またこの場を借りて、読者の皆さんに感謝申し上げます。
※今更なのですが、変換の関係で破壊ロボを号。としていたのですが、変換出来るようになったので、この回から號。と正しい方にさせていただきます。
以前までの回も、暇を見つけて号→號へと修正しようと思います。
「くふふふ……ふはははは……ははははは! ついに、ついにやってやったのである! 嗚呼、目を閉じれば大十字九淨とアル・アジフの驚愕した顔が、ハッキリと思い出せるのである! ……さて、首尾良くいったハズなのに、何故に我輩はこんな重症を?」
それはポール・フレンチを読んでいないからだ、とツッコミを入れる者は此処にはいない。
だが読者の方々なら透かさず、それはアイザック・アシモフを読んでいないからだ、とツッコむだろう。
此処はドクター・ウェストの研究所。
カーテンが閉め切られた部屋の中は、実験用の薬品の刺激臭と、薄っすらと舞う埃に満たされていた。
「……まあ良い。我輩の頭脳は魔術をも超えることが、漸く証明されたのであるからな。そうとも! 我輩こそ科学の申し子! 魔術など、今に科学の力で支配してみせよう……! アイム・ロックンロール!」
いつものようにギターを弾こうとして、ギブスで片手が塞がっていることに気付いたドクター・ウェスト。
ギターをそっと床に下ろすその姿は、ちょっぴり寂しそうだった。
ギター抱える前に気付けよ、とツッコミを入れる者はもちろんいない。
だが読者の方々ならやはり、最初から気付けよ、とツッコむ筈だ。
「さてさて、残った障害は今や、あの忌まわしいデモンベインのみ! しかしそれも問題ナッシングなのである! 我輩が開発したエルザのシステムとこの“スーパーウェスト無敵ロボ28號DX”が合わされば、まさに神の心臓へと至った少年状態! 世界を調律し、時の狭間の観測者となる未来が訪れても、まだお釣りが来るといったところである!」
ドクター・ウェストは立ち上がり、格納庫への扉を開ける。
暗い格納庫の中には、破壊ロボの威容が佇んでいた。
暗闇の中、モノ言わぬ機械の眸が出陣のときを待っている。
「征くぞ、エルザ! 最後の聖戦である! 憎きデモンベインを打ち倒し、最強の称号を我が手に! …………エルザ?」
返事はなく、彼の声が虚しく響くだけであった。
「そ、そう言えば先程からエルザの姿が見当たらぬのである! 何たる落とし穴! このバージェス年代から数えて5億2000万年、カンブリアな大爆発の世紀の大天才ドクター・ウェストの節穴な目を以ってしても見抜けぬとは……! エルザッ! エルザは何処へ!? メイフェア・レディー、エルザー! カムバッークッ!」
「映画:長いフィルム上に連続して撮影した多数の静止画像を、映写機で急速に順次投影し、眼の残像現象を利用して動きのある画像として見せるもの……データに登録」
アーカムシティの住人は逞しい。
たとえ幾度と無く街が破壊されようとも、すぐに立ち直る。
夢のため、明日のため、生きるため。
故に、アーカムシティは沈黙しない。
故に、アーカムシティは眠らない。
故に、アーカムシティは動き続ける。
大黄金時代にして大混乱時代にして大暗黒時代。
それが此処、アーカムシティ。
そんなアーカムシティを、人々の営みの中をエルザは歩いていた。
機械や
忙しく行き交うセールスマンや仲睦まじいカップル、露店やマーケット等々、興味深そうに見回している。
「検索―――該当単語有り―――データに登録」
目に映るもの、耳に聞こえたもの、街のあらゆるものを調べて、メモリーへと記憶する。
そんな作業をひたすら、繰り返す。
必要だから、ということではない。
彼女は情報という形で、街を知り、散策し、楽しんでいるのだ。
表情こそないが、それは間違いない。
「あっ! ねぇねぇ、そこの君!」
呼ばれて立ち止まったエルザを、3人の若者が囲んだ。
呼び止めた若者を筆頭に、若者達はまくし立てる。
「可愛いね~! 君、名前は? 今、暇だったりしない?」
「これから俺らと、お茶でもどうかな?」
「変わった服だねぇ。どこのヤツ? あ、もちろん似合ってるよ!」
「検索―――茶:(1)茶の木。ツバキ科の常緑低木。中国南西部、温・熱帯原産。(2)(1)の若葉を採取して製した飲料。……エルザ、飲食類は受け付けない。お茶を飲むことは出来ないロボ」
言い捨て散策に戻ろうとするが、若者達は乱暴にエルザの腕を掴んだ。
「おいおい! 無視はねぇだろ!」
「ちょーっと付き合ってくれりゃ良いんだよ、なーに、大人しくしてりゃすぐ済むからさ」
「オイ、聞いてんのかよ!」
これが普通の少女であったなら、若者達は己の欲望を満たすことが出来ただろう。
だが、相手は普通の少女ではないのだ。
「―――状況認識。眼前敵の完全排除まで、戦闘モードへ移行するロボ」
「あ? 何ブツブツ言ってんだ、おま
グチャミシャベキッ―――という、鈍い音が響いた。
エルザを掴んでいた男の腕の関節が、有り得ない方向に捻じ曲がっている。
折れた骨は皮膚を突き破り、生々しく痛々しい傷口が男の腕に広がっていた。
「ギ、ギィャアアア! 痛え! 痛え痛え痛えぇぇぇェェェ!」
余りの激痛に堪えかね、男はその場に蹲った。
残り2人は、目の前の光景に慌てふためきながらも、ポケットから取り出したナイフを少女へ向けた。
「な、何しやがったんだテメェ!」
突き出されたナイフに、エルザは腕を振るった。
同時に、パキンッと、乾いた音が発せられる―――ナイフから。
折れた刃は、カシャンッとコンクリートの地面に落下した。
「ヒ、ヒィッ!?」
悲鳴をあげる男に、エルザは容赦の無い蹴りを入れる。
重い蹴りに肋骨を数本砕かれ、男は白目をむきながら倒れた。
繰り出した足を戻し、エルザは残った1人にゆっくりと向き直る。
「う、うわああああ! す、すいませんでしたぁぁぁぁっ!」
最後の1人は仲間を見捨て、情けなくも逃げ出した。
―――自分から消えるというのであれば、わざわざ追いかける意味もないだろう。
エルザは、先程から蹲って唸る男を黙らせるべく、彼の前に立った。
「あ……あ……うあああああああ!」
右足を振り上げる。
だがそのとき、タイミングが良いのか悪いのか、治安警察の職員が1人、人込みを掻き分けてエルザ達の前に現れた。
「こらこら! そこまでであります! まずは、事情を聞かせてもらいましょうか」
突然の乱入者に、エルザの動きが止まる。
機械の瞳が警官の動きを観察し―――腰の拳銃を発見した。
「敵増援、拳銃による武装を確認。制圧のため、銃火器を使用するロボ」
振り上げた足を下ろし、両腕を突き出したポーズで静止する。
それを見ていた全員の頭に疑問符が浮かんだ……が、すぐに驚愕へと変わった。
エルザの両腕が肘関節から折れ、銃口の輝きが顔を覗かせる。
「
―――トリガーが引かれ、真昼の繁華街に銃声が鳴り響いた。
今日も今日とてダウジング。
やっぱり当然マギウス・スタイル。
なんだけど……
「ねえ、アル。何かやたらに騒がしくない?」
「ふむ。まあ、いつものことと言えばいつものことだがな」
「それはまあ、そうなんだけどさ。でも、あの偃月刀が暴れているからかも知れないじゃない?」
「それはないだろう。さすがにそこまで派手に動かれれば、ダウジングに頼るまでもなく感知できる」
「あー……それもそっか」
(……それにしても、随分とサイレンの音が多いわね)
今のこの格好で警察と鉢合わせるのはよろしくない。
……といっても、気にしてどうにかなることでもないし、今はダウジングに集中するべきだろう。
ふと、ショーウィンドウを覗き込む女の子が視界に入った。
まあ、それ自体は特別でも何でもない。
(? あの装束に、綺麗なエメラルドグリーンの髪……どっかで見たような)
ショーウィンドウに満足したのか、女の子が振り向き―――私と目が合った。
「ロボ?」
「…………」
「データ照合……該当データ一件有。大十字九淨。アル・アジフの所有者、
「アナタ、あのときの人造人間っ!」
(警察よりよっぽど厄介ねっ!)
内心舌打ちしつつ、私は身構える……が、エルザはこちらを一瞥だけしてすぐ、別のショーウィンドウへと向かって行った。
無表情だが、その様子は妙に楽しそうに見える。
「……ねえ」
「エルザ、今日は自主休業だロボ。よって、お前と戦う理由はないロボよ」
「じ、自主休業ぉ!?」
ロボット三原則とはなんだったのか、考えさせられるほどに柔軟な思考だ。
(まあ、向こうにやる気がないなら、それで良いのかしらね)
こちらも早く偃月刀を回収しないとだし……。
「……いたぞ、あそこだ!」
「無駄な抵抗はやめて、直ちに投降せよ!お前は完全に包囲されている!」
―――何故か、複数台のパトカーと警官達が大集合して来た。
全員拳銃を抜き、エルザに向けて構えている。
……一触即発、とでも言えば良いのだろうか。
「ねえ、アル」
「なんだ、九淨」
「私ね、不思議なことにあなたと出会ってから、厭な予感がすごく当たるようになってきたのよ」
「まあ、この状況の場合は一目瞭然だ。厭な予感も何もない」
「何だ? 隣の女は!?」
「仲間か!? いや、それともただの痴女か!?」
「2人とも手を上げろ! 妙な素振りをしてみろ、少々痛い目を見ることになるぞ!」
「あっれぇぇぇぇ!? 何だか分からない内に共犯者+痴女扱い!?」
「痴女扱いは当然として、そのようだな。どうする? 逆に痛い目を見せてやるか?」
「当然って酷くない!? そしてダメに決まってるでしょ!」
「さっきの男の仲間ロボか。状況認識、戦闘モード再開。敵集団への攻撃を開始するロボ」
「そこぉぉぉぉ! 警察相手はやめなさぁぁぁぁい!」
―――私の叫びも虚しく、銃声が鳴り響いた。
「発砲してきたぞッ!」
「ええィ! 応戦だ! 応戦しろォ!」
「だからもぉぉぉぉぉぉぉ!!」
腕部内蔵型マシンガンを連射するエルザを、私は羽交い絞めにした。
照準が出鱈目な方を向き、吊り看板やショーウィンドウに弾丸が降り注ぐ。
「ロボっ!? 何をするロボっ!? は、離せロボっ!」
「御託は良いから、とっとと逃げるわよっ!」
羽交い絞めからエルザを素早く肩に担ぎ、私は全速力で逃げ出した。
「犯人が逃げたぞ!」
「もう1人の女が手引きしたぞ! 本部! 応援を、応援を求む!」
「おうおう。九淨よ、これで汝も立派に共犯者だな」
「うるさぁぁぁぁぁぁぁい!」
(っていうかあれ!? 前にもこんな感じのコトなかったっけ!?)
「はぁ……はぁ……わ、私の人生のフローチャートに、グッドエンドへの分岐はないの!?」
「汝は、そういう運命の星の元産まれたのであろう」
「あなたも! あなたもバッドへの分岐に関わってるっての!」
「ハァ……そもそも、此奴は放っておいて、我等だけで逃げれば良かった話ではないか」
「…………」
「…………」
「し、しまったぁぁぁぁぁぁ!」
「やれやれ……やはりそういう運命なのだろう、汝は」
(なんてことかしら……はぁ、これでまたお嬢様に何を言われることやら)
―――当のエルザは、先程の暴れっぷりから一転、黙って私の肩に担がれていた。
どうやら警察も振り切ったみたいなので、彼女を降ろす。
エルザは、どこかボーッとした様子で呟いた。
「……誰かに抱きかかえられたのは、初めてロボ」
「……突然何を言ってるのかよく分かんないけど、アナタ、生まれたのは最近なのかしら?」
「現在、生まれて3日目ロボ」
「……そりゃあ初めてでしょうね」
「ジェネレーターの出力上昇。体内温度も上って……これは、いったいどういうことロボ?」
「それはもう、あれだけ乱射してたら熱くなって当然だと思いますけどぉ」
「ま、まさか―――これが……恋、ロボか」
「な、なにこの超理論!? アル、どうしよう!? 私、全然全く欠片も理解できないんだけどッッッ!?」
「知るか。妾に振るな」
「己の身を省みず、いたいけなエルザを官憲の暴力から救い出してくれた大十字九淨に、エルザはゾッコンらぶ! 女同士の禁断の愛で、濃厚なラブロマンスを繰り広げるロボ! 多分」
「己の身を省みずっていうか、ただ単に咄嗟の事だっただけであってね!? あと、いたいけ言うな。生後3日だから子供っていうのも間違ってないけど! それに官憲の暴力っていうか、どちらかと言うとアナタの方がよっぽど暴力的だったからね! 最後にお互いの合意が得られない関係はロマンスとは呼ばないし、私はノーマルよっ!」
「大丈夫ロボ。周囲の理解が得られずとも、愛があれば問題なしロボ」
「何でどいつもこいつも私の話を聞かないかなぁ、もう!」
「それはそれとして、攻撃を邪魔されたのが頭にきたので、やっぱりお前を倒すロボ」
そう言うとエルザは、躊躇なく発砲してきた。
慌ててマギウス・ウィングで銃弾を防ぐ。
「ちょおおおおおおおおっ! こ、好意か殺意か、どっちか片方にしなさいよぉぉぉぉ!」
「乙女心は複雑……ロボ」
「複雑なのは分かるけど、
「九淨、遊んでないでこれを見ろ!」
「別に遊んでるワケじゃ……って、ダウジングが反応してる!?」
重石が激しい反応を見せ……ピタッとある方角を指し示した。
「え、なんだあれ……うわあああああ!?」
丁度その方角から、誰かの悲鳴があがった。
「急ぐぞ、九淨!」
「了解!」
「はっ! 待つロボ! エルザを無視するロボか!?」
「何があった!? 状況を報告しろ!」
「わ、分かりません! パトカーが突然、真っ二つに……う、うわああああ!」
「いったい何が起こっているのだ!? ……ん? お、お前はッ!? 動くな! 両手を上げろ!」
駆け付けた私に拳銃を向ける警官。
けど、それを気にしている場合じゃない!
「馬鹿! 危ないッ!」
「くっ、うおおおおお!?」
私が警官を突き飛ばすのとほぼ同時、唸りを上げて回転する偃月刀が通り過ぎる。
偃月刀はそのまま、後方に駐車していた装甲車を両断した。
「あんな風に綺麗なバンズになりたくなかったら、警官達全員、今すぐ下がらせなさい! これは私たちの仕事よ!」
「お、お前たちは……いったい……?」
「私たち? ……新手の、正義の味方ってトコかしら!」
偃月刀がどうやら、私を認識したみたいだ。
攻撃の矛先が私に向けられたことを確認する。
このまま戦闘を開始すると一般人を巻き込んでしまうため、私は偃月刀を引きつけつつ、人のいない場所へと走る。
(さて、どうしようか)
動きを止めないことにはどうしようもない。
昨日みたいに、隙を突けるような偶然が起こるとも限らないし……。
突然、横合いから銃弾の雨が浴びせられた。
対魔術加工でもされているのか、魔術防禦の上から鋭い痛みが叩きつけられる。
「痛痛痛痛ッッッ! なになに!? 何よいったい!?」
「エルザを放っておくとは良い度胸ロボ。今のお前は、エルザの敵ロボ」
発砲したのはエルザだった。
確かに彼女の装備だというなら、対魔術加工も頷ける。
「っ、今はアナタの相手をしてる場合じゃ……ひゃあっ!」
足を薙ぐ偃月刀を、跳躍して回避する。
偃月刀はそのまま、エルザを両断しようと迫っていった。
「ロボッ!」
素早く回避したエルザは、偃月刀に向けて発砲する。
偃月刀は回転を止め、飛来する銃弾に刃を振るった。
全ての弾丸が見事に真っ二つとなり、地面に転がる。
「対象の敵対行動を認識。戦闘モード、
エルザの
轟音を伴い地面に突き刺さった、非常識の塊―――
「か、棺桶?」
黒い棺桶が、エルザの横に鎮座していた。
エルザが表面に手を翳すと、罅が入り、その間から眩い光が溢れ出した。
閃光と共に棺桶が砕け散り、物騒なまでの威容が姿を現す。
それは、昨日エルザが担いでいた大砲だった。
エルザは大砲を軽々と担ぎ上げ、偃月刀に照準を合わせる。
「術式魔砲“我、埋葬にあたわず”―――ファイア!」
偃月刀に向かって、大砲から凄まじい閃光が放たれた。
閃光は凝縮された光となった後に四散、魔力の輝きを伴って収束、数十本のビームとなった。
偃月刀は高速飛行でビームを回避していく……が。
「……んな阿呆な」
回避されたはずのビームが、まるで意思を持つように軌道を曲げ、偃月刀を襲撃した。
「ほう……! あの大筒、魔術理論を導入しておるのか。中々の代物だな」
「ってことは、やっぱり魔導兵器なワケね……流石にあんな非常識な代物だとは思わなかったけど」
非常識なビームの雨に撃たれた偃月刀は墜落、地面へと突き刺さった。
「エルザの手にかかれば、ざっとこんなもんロボ」
勝ち誇るエルザ。
まだ小刻みに動いている偃月刀にトドメを刺すべく、エルザは大砲の照準を合わせた。
「これでフィニッシュロボ!」
大砲から大出力のビームが発せられ―――瞬間、私に悪寒が走った。
理由は分からないけど―――
「っ! エルザッ!」
「ロボ!?」
地面から刃を抜いた偃月刀は、迫るビームに刃の腹を当て……受け止めた!?
そして、受け止められたビームはそのまま射手―――エルザへと跳ね返された。
(チィッ! 間に合えぇぇぇぇ!)
マギウス・ウィングを広げて飛び……間一髪で間に合った。
エルザを抱きかかえた私のすぐ横を、跳ね返されたビームが通り過ぎる。
それに息をつく暇もなく、偃月刀本体が迫っていた。
「離すわよ、エルザ!」
「了解ロボ!」
合図と共に分かれた私達の間を、偃月刀が通り過ぎた。
エルザは空中で体勢を整え、ザッとブーツの摩擦音を立てて着地。
私も黒翼を羽撃かせ、地面に着地した。
「また助けるとは……九淨、何を考えておるのだ?」
「だって、見殺しにするのはさすがに後味悪いじゃない」
「御蔭で助かったロボ、マイ・ダーリン!」
「気になるあの人から、一気にダーリンへ格上げ!?」
「ふむ……泥沼だな」
そんな会話を繰り広げていたときだった。
「……………あっ」
恐らく偃月刀に切られてしまったのだろう。エルザの装束の胸元が、中に着けていた品の良いブラごと裂け、綺麗な形の胸が外気に晒されてしまった。
「…………………」
「…………………」
別に女同士なんだから、と言える空気でもなく、場は凍りついた。
「嫁入り前の娘の肌を見たとなれば、もはや言い逃れは許さないロボ。責任取ってエルザを娶るロボ」
「うわああああああん! この世に神様はいないのぉぉぉぉぉぉ!?」
「ううむ……泥沼だな」
そうこうしている内に、通り過ぎた偃月刀が戻って来ていた。
偃月刀の軌道上から飛び退き、回避する―――はずだった。
「なっ!? 逆回転か!」
そう。
私達目前で逆回転し、偃月刀は無理矢理軌道を変更した。
―――躱せないっ!
「ぐぅっ……!」
重い一撃が脇腹に決まった。
逆回転故峰打ちだったが、偃月刀はすぐさま反転し、私を袈裟斬りするべく刃を振るう。
「大十字九淨!」
「嘗めんなぁぁぁぁぁぁ!」
「なっ……にぃ……!?」
偃月刀の刃は私に触れる寸前、ほんの数センチのところで止まっていた。
―――真剣白刃取り。
マギウス・スタイルで強化された身とはいえ、成功する保障は無かったけど……何とかなったみたいだ。
「随分と梃子摺らせてくれたわね!」
刀身を止めた両掌に魔力を集中させ―――粉砕。
甲高い音と共に偃月刀は砕け散り、本来の姿である紙片へと還った。
「やれやれ……無茶をする女だ」
「自分でもそう思うわ。けど、これで回収成功ね」
「うむ、そうだな」
アルが呪文を唱え、断片の回収完了……となるはずだった。
「な、なにっ!?」
紙片が突然、何かに吸い寄せられるように宙を舞った。
「ふはははは! わざわざご苦労様なのである、大十字九淨!」
紙片が飛んでいく先、ドクター・ウェストが立っていた。
―――デッカイ掃除機のようなものを背負って。
「ドクター!」
掃除機の吸収口に、アルの断片が吸い込まれた。
「……アンタ、よく生きてたわね。普通ビルの下敷きになったら死ぬわよ」
「HAHAHA! 神の寵愛を受けるこの我輩があれしきのことで倒れるなどとは、まったくもって片腹痛いのである!」
「って言っても、ギプス着用の上満身創痍に見えるんだけど……」
「シャァァァァァラップ! と言いたいところだが、まあ良いのである。エルザが見つかった上、貴様とアル・アジフの断片の両方も見つけられたのだからな! さあエルザよ! 例のアレでこいつらにトドメをさ……エルザ?」
ドクター・ウェストが、ピタッと停止する。
エルザのはだけた胸元を発見し、青ざめた顔で問い詰め始めた。
「ど、どどどぉぉぉぉぉしたっ!? どうしたのであるか、エルザァァァァァァ!? 何故そのように無残な格好を晒し……はっ! ま、まさか!?」
「あそこに居る大十字九淨に辱められたロボ」
「言うと思った! 絶ッ対言うと思ったわよこんちくしょー! ホンッッットにどいつもこいつも……そんなに私を性犯罪者とか同性愛嗜好者とかに仕立て上げたいワケ!? ふざけんじゃないわよっ! 何度も何度も何度も言ってるでしょうがッ!! 私は! ノーマルよぉぉぉぉぉぉ!!」
「落ち着け、九淨」
エルザの言葉を聞いたドクター・ウェストは、全身をガタガタ震わせながら崩れ落ちた。
「そ、そんな! 我輩の麗しきエルザが、よりにもよってこんなふしだらな女の手で穢されてしまうとは……この悪魔! 鬼畜! 外道! 大十字九淨よ! 我輩の美学の集大成―――いや、美学そのものと言っても過言ではないエルザを穢すということは即ち、この我輩をも穢すことを意味するのであるぞ!? ―――はっ!? も、もしや!? 我輩のこの完成された肉体美も狙っているのではあるまいな!? へ、変態めっ!」
「狙うかぁぁぁ! アンタみたいな○○○○、頼まれたって御免よッ! そして、アンタが人の事変態とか言う!?」
「おのれ大十字九淨……! 今こそ、貴様に引導を渡す時なのである! 征くぞ、エルザ!」
「運命が齎した悲劇……大十字九淨とエルザ、まるでロミオとジュリエットロボ」
「―――やってやるッ! 今こそアンタを、プロヴィデンスの海の底に地獄詰めしてやるッッッ!」
「血涙流さんでも」
「スーパーウェスト無敵ロボ28號DX! カァァァァァァムヒア!」
地面を割り、その姿を現す破壊ロボ―――って!?
「デ、デモンベイン!?」
そう。
地中から現れた破壊ロボは、正しくデモンベインの姿をしていた。
いったいどういう……
「いや、よく見よ。全体的に黄色っぽい色をしているぞ」
「へっ? ……あっ、ホントだ」
2Pカラーどころか安っぽさが目立つ黄色……つまりバッタもんじゃないの。
「ふははははは! どうだ驚いたか! これこそ、我輩が造り上げた最新作、スーパーウェスト無敵ロボ28號DX―――通称“
「うっわぁ……
「ふん! 見て呉ればかりと思ったら大間違いである!」
ドクター・ウェストが包帯とギブスを剥ぎ取り、いつもの白衣姿になった。
エルザと共にコクピットに乗り込み、破壊ロボ―――デモンペインが覚醒する。
(ったく……しょうがないわね)
ちゃっちゃと片付けて、アルの断片を回収しないと。
「ふむ……本物の力を教えてやる必要があるな」
「応とも!」
「「憎悪の空より来たりて
正しき怒り胸に
我等は魔を断つ剣を執る!
汝、無垢なる刃―――デモンベイン!」」
※神の心臓へと至った少年状態
嘘です、そんなに凄くありません。精々、雷神に聖剣ぐらいです。
※ロボット三原則
第1条:ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。
第2条:ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。ただし、あたえられた命令が第1条に反する場合は、この限りではない。
第3条:ロボットは、前掲第1条および第2条に反するおそれのないかぎり、自己をまもらなければならない。
※濃厚な
どちらかと言えば、ドロドロのっていうのが正しいと思います!
※ダーリン
主に女性→男性っていうのが一般的かと思いますが、愛しい人への呼びかけな意味合いなので、別にダーリンで良いですよね?
※ノーマル
今のところノーマル。
どうでも良い話なのですが。
斬魔大聖を初めてプレイしていた頃、どうやったらエルザ√に行けるんだろう、とすっごい悩んでた記憶があります(そんな√は存在しないと知ったときは、ひどくがっかりしたものですが)。