ある少女の斬魔大聖   作:アイオン

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スーパーウェスト無敵ロボ28號DXについて。
デモンペインと書くとデモンベインと非常に紛らわしいので、バッタモンという表記にさせてもらっています。
インパクトというか、迫力に欠けるという方がいらっしゃれば修正させていただきます。


第24話

 覇道邸、瑠璃の自室。

 

 「お嬢様、ブラックロッジの破壊ロボが出現した模様です。先程、デモンベインの出撃を確認いたしました」

 

 「そうですか……」

 

 表情を歪め、瑠璃は答えた。

 

 ―――デモンベイン。

 祖父から託された正義の意思。

 

 ―――大十字九淨。

 それを軽々しく、乱暴に扱うパイロット。

 アル・アジフに至っては、デモンベインを単なる道具・兵器としか考えていない……論外だ。

 

 ―――忌々しい。

 そしてそれを上回るくらい腹立たしい……あのような者達に、お爺様の形見である大切なデモンベインを任せなければならない自分が。

 

 思わず溜息をつく。

 今はデモンベインのことを考えるだけでも、苛立ちを覚えてしまう。

 このままで良いわけがない……が、今はどうすることも出来ない。

 

 「……加えて、今回は少々厄介なことになりそうです」

 

 「………どういうことです?」

 

 「実は……現場に、デモンベインが2体現れたのです」

 

 「何ですって!?」

 

 「詳細は不明ですが、ブラックロッジ側の何らかの策略ではないかと」

 

 デモンベインが2体……いったい、何が?

 あの2人は、今度は何をやらかしたのだ!

 ―――お爺様のデモンベインに……わたくしのデモンベインに何を!

 

 瑠璃の中で、無意識に抑えていた何かが切れた。

 

 「……現場に向かいます、ウィンフィールド。これ以上、あの人達を野放しにしてはおけません」

 

 「はっ……はっ? お、お嬢様!? 司令室は如何なさるのですか!?」

 

 司令の任務など、今は知ったことではない。

 瑠璃は立ち上がり、怒りを湛えた瞳で前を見据えつつ、歩き出す。

 ウィンフィールドの慌てる声が聞こえるが、瑠璃はズンズンと早足で歩いていった。

 

 今、ハッキリと認識した。

 やはり大十字九淨とアル・アジフは危険な存在、我々にとっての異分子なのだと。

 

 この前の事件を思い返す。

 あの時暴れた邪竜は、ブラックロッジの手によるものではない……魔導書の断片―――本を正せば、アル・アジフが元凶だ。

 そしてアル・アジフとそのマスター―――大十字九淨によって、デモンベインは事実上掌握されてしまっている。

 

 ……これ以上、デモンベインを彼らの自由にさせてはいけない。

 何故ならデモンベインは―――

 

 (お爺様が、()()()()に託した希望なのですから!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『注意しろ、九淨。あの科学者が、何のつもりでデモンベインの姿を真似たのかは分からぬが、見て呉れだけではないはずだ』

 

 『ええ……分かったわ』

 

 バッタモンの動きを、注意深く観察する。

 一挙手一投足、細部に至るまで。

 

 ―――摺り足。

 

 (……来る!)

 

 相手の呼吸(タイミング)をずらすべく、私はデモンベインを踏み込ませ、大地を蹴った。

 先んじられたバッタモンも、ワンテンポずれて駈け出し、互いの間合いが詰まる。

 

 近接戦闘(インファイト)

 

 『でりゃああああああああ!』

 

 加減無しのストレート。

 しかし、その一撃はバッタモンの腕でガードされていた。

 

 バッタモンのアッパーが放たれる。

 デモンベインの機体を僅かに反らし、回避。

 

 躱したところでフック。

 バッタモンは、肘で叩き落した。

 

 バッタモンのストレート。

 下から腕をカチ上げ、無効化する。

 

 10、20、と拳を重ねる2つの巨体。

 パワーは……互角。

 私が言うのもアレだけど、駆け引きが巧い相手だ。

 

 (ドクター・ウェストに、ここまでの格闘センスが……!?)

 

 いや、多分だけどそれは違う。

 恐らくは……と考えをめぐらせていたとき、アルの声が響いた。

 

 『このままでは埒があかん! アトランティス・ストライクだ!』

 

 『よしっ……了解!』

 

 アトランティス・ストライクは、魔術理論を導入したデモンベインならではの攻撃。

 いくらパワーは真似られても、この時空間歪曲機関までは……!

 

 『はあああああああああ!』

 

 歪曲エネルギーを込めた、デモンベインのハイキック。

 バッタモンもそれを迎撃するべく、ハイキックを繰り出した。

 

 (よし、このまま粉砕して……!)

 

 ガキィィィィィィィィンッッッ!!!

 凄まじい質量と質量が激突し、鋼と鋼の激しい金属音が鳴った。

 

 『なッ……!?』

 

 そう。

 互いの蹴りは十字に交差し、()()()()

 

 (う、受け止められた!?)

 

 デモンベインのバッタモンが、蹴りでアトランティス・ストライクを受け止めた。

 それが意味するのはつまり―――

 

 エネルギーが爆裂し、互いに反動として返ってくる。

 衝撃波は周囲のビルを粉砕しながら、互いを弾き飛ばした。

 

 無様に大地を転がるデモンベイン。

 倒れながらも、素早いリカバリングで立ち上がるバッタモン。

 

 『断鎖術式……だと!?』

 

 『くぅっ……つまりはあのバッタモンも、魔術理論を導入した代物ってことね……!』

 

 『ふはははははは! その通りであーる!』

 

 ドクター・ウェストの哄笑と、ギターの旋律が響き渡った。

 バッタモンのコクピットが開き、ドクター・ウェストが出てくる。

 

 『左様左様。このデモンペインには、魔術理論が組み込まれているのである! そして、さっき横取りしたアル・アジフの断片を魔力の供給源とし、それを我が愛しのエルザが、魔術回路にデータとして転送する!』

 

 ドクター・ウェストがそう言うと、バッタモンの顔の部分が、音を立てて開いた。

 そこには、複雑に配置された機械と接続されたエルザが座っている。

 機械の中には先程の掃除機もあり、その中の断片から魔力がエルザへと流れているのが感じられた。

 

 『そう! これこそが、エルザ本来の力! 恐れ入ったであるか!? 大十字九淨! アル・アジフ!』

 

 つまり……デモンベインを動かすのに必要な魔導書の役割を、掠め取ったアルの断片に。

 それを伝達する意識体としてのアルの役割をエルザに、という風に分配したってワケね。

 

 (……まさか、魔術理論を導入した破壊ロボまで造るとはね)

 

 システム上はデモンベインのそれと変わりない……いわばあのバッタモンは、鬼械神・模造(デウスマキナ・レプリカ)と云ったところだろうか。

 油断ならない相手だ。

 そしてあの格闘センス……どうやら操縦はエルザがやっているらしい。

 

 (―――あれ?)

 

 魔導書(の役割)→アルの断片

 魔術回路への伝達→エルザ

 メインパイロット(操縦)→エルザ

 

 (……うん)

 

 『つまりアレよね? エルザが全部やってるから、アンタが乗ってる必要って、全くないわよね?』

 

 『――――――――――――――――ァ゛!』

 

 ―――時が、止まった。

 ほんの一瞬、けど、酷く長い一瞬。

 永劫のような一瞬が過ぎ去った。

 ―――そして時が、動き出す。

 ドクター・ウェストは震える声で取り繕った。

 

 『わ、我輩は……この場所で、エルザのために歌を唄うのである! この歌が、我等に勝利をもたらすのだ! エルザ! 愛しい君に届け! お前にラブハァァァァァァァァァァトッッッ!!』

 

 『……全く取り繕えておらんな』

 

 ギターを掻き鳴らし、ドクター・ウェストが喚き散らす。

 

 『黙れ黙れ! 貴様に我輩とエルザの深き絆が分か

 

 『博士、喧しいロボ』

 

 『エェェルゥゥゥザァァァァァァァァ!?』

 

 orz、と崩れ落ちたドクター・ウェスト。

 ……さて、あの阿呆はそこらに捨て置くとして、私はエルザと戦わなくてはいけない。

 

 『分かったロボか、大十字九淨? エルザはお前を倒して、愛をこの手に勝ち取るロボ。勝利の暁には大十字九淨の全てを略奪し、調教に調教を重ね、心から献身させる。それが大いなる愛っていうもんロボ?』

 

 『……アナタ、随分偏ってるわね。とりあえず、そんな愛はお断りよ』

 

 『甘く見るなよ、機械人形! 付け焼刃に過ぎぬ魔術理論など、千年の研鑽を重ねた我が知識にて打倒してくれよう!』

 

 バッタモンのコクピットが閉じ、再びデモンベインと対峙する。

 

 (さて……どうしようかしら)

 

 アルの断片は、あのバッタモンのコクピットの中だ。

 故に、レムリア・インパクトで一撃必殺……! というワケにはいかない。

 つまりは、何とか相手を行動不能に追い込んだ後、コクピットにお邪魔するしかない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……はい、そうです。司令室の指揮は、チアキに委ねます……ええ、それでは」

 

 ウィンフィールが通信機を切る。

 彼が運転するリムジンは瑠璃を乗せ、現場へと向かっていた。

 

 「それで、状況はどうなっているのですか!?」

 

 「現在、大規模な戦闘を繰り広げながら居住区へと入った模様です」

 

 「くっ……お急ぎなさい、ウィンフィールド!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『せりゃあああああああ!』

 

 打撃の応酬、軋みをあげる鋼と鋼。

 

 ……格闘戦に於いては、正直向こうの方が上手だ。

 故にこちらは攻撃を耐え、時には距離を取り、相手の隙を窺う。

 

 『喰らっときなさい!』

 

 バルカンの弾幕。

 バッタモンの動きが一旦止まるも、決定的な隙とは言い難い。

 

 (焦るな……焦るんじゃないわよ、私)

 

 格闘戦で劣るなら、別の部分で勝負すれば良いのだ。

 幸いこちらは、バッタモンでは持ち得ない札が切れる。

 

 アトラック=ナチャ、ニトクリスの鏡。

 アル自身の力であるこの2つは、断片に過ぎない向こう側には使うことは出来ない。

 

 アトラック=ナチャを決められれば、捕縛したところに乗り込めば良いのだから楽だ。

 けど、ジャバウォックのときの様に、断ち切られる可能性がないとも言い切れない。

 これを使わないとなると……ヒト型の移動の要である、脚を圧し折るぐらいだろうか?

 正直、格闘戦でこちらを上回るエルザ相手に決めるには、一苦労どころじゃないけど。

 

 そしてもう1つは、前に取り戻したニトクリスの鏡。

 こちらはまだ使ったことが無いというのもあるけど、今一理解していないというのが本心だ。

 

 アル曰く―――

 

 『鏡とは現実の写しであり、現実の影。即ち虚構だ。ニトクリスの鏡は現実(こちら側)虚構(あちら側)の境界を朧とする力を持つ。……簡単に言えば、敵を幻惑すると云う事だ。使い方は汝の手腕にかかっておる。色々と試してみろ』

 

 ということらしい。

 ……私次第というのがアレだけど、悪くない。

 使える手札が一枚でも増えたのだから。

 

 弾幕を抜け、バッタモンが踏み込んできた。

 インファイトに持ち込まれる前に、大きくバックステップして距離を取る。

 わざわざ相手のスタイルに合わせる必要はない、こちらはこちらのやり方で行かせてもらう。

 

 『おのれェ! 卑怯なり、大十字九淨! もっと正々堂々、正面から戦わんか! ……ふむ? もしや我輩の破壊ロボに、恐れをなしたのであるか? これは傑作である! ふははははははははは!』

 

 イラッと来たので、私は厭味たっぷりに返答してあげる。

 

 『博士ぇ、喧しいロボぉ』

 

 『うぉのれぇぇぇぇぇぇぇい!』

 

 悔しがっている阿呆は放っておいて、私はバッタモンへと注意を戻す。

 すると、バッタモンはこちらから離れたその場で構えをとった。

 

 (……え? あの構えって―――)

 

 『まさか、レムリア・インパクトの構え!?』

 

 でもおかしい。

 仮にレムリア・インパクトまでも模倣出来たとして、アレは対象に接触しなければ効力を発揮しないのだから……。

 と、そこまで考えたところで気付かされた。

 バッタモンの右掌―――デモンベインの場合は、レムリア・インパクトの発生装置が備わっているその場所に魔力が集中していることに。

 

 『九淨! 敵内部の魔力反応増大!』

 

 『――――――ッ!』

 

 『我、埋葬にあたわず(Dig Me No Grave)!』

 

 ―――眩い閃光。

 バッタモンの右掌から、エルザが担いでいた大砲の威力を何十倍にも増幅したかのような魔力波が発射された。

 

 (くっ……そういうコトね! 回避は間に合わない……なら!)

 

 私は飛来する魔力波に向けて蹴りを放った。

 

 『アトランティス・ストライク!』

 

 時空間歪曲により、本来デモンベインへと着弾するはずの魔力波の軌道を捻じ曲げる。

 軌道を変えられた魔力波は、そのまま上空へと消えていった。

 

 何とか凌いだものの、脚部に無理な負担をかけてしまった。

 脚部シールドは砕け散り、脚自体も長くは持たなそうだ。

 

 (チッ……マズイわね)

 

 『ふはははははは! 大分苦戦しているではないか、大十字九淨! これで分かったであろう! 我輩の天才的頭脳の前には、所詮貴様等な

 

 『だから喧しいロボ、博士』

 

 『びえええええええん! エルザァァァっ! いつから我輩を苛めるような子になってしまったのであるか!?』

 

 (ええぃ! ホント喧しい連中ね!)

 

 『アル! デモンベインの脚は、あとどれくらい持つ!?』

 

 『全速で機体を稼動させた場合……あと1、2回が限度だ!』

 

 『ッ……厳しいけど、やるしかないわね!』

 

 腹は決まった。

 後は私のやり方次第だ。

 

 『そろそろ観念するロボ、大十字九淨!』

 

 バッタモンが再び、右掌に魔力を集中させる。

 私は、デモンベインを真正面から突進させた。

 

 『なっ!? 無茶だ!』

 

 『伸るか反るか……勝負よ!』

 

 『我、埋葬にあたわず!』

 

 魔力波が、衝撃を引き連れ迫る。

 それをデモンベインは跳躍して回避し、宙へと舞った。

 

 『血迷ったロボか! それじゃあ的も良いところロボ!』

 

 バッタモンが上空を見上げ、宙に舞うデモンベインへと右掌を向けた。

 

 (……ここだッ!)

 

 『ニトクリスの鏡!』

 

 私の叫びに、魔力が応える。

 字祷子が打ち震え、ニトクリスの鏡を起動させた。

 鏡の怪異の力により、幻影魔術が発動する。

 

 空に舞うデモンベインが―――寸分違わぬ7つの姿に分かれた。

 

 『ロボっ!? 分身……幻影ロボか!? しかし、幻影の中に隠れたというなら、全て叩き落してやるまでロボ! 拡散ビーム!』

 

 右掌から放たれる魔力波は、しかし7つに別れ、上空全てのデモンベインへと襲い掛かった!

 

 デモンベインの虚像が砕け散る(Break)

 デモンベインの虚像が砕け散る(Break)

 デモンベインの虚像が砕け散る(Break)

 デモンベインの虚像が砕け散る(Break)

 デモンベインの虚像が砕け散る(Break)

 デモンベインの虚像が砕け散る(Break)

 そしてデモンベインが―――否。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()

 

 『ロボ!? 全部……幻影!?』

 

 砕けた()()()鏡の破片が、キラキラと光を反射しながらバッタモンへと降り注ぐ。

 

 そう。

 空のデモンベインは全て幻影!

 つまりは―――

 

 『はっ―――!?』

 

 どうやら気付いたようだけど……もう遅い!

 

 『アトラック=ナチャ!』

 

 バッタモンの背後から、ビームの糸を放射。

 四肢を拘束し、バッタモンの動きを封じることに成功した。

 

 『っ……最初に正面から向かってきたのも、幻影だったロボか!』

 

 つまりはそういうコト。

 本体は鏡で迷彩しつつ、魔力波を掻い潜り、空の幻影に気を取られたバッタモンの背後へと回り込んだのだ。

 

 『そういうワケで、もらったわよ!』

 

 私は動けないバッタモンへと、デモンベインを突進させた。

 右脚が悲鳴をあげ、限界を訴える……が、充分!

 最後の一蹴りを、バッタモンの脚へと叩き込んだ。

 

 『アトランティス・ストライク!』

 

 時空間歪曲エネルギーが、バッタモンの両脚を粉砕した。

 駄目押しに相手の両腕に拳を叩き込み、圧し折っておく。

 

 (……よし、これでOK)

 

 バッタモンを無力化したのとほぼ同時、こちらの右脚に限界が訪れた。

 自重を支えきれず、バッタモンに覆い被さるように倒れる。

 

 私はデモンベインのコクピットから出て、バッタモンのコクピットへと飛び移る。

 丁度着地した時、ハッチが内側から開き、エルザが飛び出して来た。

 

 「さすがはエルザのダーリン、大十字九淨ロボ。今日のところは大人しく負けておくロボが、いずれキチンと決着をつけるロボ。アディオス・ミ・アミーガ!」

 

 中々と堂に入った捨て台詞だ。

 エルザはコクピットから跳躍すると、周囲の建物の足場へと飛び移り、そのまま私たちの前から消えていった。

 

 (……まあ、追う意味も無いわよね)

 

 私はエルザが脱出した後のコクピットへと入り、中に配置されていた掃除機をぶっ壊した。

 中から断片が出てきたので、アルが呪文を唱えて回収完了。

 

 (ふぅ……疲れた)

 

 コクピットから出、今回は何か大変だったわね、とアルに話しかけようとしたところで気付いた。

 もう1つのコクピット、つまりドクター・ウェストの方のコクピットの事だけど……ハッチが開き、ドクター・ウェストがコソコソと逃げ出そうとしている。

 とりあえず、私はドクター・ウェストの前に立ち塞がっておいた。

 

 「あ゛…………」

 

 「ハァイ、ドクター。また置き去りにされたのかしら?」

 

 「そ、その! い、今の我輩は丸腰であり非武装の人間を攻撃するのは人道的にどうかと思うからにしてつまりのところ今回はこのまま見逃しちゃったりなんかしてくれると当方としては大変有難く感謝の極みと申しましょうか―――降伏するので許せ!」

 

 見るからに動揺しながら、その場でジャンプし見事な空中三回転半捻り土下座を披露して訴えかけてくるドクター・ウェスト。

 

 「うーん……どうしよっか、アル?」

 

 「ふむ……さてさて……」

 

 そんなことを言いながら、私たちは冷ややかな瞳でドクター・ウェストを見下ろしている。

 ややあって、アルは首を掻ッ斬る動作と共にこれ以上ないってくらいの最高のスマイルで答えた。

 

 「とりあえず……死刑(ギルティ)、な」

 

 「OK。……ドクター、ちょぉっと立ってもらえるかしら?」

 

 多分、私も最高のスマイルを浮かべているだろう。

 私たちの様子を見たドクター・ウェストは、恐る恐る立ち上がった。

 

 「え、ええと……我輩、これからどうな

 

 「――――ふんっ!」

 

 ―――アルの判決に従い、ドクター・ウェストの股座を全力で蹴り上げた。

 

 「ァ――――――――――――――――――――――――――――――ッッッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……何かナマモノが悶絶してるのが見えるけど、それはさておき。

 

 「はぁ……お嬢様に釘刺されたばっかりなのに、ちょっと派手にやり過ぎたわね……」

 

 私はマギウス・スタイルを解き、デモンベインの上から街並を見渡している。

 そして、デモンベイン本体も。

 

 (右脚を完全に御釈迦にしちゃったのは、マズイわよね……)

 

 お嬢様に何て言われることやら……と考えていたところ、一台のリムジンが近づいているのが視界に入った。

 

 「噂をすれば影がさす……か」

 

 リムジンが止まり、お嬢様が降りてきた。

 ……凄まじい形相でデモンベインを睨んでいる。

 

 このままスルーってワケにもいかないので、私たちは装甲を伝ってお嬢様の近くへと降りた。

 お嬢様はこちらを振り向かない。

 

 (怒り心頭……って感じね)

 

 「あのー……すいません。また、やっちゃいま

 

 パァンッ! と乾いた音が響いた。

 

 「――――――――――」

 

 「………………」

 

 「………………ぁ」

 

 お嬢様に頬を叩かれた―――それに気付くのに、若干の時間を要した。

 

 お嬢様は瞳に涙を湛え、怒りの形相で私を睨んでいる。

 私は頬を押さえ、ただお嬢様に視線を返すことしか出来なかった。

 

 お嬢様は無言のまま踵を返し、車へと戻っていく。

 執事さんはこちらに軽い会釈をし、お嬢様に続いた。

 

 リムジンが走り去る。

 残ったのは私たち。

 

 「……いったい何なのだ、あの小娘? いきなり過ぎて訳が分からぬ……どうした、九淨?」

 

 「………………」

 

 「九淨……おい、九淨?」

 

 アルの言葉も耳に入らず、私は只々立ち尽くす。

 

 ―――叩かれた頬が、酷く、痛んだ。




※鬼械神・模造
神の模造品の、そのまた模造品。要はバッタモン。
レプリカの字の当て方は適当なので、あまり深く考えないでください。

※アディオス・ミ・アミーガ
スペイン語なんて知らないので適当です。

※股座を全力で蹴り上げた
この時の九淨さんはマギウス・スタイルであり、その全力である。

回収したバルザイの偃月刀について書こうかと思いましたが、ちょっと長いのでまた次の機会に。
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