この素晴らしい世界で放浪を!!   作:ACS

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七話

第七話 魔剣使い

 

 

「あのアホ女神何やってんだよ……」

 

目的の魔物を仕留め、その肉を捌いていた時にアホの悲鳴がしたんで一番高い大木に登って様子を見たんだが、檻に入っているアホ女神の周りにワニが山ほどいやがった。

 

余計な事しかしねぇ連中だからそれなりに頑丈な檻借りてるんだが、かなりの勢いでワニが噛み付いてやがる。

 

キロ単位で離れてるのに的確に俺の方角に助けを呼びまくってるアホに頭痛がして来た、魔物捕獲用の檻だからそう簡単に壊れねぇっての。

 

 

「聞こえてるんでしょー!! 早く助けてよー!! ってぎゃー!! 檻がミシッて言ったー!? 今鳴っちゃダメな音が鳴ったー!? お願い助けてリチャード様ー!!」

 

「……はぁ、もういっそ誰にも見つからねぇ秘境で釣りだけして暮らすかねぇ」

 

 

そんな愚痴と共に竜狩りの大弓を取り出し、アンカーを太い枝に突き立てて上から狙撃する、全力で射撃すると反動で枝がへし折れちまうから加減はしたが。

 

一発矢が着弾する度に情けない悲鳴がこっちまで聞こえてくる、別にテメェを狙ってる訳じゃねぇんだから一々悲鳴出さなくても良いだろうに、本当にあのアマは人のやる気を削ぐ事に関しては全一だな。

 

 

クッソ情けねぇ悲鳴の所為で俺の精神疲労がピークになる頃、やっと湖を浄化しきったのか住み着いてた魔物が移動を開始し始めた。

 

俺はその様子を見た後、捌いた肉を持って帰ったんだが……何故かアホ女神が三角座りのまま檻の中に篭城してやがる。

 

「檻の外怖い檻の外怖い檻の外怖い檻の外怖い……」

 

「何やってんだよ、こいつ」

 

「あー、それがですね……」

 

 

魔女っ子曰くワニよりも着弾する大矢の雨の方が恐ろしかったららしく、腰抜かして泣いてたんだと。

 

呆れ顔でその姿を見ていた俺に、マゾヒストが肘でつつきながら『謝った方が良いんじゃないか?』と耳打ちして来やがった、元はと言えば借金作った此奴が悪いんだろうが。

 

「面倒クセェこのまま連れて帰るぞ」

 

「それやると人身売買やってるみたいなんですが……」

 

「人身売買……な、なぁリチャード? 私もアクアと一緒の檻に入れてくれないか!?」

 

「よし、真後ろに浄化された湖がある、今からその沸騰脳みそ冷やしてやるからコッチにこい」

 

 

そう言って俺はのこのこ近寄って来たマゾヒストを湖の中に蹴り飛ばし、そのまま罵倒しながら頭を踏んで顔を水面から出したり沈めたりしてしばらく付き合ってやった、体力使い切りゃ大人しくなるだろ。

 

俺の所業に魔女っ子は顔を引きつらせてやがったが、良い感じの巨岩がある所を狩りの最中に見つけておいたから挑発と焚き付けを行う。

 

「そーいやよ、さっき向こうの方に良い感じに硬ぇ大岩があってよ、ありゃお前の爆裂魔法如きじゃ破壊できねぇだろうな」

 

「にゃにおー!! 今我が爆裂魔法をバカにしましたね!? 良いでしょうそんな石ころの一つや二つ余裕ぶち壊す姿を見せてやりますよ、ええやりますとも!!」

 

 

そう言って走って行ったアホは俺の予想通りに爆裂魔法使ってぶっ倒れてやがった、『どうですか? ぶっ壊してやりましたよ……』とか言ってやがったから適当に話合わせてそのまま担ぎ上げて馬車の荷台に興奮して腰の抜けたマゾヒストと一緒に放り込む、最近になって此奴らの要求をある程度聞いてやった方がストレスを抱えねぇで済むと悟ったんで容赦は捨てた、コレで帰りは静かに済む。

 

……俺、師匠の世話してた時の倍は苦労してるな。

 

 

 

 

街に着く頃には既に日が傾いてやがった、まあ半日も掛けりゃこんなもんだろうか。

 

途中から回復したマゾヒストと魔女っ子は未だにブツブツうわ言のように出涸らし女神とか言う謎の歌を歌うアホ女神を宥めている、このまま回復しなけりゃ暫くは大人しくて良いやと内心でほくそ笑んでたんだが、そうは問屋が卸さなかったようだ。

 

「女神様!? 女神様じゃないですか!?」

 

 

そんな男の声が背後から聞こえたと思ったら、鎧を着込んだ男が檻をぶち壊しやがった、ギルドから借りてんだぞそれ。

 

「オイ、アホ女神テメェの客だぞ、いい加減四畳半の聖域から出て来い」

 

「女神? ………そうよ!! 私は女神なのよ!!」

 

自分が女神だっての忘れてたのか……黙っときゃ良かったら。

 

自分の失策にため息吐きながら、俺は先にギルドへと行こうとしたんだが、後ろで色々話していたらしい男が俺の方に大股で詰め寄って来た。

 

「君!! 一体何を考えてるんだ!! 女神様をこの世界に引きずり込むだけじゃなく、馬小屋生活を強いた上に借金まで背負わせるなんて!!」

 

「あん? 俺に言ってんのか小僧」

 

 

馬小屋だろうと屋根と藁があるだけマシだろうが、しかも借金に関しちゃ大部分が自業自得だろ、肩代わりまでしてやってんのに何を言ったんだよ。

 

 

「君のパーティにはアークウィザード、クルセイダー、そして女神様と恵まれたメンバーなのに、ボロボロな彼女達に比べ君だけは汚れていない。戦いは彼女達任せか!!」

 

 

肩書きだけのボケどもを介護してんのは俺だよ、そもそも其奴らの汚れは戦闘外のモンだし、俺は汚れる様な戦い方する無能じゃねぇんだよ。

 

此奴アレだ、正義感バリバリの話聞かねぇタイプの奴だわ、面倒クセェな。

 

チラッと周りを見れば俺とこの思い込み激しい男がアホ女神を取り合ってると言う風評被害も聞こえている、なんでこの女神は女神の癖して祝福も加護も寄越さねぇで厄ばっか持ってくるんだよ、厄神か此奴は?

 

んな事を考えてたんだが、そしたら小僧が俺の胸倉を掴み上げた、身長差があっからカッコついてねぇのが笑い所か? 丸くなったって自覚してるが根本は変わってねぇ俺に喧嘩売ってる身の程知らずの方が笑い所なのか?

 

「勝負だ!! 僕が勝ったら君に酷い目に遭わされている女の子達を僕のパーティーに貰う!! 君が勝ったら何でも好きな物をやろう!!」

 

「なんでンな面倒な事に俺が付き合わなきゃなんねぇんだよ、小僧」

 

「僕の名前は御剣響夜、女神様から魔剣グラムを授かった選ばれし勇者だ!! だから君の悪行を見逃す事は出来ない!!」

 

「流石私の響夜ね!! そんな顔だけの男やっちゃえー!!」

 

 

目の前の小僧の啖呵に、小僧の連れだろう二人の女の片割れがヤジを入れて来た、余計な事言わなけりゃ連れの前で無様晒させてたんだが、既に俺はこの男の事が心底どうでも良くなった。

 

神様に貰った特別な魔剣を使える僕は特別な存在ですってか? 武器の性能頼りの男なんぞ相手しても時間の無駄だ、サクッとどっかで野垂れ死んでこい。

 

胸ぐらを掴まれた手を払って小僧の横をを素通りしたんだが、それが気に食わなかったのかこの男はそのまま魔剣を抜剣し、俺のフードを斬りやがった。

 

 

––––しかも、師匠が縫い合わせた場所を。

 

 

 

 

夕暮れの通り、自信満々に魔剣を振った御剣は実力の誇示の為にリチャードのフードの不器用に縫い合わされていた部分を斬った、それが虎の尾を踏む話では無く竜の逆鱗に触れる行為だとも知らず。

 

 

「今のはまぐれじゃなく狙って斬ったんだよ。考えれば女性の影に隠れる冒険者に決闘を挑んだ僕が悪かったね、パーティーの皆さんも僕の実力は分かって––––」

 

「––––小僧」

 

 

一言リチャード、いや名前すら無くした放浪者がそう発すると、彼の放つ殺気と怒りによって周囲の気温が数度下がったかの様な錯覚が周りを襲う。

 

「城壁の外に行くぞ、街中じゃ殺しは御法度だからな、不可抗力で済ませられる外でやってやる」

 

 

彼を良く知るアクア、ダグネス、めぐみんの三人が後ずさるほどの冷たい表情をした放浪者はそのまま踵を返して城門から外へと出て行った。

 

後に残された御剣は不幸な事に魔剣の加護によってその殺気の影響が少なく、彼がどれほどの男か知らないままその後をついて行ってしまう。

 

彼の連れだった二人は『エンシェントドラゴンを一撃で倒せる響夜なら大丈夫』そう互いに言い合いながら彼を信じて観戦に向かい、腰の抜けためぐみんを背負ったダグネスと面白半分のアクアも様子を伺いに行く。

 

 

両パーティは知らない、御剣が相手にした男が高々ドラゴン如きで収まる強さでは無い事を……。





御剣さん、頑張って!!(小並感
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