ある少女の斬魔大聖   作:アイオン

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第5話

 破壊ロボの狭苦しい操縦室は、沸点寸前まで上昇したドクター・ウェストの体温と計器類が発する熱によって灼熱地獄(サウナ)と化していた。

 

 『メタトロン! 今日こそ思い知らせてくれるわ!』

 

 そんな操縦室の中で、忌々しそうにモニターをにらみつけるドクター・ウェスト。

 そこには白き天使がこちらと対峙し、悠然と構えていた。

 

 破壊ロボで出撃すること数十回、それと同じ数だけ彼の破壊ロボはメタトロンによって大破させられている。

 そんな散々な戦績である彼にはしかし、大天才であるというプライドからこの場を撤退するという選択肢は存在しなかった。

 思いの丈を操縦桿に込め、破壊ロボへと命を吹き込む。

 

 だが、破壊ロボの動きを感じ取ったメタトロンは迅速に動く。

 虚空に突き出した右腕が光り輝き、驚異的な変化(メタモルフォーゼ)を始めた。

 右腕から溢れ出した光の文字が遺伝子にも似た螺旋を描きながら、容を編み上げていく。

 それはやがて、砲身となって顕現した。

 構えられた砲身に光が収束し、破壊ロボに向けて炸裂した。

 

 その瞬間、モニターは白一色に染まり、操縦室を激しい揺れが襲う。

 

 『ぐおおおおおおおおおおっ!? やってくれたであるなっ!』

 

 体勢が崩れた破壊ロボをすばやく立て直し、メタトロンへと攻撃を仕掛ける。

 破壊ロボに装備された全砲門が、一斉に火を噴き、連続して爆音が轟いた。

 だがメタトロンは砲撃よりも速く飛翔し、振り回される4本の腕も軽々と回避し、返礼とばかりにビームの嵐を浴びせていく。

 

 縦横無尽に動き回るメタトロンに翻弄され、破壊ロボは攻撃を掠らせることすら出来ない。

 分厚い装甲に護られ、致命打こそ受けていないものの、それも時間の問題だった。

 

 『ぬぅぅぅぅぅ! このままでは……! ぐぬぉっ!』

 

 再びの被弾。

 遂に装甲の一部が剥がれ落ち、内部へとダメージが及ぶ。

 そのダメージに耐え切れず、破壊ロボの動きが止まった。

 計器類は悲鳴を上げ、一部は爆ぜて火を噴いた。

 

 『しまったぁぁぁぁぁっ!』

 

 『―――トドメだ』

 

 モニターがメタトロンを映し出す。

 

 『マズイ! アレはマズイのであるっ!』

 

 幾多の破壊ロボを葬ってきたメタトロンの大技。

 メタトロンの両手から、二筋の光が疾る。

 それは真っ直ぐに伸びる光の刃。

 2本のビームセイバーを形成し十字に交叉させ、破壊ロボへ向かって強襲する。

 

 『十字・断罪(スラッシュ・クロス)

 

 『ノォォォォォォォッ!!』

 

 ドクター・ウェストは操縦桿を手放し、思わず頭を庇う。

 ―――だが。

 

 『……何!?』

 

 メタトロンの戸惑いの声に、ドクター・ウェストは恐る恐るモニターへ目を向ける。

 

 斬撃は破壊ロボの目の前で停止していた。

 ―――黒い影に掴まれて。

 

 その姿はメタトロン同様でありながら、真逆の色。

 黒い仮面を被り、黒い装甲を纏った黒尽くめの戦士。

 黒いメタトロン。

 ―――黒の天使。

 

 『―――久しいな。メタトロン』

 

 『お前は―――! ……チッ!』

 

 掴まれたビームセイバーをそのままに鋭い蹴りを放ち、黒天使に命中した反動で素早く背後に飛び退く。

 蹴り飛ばされた黒天使も鮮やかに宙返りし、破壊ロボの上に降り立った。

 対峙する白と黒の天使。

 そこにドクター・ウェストの怒鳴り声が響く。

 

 『貴様であるか、サンダルフォン! 我輩の聖戦を邪魔しおってからに!』

 

 『随分と手間取っていた様だが? それに、あのままでは負け戦だっただろうに』

 

 サンダルフォンと呼ばれた黒の天使は、ウェストに背を向けたままの姿で嘲った。

 

 『なにを言うか、この小僧っ子がっ! これから反撃に次ぐ反撃の、怒涛の逆襲タイムだったのであるッ!』

 

 操縦席の中で、ドクター・ウェストは怒りに耳まで真っ赤にしながら吠え立てるが、サンダルフォンは特段気にする様子はなかった。

 

 『まあ、構わん。お前は“アル・アジフ”を追え。ここは己に任せろ』

 

 『何だと!? 貴様、勝手に我輩の獲物を……』

 

 『お前の任務は“アル・アジフ”回収のはずだ。それとも、大導師(グランドマスター)の意思に逆らうつもりか?』

 

 大導師の名を耳にした途端、真っ赤になっていた顔から一気に血の気が退いていく。

 冷汗が顎を伝う。

 万が一任務に失敗したらどうなるか……それを想像し―――いや、想像できぬことが、ドクター・ウェストを青ざめさせていく。

 怯えを誤魔化すように、彼はギターを掻き鳴らして叫ぶ。

 

 『く……! よかろう、ここは貴様に任せたのである! 貴様こそせいぜい生き恥を晒さぬようになっ!』

 

 そう捨て台詞を残し、九淨たちの逃げた方角へと向かう破壊ロボ。

 それを止めようとするメタトロンだが、その進路に黒い影が立ち塞がる。

 

 『―――チッ!』

 

 『さっきのお返しだ、受け取れぇぇぇっっっ!!』

 

 『くぁああぁっ!』

 

 稲妻のような蹴りがメタトロンの脇腹に炸裂する。

 弾丸の如く吹っ飛び、ビルに激突するメタトロン。

 

 『くっ……!』

 

 素早く体勢を立て直し、右腕を砲身へと再構成しサンダルフォンへと放つ。

 

 『憤ッ! 破ッ!』

 

 サンダルフォンは避ける素振りを見せず、突き出した正拳で真っ向からビームを掻き消した。

 

 『さあ、お前の相手はこの己だ。メタトロン』

 

 『お前という奴は……!』

 

 黒の天使は、夜より昏い拳を天地上下に構え―――

 白の天使は、夜を裂く光刃を上下に構え―――

 

 『シィィィ――――――!』

 

 『シェァァァ―――――!』

 

 アーカムシティの空で、白と黒の天使は交錯した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『ふははははははは! こらぁ、待てぇ、待てったらー☆』

 

 逃れたと思ったのも束の間、私たちは地べたを這いずり回りながら、再び破壊ロボに追いかけ回されている。

 ドクター・ウェストの方は今まで以上に逝っちゃってる様子だ、砂浜で恋人追いかけてます風に。

 

 「ちょっと、メタトロンはどうしたの!? まさか、やられちゃったの!?」

 

 「さあな、だが何かあったのは間違いないだろう」

 

 (振り出しに戻っちゃったってわけね! 何とか現状を打破できるものは……)

 

 考えて、背中の黒い翼を思い出す。

 

 「魔導書さんッ!」

 

 「なんだ、我が主よ」

 

 「背中のコレって、防御とかそういう用?」

 

 「まさか、翼である以上当然飛行もできるさ」

 

 「よしっ」

 

 光明が見えた矢先、背後から迫るミサイルが頭上をかすめ、前方のビルに着弾した。

 強烈な爆風で宙に投げ出されてしまうが、手足と翼でバランスを取り、地面へと着地する。

 とにかく現状を打破すべく空へ逃げようと、翼に意識を集中し大地を蹴ろうとする……が。

 

 「へ?」

 

 力を込めた足から返ってきたのは、何かを踏み抜いたような感触。

 不思議に思って視線を足元に向けると、先程のミサイルの影響で脆くなっていたのか、地面が崩れ大きな穴がポッカリと空いていた。

 まるで地の底まで続いているような深い穴が―――って!

 

 「穴!? な、なんでこんなところにぃぃぃぃぃ!!」

 

 必死に手足と翼をバタつかせるも、私の身体は空に浮かび上がることなく、地下の闇へと落ちて行った……

 

 

 

 

 

 

 どのくらい落ち続けたのか、不意に私の全身を激しい衝撃が突き抜けていく。

 どうやら穴の底に叩きつけられたようだ。

 

 「~~~~~~~~~~ッ!!」

 

 余りの痛みに悶絶してしまう。

 

 「あ、あなた……飛行可能だって言ったじゃないのッ!」

 

 「駆け出しの身で一朝一夕にいくわけがなかろう」

 

 「ぐぬぬぬ……」

 

 「まあ安心せい。魔術で保護したから、大した怪我ではあるまいて」

 

 (痛いものは痛いっての……)

 

 このままでいても仕方ないと、痛む身体に鞭打って立ち上がる。

 

 「はぁ……それで、私たちはどこまで落ちたのかしら」

 

 天井を見上げてみると、外の光は点のように小さくしか見えない。

 とんでもない距離を落ちたみたいだ。

 

 次いで周りを見渡す。

 工事中かもしくは途中で破棄されたトンネルのように見える。

 

 (……おかしいわね)

 

 具体的な距離は分からないけど、地下鉄や避難用シェルターにしてはいくらなんでも深過ぎる。

 そもそも、この辺りの区画で地下開発があるなんて話自体聞いたことがない。

 ……一体何なのだろうか、ここは?

 

 「九淨。向こうの方に通路がある」

 

 少女が指差す方角に、確かに通路がある。

 

 「とにかく……進むしかないわね」

 

 私たちはトンネルを歩き始めた。

 出口に向かっているのか、はたまた奥へと進んでいるのか―――

 けど、歩き始めてすぐに視界が開けてきた。

 いや、開けてきたっていうレベルじゃない。

 それほどまでに、とてつもなく広大な空間だった。

 

 「……え?」

 

 そこで私は気付いた。

 ……気付かずにいる方が難しいであろう程、ソレ(・・)は存在感に溢れていた。

 

 「何……これ?」

 

 最初、ソレがなにか理解できなかった。

 それほどまでに巨大な―――ソレは、鉄の塊だった。

 鉄を何らかの意思によって鍛えた、ソレは巨大な鋼だった。

 人型をした鋼の巨人。神仏にも似た神々しい、圧倒的な存在感を放ちながら聳えていた。

 

 「ロ、ロボット!?」

 

 何でこんなところに?

 

 ……まさかこれはブラックロッジの新型で、ここはヤツらの秘密基地ってオチじゃないでしょうね?

 そんなことを考えていると、少女がロボットを見上げ歓声をあげた。

 

 「ほう! この感じ……鬼械神(デウス・マキナ)か!」

 

 「……機械仕掛けの神(デウス・マキナ)?」

 

 「む、知らぬのか? 魔導書の中には、妾のように鬼械神を招喚出来るものがある。妾の場合、本来の鬼械神はアイオーンなのだが―――とにかくだ。術者は魔導書を通じて鬼械神を自在に操ることができる」

 

 ―――そういえばナイアさんが言ってたような。

 

 「“神”の模造品……とかいうヤツかしら?」

 

 「なんだ、やはり識っておるのではないか。いかにも、鬼械神とは魔術を以って造られた神々の総称だ。鬼械神には動力部や至る所に魔術回路が組み込まれている。……ふむ、ただ此奴は少々強引な構造となっているようだ。魔術理論と科学の混血児と呼ぶべきか……正式な鬼械神とは言い難いが、この際構うまい。ありがたく使わせてもらうとしようぞ」

 

 「って、こら、勝手に!」

 

 「何を言うか。我等が見つけたのだから、すなわちこの鬼械神は我等のものということだ」

 

 「そんなことが罷り通ったら、世の中窃盗犯だらけね……」

 

 「ふんっ、どのみち上で暴れておるあの粗大ゴミを放置しておくわけにはいくまいて。ならば、此奴を使って戦うしかなかろう?」

 

 「……戦う?」

 

 またさらりとトンでもないことを言ってくれるわねこの子……。

 

 「経験のない汝が不安に思うのは解かるが安心しろ、妾がついておる。それに魔術師と魔導書と鬼械神は三位一体。騎士が軍馬を乗りこなせるように、汝も鬼械神を操ることが出来よう。行くぞ」

 

 「……って、ちょっと待ちなさいっ! まさかコレに乗って戦えっていうの!? 私にっ!?」

 

 「当然だ」

 

 わーお。

 

 「なっ、じょ、冗談じゃないわよっ! 何で私がそんなことっ!?」

 

 「我等がやらねば、誰がやると云うのだ?」

 

 「ふざけないでよっ! 私がそんなことまでやらなくちゃいけない理由が

 

 ―――その時、ロボットが唸りをあげた。

 巨大なロボットの内部から重厚な駆動音が響き、広い空間内を幾重にも木霊する。

 

 私は思わずビクッとして、ロボットを見上げた。

 ロボットの眸―――人間のように2つ存在するソレが、薄暗闇を払うように輝きを放つ。

 

 それだけじゃない。

 貌の表面や装甲には淡い幾筋もの光のラインが、複雑な紋様を描きながら走り始める。

 それはまるで、血液が巡っていくかのような光景だった。

 

 鋼の体の下で、途方も無く大掛かりな機関が胎動している。

 

 「見よ。鬼械神(こやつ)も汝を主と認めておる」

 

 少女の言葉に応じるように、鋼は低い駆動音をあげる。

 

 (迷惑な話ね、まったく……)

 

 そんな一方的に忠誠を誓われても困る。

 困る……けど、何だろう?

 カラダが火照り、心の奥底から燃え立つような不思議な昂揚感。

 何の意思も持たないはずの、機械の眸。

 なのに、見つめると何故か胸の鼓動が高まる。

 

 「汝も此奴を気に入った様ではないか」

 

 「……馬鹿言わないでよ」

 

 「馬鹿な事かどうかは、自分の目で確かめるがよかろう。―――接続(アクセス)!」

 

 少女が語りかける。

 

 「識を伝え、式を編む我。魔物の咆哮たる我。死を超ゆる、あらゆる写本()原本()たる我、“アル・アジフ”の名に於いて問う。鋼鉄を鎧い刃金を纏う神。人の造りし神。鬼械の神よ。汝は何者ぞ」

 

 少女が詠い上げると、ロボットに走る光がその輝きを増した。

 その輝きは私の視界を白く染め上げていく。

 けど、それだけじゃなかった。

 私の体が、光の粒子となって崩れ始めたのだ。

 風にさらわれていく砂のようにサラサラと、体が形を失っていく。

 

 「ね、ねぇ!? き、きききき消えっ!」

 

 「内部(なか)に入るぞ!」

 

 少女が宣言すると同時に、私の体は霧散する。

 それはロボットの発する光と混じり合い、融け合った。

 

 私は―――

 

 I'm innocent rage.

 I'm innocent hatred.

 I'm innocent sword.

 

 I'm DEMONBANE.

 

 『―――え?』

 

 気付けば、私の網膜に直接浮かび上がっているかのような、光り輝く文字。

 

 『DEMONBANE(デモンベイン)ですって!?』

 

 覇道財閥のお嬢様が言っていた、あの単語。

 ブラックロッジに対抗するための切り札。

 それが何で……?

 

 『汝は、憎悪に燃える空より産まれ落ちた涙。

  汝は、流された血を舐める炎に宿りし、正しき怒り。

  汝は、無垢なる刃。

  汝は、魔を断つ者(デモンベイン)

  ―――善い名だ! 気に入った!』

 

 気がつくと、私は淡く輝く球体の中心に立っていた。

 慌てて身体を確認したけど、特に異常は見当たらない。

 落ち着きを取り戻した私は、球体の内部を観察してみる。

 淡く輝く光に目を凝らせば、それは魔術文字のようだ。

 これは……魔法陣?

 

 私をぐるりと360度囲む魔法陣の向こうに、計器類に囲まれたシートが見える。

 そこには、元の姿に戻った少女が腰かけていた。

 

 私の目の前で、少女の背中の羽根みたいなのがページにバラけ、頭の上で再構成され―――なんかネコミミみたいな形状のヘルメットになった。

 ……どんな意味があるのかは分からないけど。

 

 『ね、ねぇ、魔導書さん。此処は……?』

 

 『鈍い奴だのう。内装を見て判らぬか? 鬼械神の内部に決まっておろう』

 

 『鬼械神? あのロボットの中ってこと? それにデモンベインって……』

 

 『それくらい察しが付くであろう? 此奴の名だ』

 

 デモンベイン。

 このロボットの名前。

 覇道のお嬢様が言ってた、ブラックロッジへの対抗手段。

 

 『じゃあこのロボットが覇道財閥の……!』

 

 『よし……操作系にアクセスするぞ!』

 

 『はい? ……ひゃああっ!?』

 

 私の背中に生えていた黒い翼が、魔導書のページとなって解けてゆく。

 ページは容を変え……あるページはモニターに、あるページはコンソールパネルに、あるページは計器類に、またあるページは操縦桿に変化し、私の周囲に配置されていく。

 

 ……なんていう不思議科学。

 驚きというよりも、半ば呆れかけていた。

 

 『良し、往ける! デモンベイン、出撃するぞっ!』

 

 『あああああっ! だから状況で無理やり押し流そうとするんじゃないっっっっ!』

 

 『毒を喰らわば皿までというやつだ』

 

 『毒自身がそれを言う普通!?』

 

 すると突然、振動が走る。

 ロボットを固定している台座ごと移動しているようだ。

 この台座はどうやら、このロボットの輸送車になっているらしい。

 

 巨大な線路の上を、まるで滑るように動き出す。

 

 『え、え? 勝手に動いてる……!?』

 

 広大な空間の奥へと進んでいく。

 どこまで運ぶのかしら……と、目的の場所はすぐそこだったみたいだ。

 行き先は行き止まりだった。

 

 が、その再奥には魔法陣が描かれた巨大な岩があった。

 岩の大きさは、このロボットに匹敵するほどだ。

 輸送車はさらに進み……って!

 

 『ちょ、このままじゃぶつかっちゃうわよ!?』

 

 そのとき、巨岩の前方に魔法円が浮かび上がり、輝き始めた。

 ロボットが魔法円に触れ、視界を光の洪水が埋め尽くす。

 

 『な―――――!?』

 

 光の洪水が収まり―――視界が元に戻った時には、私たちは別の場所にいた。

 広大な球状の部屋。

 その中心に、ロボットは浮いていた。

 輸送車はいつの間にか消えている。

 

 『え……何、ここ!?』

 

 『あの岩の内部だ』

 

 『そんなアホな!? あの岩ここまで大きくなかったでしょ!?』

 

 『汝も魔術師の端くれならば、物事を全部ユークリッド幾何学に当て嵌めて思考するのは止めておけ。……成程、この空間は魔術装置か。“招喚”の論理(ロジック)が組み込まれている。これならば跳躍()べるぞ』

 

 『何言ってるのか全然理解不能なんだけど……』

 

 『説明するより見たほうが早かろう。敵の近くの座標に跳躍()ぶぞ、覚悟は良いな?』

 

 『良いわけないでしょっ!』

 

 『いい加減に腹を括れ! 出撃!』

 

 その瞬間、私は落下するような感覚に陥った。

 墜ちてゆく。

 何処までも墜ちてゆく。

 

 眼下はまるで劫火が燃え盛っているようだった。

 墜ちるロボットはその劫火に呑み込まれ―――

 私の五感が、狂い出した。

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