~大輔視点~
小雨さんから電話がかかってきた、お兄さん達が例の交通事故の犯人に復讐を考えているというとんでもない話を聞かされた。小雨さんとしてはなんとしても思い止まってもらいたいので、僕にもお兄さん達を説得して欲しいと頼まれたが丁重にお断りした。
「別に犯人を見つけた訳ではないんですよね」
「そうなの。だけど復讐なんて考え自体間違ってるわ、子供の教育にも悪いし」現代地球ではよほど辺境の部族でもない限り敵討ちは不道徳とされている、法で許されている国もまずないだろう。それに当のくーちゃんはこの異世界で生き返っている。いっそ本当の事を話そうとも考えたが信じてもらえまい、大体犯人不明なのに随分大雑把な復讐計画だな。アレくーちゃん、どこ行くの?
~青井幹人被告に関する報告書~
○月×日、ヤミ金融業社に勤務する青井幹人容疑者を出資法違反等の罪で逮捕。尚、同容疑者には複数の女性から金品等を騙し取った詐欺の容疑も浮上している。
○月△日、青井容疑者は自動車を運転中、道路を横切ろうとした朱白夜さん(28才)に追突、轢き逃げした。警察は同容疑者を業務上過失致死の疑いで再逮捕した。青井容疑者は容疑を否認している。
◇月○日青井容疑者の住んでいたアパートを家宅捜索したところ入居者用の駐車場から佐藤加代子さん(27才)の所有する自動車が発見された、調べに対し佐藤さんは青井容疑者に一時的に貸してくれと頼まれたと証言している。
◇月×日、青井幹人容疑者が拘置所内で死去、死因は急性心臓麻痺によるものとみられる。
~ゴノー視点~
日が暮れてきたので馬車を停めて4人で一息ついとると鉄鉱山の脇にある獄卒用の官舎から1人の女がでてきた。ありゃ確かエドウィンにあるメシ屋でたまに一緒になる娘さんじゃ、名はビャクヤとか言ったのう。
「まあ呑みなされ」ワシは手製の酒を注いでやる、足を怪我しとるからホントは良くないんじゃが素面では話せんじゃろ。聞くとなんともやるせない話じゃった。ワシは視線を一点に向けていた。
~トロワ視点~
ビャクヤさん、いつもルカさんと意味不明な話で盛り上がってるお姉さん。でも今はなんだか寂しそう、一体どうしたの?よく見たら足から血が出てる!とにかく治療しないと!
泣いていた理由を知って私はまず驚いた、彼女もルカさんと同じ異世界から転生してきた人だったのね。そして話が進むにつれ私まで涙を流してもらい泣きした、ビャクヤさんと私は対照的だけど家族を失う辛さを経験しているのは共通している。なんとかしてあげたいわ、でも私には無理。ウン?なんとかしてあげられる人が…いたっ!
~ディーネ視点~
私にしがみついて大泣きするビャクヤ。あの、苦しいんだけど。もうちょい腕を緩めて、ヤバい×2!肋骨がミシミシいってる、背骨が折れる~!
私達はルカが元異世界人である事を聞かされた事がある、旅の途中本人が寝物語として話してくれた。まあ他人には軽々しく喋るなと念を押されたけど。
ゴノーおじさんにお酒を薦められて泣いていた訳を聞かれたビャクヤは最初言い淀んでいたがルカが自分の秘密を私達が知っていると告げるとポツポツと語りだした。
~白夜視点~
「大ちゃんこんばんはー、あっ今日は瑠華いないんだ」私はいつも通り越後屋にやってきた、夕食を摂っていると携帯の音が鳴る、電話線すら発明されていないこの世界に携帯は2つしかない。大ちゃんと私が持っているだけだ、元の世界に帰れない私の携帯は女神様の力で使えるようになっているので大ちゃん以外にはかけようがない。となれば当然大ちゃんのスマホとかいう新型の携帯ね。
「モシモシ、あっ小雨さん?」小雨お姉ちゃん?別に大ちゃんのケー番知っててもおかしくないか。
「別に犯人を見つけた訳ではないんですよね」小雨お姉ちゃんと二、三言話して携帯をしまう大ちゃん、目が合うと申し訳なさそうにお姉ちゃんから聞いた事を告げる。
ショックのあまり大ちゃんの制止も振り切って店を飛び出した、ご免なさい!ご免なさい!ご免なさい!頭の中で何度も家族に謝りただひたすら突っ走る。私のせいだ!私のせいだ!私のせいだ!足が痛くなるのも構わず自分を責めながら走り続ける。お兄ちゃんもお姉ちゃんも私の為に罪を犯そうとしている、誰でもいい!家族を私の大切な人達を助けて!やがて気の抜けた私はすっかり呆けて鉄鉱山のふもとを亡霊のように徘徊していた。
~ルカ視点~
トロワちゃん、オッサン、ディーネの視線が一斉にこっちを向く。何が言いたいかは概ね見当がついている。
「わぁーたよ‼行きゃいいんだろ!行きゃあ」俺はまたしても地球まで飛んで行くハメになった。
次回こそ、次回こそ、朱一家編完結します。報告書のくだりは実際の警察庁とは異なります。