BLEACH -------ひねくれ者に救いを---------   作:鳥取終

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八幡の過去

極刑を言い渡されてから1週間が過ぎた。

 

極刑まで残り4日。早いようで永い1日を隙間から僅かに見える外の景色を見ながら過ごしていた。

 

「はぁ。小町怒ってるかな....」

 

この1週間、一番考えたのは妹である、小町の事だった。自分がいなくなって大丈夫だろうか、泣いてはいないだろうか。

毎日寝ることもせずに隙間からこの塔の唯一の通り道の橋を見る。

溜め息が出る。自分が正しい事をしたとは思っていない。だけど、ルキアを助けることが出来たのは嬉しい。これだけは本心だった。

 

「結局俺がしたことは自己満足だったって事か.....」

 

暗いが広々としている空間に自分が一人だけ。まるであの日のようだった。

 

----------------------70年前のような。

 

 

俺は父親と共に9番隊に所属しており父親は隊長だった。俺の憧れで誰よりも強い信念と仲間を第1に考えていた。

目は腐っていたが.....。

 

俺達9番隊は、虚が流魂街の西の下町から離れた場所に現れたと聞いて急いで出撃した。皆口を揃えて言っていた。

 

「隊長がいるから大丈夫ですね!」と。俺もそう思っていた。聞いた話では虚の数は2体、それもヒュージ・ホロウらしい。俺だけでもなんとかなるレベルだ。だが死神の力を持たない者にとって虚は脅威だ。

 

「な、に?.......」

 

西の外れに着くと異様な光景が広がっていた。

 

虚が2体なんてレベルではない。優位に二桁は越えている。今回9番隊で集まったのは俺含めて10人だ。

それに、他にも問題はある。

 

ヒュージ・ホロウが14体にメノスグランテが5体。皆の顔を見ると明らかに絶望の表情を浮かべていた。

俺だってそうだ。怖くて怖くて仕方がない。今すぐにでも帰りたい、逃げたい。でも....父親の何時もの言葉を思い出して踏みとどまる。

 

[八幡よ、男は強くならねばならん。だが強すぎる力は使い方しだいで守るべき者を傷付けてしまう。お前に守りたい者はいるか?]

 

[ははは。まだ早かったか。でもいずれ分かる。お前にも守りたい者が現れたらな-------------だから強くなれ---------------俺よりも、誰よりも]

 

9番隊の皆は逃げ出そうとする者やその場に座り込んでしまうものばかりだった。父親は真っ直ぐ虚を見据えて皆に何も言わない。いや、言えないのかもしれない。

暫く沈黙が続いたなか父親が口を開いた。

 

「皆。今まで俺の下で動いてくれてありがとう。お前達は俺にとっての誇りだ。だから、逃げてくれ」

 

「た、隊長!?」

 

「父さん?」

 

「ふぅ.....卍解。惑わせ--------------天地海神」

 

その言葉と共に父親の周りにはふわふわと水が浮かび上がり手に持っていた斬魄刀は消えていた。

 

「父さん、これって....」

 

「早く逃げろ。お前達が死ぬ必要はない、大丈夫だ、時間稼ぎくらいは出来るだろう」

 

そう言って右手をゆっくり上げた父親は一言だけ呟いた。

 

「惑いの水よ。敵を穿て--------千本の水鉄砲(炸裂砲)」

 

凄い数の水が槍のようになり虚に向かって飛んでいく。その様は天から幾千もの槍が降り注いでいるようだった。

 

これならっ!勝てると誰しもが思った。

 

だが現実はそこまで甘くなかった。

 

水の槍で倒せたのはヒュージ・ホロウが8体ほど。メノスグランテは、ほぼ無傷だ。

 

虚は今の攻撃で気がついたのか此方に向かってくる。

 

怖い。憧れだった父親の攻撃が効いていない。それだけの事実が重く体にのし掛かる。

 

メノスグランテはそれぞれ巨大な顔の前に霊力を集中し虚閃を放ってくる。5体一辺に放たれた

虚閃は大地を砕き周囲一体を吹き飛ばす。

だが俺達は無事だった。否、助けられたのだ。俺達の前には、父親が息を荒くして両手を拡げていた。

 

先程まで浮いていた水も無くなり刀を右手で握っている。

 

「がはっ.....くそが」

 

「父さん!」

 

「「隊長!」」

 

「まだいるのかよ....。はぁ.........早く逃げろって」

 

「父さんは言ったよ!男なら強くなれって!」

 

「っ!だがお前は.....」

 

「父さんは言ったよ。守りたい者を見つけろって」

 

「八幡.....」

 

「俺は見つけた。俺が守りたい者。それは--------父さんだ!」

 

不思議と体が軽い。先程まで重くて仕方なかったのに、でもこれなら.......守れる!

 

「散在する獣の骨 尖塔・紅晶・鋼鉄の車輪 動けば風 止まれば空 槍打つ音色が虚城に満ちる」

 

「待て!八幡!お前にそれはまだ早い!」

 

「波動の六十三---------------------雷吼炮!!!」

 

巨大な雷を帯びた爆砲が虚を包み込む。何体か消し飛ぶのが見えて俺はもう一度詠唱に入ろうとしたが、膝が崩れ顔から地面に倒れた。

 

「え?」

 

意識はある。

だが体が全く動かない。

声もでない。

 

何故だか分からない、でもこれだけは分かった。

 

俺ここで死ぬんだ。

 

目が虚ろになっていく。視界がボヤけて呼吸も荒くなる。

 

だがそんなとき、暖かい温もりが俺の体を抱き寄せる。

 

「八幡、こうも教えたはずだ。大きすぎる力は守りたい者も傷付けてしまう、と。それに付け足させてくれ。八幡、自分自身の事も考えて戦え。お前は一人じゃないんだ」

 

父親は泣きながら、俺に言ってくる。まるで最後の別れの言葉のように。

 

だけど俺はその言葉に返すことすらできない。体の倦怠感は増していき言葉を発しようにも言葉にならない。

 

「八幡。小町のこと任せたぞ」

 

最後の一言だった。それだけ聞いて俺は意識を手離した。

 

「さあかかってこい。父親の強さを見せてやる。俺の命をもってな」

 

「卍、解。血を喰らいて目覚めろ--------------天地海神」

 

「この水は全て俺の血だ。そしてこの技を使えば俺は死ぬ。八幡.......すまない」

 

「血の刻印-----------------血海王迎(サイオウノキバ)」

 

 

-------------

---------------------

------------------------------

 

 

「ここは.......!、父さん?」

 

俺が目を覚ますと雨が降っていた。

 

見渡すと虚の姿は無く仲間の死体ばかり。

 

俺だけ生き残ったのか?

 

「父さんは?」

 

虚がいない、それなら父さんだって生きてる筈だ。と前を見ると俺の時間は停止した。

父親は倒れていた。

あれほど強かった霊力も霊圧も今では感じられない。

 

「嘘、だろ?父さん!とう、痛っ......」

 

体を起こそうとすると体に激痛が走った。少しでも動かそうとすれば全身が痺れるような痛みに襲われて地面の上に倒れる。

 

「俺は守れなかったのか、大切な者を。初めて見つけた守りたい者を」

 

雨が顔に辺り地面に流れていく。

 

まるで俺の涙を隠してくれているように雨は降り続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

懐かしい。そう思っていると塔に向かって歩いてくる一人の姿が目にはいった。

 

「日番谷、?何でここに?」

 

日番谷は、こんな場所に来るようなやつではないので不審に思ってると塔の入り口が開いてコツコツとゆっくり足音が近付いてきた。

 

「よお。元気そうじゃねーか」

 

痩せ細り目には隈が出来項垂れている俺が元気なら大抵のやつは元気の部類に入るだろう。

 

「何のようだ?」

 

「ここ1週間の事を教えてやろうと思ってな」

 

「.....何かあったのか?」

 

「ああ」

 

日番谷の声のトーンが下がり少し霊圧も漏れている。余程の事があったのだろう。

 

「まず最初にお前の妹だが」

 

「小町に何かあったのか?」

 

俺は慌てて立ち上がろうとするが腕に付けられた手錠のせいで立ち上がれず、疲労も重なってその場に倒れる。

 

「痛っ....」

 

「大丈夫、じゃなさそーだな」

 

「俺は大丈夫だ。小町は?」

 

「ああ、お前が極刑になるって知ったら慌てて一番隊に乗り込もうとしたから俺が止めた」

 

「そうか....ありがとな」

 

「止め方は聞かねーのか?」

 

「ああ」

 

「今は俺の隊で預かってる」

 

「それじゃあ9番隊は隊長も副隊長も不在か?」

 

「いやそれはちげーよ。9番隊の隊長には東仙要が付いた」

 

「東仙要っていうと.....あの闘いが好きじゃないやつか?」

 

「ああ。だが東仙要を推した奴が気に入らねぇ」

 

「東仙要を隊長に推した奴がいるのか?」

 

「ああ。藍染だ」

 

「藍染.....」

 

藍染惣右介は、俺が唯一危険視してる人物だった。俺には分かっていた、日頃から温厚な性格をしているがそれは作り物の仮面だ。本当のあいつは、その仮面の下にいる。

 

「それに、藍染が殺された」

 

「!?どういうことだ」

 

「さあな。だが藍染は弱くねえ。そう簡単に殺されるはずがねえんだ」

 

確かにそうだ。そもそも隊長に勝てる可能性があるやつなんて、同じ隊長クラスじゃないとありえないほど差がある。

 

「なあ。日番谷」

 

「なんだ?」

 

「お前藍染の斬魄刀の名前って知ってるか?」

 

「確か...鏡花水月だったか」

 

「その能力に自分の死体を偽装することが可能だとしたら....」

 

「っ!だが藍染が自分で偽装したとしてなんの意味があるんだ?理由がないだろ」 

 

「まあな。だが用心はしたほうがいいだろ」

 

「ああ.....そうだな」

 

「他にもあるか?」

 

「尸魂界に侵入者が入ってきた」

 

「!?....虚か?」

 

「いや、一人は死神。後は人間らしい」

 

「らしい?ていうか人間が尸魂界に来るなんて可能なのか?」

 

「普通の人間には無理だろうな。誰かが教えたんだろ」

 

日番谷は疲れているのか目の下に隈が出来ていること今更気付く。

 

「でも何故だ?ルキアは、極刑を免れたんだろ?」

 

「なあ、比企谷。お前あの判断で本当に良かったと思ってるのか?」

 

「どういう意味だ?」

 

「朽木の件だ。お前が言ったことが嘘なんて誰もが気付いてる」

 

「別に嘘じゃねーよ.....」

 

「小町はどうするんだ?」

 

「..........」

 

日番谷に言われて俺は黙ることしか出来なかった。

 

「別にお前が答えたくねーなら良いいけどよ。自分を犠牲にして他人を助けて何になるんだ?」

 

「どういう意味だ?」

 

「言い方を変えるか。お前は何でそんなに自分を犠牲にしたがるんだ?」

 

日番谷の言っている意味が分からなかった。だが何故か胸が痛くなる。

 

「小町、毎晩毎晩泣いてんだぞ」

 

「..........」

 

俺はまた、答えられない。日番谷の声からは苛立ちもうかがえる。

 

「お前は、また繰り返すのか?」

 

「なにをだよ」

 

「また、守れないで終わるのか?」

 

俺は日番谷を睨み付ける、俺の父親の事件を知ってる者は多くない。

だが日番谷は一番詳しく俺の秘密を知っていた。

 

「日番谷」

 

「守るんじゃなかったのか?」

 

「守りたいさ、俺だってな。だけど....仕方ないだろうが!」

 

「仕方ない、か。今瀞霊廷内は侵入者によって騒々しくなってる。今なら出てもばれないかもな」

 

「どういう意味だ?」

 

「お前、実は出られるだろ?」

 

「.........」

 

「やっぱりな。まっそれだけだ、抜け出すなら俺が誰よりも早くお前を迷わずに殺してやるよ」

 

「日番谷.....」

 

「過去に借りがあったとしても。敵になるなら容赦はしねえ。それだけだ」

 

「日番谷、ありがとな」

 

日番谷は振り返らなかったが俺も覚悟が決まった。

あの日の事はもう繰り返さない。

 

俺は小町を守る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




技名のセンスがない?まぁ八幡の父親なので.......。
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