ある少女の斬魔大聖   作:アイオン

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色々カット。
ちょっと何書いてるか分からなくなってきた(特に最後のアル


I,ROBOT
第22話


 神は御身に準えて、土塊よりヒトを御造り賜われた。

 モノ言わぬ土塊に命を吹き込むは、偉大なる神の御業。

 しかし土塊故、我らが瞳は盲目で……見えぬあなたを捜し求める。

 罪深き業と知りながら、あなたの領域を侵す。

 

 ―――そして此処に、罪深き者がまた1人。

 

 「やった……やったのである! 完成であり完全であり―――完璧(パーフェクト)である! 我輩はついに、ついについに、魔術ですら成し遂げられなかった領域を踏破したのである! 恐ろしい……恐ろしいぞ! 我輩は己の才能が恐ろしいのである! 嗚呼、何たる才覚! 何たる天才! 世紀の大天才(サイエンティスト)! ドクタァァァァァ・ウェェェェェェェェスト! さあ、今世紀最大空前絶後! 奇蹟の瞬間である! 目覚めるのだ、エルザよ! そう―――今この時よりお前の名は、エルザである!」

 

 ヒトが自らに準えて、歯車と螺子より人形を造る。

 モノ言わぬソレ等に偽りの命を吹き込むは、背徳なるヒトの業。

 

 機械仕掛けの人形よ。

 君の瞳もまた、盲目であろうか。

 見えぬヒトを捜し求めて、神の領域を侵すのだろうか。

 

 嗚呼、哀しきかな罪無き君。

 嗚呼、哀しきかな罪無き咎人(人形)よ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 人間っていうのは、どうあっても自分以外の誰かになることは出来ない。

 醜美な身体も善悪に揺れる心も二律背反で歪む魂も、色々な分類がされる才能も自分を取り巻く境遇も、過去も現在も未来も、その全てが自分であり、皆それぞれ違っているのだ。

 たとえ、苦痛やトラウマ的なモノを伴ったとしても、それを否定することは出来ない。

 

 私にとっては……魔術がそれにあたる。

 魔術の世界を怖れて大学から逃げたものの、その先にあったのは空虚と貧困だった。

 で、そんな泥沼から抜け出せたのは、皮肉にも魔術の御蔭ってワケ。

 

 (結局、逃げていてもどうにもならないから、受け入れろってコトよね……)

 

 だから私は、再び魔術と対峙する決意をした。

 それは良いんだけど―――

 

 「街中で堂々とこの格好って……どうにかならないワケ?///」

 

 集中する奇異の視線を受け、羞恥に耐えながら、私はアルに語りかける。

 

 ちょうどお昼な時間帯の街中。

 昼食をとりに街に繰り出した人々が、ストリートを行き交う。

 ―――身体にピッタリフィットな、黒のボディスーツに身を包んだマギウス・スタイル(痴女の装い)の私に視線を向けながら。

 

 一応黒翼で身体を隠してはいるものの、片腕を出している関係でチラリしているので、非常に恥ずかしい。

 ……通報されても可笑しくないわよね。

 

 「マギウス・スタイルは、術者が最大限の魔術効率を発揮できるように編まれるものだからな。その形状が一番理に適っているというわけだ。それに、この程度の魔術も自力で扱えぬ汝の自業自得であろう」

 

 答えるちびアルは、私の右手。

 そこから垂らした紐と、先端にぶら下がった重石にしがみついて、街中を観察していた。

 

 「この辺りで妾の断片の気配を感じたからな、詳しい場所の特定にはこれが一番なのだ」

 

 振り子がくるくると、回る。

 独りでに動くそれは、所謂ダウジングというやつだ。

 

 「だからって、こんな公衆の面前でこの格好だなんて……羞恥プレイにも程があるでしょっ!? もうちょっとこう、人気の無くなった夜にやるとかさぁ!///」

 

 「人気の無くなった夜……つまり、いつ誰に見られるか分からないスリルが好みと?」

 

 「そうそう、人気の途絶えた夜のストリートの一角で……って、んなワケあるかぁぁァァァ!!」

 

 「冗談はさて置き……妾の断片が一般人の手に渡ったら如何なる事態を引き起こすか、前回の事でよく解った筈だ。急ぐのは当然であろう?」

 

 「そ、それはそうだけど……」

 

 「それよりも見よ、九淨!」

 

 アルが言うのと同時に、振り子が大きく反応し始めた。

 

 「近いぞ!」

 

 「!? ……仕方ない、さっさと終わらせましょうか!」

 

 私は、振り子が指し示す方角に向かって駈け出した。

 黒翼を広げて、一気に人込みの上を飛び越える。

 変態だの鳥人間だの騒ぎ立てる声が聞こえたけど、そんなものはスルーだ。

 

 「其処! 次の角を曲がった所だ!」

 

 「ええ!」

 

 バッと、裏路地の角を曲がって―――

 

 「げふぅ。喰った喰った、満腹なのである。やはり二グラス亭のジンギスカン定食は絶品であるな。ううむ、お持ち帰り用も買っておくべきであ…………はっ!」

 

 「…………………」

 

 「…………………」

 

 ―――○○○○とエンカウントした。

 

 「き、貴様は大十字九淨ッ!? まさかこんなところで遭遇するとはなぁ!」

 

 「ちょっとぉぉぉぉぉっ!? アル、あなた、何てモノを感知したのよっ!? あのダウジングは【検閲】発見器か何かなのっ!?」

 

 「違うわっ! それに、今は言い争っている場合ではなかろう!」

 

 「皆の者、曲者である! であえ! であえィ!」

 

 「イ――――――ッ!」

 

 ドクター・ウェストの号令と共に、ありとあらゆる場所からブラックロッジの戦闘員が湧き出てきた。

 それらが一斉に私に向かって飛び掛ってくる。

 

 「きゃああああああっ!?」

 

 私は、四方八方からやってきた何十人もの戦闘員の下敷きになる格好となった。

 

 (こ、んのぉ……っ!)

 

 「どさくさに紛れてヘンなトコ触ってんじゃないわよ、この変質者共っっっ!」

 

 脚全体に魔力を込め、密着していた戦闘員に膝を入れて、それごと上に乗っている戦闘員どもを蹴り上げた。

 宙を舞う戦闘員たち。

 私は立ち上がり、1人残ったドクター・ウェストを指差す。

 

 「邪悪の気配あるならば、直ちに参上悪を討つ! 天下御免の魔導探偵、大十字九淨! 私の目の前で、無法な振る舞いは許さないわよ!」

 

 バン! と云った感じで決めてみた。

 

 「取って付けたような台詞と言回しだな」

 

 「五月蝿いわね、誰のせいだと……」

 

 「ふんっ! やはりただの戦闘員の皆さんでは、貴様に傷1つ負わせられんか!」

 

 戦闘員どもは薙ぎ払われ、単身のはずのドクター・ウェストだが、焦る様子1つ見せない。

 

 「分かっている、分かっているとも、大十字九淨! だが、男子三日会わざればアテンションプリーズ! 我輩を以前までの我輩だと思ってもらっては困ったチャンなのである! ―――エルザ!」

 

 パチンッと鳴らされた指の音と同時に、ビルの上から“何か”が私達目掛けて高速で降下してきた。

 反射的にその場から飛び退き、“何か”に視線を向ける。

 

 「―――!? 速っ!?」

 

 着地した“何か”を視界に捉えた数瞬の後には、触れ合うほどの至近距離まで接近されていた。

 私の視線と“何か”の視線が交叉し―――

 

 「がふぁっ!」

 

 鳩尾に強烈な打撃が叩き込まれた。

 衝撃に身体が宙を舞い、硬いコンクリートの地面に抱擁される。

 咳き込みながら、私はすぐさま身を起こす。

 意外にも追い撃ちはなく、“何か”は観察するように私を見据えていた。

 

 「―――女の子!?」

 

 奇襲を仕掛けてきた“何か”の正体は……少女だった。

 魔術の儀式に使うような、際どい丈の装束。

 ビル風に靡く、エメラルドグリーンの長髪。

 尖った耳も特徴的だ。

 両手には銃……いや、持ち方からすると、鈍器なのだろうか?

 とにかく、銃のような物をトンファーの如く構えていた。

 

 どうやらあれで鳩尾を突かれたみたいだけど……。

 

 (速すぎでしょ……っ)

 

 マギウス・スタイル時の私が目で追えない動きなんて……いったい何者なのかしら?

 

 「ふははははは! どうであるか、大十字九淨! 彼女こそ、我輩の至高にして最高傑作!」

 

 ―――最高傑作?

 何言ってんのこいつ?と思ったその時、少女がゆっくりとトンファーを構え直した。

 ―――その身体から、細かな駆動音を響かせながら。

 

 (ま、まさか……)

 

 「あの女、人間ではない―――機械人形というわけか」

 

 「なっ―――――! いや、え、嘘ぉ!?」

 

 「ぬわっはははははははははっ! そのとォォォォりである! 我輩が研究に研究を重ね、たどり着いた極致! 血と汗とちょっぴり切ない涙の結晶! 最強の戦闘能力と最高の美しさを兼ね揃えた我輩の美学の集大成! ―――その名も、人造人間エルザである!」

 

 私は思わず絶句した。

 

 (ア、アイツ、変態じみたロボット作って悦に入ってるだけの変質者とばかり思ってたのに……アンドロイドなんて造れるの!?)

 

 アイツに対する認識を、若干改める必要がありそうだ。

 

 少女―――エルザの見た目は完全に、普通の人間と変わらない。

 こうして対峙していると、綺麗な少女A的な感じにしか見えな

 

 「大十字九淨―――お前を倒すロボ」

 

 「うあああああ! すっっっごい人造人間っぽい!」

 

 前言撤回。

 エルザは紛れも無く人造人間だ―――主に語尾が。

 

 「さあ、我が愛しのエルザよ! 大十字九淨をヤってしまうのである! 今日こそは今までに積りに積った雪辱を、キッチリカッチリ一滴残らず晴らしてやるのである! OK! レッツゴー!」

 

 エルザが踏み込み―――あまりのパワーにコンクリートが砕けながら、私へと突進してくる。

 同時に、それを迎撃するべく私もエルザへと駆け出し―――

 

 鋭い何かが、私とエルザの間を、空気を裂きながら横切った。

 何かが通過したコンクリートの地面には、見事な切断面が顔を覗かせている。

 

 「えっ……!?」

 

 「ロボっ!?」

 

 通り過ぎていったのは、まるでブーメランのように回転し、大気を裂きながら飛行する物体。

 それは近くのビルへと飛んで行き、ぐるりと周回した。

 ん? と疑問を持ったのと同時。

 

 「うえええええええええっ!?」

 

 ゴゴゴゴゴゴ……と重低音が響き渡る。

 頭上を覆った影に顔を上げてみれば、ビルの上半分が斜めにズレて……ゆっくりと、私達の方に向けて落下してくるところだった。

 

 「って、いやいやいやいやいやいやッッッ!?」

 

 「ひ、ひとまず逃げるのだ、九淨!」

 

 エルザと戦っている場合じゃない!

 私はアルの言葉に賛同し、マギウス・ウィングで一目散に飛び立った。

 

 「緊急事態発生。現状で目標への追撃は不可能と判断。一時戦線を離脱するロボ」

 

 「むむっ!? エルザよ!? 何処へ、何処へ行かれるのであるか!? おやおや? 君は我輩を置いて、自らの夢の為、旅に出てしまうのであるか!? ―――そして無力な僕は、君を乗せて飛び立つ飛行機を、涙を堪えて見送ることしか出来なかった……。そして、そんな僕の思いを嘲笑うかの如く、無慈悲に一片の容赦もなく怒涛の大質量が我輩の頭上を覆い尽くさんとしている、そんなデンジャーに緊迫した状況なのですが、良い子のみんなは分かったかなぁー? うわぁぁぁぁぁぁ―――――――――――――――いっ!」

 

 エルザもまた、現場より離脱した。

 どっかの馬鹿が一人取り残されているみたいだけど、私は全力でスルーする。

 

 離れた場所に降りたところで、さっきの飛行する物体を見つけた。

 ……三日月のように大きく反った刀が、空中で静止している。

 

 「あれは―――バルザイの偃月刀の製法に関する記述か!」

 

 「……ということは、あれもアルの断片! ダウジングが間違ってたワケじゃなかったのね」

 

 こちらを察知したのか、偃月刀が刃先を私に向け、柄を支点に高速で回転し始めた。

 

 「恐らく、我らの魔力に惹かれて出てきたのであろう……来るぞ!」

 

 「ひゃあああああっ!」

 

 風を切って迫る偃月刀を、しゃがみ込んで回避する。

 唸りをあげる刃が通り過ぎ、数本の髪の毛がパラリと散った。

 

 「くっ……霊験あらたかなあの武器には、妾の魔術防禦も紙同然だ! 間違っても刃に触れるなよ!」

 

 「わか……って! そんな物騒な代物、どうやって捕まえろっていうのよ!?」

 

 「試行錯誤、創意工夫!」

 

 「さては何も考えてないのね!? この古本娘っ! それに、錯誤してたら三枚下ろしにされるじゃないのよっ!?」

 

 「ボサっとするな九淨! 次が来るぞ!」

 

 「ちぃっ!」

 

 大きく弧を描きながら、襲い来る偃月刀。

 ある程度規則的な動きではあるものの、動きを止めないことには埒が明かない。

 高速回転する刃の中に手を突き出すってワケにもいかないし……。

 

 思考の最中、それは起こった。

 両脇のビルが斜めにズレて、こちらに向かって滑り墜ちてくる……って、また!?

 

 「ええぃ! ここはまた離脱して……ぎゃうっ!」

 

 黒翼を羽撃かせて飛ぼうとしたはずが、何故か顔面から地面に突っ込んでいた。

 

 (痛っったぁ……)

 

 「うつけ! 背中をよく見ろ!」

 

 「…………うえ゛」

 

 ―――片翼がバッサリと、それはもう見事に切断されていた。

 さっき通り過ぎた時にやられたのだろう。

 

 「……って! これじゃあ逃げ

 

 ―――言ってる途中で、私達はビルの下敷きにされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 瓦礫の山と化したビルの上、偃月刀が回転を止め、地面近くの宙に浮いたまま静止した。

 敵は沈黙、周囲に敵影は無し……否。

 

 “私”は瓦礫の下から手を伸ばし、両手で偃月刀の柄を掴んだ。

 こちらの不意打ちに暴れ出した偃月刀を、逃がすまいとしっかり握り締める。

 

 「よっしゃぁ! 勝負あったわね偃月刀! 大人しくしなさいっ!」

 

 偃月刀を捕獲したまま勢い良く立ち上がり、身体の上に降り積もった瓦礫を跳ね除けた。

 

 偃月刀が、私の手の中から逃げ出そうと激しく暴れる。

 凄まじい暴れっぷりに、押さえるので精一杯だ。

 

 「アル! 早くして!」

 

 「分かった! アエテュル表に拠る暗

 

 「くああああああっ!?」

 

 「にゃぁぁぁ――――っ!?」

 

 突然、背後から強烈な一撃が浴びせられ、私の身体は宙を舞った。

 そのまま地面に叩きつけられ、思わず偃月刀を握る手を放してしまった。

 

 空へと逃げる偃月刀。

 それを追うように光の砲弾が放たれ、炸裂した。

 撃ち落された偃月刀が、瓦礫の上へと落下する。

 

 「い、いったい何よ!?」

 

 光の砲弾が放たれた方角を見る。

 そこには、エルザが立っていた。

 

 「いやいや……冗談、でしょ?」

 

 ―――何かスッゴイデカブツの大砲を構えて。

 

 しかも、ただの大砲じゃないみたいだ。

 砲身に奔る光……大砲全体に刻まれた魔術文字を励起させるそれは、間違いなく魔力の輝き。

 

 (まさか……魔導兵器!?)

 

 「―――第二射着弾、対象の撃墜を確認……第一目標、大十字九淨の現存を確認。“術式魔砲”の出力を増幅。第三射装填(チャージ)―――目標(ターゲット)、大十字九淨ロボ」

 

 ……物凄く物騒な発言を聴いた気がした。

 

 砲身の輝きが増し、魔力が収束されるのがハッキリと感じられる。

 

 「ちょ、ちょっと待ってぇぇぇぇぇぇ!」

 

 「つーか汝、逃げんかぁぁぁぁ――――――ッッ!」

 

 ―――トリガーが引かれた。

 凄まじいまでの衝撃と轟音を引き連れ、閃光が迫る。

 

 「うわぁぁぁぁぁん! 何でいっつもいっつも、こんなパターンばっかなのよぉぉぉぉぉ!」

 

 答える声はなく、今回もまた、そんなパターンだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「貴女達は毎回毎回……もっと周囲への被害を考えてくださいまし! これではブラックロッジと我々、どちらが悪党なのか分からないですわ……!」

 

 「許せ、戦いに犠牲は付き物だ」

 

 「そういう台詞は被害を最小限に抑えてから言いなさい!」

 

 「我らは出来る限りの事をやっておる。文句なら敵に言うのだな」

 

 「賢しい娘ですわね本当に……ッ!」

 

 ……報告に戻った私たちを待っていたのは、当然の如くお嬢様のお説教だった。

 そして、それがアルとの口喧嘩に発展するのも毎度の事になっている。

 

 私は白熱する2人を尻目に、物思いに耽る。

 

 ―――エルザ。

 ドクター・ウェストの言うことが本当なら、アイツが造り上げた自立思考型アンドロイド。

 あの動きを見る限り、マギウス・スタイル時の私に匹敵すると考えて間違いないだろう。

 正直なところ、かなり厄介だ。

 

 アイツは、何故か私たちに異様な執着をみせている。

 それはもう、粘着性抜群なストーカーさんもびっくりなぐらい。

 

 (……って、まさかホントにストーカーじゃないでしょうね?)

 

 まあ、流石にそれは冗談……だと良いなぁ。

 

 とにかく、次に遭遇すれば、再び戦闘になるであろうエルザへの対抗策を考える必要がありそうだ。

 

 それにしても……エルザは完全に、最先端科学の数歩先を行く存在だ。

 それを造ったドクター・ウェスト。

 

 (天才と何とかは紙一重……ってやつかしらね)

 

 まあアイツの場合、完全に向こう岸なワケだけど……。

 

 「……そこの探偵。何を、私には関係ありません風に優雅なティータイムを過ごしているのですか」

 

 「………へっ、私?」

 

 突然、お嬢様の矛先が私に向いた。

 どうやら、話の最中にクッキー片手にお茶を愉しんでいたのが気に入らないらしい。

 ……私はそのまま、手に持ったクッキーを口に運んだ。

 

 お嬢様のコメカミから、ブチッ、という音が聞こえた気がした。

 

 「貴女以外に誰がいますか、完全に当事者でしょうに! ……稲田! 大十字さんは客人では無いのですから、お茶や菓子など出す必要はありません!」

 

 「い、いえお嬢様……私は……」

 

 「もぐもぐ……あっ。勝手にいただいてまーす」

 

 「何で貴女はそう、どうでもいいところだけ行動的なんですか!?」

 

 お嬢様への報告からアルとの喧嘩のくだりは、毎度毎度の恒例行事となっているので、もう緊張も何もない。

 

 お嬢様はオーバーなアクションで崩れ落ちた。

 

 「ああ、もうっ! 調査だけでも街を破壊するし、デモンベインで出撃したら破壊どころじゃ済まないし、これじゃあホントに悪者みたいじゃありませんか! 嗚呼、お爺様! 何故こんなことに! わたくしの知っているデモンベインは、もっと正義の為の……!」

 

 「相も変わらずの爺コンか。救いようの無い」

 

 「黙りなさい! 再生紙の材料にもならない、虫食いだらけの三流パルプ娘の分際で! ―――良いですか、大十字さんにアル・アジフ! 今度また何か大きな問題を起こしたら、デモンベインの使用許可を取り下げますからね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結局、お嬢様の説教は長々と続き、事務所に帰宅したときには、夜の帳が下りていた。

 

 「はぁ……これでも頑張ってるつもりなんだけどね」

 

 ソファーに寝転がり、そう呟いた。

 

 「気にするな、九淨。妾がついている。汝は汝の出来ることをすればそれで良い」

 

 アルはこう言ってくれるものの、結構な被害を出しているのは事実だ。

 今日だけでも、ビルを三棟も崩壊させたワケだし。

 

 というか、アレで死人ゼロっていうのも不思議な話だ。

 所謂ご都合主義ってヤツかしら……まあ、誰の都合かは知らないけど。

 

 「それよりもバルザイの偃月刀だ。あれしきのことで滅びたとも思えん……明日は朝から動くぞ」

 

 「ええ、分かってるわ。またビル倒壊させてお嬢様にどやされるのもアレだし、早く回収しないとね。今日はさっさと寝ましょうか」

 

 「ああ、お休み九淨」

 

 「お休み……ってそういえばアル」

 

 「ん、何だ?」

 

 私はアルを呼び止め、格好に物申した。

 

 「いい加減、私のシャツ寝巻き代わりに使うのやめなさいな。ただでさえ数少ないっていうのに」

 

 「何を言う! 折角汝のためにこんな格好をしているというのに!」

 

 「……裸に私のシャツ一枚のどこが私のためなのか、説明してもらって良いかしら?」

 

 「よかろう。まず、汝は妾の姿に欲情するのだったな」

 

 「するかぁぁぁァァァ! 前提から間違ってるっての! 私はノーマルよ、ノーマル!」

 

 「故に、日頃疲れているであろう汝を、家の中でぐらいは労ってやろうと思った次第だ。ほれ、この袖口が、ちょっとだらんとしてるとことか、裾から伸びる白い脚とかポイントだぞ」

 

 「聞いちゃいないわね、この古本娘……っ!」

 

 「さあさあ、存分に堪能すると良い。何、妾が愛くるしいのは当然の事だ。少しぐらい汝が変態的な性癖を持っていたところで、妾は寛容だ。視姦するぐらいは許容してやる」

 

 「……頭痛くなってきた」

 

 そんなくだらないやり取りをしつつ、夜は更けていった。




※二グラス亭
美味しくてボリュームのある定食メニューが人気な、アーカムシティの定食屋さん。
味と量に比べ良心的な値段設定で、街の人から根強い人気を誇る。
因みにテイクアウトメニューも豊富。

※際どい丈
前が大きく開いたスカートが付いているものの、外した場合(外さなくても)ちょっとのアクションでチラリ必至なので、こういう表現にしました。

※大十字九淨をヤってしまうのである!
何か最近西博士が○○○○っていうか、ただのセクハラ親父っぽく……どうしてこうなった。
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