BLEACH -------ひねくれ者に救いを--------- 作:鳥取終
決断してからは体が嘘のように軽くなった気がしていた。脱獄囚として追われる身になるだろうが小町を泣かせるくらいなら追われる身も悪くない。
「先ずはこの鎖だな」
霊圧を封じる鎖。霊圧を封じる鎖だが...霊圧を使わなければどうだ?俺は最初そこに目をつけていた。腕力なら?だが例え更木であってもこの鎖を切ることは出来ないだろう。それなら霊圧以外の力を使えばどうか?
答えは簡単だった。
俺は人間でもない死神でもない。
化物(虚)の力に頼った。
ガダンっと空虚な部屋に音が響く。顔に付いている仮面を消して前を見る。
「さてと...てなんだこの霊圧は...更木の霊圧?何が起こってんだ」
そこまで離れていない場所で知らない霊圧と更木の霊圧がぶつかっていた。圧倒的に更木の霊圧が上だが相手の霊圧も中々だ。副隊長クラス、こいつがルキアから力を貰った人間か?そこまで考えて瞬歩で移動する。入口まで来ると知っている霊圧を感じる。
「まだいたのかよ」
「お前が出てくるのは分かってたからな」
「お前でも邪魔するなら殺すぜ、日番谷」
「斬魄刀も持たずにか?」
斬魄刀も無しに日番谷に勝てるのか。それは分からない。正直勝てないことも無いと思うが厳しい戦いにはなるだろう。
「ほら、お前の斬魄刀だ」
「は?」
日番谷から斬魄刀を投げられる。部屋に置いてあった筈の斬魄刀。どうして日番谷が?
「愛染が死んだことは話しただろ?」
「ああ」
「愛染には秘密が多過ぎる。それに雛森も様子がおかしくてな...俺は少し調べてみるつもりだ。だから頼む比企谷、俺に何かあったら雛森を助けてくれ」
頭を下げる日番谷に俺はうなづくことしか出来ない。何より出る決意をさせてくれたのは日番谷だ、それに小町の借りもある。
「俺に出来ることなんて少ないと思うけどな」
「お前の強さは分かってるつもりだ。それに俺もただでやられるつもりはねえ」
日番谷の言い方は愛染が黒だと確定しているような言い回しだった。この短時間で何かあったのか?
「じゃあな比企谷」
「ああ」
日番谷の姿が見えなくなってから俺は更木と知らない霊圧の元に向かった。ルキアが処刑されない今、どうして来たのか理由を聞かなきゃいけないと思ったからだった。
一護サイド。
「くそっ!どうして届かない!」
一護は焦っていた。白夜と同じ隊長と聞いて強いことは分かっていた。それでも無抵抗の相手に対して攻撃しても相手の体に傷を付けられないどころか自分がダメージを負っていた。
「弱え、弱えな。この程度なのか?ーーーー興醒めだ」
更木の言葉に何も言い返せずに逃げ回る事しか出来ない一護。どうすればいい!そう葛藤しながら必死に逃げるがスピードも力も相手が上。追いつかれ袈裟斬りをなんとか刀で防ぐが壁まで吹き飛ばされる。
「うっ...」
「つまらん」
その言葉で更木はその場に座り込む。まるで弱者には興味が無いと言うように。敵とすら認知されないというように。その時だった、一緒に来ていた茶渡の霊圧が消えた。いやかなり弱くなっているが死んではいない。ここで自分が殺られてしまえば全てが終わってしまう。ルキアは処刑されてしまうし、来てくれた皆んなが死んでしまう。覚悟を決めた一護の一撃が漸く座っていた更木に届いた。傷を付けられた更木は嬉しそうに笑みをこぼした。
「やりゃあ出来るじゃねーか」
比企谷サイド。
「おお、凄いな。更木の霊圧の壁を乗り越えたか」
更木は霊圧が多く、霊圧が小さい者では傷一つ付けることはできない。だが傷を付けられるという事は勝てるということでは無い。しかも更木は強い相手にこそ真価を発揮する戦闘狂だ。あのまま逃げればいいのにと思いながら横槍を入れようとすると殺気を感じて数歩後ろに下がる。
「やちるちゃんか...」
「はっちー出てこられてよかった。でもね今剣ちゃん凄く嬉しそうなの。だから邪魔しないで?」
「めんどうな...」
やちる。更木のところの副隊長で俺がもっとも戦いたく無い相手だ。正直強さの底が見えない。それに。
「小町と仲良いんだよなー」
なんだかんだ言って小町と一番仲が良いのはやちるちゃんだったりする。ルキアは二番目だ。小町と遊ぶ為によくうちにも来てるし、性格も合うのだろう。
「はっちーとは殺りたくないから、黙ってみててくれないかな?」
「断る。このままだとあいつ絶対死ぬからな」
「別に良いじゃん、はっちーには関係ない人でしょ?」
「そうもいかないんだよな、どうも今の様子も分からないしなと、そろそろ本気でヤバイな」
更木が刀を手で掴むという場面を見て慌てて地を蹴るがやちるちゃんに阻まれる。
「行かせないよ。これはまだ使わない予定だったんだけどね...出ておいで三歩剣銃」
「おいおい...」
やちるちゃんの前に毛に覆われた動物のような獣と黒い布をまとった骸骨のような二体の獣が現れた。囲むようにして位置取られ一瞬動けずに驚いてしまう。
「瞬光雷鳴」
「逃さない!っ!これは」
回避不可能の速さで相手の視力を一時的に奪うおれのオリジナル縛道。やちるちゃんの一瞬の隙を見て向かう時には胸に刀が深々と刺さった後だった。
「くそっ!間に合わなかった」
「あ?比企谷じゃねえか、丁度いい今から殺りあおうぜ。少し物足りなかった所だ」
そう言いながら眼帯を外す更木。霊圧が膨れ上がり霊圧により建物が軋み、空気が震えだす。
「更木。悪いがまだ俺の番じゃ無いみたいだ」
「あ?それはどういう、はっ良いじゃねえか!」
目の前にはいつのまにか傷が塞がり止血が終わっている少年が立っている。
「あんたがルキアを庇ってくれたっていう比企谷さんか?」
「庇ったつもりは無いけどな」
「ははっそうかよ。ルキアの言ってた通りの人みてえだ。色々話したいこともある、だけど今はこいつを倒す方が先だ!ーーーー斬月!」
お、始解まで出来るのか?
先程までとは段違いな霊圧のあがりかた。だがそれは眼帯を外した更木も同じだった。
決着は一瞬。
お互いの出せる最大の威力で勝敗は決する。
お互いの叫び声が咆哮となり空気を揺らす。霊圧は更に上がりそして。
「まさかこいつを倒すなんてな」
立っているのは少年だった。隊長の中でも強いと言われている更木を下した。更木の負けを認めた言葉と共に胸を抉られた少年も倒れる。
「よっと。絶対生き残ってまた剣ちゃんと遊んであげてね。それとはっちーもね」
俺は絶対に嫌だと思いながら更木は軽々と担ぎ建物の上に姿を一瞬で消すやちるちゃんやっぱり何者だよ、と考えながら倒れてる少年を担ぐ。
「お疲れさん」
「はあはあ...あんたはあいつよりも強いのか?」
その言葉に意味はあるのか。それは俺には分からない、ただ今言えることは格上の相手を倒したことえの賞賛であり更木と戦って生きていることに対しての奇跡を喜ぶ時だ。
「さあな。そんなことよりお前は隊長を1人倒したんだぞ?それも格上のな。誇っていいと思うぞ」
「そっか...悪い比企谷さん、少しこのまま寝かせてくれ」
「ああ」
安心しきった様子で眠る少年を抱えて移動する。更木との戦いの中で確かにルキアが死ぬと言っていた。その事実をどうしてもあいつに確かめなきゃいけない。
「たく、守るもんが増えちまったな」