第三話 変態
毎度の様に言っているが俺の女運の無さは筋金入りらしい。
目の前にいる女騎士、いつの間にかアホ女神が貼っていたらしいパーティーメンバー募集の張り紙を見て来た女だが、目付きからしてまともな奴じゃねぇのが分かる。
見定める様に身体つきを見てるだけで顔を赤くし、身体をくねらせてやがる、なんだこいつ。
「前衛は俺で足りてる、それに聖職関連ならアークビショップも居るから不採用だ、分かったらさっさと消えろ」
しっしと虫を払う様な仕草で冷たくあしらい、募集の張り紙をひっぺはがしに行こうとしたんだが、この女普通じゃ無かった。
「ああ、虫扱いに口汚い罵倒……素晴らしい男だ……」
あー、なるほど、被虐趣味のお方でしたか……、マジでなんでも居るなこの世界、クソ女神じゃ無く対人運を貰うべきだったと真剣に後悔し始めたぞくそったれ。
はあはあと目の前で喘いでやがるし、生理的にキモかったから反射的にギルドの外へ蹴り飛ばしちまった。
それなりに強烈な蹴りだったから暫くは起きねぇだろうからさっさと飯食って寝よう、あの手の連中は死んでも治らん。
すっかり癖になった溜息を吐きながら俺は厨房へと向かい、材料費を払って料理を作る、此処の飯は俺の舌には合わねぇんだよ。
どーせ先に食ってんだろと考えてたんだが、テーブルを見たらアホ二人が食器を持って俺の帰りを今か今かと待ってやがる、お前ら……。
『はーやーくー』と急かす馬鹿共、一回飯食わせただけで俺の事を料理当番か何かと勘違いしてんじゃねぇだろうな?てか、他の冒険者連中も注文してくるんじゃねぇよ、俺は自分の分を作ってるんだよ、別に手伝いをやってる訳じゃねぇんだ。
つか、なんで俺に注文が来るんだよ? ………ああ、アホ二人が俺の分をおすそ分けしてるからか、しばき倒すぞ。
「リチャードさーん、お代わりお願いします!!」
「リチャード、しゅわしゅわお願いねー!!」
よし、あのアホ共は朝一でカエルのエサにしてやる、覚えてろボケ共。
(はぁ、混み始めたしこりゃ座って食うのは無理だな)
仕方ないのでパンをスライスした物にハンバーグと野菜とソースを挟み、ポテトをフライにした物を付け合わせにして食おうと考えてたんだが、いつの間にかカウンターに移動していた魔女っ子にそれが見つかった。
「何ですかそれ!? 美味しそうです、いや絶対に美味しいです!! 食べたいです!! 食べます!!」
確かハンバーガーだったか? こっちに来て覚えたもんだがまぁそのジャンクフード加減がお子様には美味そうに見えたようだ、身を乗り出してそれを要求して来やがった。
俺の飯だしくれてやる必要は無ぇんだが、期待を膨らませたガキに嫌がらせする程器の狭い人間じゃねぇからそっくりくれてやった。
「おお〜!! 初めての味です!! パンとハンバーグが絶妙にマッチしてすっごく美味しいです!!」
「分かったからもう少し上品に食えよ、口元ソース塗れじゃねぇか」
手の掛かるガキだなと思いつつその口元を拭いてやるとかなり意外そうな顔をされた、俺も自覚してるからその目辞めろ。
「意外な優しさです……ハッまさか優しくしておいて目的は私の身体だとか!?」
「安心しろ、お前の平らな幼児体形に興味はねぇ」
「よ、幼児体形……幼児、ふふふ、幼児ですか……」
俺の発言が意外にも刺さったのかさっきまでのテンションが消え、魔女っ子はどんよりとした顔で飯の続きを食い初めた。
ざっと周りを見渡してかなり落ち着いた事を確認した俺は、魔女っ子にやったポテトを一つ食った後、宴会芸で遊んでいるアホ女神を置いてキツめの酒持って店を出た。
だがその瞬間蹴り飛ばしたマゾヒストに出待ちされちまった、だからなんで俺の周りの女にゃ碌な奴が居ねぇんだよ……。
「女性に対して容赦の無い蹴り……そのゴミを見るような蔑みの視線……嗚呼、やはり私の求めたパーティは此処しか無い!! 是非、是非私をパーティに入れてくれ、何でもするから!!」
そう言って縋る様に女騎士は俺の腰にしがみ付く、膝蹴りをもう一発入れてやりそうになったが、周りの視線とこの女の性癖を考えると手を出すだけ状況が悪化する一方だ。
俺にできる事はただ一つ、変態を受け入れる事だ。
▽
次の日、俺は変態を受け入れる事になった所為で飲み過ぎたらしく二日酔いに襲われていた、不死人だった時はザルだったのに人間の身体ってのは不便で仕方ねぇや。
そんな事を思いながら今はスキルについての説明を魔女っ子にして貰ってる、変態には関わり合いたくないし、アホ女神に説明が出来るだけの知能があるとは思えん。
「と、言う訳でスキルポイントを使って人から教わったスキルを習得する訳です、分かりましたか?」
「ふーん、つまり俺でもオメェの爆裂魔法を覚えられるって事か」
呪術が使える俺からしたら不要な代物なんだが、呪術自体を発展させる事が出来るかも知れねぇし、割と前向きに覚えて損はねぇか?
そんな事を考えていた所為か、二日酔いだったからか、俺は余計な一言を零しちまった事に気が付かなかった。
「その通りです!! その通りですよ!! 爆裂魔法を覚えたいなら幾らでも教えてあげましょう!! と言うかそれ以外に覚えるスキルがあるでしょうか? いいえありませんとも!! さあ私と共に爆裂道を歩もうではないですか!!」
ああ、爆発マニアだもんなこの娘、そりゃ自分の好きな魔法に前向きな発言されたらこんな反応するわな。
顔も近いしよっぽど嬉しかったんだろうよ、真顔で見つめ返してやったら顔真っ赤にして顔逸らしやがった、テンション差に恥ずかしがってんのか、男慣れしてねぇのかは知らんが落ち着けっての、俺は二日酔いで頭痛えんだからよ。
カウンターで頭痛を堪えながら水を飲んでいると昨日強引に仲間になった女騎士、ダクネス……だったか? とにかく其奴が連れと一緒にこっちに来た。 ああ、アホ共とは昨日面通ししたらしい、妙に馬があったみてぇで直ぐに打ち解けた様だったよ。
「来たかマゾヒスト……今日は頭痛えんだから余計な体力使わせねぇでくれよ?」
「つ、つまり、放置プレイか!? パーティー加入後の仕事が放置プレイとは!!」
「ダメだ、話聞かねぇ人種だこいつ……」
二日酔いの身体に追い酒を入れたくなるレベルの変態に精神的苦痛を感じていた俺だったが、変態の連れと目が合った。
「あはは、苦労してるねーイケメンさん。私はクリス、この子のお友達だよ、こう言うのもなんだけど早く慣れた方が楽だよ?」
「……俺はリチャードだ、アドバイスにならねぇアドバイスありがとよ」
「うーん、じゃあ、迷惑料代わりに何か私のスキルを教えてあげるよ、盗賊系のスキルは便利だよ?」
スキル、スキルか……実を言うと地味に興味がある。
ロードランには無かった概念、魔法がそれにあたるんだろうが、此処まで多種多様な物は無かった。
特に盗賊系スキルのスティールや潜伏などは完全に別系統の代物だ、発想自体がロードランのソレと異なっている。
つー訳で、俺はサクッとスティールのスキルを覚えたんだが、此処で一つ問題が起きた。
それは俺の手に握られた白い下着、スティールは盗むアイテムがランダムだって事を知らなかったんだよ!! 二度と使うかこんなスキル!!