第1話サルとの遭遇
~ゆの視点~
過去の世界、しかもパラレルワールドに迷い込んだ私は適当に車を走らせていた。元の世界に帰る方法は分からない、まあしばらく適当に楽しんでから考えよう。車から降りて空を見上げてそう思ってたら一つの雲が変な浮かび方をしていた、段々こっちに近づいてきている。そして雲に衝突…はしていない、私の手前10メートルくらいで見事に停止した、さながらカースタントのプロが運転する車のようである。
「おう、やっと見つけた。木村ゆのってのはアンタだな」地面から20センチほど浮かぶ雲から一匹の人間くらい大きなサルがとび降りて私に話しかけてきた。
「サ、サルが喋った!」パニクって腰を抜かす私にサルは冷静に対応する。
「まあ落ち着けよ」数分後、私はサルと普通に会話していた。このサルが言うにはそもそも地球、つまり私達が住む世界は球体であると同時に分厚いノートのページのように折り重なって存在しているモノだそうで、今の私は本来のページから外れ別のページに紛れている状態らしい、このまま私がこの世界に留まっていると次元パラドックスなる現象が発生してパラレルワールドのあっちこっちでとんでもない事が起こるらしい。彼は地球の神様からその事を聞かされたそうだ、
「でな、次元転換装置。アンタの同僚が手に入れたリモコンみたいなモノだが、地球の神様から何者かが盗んだんだ。俺は犯人確保と被害者の保護を命じられてアンタを探してたって訳、犯人?ならとっくに捕まえた。今、天界で死刑に処されたところだろう」
~沙英視点~
あれから8年後、私は本格的にプロの小説家、ゆのはOL、宮子は結婚して主婦になった。ヒロは私と一緒に暮らして家事の一切をやってくれている。家の電話がなりヒロが受話器をとる、高校の時と違って今の私は仕事中携帯の電源を切っている、だから主に担当編集者さんには固定電話に連絡してくれるように頼んである、因みに両親と智花、親しい人達には私宛の用事もヒロの携帯に連絡するように言ってあり、ヒロ本人にも承諾を得ている。電話は出版社からだった、ヒロに電話を取り次いでもらう。高校時代は編集者さんからの電話をヒロが受けた事で喧嘩もしたが今では当たり前のように受け取ってしまう、
「それで橘先生と一色先生の対談を企画してまして是非とも…」一色正和先生、私も昔から作品を愛読しているミステリー界の巨匠。青二才な私などお逢いできるだけで夢のよう。勿論一色先生のご迷惑にならなければ私にとっては願ったり叶ったりの話のですぐに承諾する、因みに私は高校の時から使っているペンネームで現在も執筆している為、今の編集者さんからはそっちの名前で呼ばれている。
~ヒロ視点~
「今日は沙英遅くなるのかしら?」沙英は出版社の企画で同じ文芸誌に連載を持つ大物作家一色正和さんと対談する事になった。今日は1人の夕食になると思い冷蔵庫の残り物で済ますつもりでいた。
携帯の着信が鳴る、沙英からだわ。なにかあったのかしら?
「ヒロ?急で悪いんだけど対談の続きを
野菜を買い物カートに積んでお肉コーナーに行くと大柄で怖い顔した人と優しそうな標準体型の2人連れの男性が沢山買い込んでいるのに出くわした。問屋さん直営のこのスーパーには飲食店を経営する人がこんな風に大量購入していくのも珍しくない、けどこのままじゃ私が買う分が売り切れてしまう。
「ちょっと待ったぁ!」ヤダつい大声出しちゃった、気がつくと私の回りに人だかりができてる(≧≦)。相手を見ると大柄な人の方がうずくまっていてもう1人は苦笑いしつつ私を見てたが
「どのくらいご入り用ですか?」紳士的に尋ねられて
「ご、500グラムほど…」私がそう答えると
「そのくらいなら問題ないですね」お肉屋の店員さんに向き合い
「すいませーん、30キロを29、5キロにしてもらえます?」お肉屋さんが私を見て一瞬笑った気がするが男性の注文にはきちんと応じる。私が必要な分だけ残しておいてくれた。
~宮子視点~
子供達を近所の公園で遊ばせてあげようと外に出る、目的地につくと早速はしゃいでブランコや砂場の回りを動き回る、我が子ながらお金のかからないので助かる。ベンチに腰掛けて2人をみていたら突然龍斗がこいでいたブランコのロープが切れて放り出される、助けようにもこの距離じゃ届かない。さっと黒い人影が現れ龍斗を抱き抱えると地面に降りてきた、格好からどっかのOLさんみたい、彼女は表情を崩さずというより鉄面皮な無表情だったが息子の命の恩人なのでお礼を述べ、龍斗にも頭をさげさせる。OLさんは一瞬だけ完全に行動停止になったと思ったら次の瞬間にはものすごいスピードで走り去り何処へともなく消えていった。きっと照れ臭かったのだろう。
野原一家どうやってだそう(ーー;)