喫茶店のバイト内容が、人理修復だった件 作:考えるな。感じるんだ!
「ムッ。これは、不味いな」
「どうしました、マスター?」
何でもない夏の平日の昼下がり。
バイト先の喫茶店において、唐突にマスターが呟いた。
「電球が切れてしまってね。ちょっと買い出しに行くから、店番を頼めるかい?直ぐに戻るからさ」
「はあ。まあ、大丈夫ですよ」
店にお客さんはおらず、ピークも過ぎていることもあり了承する。
すると、マスターは直ぐに外出用の服装に着替えて扉に手をかけたが、振り返って俺を見た。
「ああ、そうそう。私がいない間は、君がこの店のマスターだ。店にある物は、好きに使っていいよ」
「いや、直ぐに戻るんでしょ?」
「では後は頼んだよ、ハクノ君」
物静かな渋いオッサンといった感じのマスターが、冗談を言うなんて天変地異の前触れかな、なんて思ったのが、間違いだったのか。
マスターが外出した直後、前触れもなく店全体が激しく揺れた。
「大丈夫大丈夫。地震で慌てるのは、外人と一般ピープルな日本人。俺はよく訓練された日本人。よし、慌てナウ‼」
自分でも何を言ってるのか意味不明だが、揺れが収まると外へ出た。
「な、なんじゃこりゃぁあ!?」
拝啓、親愛なるマスター。
貴方から預かった喫茶店は、タイムスリップでもしたようです。
―――そして、現在。
『マスターさん、敵勢力の第一陣が防衛ラインに十秒後に到達します』
「了解。えっちゃん、引き続き監視及び索敵をよろしく」
『任務受領。報酬として、マスターさんのすいーつを希望します』
「生きて戻ってきたら、特性ジャンボパフェをサービスするよ!」
黒煙が空を覆い、燃え盛る世紀末な街の中、我らの牙城たる喫茶店を迫り来る敵から守る為、従業員一同で死力を尽くしていた。
「もう嫌じゃー!妾は土木系アサシンで、キャスターじゃないんじゃ!」
「諦めろ。ダブルサモンなんて適性を持ったセミ様、おめーが悪い。それよか、来るぞ!全砲門開け!!迎撃用意」
「サー、イエッサー!マスター、妾はスイーツより酒を所望するのよな」
「喫茶店に酒があるわけないだろ。秘蔵の豆で、コーヒーを淹れてやるから」
「あい分かった。ところで、うちの斬り込み隊長はどこじゃ?」
あれから幾星霜とは言い過ぎだが、何日も時が経つと同時に不定期に様々な時代、場所に喫茶店はタイムスリップを繰り返した。その旅の中で、俺は数えきれない人と出会い、別れを繰り返してきた。
中にはその時代では行く当てがなく、この喫茶店のバイトにスカウトした人もいる。
「南無天満大自在天神。仁王倶利伽羅、衝天象!行くぞ、剣豪抜刀……伊舎那、大天象!」
「「あいつ、開幕ブッパしよったぁぁああああ!!」」
『ド派手ですねぇ。で、案の定接近する敵勢力、増えました』
「うう。皆していじめる!この微妙な剣士心を傷つけて楽しいの!?」
宇宙戦争的なカオス時空で拾った、看板娘であるえっちゃん。
古代文明でヒキニートを満喫していたところ追い出された、衛生管理担当のセミ様。
二刀流(意味深)の達人にしてマジカルな剣術の達人、当店の用心棒たるマジカル☆ブシドー。
「いらっしゃいませ、お客様!」
「残念ながら、当店は亡者はお断りしておりますのよな!」
「生き返ってから出直して頂戴!」
『またのご利用、お待ちしております』
お元気ですか、マスター?俺は新しく雇った彼女らと、今日も今日とて店に押し寄せる骸骨退治に勤しんでおります。買い出しから戻って来る日が、一日でも早い事を祈っています。
追伸。帰ってきたら、ボーナス下さい。この過重労働の割に合いません。
「それでは、喫茶【アーネンエルベ】流の歓迎を喰らいやがって下さい!」
店の周りに設置した砲門が火を吹き、マジカル☆ブシドーが敵に突っ込んで首を跳ね、無線機からの報告に耳を傾けながら指示を飛ばしながら切に思う。
はあ、いつまでこの世紀末が続くのだろうか?