった」

 

「わたしも……」

 

 

ナーサリーとカレームが早くも次のお茶会を約束している傍らで、バニヤンとジャックは満腹の気怠さにそのままうつらうつらを船を漕ぎだした。

 

 

「もう、ふたりともおこちゃまなんだから!

 ……そうだわ!お茶会の次はシエスタをしましょう!それがいいわ!マスターのベッドでお昼寝するのよ!」

 

「あ、それいい!おかあさんのおふとんでおひるね!」

 

「そうと決まれば早く行きましょう!ほら、バニヤンも!」

 

 

決まるやいなや、子供特有のフットワークの軽さであっという間に駆け出してしまう二人。

 

バニヤンもすぐに彼女たちの後を追おうとする――が、ふと足を止め、カレームに振り返る。

 

 

「コックさん、パンケーキ、とってもおいしかった……です。メルシー」

 

De rien(どういたしまして)!喜んでいただけたなら何よりですよ」

 

 

いじらしく控えめに笑うバニヤンに、カレームも満面の笑みで返す。

 

 

「それで、えっと……その、」

 

 

もじもじと、後ろ手に指をいじるバニヤンを急かすことなく、カレームは薄い笑みのまま、じっと待つ。

 

 

 

「……ま、また、作ってくれますか」

 

 

小さく呟かれた言葉に、カレームは穏やかに笑んだ。

 

 

 

「──ええ、もちろん。あなたが望むなら、いつだって」

 

 

 




レベルアップ

「また腕が冴えてしまいますね!」
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