私は先日fgo冬祭りに行ってきました。現実世界で回って光る乖離剣エアを見たり、通常運転なリヨぐだ子を見たり、玉藻のモーション改修後を一足早く見たりと楽しかったです!
え?クリスマス当日の予定?投稿してる時点でお察しくださいよハハハ
「──で、き、たぁー!」
達成感と疲労感に満ちた声を上げ、バタリと食堂の床に背中から倒れ込むカレーム。
日頃からは考えられない奇行に、もしここに誰か通りがかればぎょっとした目で彼女を見ることだろう。
──そして、その次には彼女の前に鎮座する
人の背丈よりも遥かに高い、クリスマスツリーを模したような絢爛豪華なオブジェに。
「お疲れ様、でした……お互いに」
と、床に寝転がったままで大きく伸びをするカレームにテーブルから声をかけるのは、ヴァン・ホーエンハイム・パラケルスス。
普段から穏やかで表情の機微が分かりづらい彼だが、しかしその顔と声音には疲労が透けて見える。
「さすがにサーヴァントの身とはいえ、三日三晩の魔術行使は辛いものがありますね」
「無茶させてしまってすみませんでした……。でもおかげで三日で完成まで持ってこれたので感謝しきりですよ。ありがとうございます。私1人なら5日間はかかりっきりでしたね」
「いえいえ、こちらとしてもお役に立てて何よりです。私の持つ力を人の歓びに使えるのなら、それが私の歓びですから」
「本当に助かりましたよ。料理はともかく、
カレームはようやっと上半身を起こし、両腕でその身を支えながら目の前のオブジェを見上げる。
基本形は樹木を
陶器のようにつるりとしたその表面には宝石のような輝きを放つオーナメントや、ソリの手綱を繰り空を翔るサンタクロースの精密な人形、赤と白のポインセチアの花弁と葉がいたるところに散りばめられており、そして頂点には煌めく星が飾られている。
「しかし便利ですねえ錬金術って。飴もチョコも、特殊な道具も使わずに簡単に溶かして好きなように固められて……私も勉強しよっかな」
「錬金術はもともと台所のものを利用して行われたのが始まりとされてますし、調理との親和性はかなり高いのですよ。とは言え、貴女の技量があればわざわざ学び直す必要もないかと思いますが。……そもそも、貴女の
「そりゃ出来なくはないですけど、あれ頭の中で全部構築しなきゃいけないからしんどいんですよね……。基本的に私は手を動かしながら考えるタイプなので。
──それに、そんなにあっという間に作ってしまったら、それこそ
「……そういうものですか」
「そういうものです。特にこんなに大きなものは何かイベントでもないと許可が下りませんからね。貴重な機会はじっくり楽しんで作らせてもらいます」
「なるほど、だからわざわざクリスマスの一か月前からこのような大掛かりに。
過程を楽しむ、というのは魔術師にはあまりない感性ですね……。私としては工程を拝見させていただくのは非常に勉強になってありがたいのですが」
「魔術師でもない私から一体何を学ぶというんですか?」
「いえいえ、手法は異なれど、同じく”創り出す”者として、学ぶことは多いですよ。大変に興味深いです」
「賢者の石をも創り出す《医化学の祖》にそこまで言っていただけるとは、職人として嬉しい限りですねぇ」
クスクスと笑うカレームを尻目に、パラケルススは改めてオブジェを見上げる。
陶器のように滑らかなチョコレート、曇り無く輝く宝石は飴細工。
至高の美術品とも見紛うような精緻極まる人形と水滴を空目するほどの瑞々しさを表す花は砂糖菓子。
全てに菓子材料を用いて作られる、製菓技術の一種の極致。
アントナン・カレームというパティシエールが後世に遺したその名の一端を担う芸術である。
「……それでは、私は自室で休ませてもらいますね。また何かお手伝いできることがあればお呼びください。このパラケルスス、是非ともお力になりましょう」
「はい!ありがとうござ──あ!ちょっと待っててください!」
席から立ち、食堂を出て行こうとするパラケルススをカレームは引き留め、慌てた様子で厨房の中に駆け込んでいく。
「……?」
突然の振る舞いに心当たりがないパラケルススは、首をかしげながら厨房を覗き込む。
すると、数分もしない内にカレームはパタパタと足音を立てながら戻って来た。
その腕に大きな”何か”を抱えて。
「お待たせしました!はい、これをどうぞ」
「これは……?おっ、と」
パラケルススは白い紙に包まれたそれをカレームから受け取ると、ずしりとした重みに少し体のバランスを崩した。
両腕に抱え込む大きさも相まって、赤子を抱いているような感覚を覚える。
「今日のお礼です!三日前に仕込んでいたのをすっかり忘れてしまっていて……。どうぞ
「……ああ、なるほど。クリスマスですものね。懐かしいものです」
「でしょう?やっぱり
「ふふ、はい。私たちだけの秘密……ですね?」
しー、と互いに自分の口に人差し指を当てながら、秘密の約束は交わされた。
***
カルデア内で自分に宛がわれた部屋に戻ったパラケルスス。
扉を閉めるとすぐに抱えていた包みを机に置き、実験器具で溢れかえる戸棚からフラスコを取り出し、水を注ぎ入れてアルコールランプの上に置いた。
火を灯し、ゆらめく炎がフラスコの底を炙りだすのを目で確認する。
「今度、サイフォンでも作りましょうか」
などと独り言ちながら、フラスコの前から離れ、机に置いた包みに手を掛ける。
かさり、と音を立てながら紙を広げると、紙と同様に白い、大きなパンのような固まりが鎮座していた。
生前からよく見た馴染みのある光景に、誰に見せるでもなく顔を綻ばせる。
「シュトレン……確かに、もう
傍らからナイフを取り出し、ちょうど中央あたりの部分に宛てる。
刃先を表面に滑らせると、純白──表面にまぶしてある砂糖がシャリ、と音を立てた。
ぐ、と力を込めて刃を内部へ沈める。
重量感を腕に跳ね返しながらも、その生地はゆっくりと刃を飲み込んでいき、ちょうど半分に両断された。
断面からはレーズンやナッツがたっぷりと入っているのがうかがえる。
再び切り口の近くに刃を入れて薄くスライスするように切り分けて、皿の上によそう。
パラケルススはようやっと椅子の上に腰を落ち着け、フォークを皿に添えた状態で湯が沸くのを待つ姿勢になっていたのだが──。
「……まあ、お茶は食後でも構わないでしょう」
生来の甘いもの好きにはその時間はあまりにも苦行だったようで。
誰かに──もしかすると、自分自身に──言い訳するように呟き、一分と経たずに再びフォークを手に取った。
フォークの側面を押し付け、一口大に切り分ける。
中身の詰まったケーキに先端を刺し、口元に近づけるだけで、シナモンやナツメグの甘い香りと、ラム酒の芳醇な香りが鼻腔内に雪崩れ込んでくる。
口の中に放り込んだ途端に、今度はバターの濃密な香り。
しっとりとした生地を噛み解くと、ほのかに甘い小麦と卵の味と共に、中にたっぷりと入れられているラム酒漬けにされたレーズンやオレンジピールの果物独特の瑞々しい甘味が凝縮された風味が、砂糖の甘さを彩る。
時折ぶつかる固い感触を追いかけて奥歯で押し潰すと、ローストされた胡桃が砕け、香ばしさを追加する。
具材のそれぞれが賑やかに存在を主張しながらもしっかりと纏まっている様は、お祭りを象徴しているようで。
「……あぁ、やはりクリスマスといえばこれですね。英霊となってからもまた口に出来る機会があるとは……私には、過ぎた幸福です」
愛おしむように、懐かしむように──面映ゆいかのように。
緩む頬をそのままに、幸福と共に最後の一口を噛み締めた。
二切れ目に手が伸びそうになるが、シュトレンは日を追う毎に生地にラム酒や果物の風味が移り、発酵することで風味が良くなっていくもの。
毎日1切れずつ食べることでその移り変わりを楽しみ、クリスマスに1番美味しい最後の1切れを食べるのが慣習である。
ぐっと我慢し、代わりにアルコールランプに設置していたフラスコに手を伸ばす。
その中身の煮え立った湯を注ぐと、ティーバッグから見る間に色が滲み出す。
鮮やかな色から湯気を立てる──ビーカー。
「……クリスマスまでに、ティーセットも作りますか」
イベント開催中
「おや?何やら催し物の気配……。これはパーティーの準備が必要ですね」