めぐみん可愛過ぎ(白目
第二話 カエル狩り
唐突だがこの世界はロードランとは大きく生態系が違うらしい。
ジャイアント・トード、要は牛頭のデーモンぐらいのデカイカエルなんだが、かなりの肉食らしく人間だとか羊だとかをむしゃむしゃ食っちまうんだと。
現に『あーんなカエル位私一人でじゅーぶんよ』と胸を張っていたアホ女神が頭から丸かじりされている、良かったな歯が無くて。
「カエル臭え女、連れ歩きたくねぇなぁ……」
そう愚痴を零したが、仕事は仕事、このカエルを3日で五匹仕留めなきゃならん、指定された討伐数以上を倒してもボーナスが出るらしいし、馬小屋生活も出来る限り早目にオサラバしたいところだ。
シミターを握り、上を向いてアホを飲み込んでいるカエルへ向かって大きく踏み込む、なんだかんだ言ってダークリングの無い人間の身体、何処まで無茶が効くのか調べておきたいので全力だ。
そう思って足に力を入れた瞬間、足元が吹っ飛んだ。
(踏み込みだけで地面抉れるとか、マジかよ……)
王のソウルを失ってるはずなんだが、どうにもこの身体はその失う前の性能らしい、一歩踏み込んだだけで500mぐらい軽く詰まった。
カエルは上を向いてやがるから死角になった腹を真下から一閃、丸呑みされていたアホを腹の中から引きずりだした。
「ひっく、わ、私、汚されちゃった……」
「女神の癖に生娘みてぇな事言ってんじゃねーよ、ほれ次狩るぞ次」
「やだー!! お家帰るー!!」
帰ったどころで湯浴みする金も無ぇ事理解してんのかね、この娘。 未だ一匹目、少なくとも後二匹は狩らねぇと裕福な飯にもありつけん。
だがまぁ、士気のねぇ奴に居座られても滅入るだけか、そう考え直した俺は後ろに下がる様に言おうとしたんだが、長い舌がアホ女神の腰に巻き付いていた。
「あっ」
「あーあ、また粘液プールだな」
「嫌ぁぁぁぁあ!!」
悲鳴を上げながらカエルの口に吸い込まれていくアホ女神、アレが仮にも神だと思うと思わず泣けて来そうになる、食い扶持目当てとは言えだ、俺だって昔はアストラの騎士団に居たんだぞ。
この世界に来て何度目になるか分からないため息と共にシミター片手に突っ込む、カエル共は土の中に居やがるから注意しねぇと俺もアホの仲間入りだ。
そう考えていた瞬間、『早く、早く助けて下さい!!』と必死な助けを求めるアホの声に起こされたのか、アイアンゴーレムサイズのカエルが地面から顔を出して俺を飲み込みに来やがった。
咄嗟に下顎を踏み台にして飛び上がり、大火球を口の中に炸裂させて丸焼きにする、同時にアホを丸呑み中のカエルに向かって竜狩りの大矢を投げ槍の様に投擲して串刺しにする。
丸焼きになったカエルに着地した頃に、アホ女神がカエルの中から這いずり出たと思ったら全力でコッチに走り寄って来た。
「あんた馬鹿なの!? 死ぬの!? 私がお腹の中に居るのに槍投げるとか何なの!? ねぇ、私ごとヤる気だったのよね!! 絶対そうよね!?」
「女神なんだろ? アレぐらいじゃ死なねぇだろうが、少なくても俺の知ってる神はんなヤワじゃねぇよ」
「それとこれとは話が別よ!!」
その後もピーピー文句を言って来たが、めちゃくちゃ生臭くてかなわん、周りのカエルも逃げちまったし今日は三匹で妥協だなこりゃ。
「……ねえ、リチャード? なんで私から距離取るの?」
「いや、臭えから」
「ガッハァ!! ふ、普通女の子相手に臭いとか言う!?」
「オメェに気遣いとか要らねぇだろ」
「ぐっ、此奴とことん私を舐めて……ッ、ならぬるぬる攻撃を喰らえー!!」
そう言ってアホは両手を広げて俺に飛び掛かって来た、俺は遠慮無しにその頭に踵落としをかまし、極力触らない様にしつつ襟を摘んで公衆浴場へと向かった。
▽
風呂上がりでさっぱりした俺たちがギルドで食事をしていると、ビアトリス見たいな帽子を被った娘が腹の虫を鳴らしながらこっちを見ていた。
厨房を借りて自分で作った飯を並べてた時から居たんだが、恨めしそうな目でヨダレを垂らして俺たちの飯を見てやがる、あの様子だと数日は食えてねぇな。
ちらっとアホ女神を見たら一匹もヤッてねぇのに一心不乱に食ってやがる、如何やら俺の飯はお口に合った様で何よりだよ、穀潰し。
周りを見ても昼の時間にはやや遅かった所為か、俺たちしか飯を食ってねぇ…………仕方ねぇか。
「ほれ、其処のガキ、腹減ってんなら食わせてやるよ」
「ほ、本当ですか!!」
「んな事で嘘言ってどうするんだよ、俺の分やるから良い加減そのうっとおしい視線を辞めろ」
そう言って俺は立ち上がり、改めて自分の分の飯を作りに厨房に行ったんだが、まさかこの気まぐれがアホ二号を抱える事になるとは思わなかった。
食事を終え、満足と言った顔をした魔女っ子の話を聞くと、紅魔族と言う魔法使いの部族出身らしく、名前もめぐみんと言う風変わりな名前だった。
職業は上級職のアークウィザード、因みに俺は何にでもなれるらしいが基本職のままだ、アホ女神はアークビジョップ。
『美味しいご飯の御礼に貴方のパーティーに参加してあげましょう!!』と魔女っ子は言うがどうにも嫌な予感しかしねぇ。
そもそも上級職の砲台だ、後方から魔術で支援できる職種の癖にフリーってのが怪しいが、まぁ使ってみれば分かるか。どの道魔術系統は専門外だ、学べば出来ねぇ事もねぇだろうが、後方支援専門ってのは性に合わん。
つーわけで外へ連れ出して追加のカエル狩りをしようと思ったんだが、この魔女っ子爆裂魔法しか使えないと来た。
しかも浪漫型の魔術師だったらしく、日に一発撃ったら行動不能になるんだとか、試し打ちさせたらアホ女神共々カエルの餌になりやがった。
…………嗚呼、やっぱり俺は女運最悪だわ。
その後、俺一人で更に四匹倒してボーナス付きで仕事を終える事になった、あんまり狩りすぎると逆に生態系に影響が出るからと自重したから少々消化不足だ。
帰り道に魔女っ子背負う羽目になるし、なんで俺の周りの女には碌な奴が居ねえんだよったく。
とは言えだ、個人的な感情を抜きにすれば火力に関しては申し分なかった、使い用によっては十二分に戦力化できる、俺も単体相手なら問題無いんだが、数が多いと処理が面倒だ。
ま、当の本人は一人で暴れ回ってた俺を見た所為でかなり気を落としてるみたいだけどな、多分その浪漫追求の所為で他所のパーティーには入れて貰えなかったんだろう。
多分このままほっぽり出したら飢え死にする可能性もあるし、見てくれは良いから最悪物好きに売られるかも知れん、そうなると少し目覚めが悪い部分もある。
なんでこう、俺は女の弱味に弱えんだろうな、ビアトリスの時もそうだった。
そんな自分に溜息を吐きながらパーティーメンバーとして採用する事を告げると、背中の上で『本当に良いんですか!? 言っちゃなんですけど完全にリチャードさん一人で十分ですよね!?』と食い付かれた。
「俺は範囲攻撃手段が限られてんだよ、一発屋の固定砲台でも居ないよりはマシだ」
「ふ、ふふふ、漸く我が爆裂魔法の真価を理解出来る者と出会えるとは––––」
痛いセリフをベラベラ喋りはじめた魔女っ子に呆れながら、体液塗れの二人を浴場に送った俺はカエルの換金と消化不良解消の為に高難易度の仕事を受けに行くのだった。