IS インフィニット・ストラトス~妹はファントムタスク~ 作:のろいうさぎ
世界が、ある時を境に大きく変わった。
なんでも織斑 千冬があの篠ノ之 束と深い繋がりがあったらしい。
そしてつい最近、織斑 一夏がISを起動させてしまったらしい。
後者はあまり影響はなかったが問題は前者。
その出来事がきっかけで、あたしのただ静かに皆で暮らしたいという願いは………崩壊した。
織斑 千冬がISの開発者である篠ノ之 束と深い繋がりがあった事で、ISに反感を持つ人達からの制裁等からあたし達を保護するために日本政府は一時的に家族全員を保護プログラム下に置いた。
思えばそれがすべてだった。両親とは引き離され、あたし自身もどこか別の場所へ移送されそうになった。あの時、織斑 千冬も織斑 一夏もあたし達を助けてはくれなかった。ただ一人、マド姉だけがあたしを守ってくれた。
昔からそうだった。織斑 千冬も織斑 一夏も用事や剣道等でほとんど家にいなかった。ずっとあたしの相手をしてくれていたのは一番年が近かったマド姉だった。
だからあたしはマド姉が大好きだ。ちょっと厳しいけれど、最後には絶対あたしの頭を撫でてくれる。気高くて優しい自分にとっての〝唯一〟の姉。
そんな姉が、ファントムタスクという組織に入ると言った。なんでも闇から闇へまさに〝闇を背負う組織〟だそうだ。けどあたしはそれに反対なんてしなかった、常にあたしの中心はマド姉だったからだ。当然あたしもその流れで一緒にその組織に加入した。
そこで出会った、荒っぽいけれどどこか憎めないオータムさんや、どこか不思議で何より大人の魅力あふれるスコールさん。
騒がしいけれど、心地いい。静かでは無いけれど自分が本当の意味で手に入れた、ファントムタスクという〝家族〟
だからこそ、やはり許せなかった。こんな心地よさを知ってしまったからだろうか。この心地よさを自分達から奪い去ったあの二人が、どうしても許す事は出来ない。
そんな想いを胸に秘めながら、〝ファントムタスク〟として活動していたある日の事、思っても見ない情報が、あたし達の元へ飛び込んできた。
それは、〝織斑 一夏がIS学園に入学した〟という物であった。
その情報を聞いた時、あたし達姉妹の中には共通した想いが首をもたげていた。自分達から何もかもを奪い、失わせたあの苦しみを織斑 千冬にも味あわせてやる。
そのために……あたし
―――――――――殺すと決めた―――――――――
「まぁ、時期的にはこの位になるわね」
とあるホテルの一室。というかスイートルーム。そのだだっ広いリビングのソファに腰掛けながらスコールさんが端末片手に呟いた。
マド姉、オータムさんそしてあたしを含めた三人もスコールさん同様、相向かいではあるがソファに腰掛けその様子を見守っている。スコールさんが持つ端末に表示されているのは言うまでも無く〝織斑 一夏がIS学園に進学する事がほぼ決定〟という旨の情報だ。言ってみれば今はそのことについての作戦会議の様なものである。
「そりゃぁ、入試ん時に動かしたから……そうだろうな」
「しかしIS学園か………」
マド姉がう~むと唸る。唸る気持ちは分からなくはない。ようやくあの〝織斑 一夏〟と確実に接触できる機会が巡ってきたというのにその場所が事もあろうに世界中からIS操縦者が集う、警備の厳重な〝IS学園〟だとは。いくらスコールさん達が強いと言っても、ケンカを売るには相手が悪すぎる。仮に警備網を破れても、各国の専用機持ちまで出てこられたら、実力では無く数で押し切られてしまうのは目に見えている。その他にも様々な問題はあるにしても接触方法が今のあたし達には最も大きな悩みのタネであった。それでも無いよりはマシ程度にあたしも頭をひねる。
「奇襲とかは、どうですか?」
「まぁ、悪かねぇけど……」
「タイミングがそろわなければ奇襲は簡単にカウンターを食らう……。戦力差を考えれば得策とは言えんな。まぁ秋穂の意見だから尊重はしたいが」
「えへへ……」
「えへへじゃねぇよ……結局使えねぇじゃんか」
「だったら、あなたは何かあるの、オータム?」
「い、いや……ねぇけど…」
オータムさんがバツの悪そうな顔を浮かべ視線をそらす。そして全員が深いため息を漏らした。う~ん……どうしようか。こういうのを八方ふさがりとか言うのかもね。まぁそれは今は良いとしてもだ。何か案が出ないとこの話し合いは終わらないだろう。正直に言うとこういう話し合いはあまり好きじゃない。誰でもそうだと思うが答えの出ない問答ほど退屈な物はない。ほんと、どうしよう……。
にしたって、学園ねぇ……そう言えば……一応自分マド姉やスコールさん達の支援で中学は卒業してるけど、流石に高校なんてものに行けるとは思ってなかったしなぁ。それに受験シーズンなんてとうに終わっちゃってるし。まぁ自分も、機会があれば高校とかにも行きたいとか少しは思ってるけど今じゃ編入ぐらいしか――――って
編入?……編にゅ……あ!
あたしはバンっとソファとソファの前に置かれていた大理石の机をバンっと叩き、勢いよく立ちあがる。そして他の人達はそれを目を丸くして見やっていた。
「編入ですよ! それなら難なく織斑 一夏に接触できます!」
「へ、編入? 誰がだよ? あたしは制服なんてのは似合わねぇし……ギリでエムはいけそうだけどッ!?」
「ギリではない、むしろ貴様よりは似合う」
「そこかよッ!! ったく思いっきり踵でで踏みぬきやがって!!」
うん、あたしもそれ思った。とと、話しが逸れていきそうだ。とりあえずそれはそれで置いといて。
あたしが、二人から視線をそらすと、スコールさんがあたしの意見に対して興味深そうに身を乗り出していた。
「それで、分かるように説明してくれるかしら?」
「というか凄く簡単な事なんですけど」
「簡単?」
「はい、要するに学園に入れればいいわけですよね。だったら話はいたって単純。あたしが編入すればいいんです、IS学園に」
「……あぁ、なるほど。確かに簡単ね」
スコールさんは少し考えてから笑顔であたしの意見に賛同してくれた。しかし……マド姉はそうでは無かったようだ。オータムさんとの言い合いを切り上げると語気を強めて言い返してくる。
「スコール、なるほどではない! そんな危険な事を姉である私が許すと思っているのか!?」
「いーんじゃねぇの、別に悪い策じゃねぇし」
「お前は黙ってろッ!」
「お、おう……」
さっきまで言い争っていたオータムさんが一言でたじろぐ迫力。それからも本気であたしの案に反対しているのが分かる。そして心からあたしを心配してくれているのも。それは痛いほどに分かる、伝わってくる。これまでもずっとマド姉はあたしを守ってきてくれた。その背中をずっと見てきた。だから今度はあたしの番。あたし達を快く迎え入れてくれた人たちのためにも、そしてマド姉のためにも。
あたしは、怒るマド姉に向かって、真正面から、目をそらさずに言う。
「マド姉……大丈夫だよ」
「何が! 分かってるのか!? ただの学校編入とはわけが違う! 素性がバレでもしたら逃げる暇なんて無いんだぞッ」
「うん、分かってる。それにあたしの苗字今は、
「秋穂ッ!」
「……怒らないで、マド姉」
「ッ!」
「自分でも、危ない橋だなって事は理解してる。だけど……そのぐらいの事をしなきゃ……
織斑 千冬の名前にマド姉がピクっと反応する。少なくともあたし達姉妹にとって、彼女はそれほどの人物だ。そして想いも同じ。きっとあたしの考えも想いも届いてるはず。しかし、まだマド姉は不服な顔を崩そうとしなかった。というか何かに気が付きニヤッと口元を緩めている。
「確かにお前の言う事も一理ある。現状でいい案が出てこない現状ではベストな策だとも思う。しかしだ、問題が一つある」
「問題?」
「そうだ、お前には専用のISが無い。今だってオータムのを間借りしている状態だろう」
「そりゃあな、持って無いんだから仕方ねぇじゃん」
「IS学園に潜り込むにしても、自分の機体を持っていないのは流石にまずかろう?」
い、痛いところを突いてきたなぁ。マド姉の言うとおり、今のあたしに専用機はない。学園で自分がどういう立ち回りをするのかはまだ自分でも決めていないが何時での使えるISを一つ確保しておくのは確かに重要な事だろう。スコールさんもそれに賛同している。
「エムの言うことにも一理あるわね。自由に動かせるISを持っていないのは確かに痛い」
「だ、だったら、この案は没だな、いやぁ実に残念だが」
そうか、マド姉、そういう事か……。あれだけ真剣に想いを伝えたと思っていたがやはりあたしの姉はどうあがいてもこの案を廃案にしたいようだ。しかし、その思惑はスコールさんの次の一言で打ち砕かれることになった。
「だったら用意すればいんでしょう。オータム、あれ持ってきて頂戴?」
「ん、あぁ」
「……あれ? あれとはなんだ?」
「何って……ISよ?」
んなッ!?
「なにぃぃぃぃぃぃぃぃぃッ!!??」
おぉ、マド姉のこんな素っ頓狂な声は初めて聞いたかもしれない。そしてあたし自身もそんなものがある事すら知らなかった。ややあって、オータムさんが動物の牙骨の様な物が付いたキーホルダーらしきものを持って帰ってきた。そしてそれをスコールさんに手渡す。
「これだろ?」
「えぇ」
「な、なんだ、それは?」
「だからISの待機状態よ」
「そんな事は分かっている、どうしてそんなものが!?」
「オータムにとってこさせたのよ。あなたがイギリスでドンパチやってる間にね」
「な、何?」
「スコールから頼まれたんだよ。イギリスでもう一個別のところからパクッてこいってな」
「お前…!?」
「ま、とりあえず細かい事は後よ。はい秋穂ちゃん」
「あ、ありがとうございます」
あたしは差し出されたそれを反射的に受け取る。持ってみるとそれは意外に重みがあり、刃の骨のように見えたそれはスチール製の様で鈍く光を放っている。
「これが……」
「えぇ、あなたの為のIS。本当はもっと早く渡す予定だったんだけれどそういう機会にも恵まれなかったし」
「まぁなんにせよ、これでエムの言った問題も解決だな?」
「そうね、そうよね? エム?」
「……マド姉……」
あたしを含む三人の視線がマド姉に注がれる。視線に半歩ほど後ずさりしながらもまだ何か廃案に追い込む手段はないかと模索しているようだった。しかし、あたしが言った案以外に出てこない妙案とそしてその案を遂行するにあたって必要なあたしのISもここにある。この状況でいくらマド姉でも、廃案にさせられるような考えが出てくるとは思えない。そしてその考えはずばり当たっていた。
「……む……むむぅ……しかたあるまい……。分かった」
「ありがとう、マド姉!」
「ただし、条件がある」
「条件?」
「必ず定期的に、どんな形でもいい連絡を寄こせ。それが条件だ」
「なんとも軽い条件だな?」
「まぁ、良いんじゃないかしら。仲の良い姉妹らしくてね」
「だ、黙れッ!」
茶化されたマド姉は頬を赤らめてそっぽを向いてしまう。そんなマド姉に向かってあたしは笑顔で返す。マド姉はそっぽを向きながらもあたしの顔を一瞥するとどこかこそばゆそうに照れ笑いを浮かべていた。
こうしてあたしは、〝はれて〟IS学園に編入する運びとなった。まぁその……編入にあたってはスコールさん達が結構苦労してあたしの身分証を作ってくれたりして自分が出した案だというのに最後まで頼りに頼り切ってしまった。
けど、ここからは違うよ。ここからはあたしがやらなきゃいけない。
待ってなよ、織斑 千冬、織斑 一夏ッ!
……あたしが受けた苦しみを……倍以上にして味あわせてやる!
降り注ぐ春の暖かい木漏れ日の中、あたし
初めまして、のろいうさぎです。
IS小説自体は2作目ですが、前作が前書かせていただいていたサイトの実質的な閉鎖で強制打ち切り見たいになってしまいまして、新しくこちらで書かさせていただくにあたって心機一転新作を始めることになりました。
つたない文章の未熟者ですが暖かく見守っていただけると幸いです。
ではよろしくお願いいたします!