キャスター?いいえバトラーです!   作:鏡華

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たとえ短くても、書いておかねばなるまいと思った。


宴、西の村

悪虫退治に工夫を凝らし、三上山を往来すれば、汲めども汲めども尽きぬ幸──。

 

お山を七巻き、まだ足りぬ。

 

お山を鉢巻、なんのその。

 

どうせ食うならお山を渦巻き、竜神様の太っ腹、釜を開ければ大漁満席!

 

 

──美味いお米が、どーん、どーん!

 

 

 

 

***

 

 

 

第六特異点、キャメロット。

 

円卓の騎士たちから逃れ、辿り着いた難民たちの村。

 

玄奘三蔵と俵藤太、そして静謐のハサンと合流して戻ったところで──宴が、始まった。

 

 

と、言うのも、俵藤太の持つ()()()()、《無尽俵》。

 

魔力のある限り、海の幸でも山の幸でも、食料を供給し続けることができるという、節制を強いられていた村にこの上なく求められる能力を持つ宝具である。

 

人々が沸きあがるのは必定で──。

 

 

「さあて、どんどん作るわよー!御仏の加護をもらった両の手が唸るわ!」

 

「そうれそうれ!まだまだ出るぞー!はっはっは!」

 

 

どんどん出てくる自然の恵み、どんどん作られる料理の品々。

 

藤太が出し、三蔵が作る。

 

そしてそれを見ていた立香とマシュは、ふと顔を見合わせた。

 

 

「……こういう時は、」

 

「あの方の出番、ですよね」

 

 

既に5つの特異点を駆け抜けてきたデミ・サーヴァントとそのマスター。

 

心を通じ合わせることなど容易く。

 

そっと設置されたマシュの盾──召喚サークルに、立香が手をかざした。

 

 

「──手伝って!カレーム!」

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「マスター、この特異点の修復が終わったら、絶っっっっっっ対に藤太さんを召喚してくださいね」

 

「勿論。死ぬ気で縁を結ぶ」

 

 

至極真剣な表情で頷き合う立香とカレーム。

 

召喚当初は、「え、戦闘ですか!?無理無理、無理ですよー!」と、泣き言を漏らしていたカレームであったが、事の顛末と藤太の宝具の詳細を耳にした途端、ガラリと態度を変えた。

 

 

「私以外にもいたんですね、対宴宝具の持ち主……」

 

「おお、お主もそうなのか?はっはっは!飯は大事だからな!飯は!」

 

「全くですねえ。まあ、方向性としては逆ですけれど。私のものは質重視でして。

 ──それはさておき、仕事をしますか」

 

 

積まれた食料を前に、カレームは腕まくりをして意気込む。

 

 

大人数の宴用なので、大皿から取り分けるタイプのものを中心に。

 

料理を出すスピードも考えて、しかし食材の処理に妥協はしない。

 

食材解析スキルと手先に全神経を集中し──手を動かしながら、次の食材について並列思考で考える。

 

思考によるロスタイムをほぼゼロに。

 

全ては、ここにいる人とサーヴァント、全員に満足してもらうため。

 

 

ス、と彼女が目を細めたと同時に、包丁が煌めく。

 

瞬きの間に肉が解体され、魚が三枚に下ろされた。

 

宙に炎と火の粉を舞わせながら、鍋を振るい、その間に次の料理の下拵えをする。

 

十余人の料理人がフルで稼働している厨房の体を、彼女は一人で成していた。

 

 

演舞にも似たその動きに、村の人々からも歓声が上がる。

 

 

「わあ、さっすが本職!早い早い!私も負けてられないわね!御仏の加護、見せてあげる!」

 

「これは良い余興だな!やっぱ宴会はこうでなくっちゃなあ!」

 

 

隣で手を動かしている三蔵と、席で枝豆をつまんでいるアーラシュからもそれは同じで。

 

 

「アクアパッツァとパエリア、出来上がりました!さあさあ、お食べくださいな!」

 

「おお!出来たか!うむうむ、海の幸の良い香りだ!」

 

 

鍋ごと差し出されたそれに、藤太が豪快に笑う。

 

その朗らかな様子に村人たちも自然と笑顔で、まずは子供たちをと鍋の前に促した。

 

 

魚と貝の旨味が、煮込まれ炊き上げられることでこれでもかと凝縮された2つの品。

 

ひとたび口にすれば、その出汁の風味が鼻と舌を突き抜けていく。

 

その強い味をサフランやオリーブ、パセリといった薬味が、細やかに彩って、芯がありながらも繊細な味を演出している。

 

魚や貝の身は勿論のこと、その出汁と共に野菜の旨味も抱き込んだスープや米を頬張った時の至福感といったら!

 

 

「おいしい……!僕、こんな美味しいもの生まれて初めて食べたかも!」

 

「うんうん、よかったねえ。どんどんお食べ」

 

 

喜色満面の子供に、これまた笑顔を返し、共に料理を口にする。

 

 

「ううん、カレーム殿の腕には感服仕る!やはり飯はいい!旨ければ尚更な!」

 

「ええ、ええ!そうでしょうとも!まだまだ作りますから、どんどん食材を出してくださいね、藤太さん!」

 

「応とも!じゃんじゃん使ってくれたまえよ!うはははは!宴はこうでなくてはな!」

 

「俺たちも食べようか!」

 

「はい、先輩!」

 

 

 

星がよく見える夜空の下。

 

焚火の薄い明りの中で、ほんの束の間の休息期間。

 

それでも確かに、この幸せな時間はあった。

 

その事実は、特異点が消えようとも、絶対である。




会話11(俵藤太所属時)
「藤太さん……いいですよねえ……。あの宝具も勿論のことですが、何よりもあの食に対する姿勢が。ああいう方が生前の主人だったら、どれほど良かったか……!」



《絆レベルアップ》

Lv. 3 ⇒ 4

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マイルームで聴けるボイスが追加されました。
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