IS インフィニット・ストラトス~妹はファントムタスク~ 作:のろいうさぎ
〝ファントムタスク〟の拠点として〝家〟として、そしてISの運用、研究、データ収集を目的とした高性能潜水艦として。スコール・ミューゼルが艦長を務める〝ミルヒシュトラーゼ〟は月夜の大海原を突き進む。ステルス性能を持つ鏡面装甲が、月明かりや星ぼしの輝きを反射し、まるで艦が星の海を進んでいるかのような錯覚さえ覚えるほどに、綺麗で静かな夜。
その艦内、薄暗く明かりもついていないハンガーで1人黙々とモニターの前に座りキーボードを叩く白衣の女性の姿があった。特徴的な大きいおデコや鼻にかける小さな眼鏡。そこにいたのは凰 鐘音その人だった。しかしいつものような明るさは無くひどく冷徹な瞳と、いつに無く真剣な表情でモニターに向かい合っていた。
「……システム運用上のデータがあまりに足りていないけどそれはこっちのバックアップで補って…」
時折つぶやき資料をめくりながら一心不乱に作業を続ける鐘音。そのモニターにはとあるISの情報が映し出されいていた。
「稼動時に操縦者の生命に深刻な事態を及ぼす可能性あり……だけど仕方ないよ……」
鐘音は表情を曇らせながら、その表示を無視し強制的にシステムを書き換えていく。そして最後にトンッとエンターキーを押した。強引にエラー箇所を上書きされたシステムは処理に少し時間を有したが最後には〝Program complete〟の文字が躍った。これですべての工程は終了したことになる。鐘音は立ち上がる。これでいい。自分は何も間違ってなどいないのだ。たとえ、誰を危険にさらそうともやり遂げなければならないことがある。殺されるかもしれない、だがそれすらも仕方のないことだ。
鐘音はきっと、モニターを睨み付ける。
「…ウチは何も間違ってない」
最後にそう言い残して鐘音は〝デファイアント〟の修復作業を終了した。
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「な、なぜこんなことになってしまったのだ?」
朝から箒は、自分の席で突っ伏したまま動かなくなっていた。時折さっき言ったみたいなことを呟き、また耳まで真っ赤にして動かなくなる。箒の席は、あたしの目の前の席なのでこの行動が嫌でも目に入ってくる。あ~まぁ……そうなるのもわからなくはないんだなぁ……うん。
聞けば廊下で一夏を押し倒してさらに顔を密着させて「付き合え!」って言ったそうだ。その状況を詳しくは知らないが、箒の心中を察すれば、今すぐここから消えてなくなりたいほど恥ずかしいと言ったところだろう。更に行動だけならまだいいがその声を多数のほかの生徒に聞かれた事も事態を悪化させていた。その場にいた鈴と後からそれを知ったセシリアは、対箒作戦をなにやら共謀している様であったし渦中の一夏は、あの持ち前の鈍感さ加減をフルパワーで発揮し、「付き合えって言われたの?」っと興味津々にたずねてくる女生徒達に対して特に恥ずかしがる様子もなく「あぁ、言われたぞ」と返していた。箒にしてみれば一大決心の元に行われた覚悟ある行動だったのだろうが、一夏の鈍感さ、場所、方法、それらの要因が災いし、全てが裏目に出ていた。
何度も言うが、あたし自身一夏がどうなろうが知ったこっちゃない。どうせ最後には死ぬんだから未来の決まっているやつのことまでは気にかけたりはしないがそれ以外は別だ。
鈴はともかくとしてクラスメートとギスギスした関係になるのはあたしの任務上、そして自身に許された限られた学園生活を謳歌し、そして円滑に進めたいというあたしの思惑上、あまり良い事ととは言えない。
あたしは、深くため息をつきつつ箒に声をかける。
「ねぇ、箒さん?」
「何故だ……何故…」
「箒さんってば」
「………ん? 秋穂か……なぁ私は何か間違えただろうか」
「……ごめんその問いには全て間違ったとしか言えないよ」
「うぐぅ…」
だってねぇ……勢いに任せて言ったにしてもシチュエーションがさぁ…。
「大体、そもそもの元凶は鈴だ! 何故一夏と鈴が一緒に居たのだッ」
「それは責任転嫁というもんじゃ…」
「いいや、あいつの所為だ!!」
「う、うん……」
箒はバッと立ち上がると、あたしの両肩をがっちりとつかみ、すごい剣幕で迫ってくる。あたしは、顔をひきつらせて笑うのが精一杯であった。
一通り騒ぎ終えた所で丁度、ガラッと扉が開き織斑先生と山田先生が入ってくる。
「席に着け、私が現れたら騒ぐな、騒いだものから順に教育的指導を行う」
最近思った事なんだけれど、これって一種の強迫だよね、教育じゃなくてさ。当然のことながらそんな物誰も受けたくは無いので、喧騒が一瞬で収まり各々が席に戻っていく。そして全員が座り終えシーンとなった所で咳ばらいをして織斑先生が諸連絡を行う。まぁ内容は個人のISスーツの申し込みとかまぁあたしにとってはあまり重要な事では無かった。とは言いつつも個人用のISスーツは欲しいかも。実は今〝デファイアント〟で使っている物は学園の改良品レベルの物でデザインが少しだけ事なる程度の物だった。一応それなりにあたし用にセッティングされているとはいえ汎用品の延長ではやはり限度がある。個人用のスーツは1つ持っておいても良いのかもしれない。
そうこうしているうちに、話し手が織斑先生から山田先生へとバトンタッチしていた。
「え、では今日はですね、いきなりですが転校生をご紹介しますね、しかも2人です」
転校生? その単語に教室中が色めきだつ。あたしも別の意味で興味をそそられていた。あたしみたいな、少し特殊なケースを除けば大抵の場合、ここで言う転校生とはイコール候補生を意味するからだ。鈴がそうだったようにね。しかし、鈴の時は鐘音さんのおかげでタイミングが分かったけど、今回の転校生については何も知らされていない。もちろん今回は鐘音さん関係でも何でもないってのあるけど、スコールさん達からも特に何も言われていない。それに同一クラスに同じタイミングで2人も生徒が入ってくるのも考えてみればおかしくはないだろうか。一体どんな人物が入ってくるのやら。
一同が注目する中、ゆっくりと教室のドアが開かれる。そして現れた人物を見てクラス全員が目を見開いた。
「お、男の子!?」
誰かがそうつぶやく。それが耳に入ったのだろうか。先に入ってきたブロンドの少年はにっこりと微笑んだ。
それからはまぁその、酷い混乱だったと言うかなんというか、クラス全体が黄色い歓声に包まれ織斑先生の声でも一発では収まらないほどの盛り上がりを見せていた。まぁあたしも確かに驚いたけど、それよりもそのすぐ横で腕を組み無愛想な面で仁王立ちしている銀髪の方が気にかかる。あの雰囲気は、普通の女子生徒というわけではなさそうだった。
結局この混乱は数名の見せしめ(出席簿の角による殴打)によって収集が付き自己紹介タイムに映る。まず自己紹介をしたのは気さくそうなブロンドの貴公子だった。
「シャルル・デュノアです、まだこちらに来て日も浅く色々皆さんに、ご迷惑をおかけする事になると思いますがよろしくお願いします」
最後に見せたさわやかな笑顔に再び、女子から歓声が上がりかけるも、織斑先生の冷たい視線とちらつかせる出席簿によって数名の顔が引きつり、腰を浮かしかけていた女子の座りなおす音がそこらかしこから響く。ってか全員かい…。
にしてもデュノア……? ……確かデュノアって…
あたしが考えだそうとした時、山田先生が銀髪眼帯の少女へ自己紹介をするように促した。
「では、続いて自己紹介をお願いします」
「………」
「……あの、自己紹介を……」
「………」
「えぇと……」
「ラウラ、自己紹介だ」
「はい、教官」
「え? えぇッ?」
無視されていた事に気が付いた真耶が涙目になりながら織斑先生を見やる。織斑先生は手をかざして「後ほど」とジェスチャーすると山田先生はしゅんっとしながら引き下がる。
「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」
「………」
「………」
「それだけか?」
「はい」
「うん、まぁ良いだろう。それと私の事は敬意をこめて織斑先生と呼べ、それと山田先生を今後無視するような事があればそれ相応の処罰を科す。気をつけるように」
「分かりました」
教官……そう言えば織斑先生はしばらくドイツで軍に所属してたんだっけね。となれば会話の内容から察するにラウラはその時の部下か……。つまり軍人ね、また厄介なのが入ってきたなぁ。
あたしがぼんやりとその様子を見ていると、不意にラウラが何かに気が付き歩き出した。その行先は一夏?
ラウラはカッと歩みを止め一夏を見下ろす。その視線は一夏を軽蔑している様に冷たい物だった。少しの間一夏を睨んだラウラはおもむろに手を振りあげる。
ッ!? これはッ!! ちょっとちょっとッ、それはあたしの獲物だよ、キズものにされちゃ困るッ
あたしは机に飛び乗ると、それをドンっと蹴ってラウラへ飛ぶ。教卓と一夏の机の狭い隙間に身体をねじ込むと、そのまま着地した勢いを利用して重心を前にかけラウラの顎目がけて右アッパーを繰り出した。
「ッ!!」
「……」
ラウラは一瞬目を見開き、一夏の頬への一撃を寸でて止め、あたしもあたしで拳をラウラの顎ギリギリで止めた。
「どういうつもりだ?」
「……いや、横取りされるのもなと」
「何?」
あたし達は互いに聞こえるか聞こえないか程の声量で会話を交わす。ラウラは訝しげな表情であたしを見やるが、その雰囲気はこのままあたしに飛びかかって来てもおかしくは無かった。だが、その行動を織斑先生の声が制した。
「いい加減にしろ、今は私の時間だ。黙って席に着け。ボーデヴィッヒとデュノアはそことそこの開いている席を使え分かったな?」
「はい」
「しかし教官、こいつは――――――――痛ッ」
「織斑先生と呼べ、それと私に逆らうな。何かあるのなら聞いてやらん。とにかく私に従え。嫌でも従え良いな?」
「………ッ」
「良いな?」
「わ。分かりました」
ラウラは一夏とあたしを一瞥し鼻を鳴らすと、指定された席へ着席する。あたしもこれ以上立ってると、出席簿の角が飛んできそうだったので席へ戻る。
その様子を確認して織斑先生が、声を張り上げた。
「とにかく無用な争いだけは起こすな、ではHRを終わる。尚本日の1時限目の授業は第1アリーナで2組と合同の模擬戦闘を行う。では以上! あ、あと織斑お前はデュノアの面倒を見てやれ、同じ男同士だからな」
「あ、分かりました」
織斑先生の号令の後、誰とも話すことなくラウラが1人スタスタと第1アリーナの更衣室へと向かって歩き出す。そして一夏とシャルルも急いで講師室へと向かって走って行った。一夏達は仕方ないにしてもラウラは……。女子は基本クラスで着替えるのだがどうやらそれすらも嫌らしい。軍人さんだもんねぇ、そりゃキャピキャピ下会話が飛び交う普通の女子達のレベルで話なんてしなくないのだろう。だが流石にここまで来ると、彼女はコミ障なのだろうかと思ってしまう。ま、いっかとりあえず遅れたらまずいしあたしも着替えるとしよう。
着替え終わりクラスを出様とした時、結果的に一夏を助けた格好となったあたしに、クラスメートがそろいもそろって同じポーズで「グッジョブ!」と親指を立てていた事に軽くイラッとした。
1時限目の授業は、鈴とセシリアがラウラの事で一夏に詰め寄っていて織斑先生に叩かれた以外は普通に始まった。
「では本日より格闘射撃を含むより実戦的な訓練課程へと入る」
「はい!」
二組が一同に会すると言うのも中々壮観だねぇ。返事もいつもの倍、正直良すぎる返事も度を過ぎれば喧しいね。
「さて、それではまず、今日は戦闘を実演してもらおうか、凰そして東雲出てこい」
「え!?」
「あ、あたしですか……? 何で……」
「凰は専用機代表、東雲は汎用機代表だ」
代表と言われれば聞こえはいいが結局見世物だ。あまり気乗りはしない。鈴の方は何やら織斑先生に耳打ちされて気合を入れ直していたようだが。ちなみにそれを見ていたセシリアと箒が悔しそうに顔をゆがませていた。
鈴はすぐさまISを展開し、あたしも待機状態だった〝打鉄〟に乗り込む。
「それで織斑先生どうすればいいんですか? このばか面ポニテを力いっぱいふっ飛ばせばいいんですか? 分かりましたやります」
「ばか面ッ!? そっちだってそれなりに抜けた顔してるじゃん、アハハ、りんちゃんだよぉ~って感じで」
「今の誰の真似よッ!」
「凰さんだよ! 100パーセントの完成度でしょ」
「よしわかった。吹っ飛ばすのやめた。粉々にしてあげるわ!」
「こっちこそ袋叩きにしたげるよ」
「あーあー、お前らすこし黙れ、すぐに対戦相手は来る」
織斑先生があたし達の間に入り、仲裁する。そしてその直後空の彼方で何かがキラッと光った。それを確認した時既に光は徐々に大きくなり――――――――
「ひゃあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
一夏目がけて墜落した。
砂煙を巻き上げながら勢いが止まり、そして砂煙が晴れた時一夏は大胆にも山田先生の胸をわしづかみにして押し倒す格好となっていた。一夏はとっさに〝白式〟を展開しており山田先生は〝ラファール〟に搭乗している。しかし……新しいねうん、IS展開しての行為。きっと今アダルティな方々のトレンドになるね。……まぁ女性しか使えないからちょっと特殊なアレになるけど、ってかまぁそうなる前にあたし以外に殺されないでね。
慌てて一夏と山田先生はバッと離れる。しかしそのすぐ後に何処からともなく正確無比なレーザーが一夏を襲う。
「どわッ!? せ、セシリア!?」
「……あ、外れましたわ……」
すっごい目……何あれ。病んでるって言うのあれを? ゆらぁっと立ち上がると、うすら笑いを浮かべながらビットからレーザーを放っていく。それがまた集中砲火では無く一本一本だから余計に怖い。更にレーザーを避け続ける後ろで鈴もおもむろに〝双天牙月〟をドッキングさせ一夏めがけて投擲していた。
「鈴まで!」
一夏は初弾を避けたものの、運悪くレーザーと〝双天牙月〟のブーメラン機動が重なってしまった。
「まずッ!?」
血の気の引く一夏。しかし一夏にあたるはずであったその2つの攻撃を、山田先生が素早く起き上がり片手でライフルを持ち〝双天牙月〟を撃ち落とすと瞬時にシールドを展開してレーザーを弾いた。かくして一夏へ攻撃は当たらなかったのだが、皆一様に驚いていた。もちろん自分だってそうだ。これがあの山田先生? 信じられないなぁ……。
「山田先生は、元代表候補生だからな。この程度造作もないさ」
「まぁ……候補生どまりでしたけどね」
はぁ~、やっぱりそれなりの腕のある人物を教員として迎えてるんだなぁ。IS学園は伊達じゃないってことか。
「何をボケっとしているんだ? 準備は良いのか始めるぞ?」
「え? 始めるって……山田先生と戦うんですか?」
「2対1……数で攻めるのは好きじゃないけど……」
「安心しろ。お前たちならすぐ負ける」
「むッ……」
その言葉に鈴のみならずあたしも口をとがらせた。負けるって? こんなポンコツに? ははぁん言ってくれるじゃん。
とはいえまぁ正確な操縦テクニックを持っているのは確か。ふ~んどうしたもんか……。待てよ……ならその正確さを欠いてやれば良いのか。あたしはニヤッと笑いながら鈴を見やる。いざとなればね。元々チームワークなんてあたし達間にあるもんじゃなし……。良いでしょう。
「織斑先生」
「なんだ東雲」
「もし、可能なら勝っちゃってもいいんですよね?」
「無理だろうな」
「物は使い様ですよ?」
「?」
「ま、見ててくださいね」
なめられっぱなしじゃ終われないよ。特にこの織斑姉弟にはね。
「……まぁ良いだろう。では……はじめッ!!」
織斑先生の声と同時に鈴と山田先生がアリーナの空へと飛び立つ。しかしあたしはまだその場を動かず佇む。
動かぬあたしに、訝しげな視線が向けられる。
ははぁん、まぁそう慌てなさんなって。これからちょっとばかし面白い物見せちゃるかんね?
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晴れ渡る蒼い空。そこを飛ぶ1羽の鳥。空を統べし雄々しき羽根と鋭い眼光がその鳥が孤高の存在である事を示している。他の追随を許さない天空の王者、〝鷲〟。しかしその鷲は姿かたちこそそれであったが、どこか生気を感じ得なかった。というか身体の色からして生き物とは到底呼べる代物では無かった。
つややかなメタリックの外装、鋭い眼光の奥の小型マイクロカメラ。そして羽ばたく際に小さく聞こえるモーター音。これは、鷲の姿をした偵察機。その名も〝キングオブスカイ〟(鐘音命名)という、ファントムタスク〟の小型偵察機であった。鐘音の裏の組織ならこう言うのが無いのはおかしいと言う、それこそおかしな理由で作った物で、元は小型のリモートコントロール式の無人偵察機である。システムの一部にPICの技術を取り入れる事で、実質羽ばたかなくとも空を飛べる。羽ばたくのはそれなりにリアリティを追求した結果らしい。
それはともかくこの〝キングオブスカイ〟からもたらされた映像は、〝ミルヒシュトラーゼ〟とオータムの端末に届けられる。ちなみに、オータムが別働隊で動いているのだからこういう物が必要なのかとマドカが鐘音に聞いた事があったが、この〝キングオブスカイ〟は偵察の機能の他にも通信電波の中継役としての役割も担っており、実際オータムと〝ミルヒシュトラーゼ〟の通信は前にもましてクリアな物となっていた。
〝キングオブスカイ〟はアリーナの上空までやってくるとその場を旋回しながら映像を撮り続ける。
送られてきた映像を見ながら〝ミルヒシュトラーゼ〟艦長のスコールが呟いた。
「あら? 鐘音、そのブロンドヘアーの子をズーム出来る?」
「うん? あぁこの子だね、出来るよちょっと待って」
鐘音がパネルを操作すると、目のマイクロカメラが動きその人物を捉える。丁度上空で戦闘を行っているのを見ているため、顔まではっきりと見る事が出来た。
「……この子……転校生? こんな顔の子データにはなかったけど…」
「転校生……ふむ、まぁおかしくは無いだろう? 何処の国もIS学園には生徒を送り込みたくて必死だからな」
『大方どっかの候補生だろうさ。編入組って事はな』
「うん、まぁそれはそうだけれど……この子……男の子なのかしら?」
「ほう、男か? 織斑 一夏以外に男性操縦者が」
「でも、そんなニュースあった?」
スコールは艦長デスクのコンソールを叩き最近のニュース記事をライブラリから呼び出す。しかし、どの紙面を見ても新しい男性操縦者発見の記事は載っていない。確かにIS学園に編入するだけの事ならばそれほど大きな記事にはならないだろう。だが男性操縦者となれば話は別だ。今でも織斑 一夏がISを動かした時の異常なまでの報道過熱っぷりは記憶に新しい。極秘に編入させたのだろうか……。しかしいくらなんでも、どこのメディアにも触れられずに男性操縦者をIS学園に編入させるのは至難の業であるし、そもそもそんな事をしても、結局IS学園で公衆の面前に晒されるのであるから意味は無い……。
とすると……一体?スコールはしばらく頭をひねったが結局その理由はよく分からなかった。
スコールは鐘音にズームアウトの指示を出し再び映像を見やる。すると今度は鐘音が少し驚いた風にカメラを再度ズームさせ銀髪の少女をフレームに捉える。
「どうかしたのか、鐘音? このチビが何だと言うんだ?」
マドカはキョトンとした顔でそう訊ねるが、残りの2人の目は鋭くなっていた。
「彼女は……」
「ラウラ・ボーデヴィッヒ……」
「誰だ? そのラウラとは?」
マドカの問いかけに、鐘音はコンソールを叩いて映像脇にラウラのパーソナルデータを表示させた。
「ドイツ軍特殊部隊〝シュヴァルツェアハーゼ〟隊長。ラウラ・ボーデヴィッヒ。遺伝子操作によって生みだされた遺伝子強化試験体……通称〝アドヴァンスド〟」
「……そんな奴がIS学園に?」
「何か裏が……ありそうねぇ」
スコールがスッと目を細める。マドカとモニター越しのオータムもそれに続き映像へ目を移した。しかしそんな中、背を向けていたため誰にも気が付かれなかったが、鐘音だけはただ一人表情を曇らせる。そして本当に消え入るように小さな声で一言。
「ごめんね…」
と呟くのであった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ふ~んふふ~ん。
あたしは、鼻歌交じりに戦況を見やる。鈴の攻撃は山田先生によって巧く捌かれて先を潰されていた。なるほど、確かに強い。近接戦闘は鈴もかなりの実力者だ。それをあんないとも簡単に対応している。山田先生は鈴が放った〝龍砲〟をシールドで弾くとブレードを瞬時に展開、鈴はそれを〝双天牙月〟で、なんとか防ぐが反応がいくばか遅く、押し込まれてしまう。それでも鈴はパワーを活かしてブレードを弾き距離が開く。しかし山田先生は射撃によって鈴の行動を制限し、自由には動かせない。そんな攻防がしばらく続いた時だった。山田先生の素早い攻撃の切り替えについていけず、鈴がまともに横薙ぎのブレードを食らう。そこへ山田先生のグレネードが直撃。鈴がそのまま落下してくる。
――――――キラリーン、今だねッ!
あたしはスラスターに火を入れ一気に飛翔する。山田先生は鈴の撃墜に油断することなく身構える。ここで考えられうる攻撃はその勢いを利用した近接格闘。あたしに射撃武器がない事を知っての当然の選択。まぁそりゃねあたしの射撃センスは絶望的なもんだし、攻撃が読まれるのは仕方がない。だったらあたしはその予想の遥か上を行くだけさ。
「え!?」
山田先生があたしの行動に思わず驚きの声を上げる。なぜならあたしが、飛翔の勢いに姿勢制御用のスラスターで縦回転を加えて鈴を掴み、それを勢いのままに山田先生に
「うひゃああああぁぁぁ!?!?」
「ちょッ!?」
「止め行きますよ!」
「ぐえッ!?」
悲鳴を上げながら振り回される鈴の機体の一部がまともにぶち当たり山田先生が吹っ飛ぶ。それを見逃さずあたしは、鈴を
「きゃあぁぁッ!」
頭を縦に揺さぶった。ISのシールドバリアがあるので意識こそ手放さなかったものの頭を縦に揺さぶられた山田先生はそのまま墜落する。誰もが唖然とする中あたしだけはフフンッと得意げに笑って見せてやった。
「なんだあれは?」
「…えぇと……アイデアで勝負してみました」
「仮にもパートナーをぞんざいに扱うな!」
あれぇ……勝ったのに怒られた………
「この馬鹿ポニテぇッ!!!!」
更に鈴にまでけっ飛ばされた。
おかしいなぁ、勝ったはずなのに………
その後班に分かれてのIS実習が行われたが、あたしは何処が行けなかったのか授業の最後まで真剣に悩みっぱなしで結局その事でも織斑先生からお叱りを貰うのであった。
秋穂の模擬戦終了後の艦内
『……なぁスコール……あたしゃ、少々アイツの未来が不安になって来たぜ?』
「………姉妹だから似た者同士といえば少しはフォローになるかしら?」
「?? 今の戦闘の何処がおかしかったんだ、勝ったじゃないか?」
「ごめんなさいフォローにもならなかったわ」
意外と早く書けたぞ?
こんばんわ、のろいうさぎです。
……なんだろう凄く早く書けた気がする…内容はともかく(一番ダメ)
ラウラ・シャルロット登場回です。やはり秋穂には考えをただした所ですぐに治るような子ではありませんでした……。
まぁ山田先生戦闘は、鈴とのパートナーシップもほとんど無い段階ですからね、いくら山田先生が強いと言っても、この展開は予想外なはず。というか別にここぐらい秋穂が活躍しても良いだろうと思いまして(汗
さて、鐘音は一体何をしようとしているのか? 彼女はラウラを知っているのか? それは一体何故? 次回もお楽しみに!
では失礼したします。