キャスター?いいえバトラーです!   作:鏡華

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夏だ!海だ!つまり海産物が美味しい季節だ!
獲り放題の海の幸にテンションが上がって思わず霊基変化。
背丈ほどもある鮪包丁を携え、海辺のヤドカリやら鶏やらをバッサバッサと捌いていく!
海の狩猟者(ハンター)にして料理人(コック)、☆4セイバー アントナン・カレーム(水着)ここに見参!

……なんてことを考えてたらもう9月ですよ。大丈夫、2週間くらい誤差だよ誤差(震え声)

そういえば今回ルビ振り機能に文字数制限があることを始めて知りました。


(追記)
感想で水着カレーム見たいとのありがたいお言葉を頂いたので、ざっくりとしたものですが空想具現化(マーブル・ファンタズム)してみました。
第1・2・3再臨のデザインイメージです。

【挿絵表示】




海と修羅場とロコモコと

青い海、白い雲、照りつける太陽。

 

カラッとした爽やかな空気に、鼓膜を優しく揺らす波の音。

 

天下のリゾート地ルルハワの、値千金にもなる美しい光景。

 

 

──それら全てに背を向けて、机にかじりつく影が2つ。

 

 

「最後の……ここの最後の台詞が出てこない……おのれ……あと一行で終わるものを……」

 

「……あー、いけませんぞ。オチが微妙に変わりますなあコレ。伏線を書き直さなくては……いや、もう新しいものを創った方が早いのでは?」

 

 

片やキーボードを叩き、片や紙面にペンを滑らせながら、幽鬼の如き様相で文章に向き合っている。

 

アンデルセンとシェイクスピア──サーヴァント界きっての文豪にして、サークル「童話が大人」のメンバーである。

 

サーヴァントによるサーヴァントのための同人誌即売会サーヴァント・サマースター・フェスティバル、通称サバフェスまで残り3日と少し。

 

サークル参加予定の二人は、現在ホテルの一室で絶賛修羅場中であった。

 

 

「いつもの引用軽口がないな劇作家……流石に限界が近いか?」

 

「何のまだまだ!今は頭が新しいものの創造に集中しているだけでして。古いものを思い出すのはまた脳の使い方が違いますからな!」

 

 

お互いに意識があることの確認と、鼓舞のために声を掛け合っている──と、そこに。

 

 

部屋に響く軽快なチャイムの音が一つ。

 

 

「……ええい何だ、この忙しい時に!今回は〆切をせっつく編集者はいないはずだぞ!」

 

 

苛立ちを隠すことなく、しかしオートロック故に勝手に入らせることもできず、距離がより近いアンデルセンが、椅子から立ち上がってドアに向かう。

 

何徹したかもわからない身体をフラつかせて、ドアノブを捻ると。

 

 

「こんにちは。進捗、如何です?」

 

 

──満面の笑みを浮かべるアントナン・カレームがいた。

 

 

「……ルームサービスは頼んでいないはずだが?」

 

 

これ以上ないしかめっ面を晒し、低音の声を更に低くして唸るアンデルセン。

 

 

「やーですねえ。今回は私も客側ですよ。隣の部屋をお借りしてるんです。ここ数日誰も出入りがないので、様子見と差し入れに。どうせ大したもの食べてないでしょう?」

 

「ハッ!部屋の使用客が筒抜けとは、このホテルの従業員はよっぽど口が軽いと見える!雲隠れの時にはこの系列は避けるとしよう」

 

「いや、昼夜問わず特徴的な声の唸り声やうわ言が聞こえてくれば大体察しはつきますよ……」

 

 

平時通りの毒を含んだ物言いながらも、抵抗なくカレームを部屋に招き入れたのは、疲れ故の判断力の鈍ったからか、手に持つ紙袋からの芳しい香りに敗北したからか。

 

 

「──おや、カレーム殿。何だか随分と久しぶりな気がしますなあ!」

 

「うわっ……」

 

 

部屋に入り、その全貌とシェイクスピアの様子を目にした瞬間、反射的に声が漏れた。

 

部屋中に散らばる原稿用紙と資料の本。

 

アメニティのタオルやシーツも、常に二人が部屋にいる故に使用後ロクに回収されず、一か所で山となっている。

 

そんな部屋を背景に、目の下に濃い隈を作り、髪を乱しまくったシェイクスピアが原稿にしがみつくように座っている姿は、何とも衝撃的なものだった。

 

数日後には引き払う予定なのをいいことに、日常的に使用しているカルデアの書斎よりも散らかし方に遠慮がない。

 

 

「──とりあえず、2人とも一回シャワーなり顔を洗うなりしてきて下さい。そんな調子では浮かぶアイディアも浮かびませんよ。部屋の片づけとセッティングは私がその間にやっておきますから。ほら!行った行った!」

 

 

洗面所とバスタブを交代で使ってくださいね、と、二人をバスルームに押し込み、カレームは作業に取り掛かる。

 

 

 

 

 

──数十分後、二人が身体から湯気を立てて出てきた時には、部屋はチェックイン時さながらの様子に戻っており、窓際に据えられたテーブルにコースターとスプーンが置かれていた。

 

 

「おお!これは素晴らしい!流石、バトラーを自称するだけはありますな!」

 

「場の雰囲気を楽しむのも食事の一要素ですからね。当然、極めてありますとも!」

 

 

シェイクスピアの演技がかった賞賛を素直に受け取ったカレームは、ムフーと鼻を鳴らして上体を反らす。

 

それに合わせて双丘が突き出され、被さっている"Arts"の文字が間抜けに歪んだ。

 

 

「……そういえば、同じホテルにマスターも泊まっているとか何とか。どれ、内線で様子でも伺いますかな!」

 

「はあ!?ちょっ、そう言って私のアーツTシャツ(この格好)をマスターに見せようとしてるでしょう!?こんな浮かれポンチな姿見せれませんから!フランス嫌いだからって私にも八つ当たりするのやめてください!!」

 

 

ランスロット卿にも嫌がらせしたの知ってるんですからね──!などと、受話器を間に置いてじゃれ合う二人を余所に、一人アンデルセンは椅子に身を預ける。

 

窓から差し込む陽の光の高さに、世間は昼時になっていることをようやっと察した。

 

 

「ほらほら、シェイクスピアさんも座ってください。眠気覚ましのカフェ・オ・レをどうぞ」

 

 

席に促されると同時に差し出されたグラスが、カランと氷を鳴らせる。

 

空調が効いている部屋の中においてなお結露を滴らせるそれの中身をストローで啜ると、ミルクによって柔らかい口当たりになったほろ苦さが、冷たく優しく臓腑に沁みた。

 

 

「うーむ、『コーヒーは地獄のように熱く、(Il caffè dev'essere caldo come l'inferno,)悪魔のように黒く、( nero come il diavolo,)天使のように純粋で、(puro come un angelo )愛のように甘くなければならない (e dolce come l'amore)!』これは熱くも黒くもありませんが、天使のように優しく、しかし地獄のように無慈悲に目を冴えさせますなあ!」

 

 

湯を浴び、カフェインによって本調子に戻ったシェイクスピアの舌が流暢に回りだす。

 

その快調に対して、しかしカレームは露骨に顔をしかめた。

 

 

「うげ。嫌な人のこと思い出させないで下さいよ。しかもご丁寧にフランス語引用……。」

 

「おや?貴女を見出したパトロンの言葉に対する態度としてはいささか不釣り合いではないですか?かのナポレオン公に比べればまだ好感度は高いと思うのですが。そこ辺りの心境について是非詳しく──」

 

「あーあーあー!生前とは言え仕事の話はやめてください!バカンスと趣味で来てるんですよここには!上司たちのことは考えたくないんです!」

 

 

悪癖とも言えるシェイクスピアの詮索──もとい取材をシャットダウンするように、耳をふさいで(かぶり)を振るカレーム。

 

騒がしい2人をカフェオレと同じくらいに冷めた目で見つつ、アンデルセンはストローからちゅぽん、と口を離した。

 

 

「フン、そう言いながらこうやって甲斐甲斐しく世話をしに来るとは、従者の性分が霊基に染みついているのか?だとしたらご苦労なことだな。どうせお前もサークル参加だろう?落としても俺は知らんぞ」

 

「サークル参加だからこそ、隣の戦友を助けに来たんですよ!サークル間交流(こういうの)もサバフェスの醍醐味でしょう?私のオフセ本はもう入稿してる上に、今日持ってきたのは店のをテイクアウトしてきたものですもの。従者ではなく、あくまでも友人として、色々なもののついでに!協力しているんです。従者だなんて、仕事じみた事言うのはやめてくださいってば!」

 

 

彼女の言葉は非常に婉曲してはいるものの、言葉のプロたる二人の脳内では『べ、別にアンタのためにやってるわけじゃないんだからね!』と翻訳されていた。

 

が、それはそれとして。

 

 

「「"店"?」」

 

ほんの一言の矛盾を、文豪は許さなかった。

 

 

「おやおや、料理の第一人者たるものが既製品に頼るとは。よっぽど執筆活動が忙しかったと見えるな。成程、目の前の料理よりもレシピ開発が大事というのもある種のポリシーだろう。理解はしよう」

 

「はあああ!?この私が!他人の料理を!臆面も無しに出すとでも!?ちゃんと、()()()()のものですよ!」

 

「……はて?自分の店?それこそ先程の言葉と矛盾するのでは?ここではバカンスだと……」

 

「私にとっては店を持つこともバカンスですよ。ルルハワに一軒、ハワイ名物を中心としたレストランを期間限定で運営させていただいてます。

 生前の経歴では個人専属こそ目立ちますが、私の料理人としての始まりは大衆食堂。マスターの専属を離れて、慣れ親しんだ空気と新しい食文化に触れながらレシピ研究に勤しむ。それこそが私の息抜きにしてバカンスです!」

 

「ワーカーホリックここに極まれりだな!」

 

「貴女、ナイチンゲールさんタイプのバーサーカーに霊基変化しておりませんか?」

 

 

いや、オタクらも大概だろう──と、ツッコミを入れる緑の弓兵は、残念ながらここにはいなかった。

 

 

「──と、いうことで当店の看板メニューのロコモコ丼を持ってきました。温め直しましたので、出来立て同様の味ですよ!」

 

 

2人の前に差し出される、テイクアウト用のプラスチック製容器(ボウル)

 

安っぽい雰囲気のあるそれの中には、しかし一目で食欲を煽る色彩豊かな具材が並べられていた。

 

 

まず一番目を惹く橙にも近い濃い色の黄身と、コントラストを示す白身の目玉焼き。

 

更に、白身、白米、そして容器の白をキャンパスにするようにして配置された、ハンバーグ、トマト、レタス、そしてグレービーソースの色彩の豊かさが目にも楽しい。

 

このロコモコ丼、ルルハワ界隈──特にサーヴァントの間ではかなりの評判となっているのだが、ホテルに籠りきりで外界の情報の大半をシャットダウンしてしまっている二人には、与り知らぬことであった。

 

 

 

スプーンで黄身をつつくと、水滴が弾けるかのように薄い膜が破れ、その中身が焼き上げられた挽肉の表面をねっとりと伝う。

 

黄身とグレービーソースを絡めて、ハンバーグと黄身、そして白米を諸共にすくい上げると、一口分の丼がスプーンのつぼの部分に完成した。

 

それを一息に頬張ると、まず舌の上に来る肉の旨味。

 

グレービーソースによって強調されたそれは、ハンバーグの断面から滴る肉汁で、咀嚼する前から舌を楽しませる。

 

上に乗った目玉焼きの白身と共に歯を入れると、さらに勢いよく肉汁が迸り、スパイスと脂のジューシーな風味が白身とマッチング。

 

色に負けず濃厚な黄身はそれらをまろやかにまとめ上げ、単体で一種のソースとして機能していた。

 

更に咀嚼を進めると、ハンバーグの中に紛れていた飴色の玉ねぎの甘味が顔を出し、勢ぞろいした全ての風味が白米に混ざり、沁みていく。

 

野菜の部分を箸休めに食すと、新鮮なレタスとトマトが、そのシャキシャキとした食感、そして甘味を含みながらも野生味の強い苦味や酸味をもって口内に新しい風を運んできた。

 

グレービーソースのおかげで丼の中で浮くことなく、ハンバーグや白米と調和している。

 

栄養バランスも良く、一椀で食べられる手軽さは、観光に忙しい旅行者にも、屋内作業で時間が惜しい作家たちにも嬉しいもの。

 

しかしながら、陽光を浴び、青い空と海を一望する窓際で潮風に吹かれながら食すロコモコ丼。

 

それは、ほんの一時でも、作家たちにリゾートの安らぎを与えていた。

 

 

「いやあ、絶品!店に行って、他のメニューも色々といただきたくなりますが、そうなるとカレーム殿の店を絶賛する本を一本仕上げかねませんなあ!」

 

「おのれ、こんなものを食べてしまってはこのホテルの料理が食えなくなってしまうだろうが!サーヴァントでなければ飢え死にで密室殺人が出来上がっていたぞ!」

 

「このホテルのレストランでもブーディカさん達が頑張ってますから、十分に満足できると思いますよ。あとサーヴァントの身でもちゃんとご飯は食べてください。ホテルマンに様子のチェックをお願いしておきますし、私もまた来ますからね」

 

 

リゾートの空気に触れ、食事に舌鼓を打つことで休息をとった脳が再稼働を始めたのか、空の器をテーブルの隅に置くと同時にメモを取り出し、湧き上がるアイディアを書き留めていく作家二人。

 

カレームは後片付けをしながらもそんな二人をぽつぽつを言葉を交わし、そこから得たものをまた書き溜めていく。

 

 

「──そういえば、カレーム殿の新刊は何なのですか?こうしてお世話になったことですし、当日はブースに挨拶に行きますぞ!」

 

「ありがとうございます!オフセットでは現界してから開発した新作料理や他国料理アレンジメニューのレシピ本を。コピー本では『建築物系宝具から見る建築様式の時代変遷の考察』を出す予定です!コピー本の作業がもう少しありますが、今のペースなら落とすことなく無事に当日を迎えられそうです」

 

「なるほど、創作と研究の二本立てですか!面白い!」

 

「フランス料理の創始者の新作レシピか。転売でもされればさぞ愉快な事態になりそうだな!」

 

「それを言うならお二人も似たり寄ったりですよ……」

 

 

と、3人が口と手を同時に動かしていると、チャイム音が再び部屋に響く。

 

 

「誰ですかな?早くもホテルスタッフの方が様子を見に来ましたので?」

 

「あ、多分エドモンさんとナーサリーさんだと思います」

 

「はあ?何故そこでその二人が出てくる」

 

「いえ、店にいらした時にホテルの隣室──あなた方のことを少しお話ししたんですよ。ホラ、よく書斎で一緒にいらっしゃるから、縁遠いというわけでもないでしょう?そうしたら、『後で様子を見に行く』とおっしゃってて……」

 

「また随分と部屋が騒がしくなる面子を寄越したものだな……」

 

 

あ、ナーサリーさんは『遊びに行く』と言ってましたけどねー、と、恨みがましげなアンデルセンの視線をスルーしつつ、カレームはドアに向かい、ノブを捻る。

 

 

「はーい、こんにち、は……」

 

 

開けた先の視界に、カレームは言葉を無くす。

 

 

「あら、こんにちはコックさん!貴女もいらしてたのね!」

 

 

ニコニコと挨拶をするナーサリー・ライム。

 

 

「ウェイター……いや、料理人。随分と腑抜けた格好だな」

 

 

『お前が言うな』と言いたくなるような水着姿の巌窟王、エドモン・ダンテス。

 

そして。

 

 

「内線で無言電話があったから様子を見に来て、途中で二人と合流したんだけど……。珍しい格好してるね、カレーム」

 

 

意外、という感情を表に出しながら頬を掻くマスター──藤丸立香が、部屋の前に立っていた。

 

 

カレームは、ゆっくりと状況を理解する。

 

目の前のマスター。

 

自分が着ている真っ青なアーツTシャツ。

 

完全にプライベートモードゆるゆるな声色で開けたドア。

 

 

「──あ、」

 

「あ?」

 

「ぎゃあああああああああああああああああああ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──その後、隣の自室に逃げ帰り、ベッドの上で羞恥に悶え苦しむカレームがいたが、そんな事象もループの狭間に消え、結局、巌窟王と立香2人の秘密となったとか。

 

 




好きなこと

「好きなことですか?それはもちろん、料理と、デッサン、あと建築物の鑑賞ですね!これでも昔は建築家に憧れた身なんですよ?」


《絆レベルアップ》

Lv. 2 ⇒ 3

サーヴァントのプロフィールが更新されました。
マイルームで聴けるボイスが追加されました。
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