IS インフィニット・ストラトス~妹はファントムタスク~   作:のろいうさぎ

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第1話~転校?編入? IS学園~

 春風が舞う中、駅でモノレールを待つ。あたしは入学が決まった翌日に送られてきた真新しい制服に身を包み、寮生活に必要な私服やら何やらを入れ込んだバッグを肩に担いで、思惑を持ちながらもこれから始まる自身初めての高校生活に静かに高揚していた。

 

 実質目的は一つだ。織斑 一夏に接触し最終的に始末する。しかし、それを達成する事さえできればその過程で何をしようとも構わない。友人を作ろうが、その友人達と遊ぼうが、一高校生らしく振る舞おうが。ファントムタスクでの生活も楽しかったが、学園生活という物はいつになっても楽しみな物である。

 

 ちなみにっておくが、自分は一応織斑家では四女にあたる。一番上が織斑 千冬でその下がマド姉、その下に織斑 一夏が居てあたしがいる。四女といっても織斑 一夏とは同い年。断っておくが双子ではない、彼が生まれた同じ年の後半に生まれたというだけで。

 

 

 まぁ自分の血縁関係は、良いのだが。それにしても、モノレールがくる気配が一向にない。あたしはホームから若干身を乗り出しながらレールの先を見やるがモノレールどころかモノレールの走行音すら聞こえてこなかった。別に駅の電光掲示板に運休の情報は出ていないし何よりこの心地よい風吹け抜ける快晴の青空だ。運休になる要素が無かった。

 

 あたしがまだかまだかとモノレールを待っている時ポケットに入っていた携帯電話がバイブと共に着信を告げる。

 

 pipipipi……

 

「ん……マド姉??」

 

 あたしは着信を確認して携帯電話を開き通話ボタンを押す。

 

「はい、もしもし?」

『あぁ、秋穂。お前今どこにいる?』

「どこって駅だよ、モノレールの」

『何!? おい、オータム時刻表持ってこい!』

『あぁ!? なんであたしがんなこと―――』

『つべこべ言わず持ってこい!! 妹の一大事だッ!!』

『わ、分かったよ!……ったく』

 

 

 ……いや、別に一大事ってわけでも…ただモノレールが遅れてるだけだし。そんなあたしの心の声等届く訳も無く電話の向こうでドサッと言う音がする。おそらくオータムさんがマド姉に時刻表の本を手渡したのだろう。

 

『えぇと、今が……8時12分だから………おかしいな。9分のモノレールがあるはずだが』

「多分それが遅れてるんだと思うよ。運休情報は書いてないから」

『そうか』

「けどまぁ、良いよ別に少しの遅刻ぐらいなんて事―――『いやダメだ』―――え?」

 

 凄く短く、きっぱりと否定されてしまった。別に良いじゃん……ちょっとぐらい。しかしマド姉はあたしのそんな甘い考えを許してはくれなかった。 

『いくら思惑があろうと、お前は学生だ。そういう時間をしっかり守れないのはいかんぞ?』

「だけどモノレール来ないんじゃどうしようもないし」

『他に交通手段はないのか?』

「基本モノレールだね。学園は海に突き出した人工島の上に建ってるから」

『ふぅむ……』

 

 

 

 マド姉が電話の向こうで口ごもる。だからどう考えたって無理だって。はぁ、マド姉って変なところで律儀というか、なんというか。

とにかくどうしようもないのだから、黙ってモノレールを待つしかない。

 

「とりあえず、このままモノレール待ってみるよ。じゃあね、切るから」

『あ、待て……そうだ、お前泳げ』

「はぁ?」

 

 いまなんて言ったの?? 泳ぐ?? 誰が??

 

『はぁ? ではない。泳げばすぐだろう!』

「この距離をあたしが泳ぐの!?」

『大丈夫だやれる! お前ならばな!』

「その根拠は?」

『お前は、私の妹だ!』

「なんかそれ今は凄く不安ッ!!」

 

 

 根拠が根拠になっていないどころかその根拠の所為で余計に不安になってしまう。そもそもここから学園まで少なくとも10キロメートル以上はある。自分は泳ぎは苦手ではないにしても遠泳が特技でも無ければそれほど体力に自信があるわけでもない。はっきり言おう、いや言わなくてもいい。無理だッ!

 

 

『大丈夫だ、なんとかなる!』

「待って、本気で言ってんの!?」

『冗談で言うか!』

「そこは冗談で言って―――――ん?」

 

 マド姉にオーバーリアクションで言い返した時、視線の端に何かが写る。それは水面を疾走する小さな船だった。

 

 ……船か……。あたしは、もう一度レールの先を見やる。まだモノレールはくる気配を見せない。既に時間は30分を回ろうとしている。このままでは朝礼どころか1限目にも間に合わないだろう。流石に〝ちょっとの遅刻〟では済まないだろう。

 ……仕方が無い……まぁ緊急事態だと言えばなんとかなるかな?

 

 

『おい、秋穂聞いてるのか、秋穂?』

「あ、マド姉、あたし海から行くよ」

『お、泳ぐ気になったか!?』

「いや、泳ぎはしないけど、とにかく海から行ってみる、じゃそういうことで!」

『泳がない?……どういう――――』

 

 あたしは、マド姉が言い終わる前に携帯の電源を切ると改札を勢いよく飛び出す。そしてお手洗いに駆け込み、持っていたバッグから私服を適当にとりだしそれに着替える。

 パーカーとデニム……これならいいかな。そして着替え終わるとモノレールがある地区を下ったところの小さなマリーナを目指し駆けだした。

 そこへと続く坂を下りながらあたしはマリーナの様子を見やる。入口に警備員はいるけどガード自体は固くないね。

 

 

 あたしはマリーナの入口までやってきて、物陰から様子を伺う。なるほど、あの警備員にパスを見せなきゃいけないのか。けどそこをかいくぐってしまえば後はなんとかなりそうだねぇ、やっぱり遠目から見ても分かったように警備は固くない。さてどうかいくぐろうか―――――おやぁ?

 

 

 

 あたしが様子を伺っていると警備員の元へ、中年ぐらいの夫婦が姿を現した。あたしはその会話に聞き耳を立てる。

 

「ようこそ、今日もお元気そうで」

「あぁ、元気だよ、私はいつでもね。それに良い天気にも恵まれて海も穏やかだからね」

「この人ったら、先週も来たのにまた海へ行きたいだなんていう物だから」

「ですが奥さんも、ついてこられているという事はまんざらでもないのでしょう?」

「まぁ、それはねぇ。私も海は好きですから」

「それはそうと、例の整備はどうなったかね?」

「あ、確認してみますので先に船の方へどうぞ、すぐに係の者に行かせますよ。後こちらパスです」

「ありがとう、じゃあ頼んだよ」

 

 

 

……ふふん~なるほどね♪

 

 

 

 

 

 あたしは、パスを受け取りマリーナへ入っていく中年夫婦を見ながら、不敵な笑みを浮かべつつその場を後にするのだった。

 

 

 

「あの、すいません」

「ん? 君は?」

 

 グレーのツナギと赤い帽子を目深にかぶったあたしは、先ほどの警備員に声をかける。ちなみにこの服は自分がISを整備するように持ってきた物だった。それがこんなところで役に立つとは思わなかったが。ちなみに工具箱だけは無かったので、近場に合った整備工場から拝借した。まぁ、後で返せば大体許されるだろう。……多分。それにだ拝借したのは箱だけで中身は全て置いてきたのだ、とりあえず箱ぐらい許してほしい。

 そんなあたしの姿を見て警備員は当然のことながら怪訝な表情を浮かべていた。

 

 

 

「あたし、船の整備に来たものなんですけど」

「整備? はてそんな連絡は来ていないが…」

「あれぇ……おかしいですね。さっき入って行かれたご夫婦の船の整備を頼まれてたはずなんですけど」

「あのご夫婦の? それならさっき整備は昨日終了したと連絡を受けたが」

 

 っく、終わってたのか……まぁいいや。言い様はいくらでもあるからね。

 

「実は、ちょっと不手際が発覚しまして、あたしがその再整備を頼まれたんですよ」

「ふ、不手際? 本当かいそりゃ」

「えぇ」

「……ま、まぁ、専門家(プロ)がそういうのならそうなのだろうね、しかし……あまり見ない顔だけど…」

「最近入社したんです。腕は確かですから」

「そうかい、まぁ……いいよ足もとに気を付けてね」

 

 

 ははん♪ ざっとこんなもんよ。あたしは難なくマリーナへ入り込む。しかも堂々と正面からね。にしてもこの警備員もかわいそうに、これでクビかと思うといたたまれない気持ちになるがこちらもこちらで、手段等選んでいられないのだ。あたしは、見えない位置で警備員に手を合わせるとあの中年夫婦を探す。ややあってあたしは中年夫婦を見つけた。どうやら中年夫婦が所有しているボートはオープンデッキのランナバウトボートのようだ。エンジンもそれなりに大きい。速力も充分だろう。

 さぁて、仕上げ仕上げ♪

 

 

「すいません、昨日整備した整備士の関係者なんですけど」

「うん? あぁ、あれはもう終わったんじゃないのかね?」

「あぁ、それがですねちょっと不手際が見つかりまして」

「不手際だって? 一体どこに…」

 

 

 ど、何処に!? えぇと……何処……ひとまずありそうなところを…

 

「えぇと、く、駆動系ですね、エンジンです」

「エンジン? でも昨日見てもらったのは(ラダー)のはずじゃあ…」

「あ、だ、だだから、その時に不調を感じたらしくて、今日改めてあたしが来たというわけで」

「しかし、整備だとしても少し若すぎる様な」

「入社したての新人なんですよ、それでも直せるぐらい簡単なんで大丈夫です! ち、ちゃちゃっと終わらせちゃいますから!」

 

 あたしは半ば強引に意見を押し通し船に乗り込みエンジン周りに移動する。といっても当然だが、整備をするわけじゃない。適当にエンジン回りを確認してあたしは中年夫婦を振り返る。

 

「とりあえず、キー貸していただけますか?」

「あ、あぁ…」

「どうも、あ、離れててくださいね。いまから少しエンジンかけますから」

「かけるだけだろう? なぜ離れる必要が…」

「良いから下がってくださいね、でないと……」

 

 

 

 中年夫婦が後退したのを確認するとあたしはキーをシリンダーに差し込みイグニッションまで一気に回す。火が入りマリーナにエンジンサウンドが木霊する。エンジンは快調そのものだった。

 

 

「エンジンの調子はもうもどりましたね」

「そうか、ではそろそろ……」

「そうですね、そろそろ…」

「ん?」

「この船頂いてきますね!」

 

 

 あたしはノッチをバックに入れ急後退させると、桟橋から離れた事を確認して今度は一気にノッチを全開に叩きこみ旋回しながら方向転換。水しぶきを中年夫婦に浴びせながら船はマリーナの外を目指す。

 

 

「どうも~、これ後で返しに来るんで~!」

「……え!? あ、待ちたまえ!」

「こっちも結構ギリギリなんです~!!」

 

 

 何が起きたのか把握するまで時間がかかったのか、一瞬呆けていた中年夫婦が声を張り上げるが時すでに遅し。既にあたしの耳にはボートのエンジン音と風きり音位しか聞こえてはいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ボートをしばらく走らせていると、山肌の陰から大きな建物が見えてくる。それが何なのかはもはや考えるまでも無かった。中心に巨大な塔がそびえその周りを校舎と6つのアリーナが囲う。IS学園。あそこに、織斑 一夏がいる。そう考えると自然と顔が険しくなってくる。必ず……あたしが……ッ!あたしはしばらくその表情のままIS学園を睨み続けていた。

 

 

 

 IS学園の人工島の適当な場所にボートを止め草陰で制服に着替えなおすと、コンクリートで固められた外壁をよじ登る。そして丁度登りきったところはIS学園側のモノレール駅の前だった。駅を見やるとそこにはモノレールが。しかしどうにも動いているようには見えなかった。そして駅の改札前には〝保守点検中〟の文字が。

 

 ……点検中なら書いといてよ…。そんな突っ込みも学園にと居ら得ず到着できたからこそ行える。ひとまずあたしは学園の校門前へと急いだ。

 もうすでに校門周辺には人の気配はなかった。どうやら自分は遅刻してしまったのは確実らしい。だが、モノレールを持ていたらそれよりも遅れていた事は確実だ。それを思うとやはり船を拝借するという自分の考えは中々のものだったと自画自賛してしまう。

 

 あたしは下駄箱で上履きに履き替えると、入学案内に書かれていた〝校内総合受付〟を目指す。正直これに見取り図が付いていなければ迷っていただろう。なにせこの学園広すぎる…。これからここの場所全てを頭に叩き込んでいかなければならないと思うと軽くめまいがするほどだった。受付に着くとそこにはいかにも学校の事務員さん風の眼鏡をかけたセミロングの女性が座っていた。

 

「あの、すいません。今日からIS学園編入の東雲 秋穂ですけど。これ書類です」

「あ、編入生さんですか。はい書類の方見せていただきますね」

 

 女性が書類を確認する間、あたしは少し周りを観察する。今あたしが居るロビーは上まで吹き抜けになっていて、その周囲を囲うように上層階の廊下が配置されている。しかし元々吹き抜けの大きさがかなりのものなので大きく開かれた天窓からまぶしい日差しが降り注ぎ電気を付ける必要のない程の光量を確保している。近未来的というかなんというか。まず間違いなく、世界的に見てもここまで先進的な学園は他にはないだろう。それがロビー一つ見ただけで理解できる。

 

 

 あたしが学園の大きさにやや圧倒されていると、事務員の女性が学生証を手に話しかけてくる。

 

「はい、書類は確かに。ではこれが学生証ですね。寮の部屋割は事前に聞かれてます?」

「いえ、その辺は……まだ」

「そうですか……東雲さんクラスは……あぁ、1組……。じゃあ担任の先生に聞かれた方が早いですね。ひとまず放課後まではそっちの大きいバッグはお預かりしますね」

「え、あぁ…はい」

 

 担任の先生が何か……?? どうして寮と担任が関係してくるんだろうか。あたしは頭に疑問符を浮かべながらバッグを手渡した。

 

「とりあえず、もう朝礼が始まってしまっていて担当教員もクラスへ行かれてしまっていますので、担任へ連絡を入れ次第私がご案内します。少しお待ちくださいね」

「分かりました」

 

 

 少しと言ったがその女性はすぐに連絡を付けあたしを先導していく。ロビーから少し歩いたところにある階段を上り2階へ。その後3つほど教室を通り過ぎ、一番校舎の端の教室の前で女性は歩みを止める。ここがあたしの教室……1年1組か。

 

 事務の女性が教室のドアを少し開けつつ、中とコンタクトを取る。そしてあたしに向かって笑顔で手招きをした。

 

 さて、色んな意味での〝学園生活〟の幕開けか…ッ!

 

 あたしは深呼吸をすると、ゆっくりと一歩足を踏み出した。

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 あぁぁ……眠ぃ……。俺、織斑 一夏は、勝手に落ちてくる瞼と必死に格闘していた。今寝たらそれこそ、朝礼終わりまでどころか〝永眠〟である。なぜならこのクラスの担任が俺の姉であり、世界最強のIS操縦者〝織斑 千冬〟だから。私生活は正直言ってゴミ以下のレベルだがそれ以外は、え、何?人間なのあなたレベルの超人だ。そんな人物の前で寝る時点で、処刑台に自ら首を突っ込む様なものである。

 もちろん、俺がここまで眠いのには理由がある。それは寮の部屋が、俺の幼馴染 篠ノ之 箒と相部屋である事や、俺を男と本当に分かっているのかと言いたくなるほど他の女子生徒達が寮で無防備な事、そしてなんつっても俺以外の男が当然だが居ないという事がただでさえ新天地での暮らしに慣れていない身体や精神にある意味負担を強いている。簡単にいえば、〝女子が気になって眠れない〟ということだ。別に好きか嫌いかじゃない。男として当然の思いであり考えであり。そういう事もあって、ここ最近ぐっすり眠れていない。

 

 昨日だって、部屋に帰ったらシャワーを浴びて出てきた箒とはち合わせるという、部屋決め初日に合った出来事を繰り返し、20分ぐらい修羅と化した箒の木刀を避け続けるというリアルホラーを味わった。そこからなんてぐっすり眠れるわけがない。

 

 とにかく、そんなこんなで、俺は今誰も知らないところである意味命をかけた死闘を演じている。

 

 

 そんな俺に気づいているのか気づいていないのか分からないが千冬姉は今、一通り連絡事項を言い終え、副担任の山田真耶先制が入れ替わるように教壇へ上がる。

 あぁ………聞きそびれた連絡事項、後で箒に聞いとかないとな…。

 俺はその後も、結局連絡事項をまともに聞き取れてはいなかった。

 

 

 

 

 しかし、そんな俺の眠気を端末で何やら連絡を受け、ついさっき事務の人と話しをしていた千冬姉の一言が吹き飛ばす。千冬姉はタイミングを見計らい山田先生の話の合間に制止を駆け自分の言葉を滑り込ませた。。

 

「山田君少しいいかな?」

「はい?」

「すまない。山田先生の話の途中だが諸君に伝えねばならん事がある。たった今、本日付でこのクラスに編入する生徒が到着した」

「え? ……織斑先生それって……」

 

 

 クラスの誰かが思わず言葉をこぼす。編入というが要は転校生だ。

 寝耳に水の話しにクラス全体がざわめく。このクラスに入ってくるのは良いが、こんな変なタイミングに…?

 まだ入学式を終えて一週間も経っていない。そんな時期に一体誰だ?

 

 皆が同様の疑問を持っているであろう中、千冬姉は声を上げた生徒に答える形で話しを進める。

 

「そうだ、まぁ転校生だな。訳あって学園の入試に間にあわなかったらしいが1人入学拒否が出た関係で滑り込み合格したそうだ」

「なるほど…」

 

 滑り込みか……。まぁどんな訳あってかは知らないが、転校生。出来れば出来ればッ! 可能性はほとんどゼロに近いけど男であってくれ!俺にひとまず安らげる空間をッ!

 

「別に言うほどの事でもないのだが当然、女だぞ」

 

 ……俺、轟沈…。

 

「まぁ、ここで誰が来るだのどんな人物だのを議論していても仕方が無い。東雲(しののめ)! 入って来い」

「は~い」

 

 どこか抜けたような声が廊下から聞こえ、ゆっくりと引き戸の扉が開かれる。

 現れたのは、ブラウンのポニーテールにやや釣り目ではあるものの全体的にクリッとした大きく澄んだ蒼い瞳を持つ160cm半ばの少女だった。IS学園の制服に身を包み紺色のハイソックスを履いている。その少女は、千冬姉の隣まで歩み寄ると俺達の方を見やる。

 

「ッ!?」

「ん?」

 

 なんだ? 俺の顔を見て一瞬驚いた様な……?

 

「どうした?」

「あ、いえ大丈夫です。えぇと、東雲 秋穂です。よろしくお願いします」

 

 千冬姉が不思議そうに声をかけると彼女は少し慌てながらもペコリッと頭を下げ名前を名乗る。そして千冬姉を一瞥しその表情からまだもう少し自己紹介を話せると踏んだ様で再度俺達の方へ向き直る。

 

「名前から分かると思いますけど、日本人で別に候補生とかじゃないので専用機とかも〝現時点じゃ〟持ってません。IS学園には優秀なIS操縦者の方々がみえるとお伺いしていますし少しでもそういう方々から、何かを学んでいければなと思ってます……あの以上です」

 

 何処からともなく、通例的といってはおかしいが拍手が起こり、千冬姉が秋穂に座る席を指示する。そこは篠ノ之⇒東雲の名前順なのか分からないが箒のすぐ後ろの席だった。秋穂は箒に人懐こい笑顔を見せながら着席した。箒もその様子を見ながら微笑みかけている。正直性格が性格だからどうかなとも思ったが同性同士は意外と初対面でもうまくいくらしい。その様子を見届けた千冬姉は、一度頷くと今日の朝礼を切り上げた。

 

 転校生の件もあり、なんとかSHRを寝ずに切り抜けた俺だったが、結局その後の授業で爆睡してしまい結果的に千冬姉に放課後、数発の出席簿スラッシャーを頭部にクリーンヒットされるのであった。

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 1限目の授業が終わった後の休み時間は、想像通りの質問攻めにあった。だがそれも昼休みを経て午後の授業に移るにつれてあたしを囲う人数は落ち着いていき、放課後ともなると逆にあたしから話す相手を選べる程になっていた。

 にしても……教室に入った時は一瞬驚いたよ。まさか……こんなに早く織斑 一夏と接触できるなんてね。それに……織斑 千冬も。

 

 しかもあたしの担任になるとは。織斑 一夏だけだったらまぁまぁ動きやすかったが近くに織斑 千冬までいる。思っていた以上に慎重にいかないといけないよねやっぱり。

 

 いずれにしても、ターゲットが目の前に居るのはありがたい。まぁちゃちゃーっと校舎裏でやっちゃってもいいんだけれど、それだと充分に〝織斑 千冬〟に苦痛を味あわせる事が出来ない。ここまでターゲットが近くにいるのだからじっくりと行けばいいか。

 

 あたしは考えをまとめると、椅子から立ち上がる。〝こういうの〟は第一印象が勝負なんだよね。

 

 

 

 

「ど~も?」

「ん?」

「君、織斑 一夏君だよね?」

「あぁ、えぇと…東雲さんだったよな」

 

 織斑 一夏は屈託のない笑みをあたしに向けてくる。まずは〝つかみ〟はオッケーかな。しにしても東雲さんか……呼ばれ慣れてないだけにどこか違和感がある。

 

「あぁ、あたしは秋穂でいいよ、〝家族〟もそう呼ぶし」

「そうか、じゃあ俺も一夏でいいぜ」

「そうさせてもらうよ、一夏君」

「あぁ」

 

 

 一通り挨拶を終えた所で、あたしはふと一夏のすぐ横でどこか不機嫌そうなポニーテール少女を見つける。ポニーテール少女というか、彼女はあたしの前の席に座っている篠ノ之 箒って娘だ。しかし……なんでそんなあたしを睨んで……。まさか既に?

 

「随分とうれしそうだな一夏。そんなに私以外の女子と話すのが楽しいのか?」

「はぁ!? お前何言ってんだ?」

 

 いや、違う……これは何だろう……。よく分からないけど自分の素姓がばれたとかそういうのではないようだ。

 

「ふん、先ほどの笑顔を見せられた後では何を言ってもな!」

「何怒ってんだよ、笑ってほしいのか?」

「お前は何処まで馬鹿なんだ! 誰がそんな事を言ってるんだ!」

「じゃあもう何なんだよ!?」

 

 ……ははぁん……なるほどねぇ…。こりゃ一種の嫉妬みたいなものかな。つまり箒は自分が話しかけた時よりもあたしが話しかけた時の方が反応が良くて気に入らないのだろう。

 

 ……にやり。こういうのいるとちょっと引っかき回したくなるのがあたしの性分だ。自分に素直に、仕方ないね♪ あたしは、箒と一夏の間に割って入るとわざと顔を一夏の近くに持っていく。

 

「それはそーと……一夏君、授業中々苦戦してたねぇ」

「ま、まぁ……色々と専門用語だらけで難しいし……」

「そうなんだ♪ あ、そうだ。あたしIS方面にはそれなりに詳しいし、教えてあげても良いよ?」

「え!?」

「なッ!?」

 

 あたしの申し出に一夏だけでなくそれまで、ふてくされ気味の箒までもが声を上げる。一夏にとっても急な話だが、こと箒にとってこれほど面白くない話はない。ついさっきまであたしの笑顔に腹を立てていたのだから。

 

 

「ま、待て! いきなり何を言い出すんだお前も! 大体お前は今日転校してきたばかりじゃないか!」

「転校してきたどうこうは関係ないでしょ? 要は一夏君があたしが好みであたしに教わりたいわけだし」

「なぁぁにぃぃぃッ!! 一夏ぁぁぁッ!!」

「俺はまだ何も答えてねぇよ!! おい秋穂、余計な事言ってんじゃッ!?」

 

 あたしの一言で相手がどんどん〝はちゃめちゃ〟になってくのを見るのって結構楽しいよね。調子に乗ったあたしは既に業火となりつつあった箒に向かって、更に油をそそぐ。

 

「余計な事かどうかはともかくさ。丁寧に教えてあげるよ? ……それこそ手取り足取り……2人でじっくりとね♪」

「丁寧にか……た、確かに箒の教え方って〝昔っから〟擬音主体でよく分からないとこあるしなぁ……丁寧にっていうなら秋穂でも…」

「き、きききき貴様ぁぁぁッ!!」

「だから何だって!? 丁寧に教えてくれるんならそっちの方が良いだろうが!?」

「お前は何も分かってないッ! 分かってないぞぉ!!」

 

 箒はついに一夏の胸倉を掴んで前後に振り始めた。周囲は唖然としているが見ている分にはとても面白い。これはもう一押しで凄いことになりそうだ。あたしはトドメの一言に何を言おうか考え始める。

 

 そしてその言葉が頭に浮かび、まさに口を開かんとした時であった。いきなり、ダンッ!!と机をたたく大きな音が教室内に響き渡る。

 

 

 その音に、教室内の時間が止まった。喧騒が静まり、皆がその方向を振り返る。箒も一夏の胸倉をつかみながら、そして一夏は箒に胸倉を掴まれながらその方へ顔を向けている。

 

 皆画向ける視線の先。そこにいたのは、僅かにロールがかったブロンドの髪を持つ、いかにもどこかのお嬢様という感じの気品あふれる少女だった。ただ、その綺麗に澄んだブルーの瞳が不機嫌そうに釣り上がっていなければ、完璧だったかな。

 

 その少女はあたし達に向けて睨みを利かせた後、声を張り上げる。

 

 

 

「いい加減にして下さいませんことッ 先ほどから聞いていれば内容の無いくだらない話ばかりで騒がしいだけッ! そういう下々の痴話喧嘩レベルの会話は廊下ででもして下さらい? エリートである私に迷惑ですわッ!!」

 

 

 あたしは、一瞬その剣幕に押されあれほど大きな声だったのにもかかわらず何を言ったかよく聞き取れなかった。

 

 しかし、そんな状況であってもあたしが目的を達するにあたって面倒な障害が1つ増えたということはしっかりと理解できていた。

 

 

 

 どうやら、あたしの性格が妙な所で妙な波紋を生んでしまったようだと、この時あたしは少し後悔するのであった。

 

  




 どうも、こんばんわ。(現在午前0時)のろいうさぎです。
妹はファントムタスク略して〝妹タス〟の第1話です。 
IS学園に入学するにあたって、所々に秋穂の得意な物をまぶしてみました。
ここで言う所の、変装やら潜入やら、後はひっかきまわすのが大好きやら。

とりあえず最後にセシリアの言葉を入れたのでお分かり頂けると思いますが、秋穂が編入したタイミングは、丁度一夏が自己紹介を終え箒に出会い授業で轟沈した翌日という事で、ほぼ入学式と同時期とういう事になっています。

近いうちに、登場人物のプロフィールなどをまとめた物を上げようともいます。
次回は、セシリアの宣戦布告のシーン後ぐらいからになる予定です。
それでは、お楽しみに♪
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