ある少女の斬魔大聖   作:アイオン

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THE OMEN
第7話


 少年は一部始終を見届けていた。

 アーカムシティの上空―――高度1000メートル。

 彼は月を背景に、物憂げな表情で夜(・)空(・)に(・)た(・)た(・)ず(・)ん(・)で(・)い(・)た(・)。

 強風をその身に受けながらしかし、少年は微塵にも揺らがない。

 靡く金色の髪を手櫛でかき上げ、凄絶な笑みを浮かべている。

 少年の名はマスターテリオン。

 ブラックロッジを束ねる大導師である。

 マスターテリオンは、一切の輝きを放たぬ黄金の眸で街を―――街に穿たれたクレーターを見下ろす。

 

 「今(・)回(・)も(・)……やはりこうなったか」

 

 そこに佇む、鋼の巨人を。

 

 「総ては運命の輪の内に」

 

 その眸に映るのは、希望か、あるいは絶望か―――

 

 「さあ……共に踊ろうではないか。あの忌まわしきフルートが奏でる、狂った輪舞曲の調に乗って」

 

 マスターテリオンは囁く。

 

 「ヒロインは貴公だ―――アル・アジフ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 “アル・アジフ”。

 

 アブドゥル・アルハザード(狂える詩人)によって生み出されたキタブ、最高位の魔導書。

 異界の神々について書き記されたそれは、魂を宿し、ヒトの容を持つことが出来る。

 

 

 デモンベイン。

 

 覇道財閥の持つ技術の粋を集めて開発された、魔を断つ者の名を関する巨大ロボット。

 そのシステムには魔術機関が組み込まれており、魔導書と魔術師との三位一体により絶大な力を発揮する。

 

 

 大十字九淨。

 

 “アル・アジフ”とデモンベイン、その両方を手に入れることになる運命の女性である。

 

 

 これは神の意思か、悪魔の悪戯か、はたまた運命(ご都合主義)か。

 その答えはまだ、彼女の内に眠れども。

 

 さあ、時は満ちた。

 

 大十字九淨。君の物語の始まりだ。

 

 大十字九淨。君は恐れることなく突き進め。

 

 大十字九淨。君が立ち塞がる邪悪を打ち滅ぼし、愛する人々に笑顔をもたらすのだ。

 

 大十字九淨。君の正義の光で、異形の闇を照らすのだ。

 

 大十字九淨―――我々は君の覚醒(めざめ)を待っている!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――誰か聞いてもらえるかしら。

 私が引き受けたのは、魔導書を探す仕事だったはずなの。

 それが何の因果かブラックロッジに追われたり、探していた魔導書は何故か、なんとも生意気な人外属性の女の子だったり、その魔導書と契約してしまって無理矢理魔術師にされたり、挙句の果てには巨大ロボットに乗って戦う羽目になったり……無茶苦茶にも程があると思わない!?

 

 一介の善良な私立探偵である私、大十字九淨の穏やかな日常は、いったいどこで狂っちゃったんだろうか。

 

 (神様……私がいったい何をしたというのですかこんにゃろー)

 

 閑話休題。

 

 私は今、窮地に立たされている。

 破壊ロボを倒した後、執事さんからの通信に従って廃墟区画まで撤退。

 そこに隠されていた巨大な回収口で、格納庫まで戻ってきた。

 ……戻ってきた格納庫で待っていたのは、怒り心頭とばかりに仁王立ちする覇道のお嬢様と、その後ろで静かに控えている執事さんだった。

 お嬢様の目がヤバイ。

 

 「さて……大十字さん、どういうことか説明していただきましょうか?」

 

 「も、もちろんですハイ……」

 

 「納得のいく説明ができなければ……解かっていますね?」

 

 (怖っ! それはアレですか? ふざけた事ぬかしたら社会的に抹殺してさしあげますわってこと!?)

 

 「な、何から説明したらいいのか……と、とりあえず」

 

 私はアル・アジフの首根っこを掴んで、覇道のお嬢様に差し出す。

 

 「ご依頼の魔導書です」

 

 「にゃ?」

 

 アルは奇妙な鳴き声を発すると、私とお嬢様の顔を交互に眺めた。

 

 「………………」

 

 「………………」

 

 ―――沈黙。

 

 「にゃ、にゃにをする。妾は猫ではないぞ」

 

 「困りましたわ……わたくし、もしかして馬鹿にされているのかしら?」

 

 お嬢様はジタバタと暴れるアルを眺めると、にこやかな笑み(般若の面)を私に向けた。

 

 (ひぃっ!?)

 

 「あ、いえ、その……決して馬鹿にしてるわけではなくてですね? こう見えても魔導書だったりするんですけど……コレ」

 

 「如何にも……苦しゅうないぞ、楽にせい」

 

 「………………」

 

 「………………」

 

 ―――沈黙。

 お嬢様の顔が、盛大に引きつっている。

 

 「まあ、大変。大十字さんは先の戦いで頭を打たれたみたい。ウィンフィールド、お医者様を」

 

 ……本当に頭がおかしくなってたのなら、楽だったんですけどね。

 

 「ええい、小娘! こちらが下手に出ておれば生意気な……見るが良い!」

 

 とうとう堪忍袋の緒が切れたのか、アルが怒鳴り出す。

 それと同時に、アルの半身が魔導書のページとなって捲れてゆき、私たちの周囲を舞い始めた。

 

 突如視界に舞った紙吹雪に、お嬢様と執事さんも流石に驚いたようだ。

 

 「妾こそは“アル・アジフ”。アブドゥル・アルハザードにより記された世界最強の魔導書なり!」

 

 アルは半分だけの顔で、誇らしげに宣言した。

 

 「汝の様な貧弱な想像力しか持たぬ哀れな小娘には理解できぬだろうが、妾ほどの魔導書となれば、命を持ち、魂を持ち、ヒトの容を持つものなのだ。汝の狭い常識に妾を当てはめられては不愉快だ」

 

 ばらけた魔導書のページがアルの体へと戻っていき、再び元の姿を構成する。

 

 目の前で起こった怪異に驚いていたお嬢様は、アルの不遜な態度に現実に引き戻され、同時に抑えていた怒りを爆発させた。

 

 「貴女ッ! 小娘小娘って……いったいどっちが小娘ですか!」

 

 「やれやれ……あれだけ丁寧に説明してやったというのに、まだ見た目に惑わされるとは。よいか、20年も生きていなそうな汝なぞ、千年以上もの悠久を生きた妾にとっては、小娘以外の何ものでもないのだッ!」

 

 「この……!」

 

 2人の間に、一触即発の空気が流れ始める。

 

 「……デモンベインが起動したという事実は、彼女の話が事実であることを示しています。大十字様、詳しいお話をお聞かせ願えますでしょうか?」

 

 (ナイス! 執事さん)

 

 ヒートアップする2人に割り込むかのように訊ねてきた執事さんに、心の中で賛辞を贈る。

 

 「とりあえず……順番に説明させてもらいます」

 

 私は時間をかけ、事の成り行きを一つ一つ説明していった。

 アルとの出会い。

 ブラックロッジとの戦闘。

 そしてデモンベインの発見。

 尚、覇道財閥の秘密基地への侵入は不可抗力であり、デモンベインの無断使用については成り行き上であることをしっかり付け加えておく。

 

 「なるほど……それでは大十字様が魔導書の、彼女の所有者というわけですか」

 

 「うむ、九淨と妾は魔力の波長が合う様でな。魔術師としてはか(・)ら(・)っ(・)き(・)し(・)だが、妾は此奴が気に入った」

 

 「言っておくけど、私は認めてないからね」

 

 「汝も諦めの悪い女よの」

 

 アルはやれやれ、とでもいいたげに肩をすくめた。

 

 (やれやれ……は、こっちの台詞よ)

 

 私はそんな憤りを胸の内に押し込め、先程まで自分が乗っていたデモンベインを見上げる。

 破壊ロボから受けた猛攻が嘘のように、その装甲は傷一つ無く輝いていた。

 

 「このロボット―――デモンベインっていう名前なのよね? ということはつまり……」

 

 私の問いに執事さんは頷いた。

 

 「お察しの通りです。これこそ大旦那様が開発したブラックロッジに対抗する手段。覇道財閥の叡知を結集させた最強のロボットなのです」

 

 ……やっぱりそうなのね。

 

 最強。

 まさに最強の名に相応しいと私も思う。

 ブラックロッジの破壊ロボを圧倒する、その力(パワー)。

 そして破壊ロボを跡形もなく焼き尽くしてしまった必滅の一撃。

 ……思い出しただけでも、震えがきてしまう。

 

 「鬼械神と呼ぶには少々不完全が過ぎるが、人間が造ったにしては中々どうして大した代物だ。デモンベインは我が鬼械神として存分に使ってやろう。光栄に思うが良い」

 

 そんなことをドヤ顔で言い放ったアルに、またしてもお嬢様の顔が引きつった。

 

 「貴女ッ! 何を勝手に決めているのですか!? そもそもデモンベインはお爺様の形見であり、覇道財閥の所有物なのですよ! それを貴女のような魔女に渡すつもりなどありません!」

 

 一喝するお嬢様の声も、アルには効果が無いようだ。

 

 「ほう? では小娘、此奴をどうするつもりだ? まさか後生大事に、此処に飾っておくつもりではあるまいな? 莫迦莫迦しい。鬼械神は戦う為に生まれし存在、このデモンベインも例外ではなかろう。なればこそ、彼奴も最強の魔導書である妾と共に戦いたいと願うだろうさ。解かるか? デモンベインは汝の玩(・)具(・)では無いぞ!」

 

 「あんな乱暴な扱いをしておいて、よくもまあぬ(・)け(・)ぬ(・)け(・)と……そんなので壊されたら元も子もありませんわ!」

 

 「戦い方が拙いのは術者の九淨が未熟なだけだ、妾の責任ではない」

 

 「え、ええっ!? なにそのキラーパス!?」

 

 (煽るだけ煽っておいて、それはないでしょぉぉぉぉっ!?)

 

 お嬢様の矛先が私に向く。ギロリと私を睨むその瞳には、殺意すら込められているように感じる。

 

 「え、えーと……と、とにかく。こうして魔導書も見つかったわけですし、めでたしめでたしってことで……ダメですかね?」

 

 「認めると思いまして?」

 

 ……デスヨネー。

 

 「大十字さん! こんな下品な魔導書ではなく、もっと品の良い魔導書を見つけてくださいまし」

 

 「九淨、そんな小娘の我が儘に付き合う必要はない! デモンベインは妾と、そして汝のものだ!」

 

 「どっちが我が儘ですか、どっちが!」

 

 もっともである。

 

 「はあ……とにかく大十字さん!」

 

 「は、はひぃ!」

 

 思わず直立不動の姿勢になってしまう。

 

 「事と次第によっては、デモンベインを無断で動かした責任を追及させていただくことになります! ……それがお嫌でしたら、速やかに別の魔導書を見つけ出して下さい!」

 

 ……脅しですか。

 脅しですね。

 脅しですよねー。

 

 私に選択肢は無く、頷くしかなかった。

 

 「了解(Jawohl)……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 お嬢様の詰問から開放された私は、格納庫を後にし自宅への帰路についていた。

 

 (疲れた……ホント……疲れたわ……)

 

 心身ともに切実なる疲労の叫びを上げている。家についたら泥のような惰眠を貪ろう……

 ―――何故か銀髪の娘っ子が後ろについてきてるんだけど。

 

 「……で、何であなたは私について来てるのかしら?」

 

 「うゆ?」

 

 なんでしょうか、さも意外って表情は?

 

 「汝は妾の主人、ならば一緒に居るのが当然であろう?」

 

 「だからさっきから認めないって言ってるじゃないの!」

 

 「だから契約したではないかと言っておろうに!」

 

 (こ、この娘っ子は………ッ!!)

 

 「あぁもうっ! このまま泣き寝入りするなんて思わないでよね! ―――って言うか逃げる! 自由への疾走! あの青空の下に、私まっしぐら!」

 

 「あっ、こら九淨! 待たぬかぁ――――!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ふぅ……なんとか撒いたみたいね。

 

 (あんな戦いに毎度毎度巻き込まれたら、命がいくつあっても足りないわよまったく……)

 

 「お帰り……どうした。あたかも長年尽くした男にポイと捨てられた娘の如く崩れ落ちおって」

 

 「な、なななな、何でここに居るのよぉぉぉぉ――――――!?」

 

 「ん? なんと言えばよいか、汝の魔力の気配というか匂いというかを辿ってみた」

 

 ……わんこみたいな奴ね。

 

 「喉が乾いたな。茶は出んのか?」

 

 「そんな贅沢品は家にはありませんっ、水で我慢しなさい! ……もらった依頼料だって、電気水道ガス代に滞納してた家賃と日々の食費と調査費用で……ぐすん」

 

 自分のことながら涙がでちゃう……だって女の子だもの。

 

 「まあ、何にせよ妾からは逃れられんよ。妾と契約した以上、汝とはもはや一蓮托生。汝がいくら否定しようとも、戦いの方が向こうからやってくるさ」

 

 「何なのよ、そもそもその戦いっていうのはっ!? ……そういえばあなた、あのときもブラックロッジと戦う理由があるって言ってたわね?」

 

 問いかけながら、とりあえずソファーに座る。

 

 「……そうだな。汝にはまず、そこから説明せねばなるまい」

 

 アル・アジフの表情が真剣味を帯びる。

 

 「妾には……いや、この世界全体にとっての敵がいる」

 

 「……いきなりスケールが大きくなったわね」

 

 「そもそも、アブドゥル・アルハザードが妾を書き記したのは何故か。総ては其処にある。外なる世界からこの世界を侵そうとする邪神達の存在を、人類に警鐘する為、妾は生を受けたのだ」

 

 (じゃ、邪神?)

 

 「いくらなんでも荒唐無稽過ぎるわよ……」

 

 「―――そう言い切れるのか、大十字九淨? 少なくとも魔術を齧ったことのある汝ならば識っている筈だ。魔術とは外道の知識。異界の神々から力を得るためのな」

 

 「……………」

 

 反論は出来ない。

 確かに魔術っていうのはそういうものだ。

 けど、だからって……。

 

 「彼奴等は今こそ沈黙を保っておるが、世界の闇から忍び寄り、その領域を拡げようとしておる。いつの世にも、外道の知識の誘惑に負ける人間はおるだろう? 例えば―――」

 

 「―――ブラックロッジ」

 

 「左様。そして、そのような邪悪に染まった魔術師の中には、時に邪神復活を目論む様な輩が現れることがある。それを察知し、討ち滅ぼすのが妾の役目だ。妾は我が主と認めた人間に力を与え、我が主となった人間はその力―――鬼械神を駆り、邪神の下僕となった邪悪を狩る」

 

 「デウス・マキナ……ん? そういえばあなた、あの覇道財閥のロボットを自分のデウス・マキナにするとか何とか言ってなかった?」

 

 「ああ。妾の本来の鬼械神・アイオーンは“敵”との戦闘で破壊されてしまってな。もともと術者……操縦者がいない状態で無理矢理稼動させていた故、勝てる見込みなどなかった。……アイオーンを失った今、敵と闘うには新たなデウス・マキナが早急に必要であった。デモンベイン―――偶然見つけた代物ではあるが、あの機体は我が新たなるデウス・マキナとなるに相応しい」

 

 「ちょっと待って……破壊されたって、さっきの話を聞いてるとそのアイオーンっていうのもデモンベイン並みのロボットみたいだけど……」

 

 「正式な鬼械神である以上、総合的な性能、とりわけ安定性にかけてはアイオーンの方が上だな。デモンベインも悪くはないのだが、あくまで紛い物。それ故にバランスの悪い造りになっておる」

 

 (あれだけの力を持っているデモンベイン……アレよりも上? ソレを破壊した?)

 

 「どんな規格外よ……その敵っていうのは?」

 

 「敵もまた、鬼械神を駆る魔術師だ」

 

 「―――――――ッ!!」

 

 私は言葉を失った。あのデモンベインを超えるようなロボットが敵!?

 

 「あ、あなた! そんなとんでもないのと戦えっていうの!?」

 

 「必ずや斃さねばならぬ相手だからな」

 

 アル・アジフは淡々としている。一体何を考えてるの、この子は!?

 

 「無茶言わないでよ! 私はただの探偵よ? 凡人、一般pepole! そんな規格外達の頂上対決は私と関係無いところで、時空の彼方ででもやってなさいよ! 私を巻き込まないで!」

 

 「そうは言っても先の戦い、初めてにしては中々だったではないか。そう、汝はきっと戦う為にこの世に生を受けたに違いない。運命だ。決定」

 

 「少しは人の主張に耳を傾けてはくださいませんかね!?」

 

 「だが、現状の妾達では“敵”には勝てぬ」

 

 「……まったく聞いちゃいないわね」

 

 「“敵”に敗北し、この街に墜ちた際、妾を構成するページの何割かを失ってしまったのだ。そのページを取り戻さない限り、妾も汝も、デモンベインも本来の力を発揮することは叶わぬ」

 

 「それは難儀なことで……私はやらないからね」

 

 「だからまず、汝にはこの街に散らばったであろう妾の断片を回収してもらう。早速明日から行動開始だ。良いな?」

 

 「良くない。っていうか1人でやりなさいよ」

 

 「さて、今宵はもう休むとしよう。寝床を借りるぞ。寝室は何処だ?」

 

 「や、私はいつもこのソファーに寝転がってるけど……って何当然の様に居座ろうとしてるのよあなたっ!」

 

 「そのソファーか。寝心地は悪そうだが、まあ仕方あるまい。では、そこを退いてくれ」

 

 「イヤよ、此処は私の寝床(ベッド)よ! 毛布もこれ一枚しかないし……あなた人外の魔導書娘なんだから、床で寝たって風邪なんかひかないでしょ?」

 

 「それでは疲れが取れんではないか! ええい、退け!」

 

 アル・アジフは、私を退かそうと掴みかかってきた。

 

 「イヤだってばっ! 私の方が疲れてるっての……!」

 

 「ぐぬぬぬ………」

 

 「くぬぬぬ………」

 

 何とも低レベルな取っ組み合いを繰り広げていると……

 

 「うにゃ!?」

 

 「ひゃあ!?」

 

 バランスを崩したアル・アジフがソファー―――私の上へと倒れてきた。

 

 「あっ……」

 

 私の体にかかるアル―――アル・アジフの略称―――の重み。

 想像以上に軽く、同時に確かな温もりを私に伝えてきた。

 

 (人外なんて言っちゃったけど、この子だって生きてるし、疲れもするわよね……)

 

 「……退く気はないけど、あなたが此処で寝るのは譲歩してあげるわ」

 

 「つまり寝床を共にしろと? ……汝、もしやソッチの気ではあるまいな」

 

 「私はノーマルよッ!!」

 

 (ゆーにこと欠いてこの古本娘は……怒っていいわよね?)

 

 「まあ、いつまでもこうして言い争うのは体力と時間の無駄だな……気は進まんが譲歩してやろう」

 

 「はあ……最初からそう言いなさいよ」

 

 「万が一襲ってきたら死なすからな……おやすみ、九淨」

 

 「襲わないわよ……おやすみ、アル」

 

 ……アルはすぐに寝息を立て始めた。

 

 (なんだかんだで疲れてたのね……やっぱり)

 

 私も当然疲れているので、すぐに瞼が重くなり始めた。

 

 (………?)

 

 私の上で眠るアルから、柔らかい女の子の香りがする。

 

 (……そういえば、こんな風に誰かと一緒に寝るなんていつ以来かしら)

 

 そんな取り止めの無いことを考えつつ、久しぶりに感じた人の温もりに包まれて私は眠りに落ちていった。




 次の話以降、投稿間隔が長くなると思います。

 週1以内のペースには出来るよう努力いたしますので、楽しみにしてくださる方がいらっしゃいましたら、どうかご容赦ください。
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