IS インフィニット・ストラトス~妹はファントムタスク~   作:のろいうさぎ

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第18話~ドイツから来た殺意~

 転校1日目の全授業が終了した。ラウラは自分の持ち物を片付けながら今日あった事を思い返していた。ラウラにとって今日の授業における感想は総じて〝下らない〟だった。こんな事、今や軍の養成学校でもやっていない。必要最低限にも満たない技術の数々。こんな事をしても得られるものは何もない。更に言えばそれすらも満足にできない学園の生徒達。彼女達は千冬が教えるに足る人材では無い。そもそもこんな所に千冬がいる事自体がおかしいのだ。そう、彼女の場所はここでは無い。自分が、必ず彼女の力を充分に発揮できる所へ連れ戻して見せる。

 

 

 ラウラは強い決意の元立ち上がると、誰とあいさつを交わすことなく教室を出ようとする。その時だった。

 

 

「いやぁ、あれはその……発想の勝利だよ!」

 

 

 ラウラはふと耳に入った声が気になりその方を振り返る。凰 鈴音に詰め寄られ、苦笑いで頭をかく彼女は確か、東雲 秋穂という名前だったか。ラウラにとってクラスメメートなど気にかけるほどの事もないが、一応名前と顔は全て頭に叩き込んできていた。それはともかく、ラウラは秋穂を見つめ、少し思案する。

 

 彼女は候補生では無い。だがそれでいながらにして候補生と互角にやり合うだけの実力を持っている。そして何より、ラウラが一夏に手を挙げた時何の迷いもなく、躊躇もなく自分の顎を、つまり脳を揺らしに来ていた。寸止めを狙っていたのかは定かではないにしても、この自分がとっさの事で対処しきれなかったのも事実だ。そういう意味では秋穂はラウラにとって数少ない興味をひかれる対象であった。

 

 それに、周囲はあの攻撃は無かったと口をそろえて言うが、ラウラの見立ては違った。あれは偶然思いついたものではない。貪欲に勝利のみを求めた結果である。勝つためにはある意味手段をも選ばず自分が最後に立っている事のみを考え行動する。あの時鈴は事実上、敗北しており後は落下するだけの言ってみれば障害物。それを秋穂は使ったに過ぎない。

 

 

「東雲……秋穂」

 

 

 自分にとって最大の目的が織斑 一夏である事に変わりは無い。だが、ラウラにはこの時不思議と秋穂がいずれ目の前に〝強敵〟として立ちはだかっている様なそんな感覚を覚えていた。理由は分からない。直感というやつだ。

 

 何故そんな事を? ラウラは一瞬考えたが、すぐに思考を止める。

 気にする事は無い。邪魔する者は全て破壊する。いや……邪魔しなくとも目障りな奴は全て。自分にはそれをするだけの力がある。それでいいのだ。

 

 

 ラウラは秋穂とそして一夏の周辺の人物を一瞥して踵を返すと今度こそ教室を後にした。

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 ラウラとシャルルが転校してきて数日が経ったある日の夜、珍しい事にスコールさんから呼び出しがあった。定期連絡は基本的に自分が時間を見つけて行う事になっていたため少し驚いたが、丁度タイミングがセシリアの夕食の時間と重なっていた事もあって、あたしはベッドに腰掛けて通信に出た。

 

『……秋穂ちゃん、今大丈夫?』

「は、はい」

 

 

 実はあたしは内心かなりビクついている。何せこうして面と向かって話すのは、あの日以来なのだ。相当怒っていたから、それが数日で収まるとも思えない。あたしの意思はスコールさんを見ようと思っても無意識のうちに視線を逸らしてしまう。返事だってさっきの有様で、〝はい〟と一言、口にすれば良いだけなのにそれが詰まってしまっていた。

 

 

『秋穂ちゃん?』

「はい…」

『私がまだ怒っていると思う?』

「え、それは……」

 

 スコールさんはいきなり核心を突いてきた。けどそりゃそうだろう、これだけ露骨に視線をそらしてしまっては……。モニター越しだが流れる空気は非常に気まずい。って言うか多分こんな気持ちは自分だけなのだろうけど。

 

 

 あたしが答えに窮しているとスコールさんが不意にフフっと笑った。あたしは思わずスコールさんを見やる。何故笑って…

 

 

「あの…」

『ま、懲りたでしょ、ちょっとは? もう駄目よ軽率な行動は?』

「……あ、あたし、許して…」

『何かを学んだのならそれでいいわ。この話はここでおしまい、早速だけど本題に入るわ』

「はぁ」

 

 あたしは予想外の事に生返事を返すしかなかった。まさか、許されるなんて思ってなかったから…。けどまぁ、もう怒られないようにしよう、うん。あたしは頭を切り替えスコールさんを見やり、一言一句聞き洩らさぬように集中する。

 

 

『転校生が来たんですってね?』

「はい、シャルル・デュノアとラウラ・ボーデヴィッヒの2人です」

『デュノア? 彼はそういう名前なのね?』

「はい」

『デュノア…』

「フランスのISメーカーですよね、その名前」

『えぇ、世界シェア自体で見れば大企業だけれど、作ってるISは同第二世代の〝アラクネ〟にも劣る性能の〝ラファール・リヴァイヴ〟汎用性に富むだけに今まで使い続けられてるけど、技術革新でも起きない限り歴史の中に埋没していくISね』

 

 

 アラクネは第二世代機ではあるが、8本のPICなど、どちらかといえば第三世代寄りの機体だ。事実アメリカでは〝アラクネ〟をベースとした第三世代機の開発プランもあるらしい。一方〝ラファール・リヴァイヴ〟も第二世代機としては1つの完成系ではあるが、それゆえに次の段階へと繋がるだけの伸びしろがほとんどない。〝アラクネ〟の様にベース機アップグレードしながら第三世代機へと昇華させる事ができないため、デュノア社にとっての第三世代機とは全く別の新しい機体を作ると言う事に他ならず、資金そして技術面の遅れなどから非常に開発が難航しているらしい。

 

 

「それで彼がどうかしたんですか?」

『どうかってほどの事じゃないんだけれどね……そう彼はシャルル・デュノアって言うのね……、名前が分からなくてちょっと困ってたから』

「そうなんですか……あ、困ると言えば、もう聞いてくださいよあのドイツ人!」

『ラウラの事?』

「はい。事もあろうにあたしより先に獲物に手を出そうとするなんて思わず殴りかかっちゃいましたよ」

『何ですって?』

「え? あ!?」

 

 いや、違う違う違う! 殴りかかったけど殴っては無いし、あくまで抑止の為というか……とにかく思わずなんて言ったけど軽率な判断では無いです!

 

 あたしは慌てて、取り繕おうとするがどうやらスコールさんが気になったのはそこでは無いらしかった。

 

『彼女、織斑 一夏に手を挙げたの?』

「えぁ!? あ、あぁそこですか」

『挙げたの?』

「はい、軽蔑の眼差しって言えば良いんでしょうかね。そんな感じです」

『……秋穂ちゃん、生徒会からはどう?何か接触とかあった?』

「生徒会ですか? ないですよ?」

『だったら、そのラウラってこの狙いがはっきりするまでは、全力で注意して。分かった? 油断しない事』

「う、は、はい」

『本当に分かった!?』

「はいッ!」

 

 あたしのしどろもどろの返事に業を煮やし、鋭い言葉が飛ぶ。仕方ない事だ、前回こうやって言われててあのざまだったのだから。あたしは反射的に返事を叫び背筋を伸ばす。スコールさんはゆっくりと頷くと最後『頑張って』と言い残して通信は切れた。同じ失敗は二度しない。ラウラに注意する。油断はしない! あたしはそうしっかりと肝に銘じる。これはあたしにとって、名誉挽回の大チャンスなのだから。

 

 その後あたしはセシリアよりもかなり早くシャワーを浴びて、夕食から帰ってきたセシリアと少し談笑を楽しんだ後、床に就くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日。今日は土曜日なので学校は休みだ。ゆとり教育って素晴らしいね。まぁそれは置いといて。今日は特にやる事もないと言う事なので1組メンバーは解放されている第1アリーナで自主練をする事になった。1組メンバーと言いつつ、ちゃっかり鈴が入っているあたり彼女は抜け目ない。鈴はまだあたしのやった事に腹を立てているようで目すら合わせようとしなかった。まぁ元々そこまで仲よく接していたわけじゃないしね。

 

 

 軽い準備運動とストレッチを終えて、いざ自主練となった時に予想通りの問題が起こる。誰が何を一夏へ教えるのかという事だ。シャルルはそれを静観してる風だったがセシリア、箒、鈴は激しく火花を散らしていた。

 

 

「よろしいですか? 私は候補生なのです。つまりエリート、すなわち技術はこの中でもトップクラス。という事は私意外に効率よく教えられる人間はおりませんわ」

 

「何言ってんのあんた馬鹿じゃないの? 射撃しか脳のないあんたが一夏に何教えるってのよ! ここは近接戦闘の得意なあたしが一夏に密着指導した方が効率が良いに決まってんじゃない! それに幼馴染だし! それにセシリアあたしに負けてるじゃない、よく言えたわねッ」

 

「馬鹿はお前だ! 一夏と私の剣は同門。私が最も効率的に剣技を教えられる!」

 

 

 

 ほんと、毎度毎度良くこんな奴の為に喧嘩が出来るよ、信じらんないね。ちなみにあたしも静観派の人間だ。まぁ、そりゃ教えろって言われりゃ教えてあげるよ? 前にも言ったけど弱っちい一夏を殺した所で意味がない。強くなって、一夏も千冬も互いに何かを掴みかけるその瞬間に殺して一気に絶望を味あわせるのが一番だ。だから、ま軽いスパー程度なら教えてあげても良いけどね。あたしがそんな事を考えていると、まとまらない話に逆に一夏が焦れ始めた。ギャイギャイ自分の主張をぶつけ合う3人はまだ答えが出そうにはない。せっかくの自主練時間を無駄にするのは誰だって嫌だ。一夏はしばらく我慢していたがやがて限界が来たようで、3人の間に入って仲裁を始めた。

 

「お前ら、いい加減にしようぜ」

「一夏! 何すんのよッ どきなさいって」

「そうだぞ、お前の為を思ってやっているのだ!」

「邪魔なさらないでくださいまし!」

「だから、時間がもったいないんだって!」

「じゃあどうすんのよ!? 何か妙案でもあるわけ」

「妙案!? ……そりゃ……その……あ、ある!」

 

 

 無いな……。口から出まかせ言ってる。

 

 

「なんですの、その妙案とは」

「えぇっと……それは……だからあれだ……」

「どれだ?」

 

 

 一夏は思った通り何も考えちゃいなかった。はぁ……こいつに比べたらあたしはまだしっかりしてる方だな。スコールさんの一件で失われかけてた自尊心やらそこらをまさかこんな所で、回復するとは思ってもみなかったけど。けど本当に、これじゃいつまでたっても始まんないね。

 

 

 あたしは一夏達へ声をかけながら、おもむろに指でアリーナの砂地に線を引っ張っていく。

 

「はいはい、ちょっと皆注目、注目!」

「ん?」

「もうね、そんな事してても時間の無駄だから。ここは公平にあ・み・だ・く・じ♪ ここが一夏君ね」

 

 

 一番右側に一夏の名前を書き、その他は外れと記す。そしてあたしは、静観を決め込んでいたシャルルも呼んでそれぞれ名前を書くように促した。シャルルは呼んだ時「え?」という顔をしたが、別段嫌がっている様子でもなく名前を書き込む。それにならってセシリア・鈴・箒も続いた。そして最終的に右から〝リ〟〝ほ〟〝シ〟〝セ〟という順番で名前が並ぶ。

 

 

 あたしはその後ランダムに横線を引っ張りそして運命のあみだくじが始まった。

 

 

 

 

 

「まぁ、順当な結果だなッ」

 

 箒がやや鼻息荒く胸をはり外れた3人(実質2人)に宣言する。鈴とセシリアはギリッと奥歯を噛んだものの、納得の上での〝あみだ〟だったので文句は言わなかった。候補生としてのプライドもあるのだろう。彼女達の言動や行動はそのままその国の人間性として取られる事が多いだけに確実にマイナスイメージにつながるような行動にはそれなりに注意しているようだ。この冷静さを授業の時に出してくれればよかったねとあたしは少し思った。

 ちなみにあたしは初めから一夏のコーチとして頭数に入っておらず、シャルルも参加したのは良いが男じゃんという理由から2人とも箒の方に陣取っている。

 

 

 

「それで、一夏は何が教えてほしいの?」

「え? 俺の一存で良いのか?」

「そもそも、お前の為の練習でもあるんだぞ! トーナメント戦も近いからな、びしばし鍛えてやろう」

「まぁ、そだね。こんなかじゃ一番弱いし」

「秋穂、お前さらっと人の心にナイフぶっさすんだな」

 

 

 

 いや、事実だし。何にも嘘は言ってません。

 

 

「で、それは置いといて、一夏君は何を教えてほしいのさ? ただでさえ〝あみだ〟で時間食ってんだから早くしようよ」

「あ、あぁそうだな。今日やろうと思ってんのは………」

 

 

 一夏はそこまで言って口ごもりちらちらと箒の方を見やる。箒はその視線を受け不思議そうな眼で見つめ返した。なんだろうね? 告白じゃあるまいし何も口ごもるような会話の内容じゃあないんだけどなぁ。

 口ごもる時間が増えて行くに従い、向けられる視線にあたし達の分も加算されていく。いつの間にか、少し離れた所で見ていたセシリアと鈴の視線まで加わっている有様だ。一夏の頬に嫌な汗が流れおち、視線が泳ぐ。そしてついに一夏がその視線の猛襲に耐えかねた。

 

 

「しゃ、射撃の事なんだ!」

「……な、なに?」

「いや、だから……今日やろうと思ってたのは射撃なんだよ……俺近接武器しかねぇから、射撃の事を色々学んどこうと思って…」

「な―――――――ッ!」

 

 

 こうかはばつぐんだ。

 箒は目の前が真っ白になった。

 

 

 

 うわぁ……凄いなぁ、かなり上から一気に落とされた……。まさに天国から地獄。

 

 箒が固まっている理由はいたって簡単だ。もう説明する必要すらないのかもしれない。そして同様に一夏が言いにくそうとしていた訳も。箒はこれまで一度たりとも射撃武装を使った事がない。つまり教えようにも知識もノウハウもないのだ。だから一夏もこれを言うのは流石に箒がかわいそうだと、鈍感ながらに気が回ったのだろう。

 

 近接武器のみの一夏からのよもやの発言に、箒は言葉が出ない。それでもなんとか声を上ずらせながら一夏の意見を変えようと試みる執念は素直に称賛したいが。

 

 

「な、なにを言うんだ一夏。けっけ、剣すらきわッ極められてててないお前が射撃武器の、知識を得た所でだな…」

「でも、射撃武器の特性を知っておく事は一夏にとって有益だと思うよ、僕は」

「しゃ、シャルル! お前は黙っていろ!」

「な、一夏、射撃はまた今度にしよう、今日は私とみっちり近接戦闘のチェックを……」

「でも、今日、俺そういうつもりで来たし……」

「そ、そんな…」

 

 箒はガクッと崩れおちる。まぁシャルルの言う事、実際そうなんだよね。殴り合いや切り合いを主体とするあたし達近接格闘型(クロスファイター)にとって射撃型への対応は重要なファクターの一つだ。相手との距離をどうするのか。言ってしまえば間合いの取り方で基本と言えば基本なのだが単純故に奥深く、また単純であるが故に難しい。あたしの場合は、スラスターコントロールと体重移動を駆使して相手に初動を悟られないように一気に間合いを詰める方法を取る。この方法は防御力の高い〝打鉄〟や突進力のある〝デファイアント〟で最も有効な手段であるが、多少の被弾リスクを無視して突っ込むため、それなりの頑丈さが求められる。そう考えると、この方法は一夏に応用するのは極めて難しい。なぜならば一夏の〝白式〟は非常に燃費が悪い。自身のシールドエネルギーまでをも攻撃に転嫁するような超攻撃型の機体で無用の被弾が出ればそれだけで詰んでしまう可能性があるからだ。その事からも銃等の射撃武装の知識は格闘型は知っておいて損は無い。むしろ少し知識をかじるだけでも攻め方の幅が大きく変わり多種多様のバリエーションが持てる、言ってみれば蝦で鯛を釣るようなものなのだ。

 

 

 そんな箒の様子を見やりながら、背後から高らかな笑いが木霊した。

 

「オーホッホッ! 射撃とあれば、この私の出番の様ですわねぇ。箒さん本当に残念でしたわねぇ、心中お察しいたしますわ。ですがここから先はこのセシリアがッ!?」

「うっさいわよ、だまんなさい。必要なのは射撃+α! つまり接近出来てもその先、つまり近接戦闘で打ち合えないあんたじゃ役不足なのよ、ここは射撃も格闘も無難にこなせるあたしの出番ね!」

 

 

 鈴、人が話している時に口を挟むなとは言わないからさ、結構前からそうだったけど殴るのやめよう! セシリア鼻っ柱抑えて涙目になってんじゃん…。まぁ鐘音技師の報告書にも手が早いとは書いてあったけれどさ。

 

「り、鈴さん何なさるんですのッ」

「というわけで、これからあたしと一夏で訓練に入るわよ!」

「無視ッ!?」

 

 

 鈴お得意のスルースキルでセシリアをあしらうと鈴は、足早に一夏の元へ駆け寄ろうとする。しかしそれを肩をつかみセシリアが止める。それからはもう取っ組み合いの喧嘩になってしまう。もうこうなるとちょっとやそっとじゃ止まらない。はぁ……また無駄な時間が過ぎていく……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結局その後なんとか、喧嘩を止め鈴やセシリアの話を聞いたけれど、それで分かった事はあの2人にはコーチングの才能が皆無に等しいと言う事だけだった。だってセシリアはやたら数字ばっかで難解だし、鈴なんて「はぁ? どう射撃を避けるかですって? 気合でなんとかしなさいよ!」だよ? 気合で何とかなるなら、あたし結構良い線行ける気がするけどね。そんなこんなで練習にならず、最後の頼みの綱でシャルルに頼んだ所これが分かりやすいんだなぁ。きけばフランスの候補生なんだって。同じ候補生でも出来が違うなぁ…出来が(・・・)

 

 

 丁寧に分かりやすく語彙とかも説明しながら実践形式で教えてくれるから射撃ちんぷんかんぷんの一夏やあたしにもよく理解できた。そして更に一夏は実際にシャルルに手ほどきを受けながら実際にライフルも撃っていた。流石にあたしはやらなかったけどね。聞けば聞くほど射撃は奥深いとは思ったけれどやっぱりあたしは殴り合ってた方がいいや。

 

 

 そうして、自主練習も終わり皆が引き上げようとしていたその時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――ッ! 凰さん!オルコットさんッ! 東雲さん達を!」

「ええ!」

「お任せをッ!」

 

 言うが早いか、シャルルはIS〝ラファール・リヴァイヴ〟を展開鈴とセシリアもあたし達の前でISを展開し素早くシールドを張った。そしてその直後あたし達を爆発が襲う。

 

シャルル、セシリアそして鈴、この3枚の盾のおかげで生身だった、あたしと一夏、箒にけがはなかったものの、この攻撃……そして狙い、シールドが間に合わなければ死傷者が出ていたかもしれないレベル。誰だよこんな馬鹿げた攻撃すんのはッ!

 

 

 

 

 

 爆煙が晴れていき、煙の合間から黒い装甲を持つISがちらちらと視界に入ってくる。黒いIS!? まさかシュメルツッ!?

 

 だが、その予想は大外れだった。装甲は確かに黒だったが、鋭利な刃物の様な鋭い指先、そして両手首付近から形成されるプラズマ手刀、飾り気は無いが見るからにいかつい重厚感のある脚部、そして今あたし達に向けて放たれた方の大型レールガンのマズルは放熱し白い煙を上げている。そしてそのISを駆る人物は冷酷な瞳でこちらを見下ろしていた。

 

 

 ラウラ・ボーデヴィッヒッ! 

 

 

 

「大丈夫、あんた達!?」

「うん、あたし達は大丈夫だよ、箒さんも一夏君も大丈夫だよね?」

「あぁ」

「問題ない」

 

 

 鈴はそれを聞いてほっとしながらも、すぐに表情を険しくしラウラに向かって声を荒げた。

 

「あんた、どういうつもりよッ!」

「何がだ?」

「何がって、一歩遅れていたら死人が出る所でしたのよッ!」

「だから何だと言う? むしろそのつもりで撃ったのだがな」

「何ですって……ッ!」

 

 

 

 ラウラは視線と同様の絶対零度の声で言うと再びレールガンを構える。だがそこへシャルルのマシンガンが着弾する。

 

「えぇいッ」

「まだまだッ」

 

 シャルルは次々に武装を切り替えながらラウラへ銃撃の猛攻を仕掛ける。シャルルは流石に周囲に他の生徒もいるので本気では無いものの、それでも驚くほどに精密でそして何より武装の切り替えが異様に早かった。

 

 これには射撃型のセシリアも、〝スターライトmkⅢ〟のスコープ越しに感嘆の声を上げ、鈴もまたその様子を見て驚いていた。

 

 

「構えてから打つまでの動作が恐ろしく早いですわね」

「えぇ、あそこまで変幻自在に武装を変えられるのなら、あんだけ武器を搭載してても使いきれるし、何より武装を色んなところにつけなくて良いから機動力のある高火力の機体を体現できる。デュノアのテクニックあっての事だとしても、結構合理的な機体じゃない」

 

 

 そうか、そういう事か。なんで彼が専用機を使わないのか、専用のカスタム機なのかようやく分かった。要するに必要ないんだ。汎用機のカスタムレベルの機体さえあればシャルルは、高い次元でその機体を使いこなし専用機とも互角に渡り合えるだけの能力があるんだ。資金的にも問題は多分あるんだろうけど、この方法なら専用機を作るよりもに安価に専用機に比肩できる。最も操縦者の技術頼みな部分は多いので、流石にこれをどの操縦者にもやれと言うのは酷であろうが。

 

 

「うるさいハエだッ」

 

 

 ラウラは、自身のISの装甲の厚みを活かし、周囲への影響を考え威力が低めの武装を選びながら戦うシャルルへと突進する。

 

「っく! 強引なッ」

「所詮、フランスごときのアンティークでは私は止められんという事だ!」

 

 ラウラはプラズマブレードを構えるとシャルルの首をためらいも無く狙う。シャルルもシャルルで自身の近接ブレードを抜き放ちプラズマブレードを払うと瞬時にショットガンをコールし近距離で炸裂させた。この距離ならば流れ弾の心配もない、そう判断したのだろう。

 

 

「ぐぅあッ!」

「アンティークでもなかなかやるでしょ?」

「き、貴様ッ!!」

 

 ショットガンを受け、弾かれたラウラが再びシャルルへと迫る。そして2人の刃がぶつかり合い火花を散らした時だった。

 

 

 

 

『そこ! 一体何をしている!? 学年、クラス、出席番号を言え!』

 

 

 スピーカーが音割れするほどの声が突如アリーナに響く。どうやら、騒ぎを聞きつけた教員だろう。

 

 

「……教員か、時間切れという事だな」

「命拾いしたね」

「ほざけ、雑魚が」

 

 ラウラはISを待機状態に戻すと、あたし達を一睨みすると踵を返した。一同が胸をなでおろそうとした時ラウラを一夏が呼びとめた。

 

 

「待てよ。理由ぐらい聞かせろよな」

「理由?」

「そうだ、お前自己紹介ん時も俺になんかからんできたよな? 今回も俺がらみか?」

 

 

 ラウラは半身こちらを振り返ると一夏を見やる。白銀の髪の間から垣間見えるその眼には激しい感情が渦巻いている。それを見た鈴が思わず一夏を制した。

 

「ちょっと、一夏やめときなさいよ! 教員に目を付けられてるのよ! これ以上のもめごとは不味いって」

「そうですわ、ひとまずここは冷静に事を運びましょう。理由など後から考えればよい事ですし」

「いや、ダメだ! あの野郎、俺を狙ってるに決まってるんだ。それなのに皆まで巻き込みやがって」

「落ち着け一夏! 無事だったのだから良いだろう!  ラウラ・ボーデヴィッヒお前もとっとと消えろ、貴様は争いの種だ!」

「どいてくれ箒! お前は俺を狙ってんだろ! なんで箒達まで巻き添えにしようとするんだ!」

 

 3人がかりで一夏を止めにかかるが、シャルルは厳しい表情のままその様子を見守っていた。というよりも、シャルルはラウラの動きを注意深く観察し不穏な動きを察すればすぐに動き出そうと身構えているようであった。そしてあたしは、鈴達の言う事は最もだと思いながらも、あえて何も言わない。

 

 そもそも初めからラウラになにかを言うつもりはなかった。依然下手な自分の挑発で痛い目を見ているだけにそのあたりはしっかりと学習している。ただ今回は、偶然にも一夏があたしの考えを代弁してくれた。そのおかげで、労せずして彼女が一夏を狙う理由がはっきりするかもしれない。それは知っておいて有益な情報の1つにもなるし、その情報の内容いかんでは今度取るべき対応も変わってくる。一夏を殺すのはあたしの役目だ。同じく一夏を狙っているのであればその理由つまり動機は何なのか、無視できるのかできないのか、そこをはっきりとさせておきたい。

 

 まぁ、こんな場所で人目憚らず一夏を消しに来るぐらいだから相当の物なのだろうけど。

 

 

 ラウラは沈黙を保っていたが、やがてフッ笑ったかと思うと口を開いた。

 

 

「何故……か?」

「あぁ、理由を言え!」

「理由、良いだろう」

 

 

 

 ラウラはこちらを再び振り返ると、今まで以上に目じりを釣りあげそして静かな口調で、だが底冷えするような冷たさと、鳥肌が立つ程の恐怖、そして触れたもの全てを切り刻む鋭利な刃物のごとき殺意を込めて言い放った。

 

 

 

 

 

 

 

「理由それは――――――――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――――――――――私の〝全て〟を貴様が壊しそして奪い去ったからだッ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




こんばんは、のろいうさぎです。

相変わらずレポートをひぃひぃ言いながら頑張ってます。

さて第18話。ラウラの理由シーンは突如ラウラが秋穂達を襲ったというストーリーの都合上最後の締めの部分に持って来させてもらいました。丁度終わりかたとしては個人的に綺麗だと思ったので。そう言えば前回のあとがきで鐘音との関係をほのめかしときながら今回全然触れてない(汗!
一応ここに書いてある事は、その話でのポイントをある程度まとめているだけですので参考程度にお読みください


さて、ラウラが感じた秋穂への感覚とは? そしてラウラのいう「全て」とは一体何か!?
次回もお楽しみに!

それでは失礼いたします。
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