ある少女の斬魔大聖   作:アイオン

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第37.5話―アーカムシティでの一日・中―

 さて、ランジェリーショップを飛び出した九淨とアルはライカを大人しくさせるため、服屋・アクセサリーショップ・化粧品店等々を廻り―――漸く本来の目的である買い出しに取り掛かる事になった。

 

 

 

 

 

 色々と横道に逸れまくった結果お昼時になっていたので、私たちは近場の喫茶店で軽めの昼食を済ませた後、やっと本題に入った。

 

 「さて、ライカさん。何から買うの?」

 

 「んー、そうねぇ。今日の買い出しは食料品を買えば良いから……先ずは野菜からかしら」

 

 「ん、分かったわ」

 

 ライカさんの言葉に頷き、私たちはマーケットへと向かう。

 その道中、ライカさんがふと言った。

 

 「そういえば……こうやって九淨ちゃんと出歩くのって、随分久し振りだね」

 

 「あれ、そうだったっけ?」

 

 「うん、そうだよぉ。九淨ちゃんってば大学中退してから、めっきり付き合い悪くなったんだから」

 

 「えーと……」

 

 言われてみれば、そうだったかも知れない。

 

 (……そっか。ライカさんもそう感じるくらいに私、余裕無かったのね)

 

 「……でも、アルちゃんが来てから九淨ちゃん、変わったね」

 

 「む?」

 

 話題に上がったアルが、私とライカさんを見る。

 私は頬を掻きながら言う。

 

 「そりゃまあ……こんだけ色々やってれば、変わるのも当然じゃないかしらね」

 

 「私としては、あんまり九淨ちゃんに危ないことして欲しくないんだけどなー。九淨ちゃん美人さんだし……もし、悪い人たちに拉致監禁されちゃったりしたら! それでそれで、厳つい男の人たちに輪姦(まわ)されて陵辱の限りを尽くされちゃったりなんかしちゃったら! 嗚呼……お姉さんは! お姉さんはどうしたらっ!?」

 

 「とりあえず妄想から帰ってきなさい。あと私、陵辱系ヒロイン枠は御免被るわ」

 

 「何を阿呆な会話しておるのだ汝等……」

 

 呆れ顔になりながら、アルが言う。

 

 「良いか、九淨は九淨だ。幾ら違って見えようと、何処まで行こうと、()()()()()()()()()()()のだ。妾の主となった事で変わったというのなら……それはただ単に、此奴の奥底で眠っていたものが覚醒しただけだろう」

 

 「そーゆーものかしらね……?」

 

 「……うん。アルちゃんの言う通りかも。九淨ちゃんってほら、何だかんだ言いながら色々と首突っ込んじゃう御人好しさんじゃない? だからもう、お姉ちゃんはいつも心配なのよっ! 悪い人に騙されて船に連れ込まれて遠い異国で人身売買されちゃったりした挙句、でっぷりと太ったご主人様に夜の御奉仕を強要されて身も心も調教され尽くしちゃったりなんかしないかって!」

 

 「とりあえず真昼間の街中に相応しくない内容の妄想を垂れ流すのは止めなさいそこのシスター」

 

 そんな阿呆な遣り取りをしつつ、私たちは歩を進めていった。

 

 

 

 

 

 マーケットに到着したところで、知り合い―――多分アルとライカさんは知らないだろうけど―――の姿を見つけた。

 近づき、露店で作業をしているその背中に声を掛ける。

 

 「こんにちは、おばあちゃん」

 

 「ん? おや、九淨ちゃんかい。久し振りだねぇ」

 

 声に振り返ったその人は私の姿を認め、優しげな微笑みを浮かべた。

 二人はやはり知らないようで、疑問を口にする。

 

 「おばあちゃん……? 九淨の親類か何か?」

 

 「九淨ちゃん、こちらの方は?」

 

 私は二人の疑問に答えつつ、おばあちゃんに紹介した。

 

 「えっと、血縁関係があるってワケじゃなくて、この人は以前お世話になった農家のおばあちゃんなの。―――おばあちゃん。この二人は私の友達で、アルとライカさんっていうの」

 

 「そっかそっか、九淨ちゃんのお友達かい。よろしくねぇ」

 

 「うむ、よろしく頼む」

 

 「いえいえ、こちらこそ」

 

 紹介が終わったところで、おばあちゃんが私に言った。

 

 「ところで、今日はどうしたの? お野菜かい?」

 

 「きょ、今日は貰いに来た訳じゃなくて、ちゃんとお客さんだから」

 

 なんかナチュラルに集りに来たと思われてるけど、今日は(ライカさんが)買い物に来たのである。

 それを伝えたら

 

 「まあ! 本当に!?」

 

 凄く驚かれた。

 解せぬ。

 

 「……そうだ! 折角九淨ちゃんが買ってくれるなら、お友達も一緒だし、特別に安くしておくわね!」

 

 なんか割引してもらったので、良しとしておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後マーケット内の色々なお店を回り、大量の食料品を買い込んだ。

 荷物は三人で分割して持ち、仲良く帰路につく。

 

 「それにしてもライカさん。ちょっと買い過ぎじゃないかな……?」

 

 「うむ。妾もそう思うぞ」

 

 ぼやく私たちが持つのは、両手の袋一杯の食料品達。

 ライカさんは苦笑いを浮かべながら答えた。

 

 「あ、あはははは……。だって色々割引してもらったし、九淨ちゃんとアルちゃんが居るからいつも以上に量を持っていけると思って……」

 

 どうやら私が大体の原因らしい。

 それと云うのも、折角マーケットに来たのだからおばあちゃん以外にもお世話になった人に挨拶がてら買い物をしようとしたんだけど……何故か行く店行く店で私が買い物に来たということで割引してもらったからだ。

 

 

 

 

 

 「おや、果物かい?」

 

 「おや、お肉かい?」

 

 「おや、ry」

 

 「「汝ェ……

   九淨ちゃん……」」

 

 

 

 

 

 二人には若干白い目で見られたけど、妙な汗をかきながらスルー。

 信じてもらえないかもだけど、ライカさん以外には餓死寸前レベルになるまで集った事はない―――逆に云うと、そこまで行ったら厚意に甘えていたワケなんだけど。

 

 「九淨の奴、案外知り合いが多いのだな」

 

 「そうみたいねぇ。ちょっと意外」

 

 二人にどう思われているか激しく気になったけど、藪を突いて鬼械神が出てきそうな感じがしたので聞くのは止めた。

 

 「あ、そうだ。パンも買っていきましょう」

 

 ライカさんが一軒のベーカリーの前で足を止めた。

 見事に、私の知っているお店だった―――今日はそういう日らしい。

 私たちは荷物を抱え、店内へと入った。

 

 

 

 

 

 「いらっしゃいま―――おお、シスターさんじゃねぇか!」

 

 「ええ、こんにちは~」

 

 挨拶を交わすライカさんと店主さん―――どうやら知り合いらしい。

 とりあえず私も挨拶をする。

 

 「私も居るわよ、店主さん」

 

 「ん? ああ、大十字の嬢ちゃんか。随分と久し振りだな」

 

 「ええ、まあね。……っていうか、私とライカさんとで対応に露骨な差が無いかしら?」

 

 「んなことはねーよ。いつもご贔屓にしてくれるお得意さんといつも集りに来る印象しかないお前さんに対する正当な対応だ」

 

 「うぐっ! それを言われると……」

 

 「―――何てな、ちょっとしたジョークだ。まあ、ゆっくり見ていきな。そっちの可愛らしい嬢ちゃんもな」

 

 そう言うと店主さんは、カウンターで新聞を読み始めた―――一応仕事中なのに、それで良いのだろうか?

 まあ、ここで突っ立っていても仕方が無い。

 私たちはパンを選ぶことにした。

 

 「えーと、クロワッサンは……ん、あったあった」

 

 個人的にこのお店で好きなのは、クロワッサンだ。

 サクサクとした食感と、ほんのりとした柔らかい甘さ。

 それはとても癖になる味わいで、どれだけ食べても不思議と飽きが来ないのだ。

 ―――ただ一つ言うなら、そんなに食べたらカロリーがヤバイと云う事だろうか。

 

 「九淨、この大きなパンは何だ?」

 

 クロワッサンを二つ程確保していると、アルが棒状の大きなパンを抱えてやってきた。

 

 「ああ、それはフランスパンよ」

 

 「フランスパン?」

 

 フランスのパリ発祥のアレだ。

 アルが抱えているのは、その中でも良く知られるバゲット。

 この店のフランスパンはかなり安めに設定されており、私もお世話になった事が多々ある。

 

 「それ1本あれば、3日はイケるわ!」

 

 「汝ェ……」

 

 呆れられたけど、どうやらアルはフランスパンにするみたいだ。

 ライカさんもがきんちょたちの分のパンを買ったようで、私たちはベーカリーを後にした。




※陵辱系ヒロイン枠
 あれ? よく考えたら斬魔大聖って、選択肢によっては全員にそういうシーンがあったような……

※クロワッサン
 糖質(というか炭水化物)は低いけど、バターを大量に使っているのでカロリーと脂質がヤバイ。100g換算で大凡、食パンの1.7倍のカロリーと6倍の脂質を誇る。

 九淨「悔しい! けど食べちゃう!」

※フランスパン
 大きくて太くて硬いフランスパン。小さなアルとの対比によって、より存在感を増す。
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