IS インフィニット・ストラトス~妹はファントムタスク~   作:のろいうさぎ

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遅れに遅れましたこと大変申し訳ありませんでした。



第23話~影~

 つぅ~~ッ! いきなりなんて物をッ!?

 

 黒煙から抜け出した先には、シャルルがブレードを構えて迫ってきていた。初めの、アサルトライフルとブレードという武装で対応を考えていたあたしは、一番取りたかった主導権を奪われてしまった事に顔をしかめる。

 

 だが幸いなことに、直撃を受けても、シールドエネルギーが全ての衝撃を受け止めてくれたおかげで〝デファイアント〟自体には目立った傷も損傷も無かった。とはいえ、劣勢であることに違いはないのだが。

 

 

 

 

「結構、君の頑丈なんだね?」

「ふんッ! 頑丈なのは、ISだけじゃないよッ!」

 

 

 強がってはみるものの、あたしは全速力バック、対してシャルルは全速力でこちらに向かってきている。いくら推力の高い〝デファイアント〟でも体勢の不利はどうしようもなく、あたしは苦しい対応を迫られる。

 

 シャルルは余裕綽々と言った風でブレードを振り下ろす。そのブレードをあたしは、右腕の装甲で弾くとカウンター気味に左を振りぬく。だがシャルルはそれを予想していたように瞬時に身を引き、武装をサブマシンガンに切り替えて弾丸をばらまいた。

 当てる気はさらさらないが、意図は明確。それは間合いの確保だ。

 でも後退してくれたのならありがたい!

 あたしはすかさず、飛ぶ方向を変えシャルルの懐へ飛び込む。軽い被弾など気にする必要はない、とにかく主導権を引き戻さねば!

 

「今度はこっちの番だよ!」

「それはどうかなぁ?」

「!?」

 

 あたしは目を見開く。懐に飛び込み、間髪入れずに繰り出した右ブロー。タイミングは完璧だったはず。なのにシャルルはその攻撃を難なく躱して見せた。というよりも、あたしの突進に瞬時に対応した!?

 

そう思ったが実際は違っていた。反応したというよりは、そもそも彼は〝そうするつもり〟だったようだ。シャルルは躱した直後、武装をマシンガンに切り替え射撃攻撃へと移行する。その攻撃は一定の間合いを保って行われ、離れすぎず近すぎず。絶妙な距離を取ってくる。しかもそれをあたしが苦労した後進を組み合わせての機動。やはり相当実力は高い。

 

 でもこの距離なら、フルブーストを駆けるまでも無く追いつける。あたしはそう思い、機体の瞬発力に任せ接近を試みる。だがそれでも目の前の敵はスルスルと、接近を躱し、銃弾をばらまきつづける。確かに、多少の被弾は気にするほどの無いレベルではある。だがそれも長時間となれば話は別だ。

 

 あたしは、目減りしていくシールドエネルギーに顔をしかめつつ、一旦距離を取るべく後ろへ下がる。だがそれにシャルルは素早く反応した。武装を銃からブレードに切り替えるとこちらの懐に一気に飛び込んできたのだ。

 

「くッ」

「アハハッ、手に取るように分かるよ」

「だけど、そっちが近づいてくれるならッ」

「近づいてもそんな体勢じゃ、満足な攻撃は出来ないよね?」

 

 シャルルの言うとおり、あたしは今バックステップを行ったばかり。ただ距離を取るつもりだけだったので、メインのスラスターにはまだ火すら入っていない。あたしはとっさに両腕を前で十字に組みブレードを受けるも勢いが違いすぎ弾かれる。更にそこへ追撃の回し蹴りが叩きこまれた。

 

 

「ぐがッ!」

「まだまだ行くよ!」

「調子にッ」

 

 あたしもようやく体勢を立て直し、反撃するも攻撃が全て先手先手で潰される。全ての攻防で常に先を行かれるこの現状を打開する策は見つからない。少なくとも正攻法でこれをひっくり返すのは無理だ。相手の間合いのコントロールは悔しいが完璧。手に取るように分かるといわれては下手に動く事も出来ない。本来はどっしりと腰を据えて打ち合うのが一番やりやすいのだが、それもこちらが待っていて転がり込む様な状況でもないだろう。

 

 

 

  

 

 あたしは、答えの出ぬ自問に舌打ちしつつ思考を辞めるとシャルルのブレードを掴み勢いを利用して、その場でターン、シャルルを放り投げる。そして自分も距離を一気に距離を開けた。

 

  

  

 そして間髪いれずに、スラスターのカードリッジをロードする。

 

 

〝Hammer Ignition Boost〟

  

 

 

 モニターに文字が躍る。既に1回使っているためこれで残りは後1回。主導権を奪い取るには出し惜しみはしな――――

 

 

 

「フフッ」

 

 

―――――!?

 

 

 今、笑って?

 

 シャルルの表情を確認し、あたしは怪訝な表情を浮かべるも、もうこちらの動きは止められない。中途半端に突っ込めば痛手を食う事は分かっている。あたしは一瞬よぎった不安を振り払う。その直後凄まじい加速感があたしを襲う。速度と体重を乗せきった拳がシャルルを捉えようとしたまさにその時、シャルルの機体がグンッと〝離れた〟

 

 

「え!?」

 

 

 見やるとシャルルは、後退しながら〝瞬時(イグニッション・)加速(ブースト)〟を行っていた。それ自体は分かる。だがどうして!? ただのイグニッションブーストではデファイアントのこの加速を上回る事など出来はしない。なのにどうしてこんな!?

 

 

 と、ふとシャルルが何かをパージするのが見えた。ハイパーセンサーによってそれが拡大された時あたしは青ざめた。

 

「つ、追加のブースター!?」

「僕が呼び出せるのは何も武装だけじゃないよ」

 

 あたしはシャルルの台詞を聞いて先ほどの笑みの意味を理解する。さっきの笑みは、事が思惑通りに進んでいるという事を暗示していたのだと。

 だがそれよりも先に理解しなけらばならない事がある。

 

 

 それは

 

 

 

 

 この状況だった。

 

 

「ッ!?」

「その顔、今日何回見る事になるんだろうね?」

 

 あたしは最高速から腕を振り切った直後で、まともに防御体勢にも入れない。まだイグニッションカードリッジのエネルギー分は残っているがどう考えても、回避は間に合わない。仮に出来てもカードリッジのエネルギー分が消れれば、そこで攻撃をまともに食らう。結局この状況での回避は自分への攻撃をただ延期しているにすぎなかった。

 

 

 そんなあたしへとシャルルは微笑みながら再び無反動砲をコールし、容赦なくトリガーを引いた。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

「うおッ!?」

 

 爆発音がやや距離の離れたオータムにまで轟わたっていた。オータムは、秋穂を案じつつも必死に黒いラファールを追っていた。やらなければいけない事、その際の優先事項をオータムは分かっている。秋穂ならば大丈夫と心で何度も念じながら、スラスターを噴かす。しかし〝パラスト・ホルン〟の機動性能は言ってしまえば並。遅くはないが秀でてもいない。本当に機体性能としては一般的なそこいらのISとなんら変わらない。そのため実際追いかけているがジリジリと引き離されているのが現状である。

 

 

「くそ、あんまりこの距離から撃ちたかねぇんだけど……そうも言ってらんねぇよなッ」

 

 

 オータムは急制動をかけその場で、機体を滞空させると、ある武装をコールした。それは身の丈を超すほどの砲身を持つ大型のスナイパーライフル。銃口が2つある事からその武装がハイブリッドライフルである事が分かる。銃の本体上にハイパーセンサーとリンクする高感度のスコープを備え、ISの武装としては最長を誇るその武装の名は永遠の(エーヴィッヒ)水平線(ホリツォント)

 

 その武装をオータムは、両手で構える。左腕がまだ痛む。この武器は長射程高威力だがその分反動もスナイパーライフルの中では最も大きい。ただ持っているだけでも痛むという事は、反動を受けた時の痛みは自分が考えていた物よりもはるかに大きいだろう。しかしそうもいっていられない。自分達の獲物をみすみす横取りされてなるのものか。

 

 オータムは、センサーリンクされたライフルのスコープを覗き込み、スコープ越しに敵のISを捉える。肩に一夏を背負っている関係で大きさの割には狙える所はかなり少ないだろう。だからオータムはあまり撃ちたくないと言ったのだ。下手をすればここで一夏を殺してしまいかねない、それだけはなんとしても避けなければならない。そんな事になればこれまでの苦労が水の泡であるし、これからのこちらの行動にも大きな変更を出てしまう。

 

 ……相手を殺さず……かつ動きを止めるには…スラスターしかねぇッ

 

 

 オータムはISの姿勢制御を自動滞空モードにし機体を安定させると「精密狙撃モード」を起動する。〝パラストホルン〟に搭載されているセンサーリンクをはじめとするシステムは、一般的なISのそれとは少し異なり、この機体は格闘戦闘を行わないことを前提に作られているため、全てのセンサーシステムが射撃側にリソースされている。そのため、センサーリンク一つとっても複数の射撃モードがあり、この「精密射撃モード」は数値上の誤差を限りなくゼロに近づけるため軌道上のとある衛星を介して位置を再測定する。ISはそもそも互いに位置情報を共有してはいるが、それはコアの話であって操縦者にとっては機体そのものに搭載されたセンサーに頼らざるを得ない。その点ではこれはより操縦者側に立ったシステムといえる。

 

 オータムの目の前のスクリーンに現れるモニターがシステムの起動によって一瞬ブレる。だが次にモニターが安定した時には表示されるデータの数値誤差が修正され映し出されているターゲットもより鮮明でクリアなものとなっていた。

 

 

 オータムは、そのシステムをフルに活用し、素早く再照準をかけると、迷わずトリガーを引く。腹に響く重たい音が響きそして次に来たのは左手に走る激痛だった。ただでさえ長砲身の〝エーヴィッヒ・ホリツォント〟はスナイパーライフルとしては非常に大きい反動を有する。オータムが射撃に選んだのは実弾射撃だった。レーザーなら反動もそれほど大きくないのだが、実弾よりも威力が高い分スラスターに着弾した際に爆散を引き起こす可能性もあったため使えなかったのだ。

 

 オータムは顔をしかめつつ、モニターを確認する。モニター越しの機体のスラスターからはもうもうと黒煙が上がっていた。どうやら一発目で直撃したらしい。それにしてもシールドバリアを一撃でたやすく打ち抜くとは。オータムは威力の高さに、いまだ痛む腕をさすりながらフッと笑った。

 

「へへッ……こっちに痛みがこんだけ来てんだ。威力はこれぐれぇねぇと流石に……な」

 

 

 スラスターを打ち抜かれた、ISはそれでも何とか一夏を持ち帰ろうと残りのスラスターを使いフラフラと飛ぶ。いくら平均的な速度しかない〝パラスト・ホルン〟でもあの程度の速度程度なら容易い。オータムは自動滞空をキャンセルし、黒いラファールを目指す。

 

 敵はこちらの接近に気づき、手持ちの武装のマシンガンを放っては来たが、結局機動が伴って初めて攻撃は成立する。機動力を失ったISの攻撃など、攻撃とすら呼べないお粗末なものだった。

 オータムはそれを難なく躱すと、敵に肉薄し動きを止める。だが、オータムはここまで来て一つの懸念を覚えた。

 

 

 ……いくらなんでも、簡単すぎやしないだろうか…と。

 

 

 スラスターを打ち抜き、機動力が大幅に低下しているとはいえ、こちらの接近に対して反撃したものの、それ以降は目立った反抗もなく自分の制止要求に従った。

 

 あまりにも妙だ。

 

 オータムは目の前のISの操縦者をまじまじと見やる。通常のラファールには無いであろう機体色と同じ黒いバイザーで目元は隠れている。だが口元はこんな状況でも少し笑っているように見えた。そしてオータムはこの笑みをつい先日見たことがあった。

 

「あれ? お前…」

 

 

 オータムがそう口走った次の瞬間。

 

 

「ッ!?」

「でぉぁぁぁぁぁぁッ!!!」

「お、お前ッ!?」

 

 オータムはとっさにスラスターを噴かし後退し〝エーヴィッヒ・ホリツォント〟で振り下ろされたブレードを防いだ。だが圧倒的なパワーの違いから、さらに大きく弾き飛ばされる。

 オータムは姿勢を立て直し、キッと自分を弾き飛ばした相手を睨む。その視線を受けシックザールが低い声で言う。

 

 

「てめぇとは……初めてだったな」

「……シックザールだっけか…なんでここに」

 

 オータムの目の前にいたのは、赤い重装備のIS〝ゾンネ・フォーゲル〟駆るシックザールの姿だった。シックザールはオータムの問いかけには応じず、ブレードを戻し代わりに両腕に荷電粒子砲を展開する。そして自分の背後にいた黒いラファールを一瞥すると、その操縦者は一度静かに頷いた後再びフラフラと逃走を開始する。オータムは一瞬そっちに気を取られたが、シックザール相手に別方面へ気を取られることが何を意味するのかは、秋穂の一件で十分わかっている。幸いラファールの速度が遅い分すぐにどうかなッてしまう問題ではない。ひとまずオータムはそちらへの意識を振り払い目の前の敵に集中する。

 

「殺る気満々ってか…」

「そう見えるか?」

「…あぁ?」

「あたしが本当に戦う気満々に見えんのかって言ってんだよ」

  

 オータムはシックザールの言葉に首をかしげる。自分と黒いラファールの間に割って入ってきたのはシックザールの方だ。その行動から敵を助けに来た事は明白だった。だがシックザールの今の声色は、威圧というよりも台詞同様、非常にけだるく面倒くさそうに聞こえてくる。

今でも深いため息をハイパーセンサーが捉えていた。

 

 こいつ。一体どういうつもりだ? 面倒くせぇなら助けなきゃいいじゃねぇの……。つうか、こいつ、デュノアと繋がりがあったのか…。

 

 オータムは、シックザールの言葉の意味を深く詮索するのをやめ、現状把握に頭を切り替える。シックザールがデュノア社とどんな形であれ繋がりがあるという事は、その

 

他の2人、トレーネ、そしてシュメルツもまたデュノア社と関係があるという事になる。そう考えると、この戦闘に他の2人が介入してこない保証は何処にもない。

 

 オータムは舌打ちすると、〝エーヴィッヒ・ホリツォント〟をシックザールに向ける。その行為にシックザールも相変わらず面倒なそぶりは見せながらも眉根を寄せる。

 

  

「ったく……面倒くせぇ…」

「だったら、行かせてくれねぇかね?」

「それが無理だから……面倒くせぇんだよッ!」

「ちぃッ」

 

 

 シックザールの構えた荷電粒子砲が火を噴く。オータムはそれを上昇し回避すると、〝エーヴィッヒ・ホリツォント〟のトリガーを引く。腕に響く鈍痛に耐えながら放たれた弾丸はシックザールを捉えはするが、〝ゾンネ・フォーゲル〟の堅牢な装甲がダメージを通さない。

 

「固ってぇなッ!」

「それが取り柄だもんでな」

 

 シックザールはオータムに接近すると、ブレードを再びコールする。そのブレードはさっきオータムと〝ラファール〟の間に割って入った時に使われた物ではなく、一回り以上大きい物であった。オータムはマガジンを取り変えながらそのブレードの一振りを身体を逸らして避けるとぐるんっとその場で宙返りを行い、足でブレードの軌道を逸らすと空いた顔面目がけて、〝エーヴィッヒ・ホリツォント〟の銃身をねじ込こむ。それに気付きシックザールもこちらへ、荷電粒子砲を向けるがオータムの方が先にトリガーを〝2回〟引いた。

 

 至近距離からの爆発にオータムは投げ出される。仕留めきれなくともそれなりにダメージぐらいはあったはずだと、爆煙の向こうを睨むが煙の向こうから現れたのはほぼ無傷の〝ゾンネ・フォーゲル〟の姿だった。

 

 

「んだと!?」

 

 

 馬鹿な、秋穂との一戦じゃ、クローの一撃で装甲が吹っ飛んだって聞いたぞ!? それよりも遥かにでけぇダメージのはずなのに何でッ

 

 

 無傷である事に気を取られ、一瞬の反応を鈍らせる。構えたままの〝エーヴィッヒ・ホリツォント〟のマズルをシックザールに掴まれ思い切り引っ張られた。

 

 

「しまった!?」

「甘ぇんだよ」

「ぐぅッ!!」

 

 引き寄せられた勢いのまま腹に数発のパンチを食らわせ、オータムから手を話すとそこへ容赦なく踵落としが決まる。くの字に曲がった身体が、オータムが手も足も出させてもらえない事を表している。踵落としの一撃で海へ向かって急降下していくオータムにシックザールは左手の荷電粒子砲を向けた。

 

 

 

 

「あ~ぁ、暇つぶしにもなんねぇよ」

 

 

 

 シックザールが半目で落下していくオータムを見てそう呟く。そしてトリガーにかかる指に力を入れようとした、その時。

 

 

 

 

 

「――――な、な、なにぃッ!?」

 

 

 

 突如、肩を中心に装甲が爆散する。それを〝見て〟いつの間にか体勢を立て直していたオータムがほくそ笑んだ。

 

「はんッ、どーだ! ただでけぇのぶっ放すだけが射撃じゃねーんだよ。ばーか」

「てめぇ、何を…ッ」

「なんてこたねぇ、さっきの攻撃さ」

「攻撃? 防いだだろうがッ」

「あぁ、防いだなぁ。けどよ、なまじ装甲がありすぎるのも問題だろ? おかげで、しぃっかり〝噛みこんで〟くれたぜぇ」

「か、噛み?」

 

 

 シックザールの肩を爆発させたもの。それは時限式の吸着弾。打ち込んだのは〝エーヴィッヒ・ホリツォント〟をねじ込んだ時だ。オータムはそのすぐ前にマガジンを取り変えた。そのマガジンこそ、シックザールの装甲を吹き飛ばした時限吸着弾の専用カードリッジだった。そして2発中1発はチャンバー内に残されていた通常弾で、これで先に装甲を弱らせた後、この吸着弾を噛みこませたのだ。

 

 流石に無傷で出てきた事には驚いたが、結果はこの通り。これで少なくともこの弾が相手に有効である事は分かった。

 

 

 シックザールは、まだオータムの言葉の意味を理解できてはいないようだったが、視線はこちらを睨みつけている。集中力は切れていないらしい。オータムはレーダーで黒い〝ラファール〟の場所を確認する。

 

 思ったより離れてやがるな…少し不味いか…

 

 

 オータムはそう思ったが、そこへ通信が入った。

 

 

『オータム』

「スコール、何だよ」

『向こうの機体はこちらで確保するわ』

「出来んのか? 本体も探さなきゃいけねぇんだろ?」

『あなたがスラスターを撃ち抜いてくれたからね。あの程度の機動なら〝ミルヒシュトラーゼ〟でもなんとかなりそうよ。それに〝猟犬は飼い主の所に必ず戻る〟行先は同じだもの。だからあなたは彼女を…』

「分かってるよ、それなそれで、とっとと倒して秋穂を助けにいかねぇとな!」

『えぇ、頼んだわよ』

 

 

 通信を終え、シックザールを睨み返す。

 

 

 

「おい」

「…ッ」

「言っとくが、逃げるなら追わねぇぜ? 別の目的があるからな」

「言っただろ……それが出来ねぇから…面倒なんだよッ!!」

 

 

 

 

 

 オータムはそれを聞いて、へヘッと軽く笑いをこぼす。そして〝エーヴィッヒ・ホリツォント〟を構えると向かってくるシックザールに向かって、トリガーを引いた。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

「スコール」

 

 通信を切ったスコールの後ろからマドカが声をかける。その声には多少疑問の色が浮かんでいた。

 

「何、エム?」

「あぁは言ったが、こちらで確保などできるか? 敵の戦力もまだ完全には把握できていないし……なによりオータムはアレと戦っているんだぞ?」

 

 アレとはシックザールの事を指しているのだろう。確かにスコールにもそれに関しての危惧は少しあった。レーダーに反応はないが、いつ出て来ても不思議ではない。だがスコールはシックザールについては他に気になっている事があった。

 

「えぇまぁ……心配じゃないと言えば嘘になるけれど…。エム……あなたシックザールの態度を見てどう思うかしら?」

「態度?」

「そう、態度。助けに来たにしては……あまりに雑過ぎる」

「口が悪い奴だからな。そういう性格なんじゃないのか?」

「いいえ、確かに前回戦った時も荒っぽい口調だったのは確かだけれど。今回のは少し違う気がする…」

「どう違うと?」

「荒っぽさの中に苛立ちがあるわ。それも敵に向けてではない……。断定はできないけど苛立ってるのはオータムにでは無いと思う」

「?」

「あの2人の会話を少し思い出してみて?」

「会話……だと?」

 

 

 マドカはまだ首をひねっていたが、もちろんスコールがそう考えるのには根拠がある。もちろんそれが当たっていればの話であるが。

 その根拠とはオータムとシックザールの会話の冒頭と、そして最後の部分だ。

 

 

『あたしが本当に戦う気満々に見えんのかって言ってんだよ』

 

 普通、こんな事を敵にいちいち聞くだろうか? 命を奪い合うような場面で少なくとも言うセリフでは無いはずだ。それにシックザールはしきりに面倒だと口にしている。そもそもオータムを落とす気がないと取れる発言をしている彼女が、そのオータムに対して面倒だと言うのはどうにもつじつまが合わない。となれば何について苛立つのか想像はできる。対象がオータムでは無いのなら、それは自身に関する事の何か。そしてそれを断定するに必要なのが残るもう一つの会話である。

 

 

『言っとくが、逃げるなら追わねぇぜ? 別の目的があるからな』

『言っただろ……それが出来ねぇから…面倒なんだよッ!!』

 

 

 シックザールは出来ないと言った。つまり彼女は否が応でもオータムを行かせられない理由がある。それは…

 

「恐らく、彼女は一人。一人だからオータムを先に行かせられない。まぁ、あそこまで面倒くさがっている理由までは察しが付かないけどね」

「……なるほど…」

「強敵の増援がいないと分かれば、後はスラスターを撃ち抜かれたラファール一機。対IS武装も搭載してあるこの艦なら充分に渡り合えるわ。それにいざとなればあなたがいるし」

 

 マドカはスコールの視線を受け、まぁなと軽く返事をする。どうやら少々照れているようだった。そんなマドカを横目に見つつスコールはデスクのモニターに視線を落とす。確かに先ほどマドカに言った通り、この〝ミルヒシュトラーゼ〟には対IS用の武装は搭載されている。まともに動けないラファールしかも、織斑 一夏と言うある種〝重り〟を背負った相手に万に一つ不覚を取る様な事はないだろう。シックザールにしてもオータムが推している。シャルルも劣勢ではあるが秋穂が抑えている。その点は、あまり気にしてはいない。だが、まだ大きな問題が残されている。それはあの黒いラファールが何処へ向かっているかということだ。

 

 レーダーには以前反応は無く、近くに下りられるような陸地も存在しない。

 

 

(何処へ向かっていると言うの……)

 

 

 と、スコールが心の中で呟いた時だった。格納庫でオータムが出撃した後引き続いて、〝キングオブスカイ〟の映像に目を光らせていた鐘音から通信が入る。しかもその声はかなり上ずっていた。

 

 

『ミューゼル!』

「どうしたの!?」

『見つけた! 見つけたよッ、あのラファールの行先!』

「え?」

 

 スコールは思わず耳を疑った。聞きたかった答えが、こんなタイミングで帰ってきたという事もあるがそれよりも長距離レーダーにも艦影一つ写らないと言うのに何故、空を飛ぶ偵察機がそれを見つけられるのか? スコールは戸惑った声で鐘音に聞き返す。

 

「み、見つかったって…どういう事?」

『どうって……そういう事なんだけど……』

「だってレーダーには写ってないわよッ!?」

『あ、あぁそういう事。あ、あの……レーダーじゃダメなんだよ』

「ダメ?」

『うん、こっちでもね、レーダーの画面片手に映像を見てたんだけど……〝キングオブスカイ〟からの映像を見てはっきりしたよ』

「つまりどういう事なの? 単刀直入に言いなさいッ」

 

 鐘音の遠回しな言い方に、やや苛立って返すスコール。通信機の向こうの彼女にも感情は伝わったようで、苦笑いの後その問いかけに答えた。

 

『レーダーみたいな電子機器じゃダメなの、光学機器つまりカメラで捉えないとね……はぁ、こんな初歩的な事だったなんてね。技術者ながら呆れるよ』

「カメラ?……まさかッ!」

 

 

 スコールはコンソールを叩き、〝キングオブスカイ〟からの映像に切り替える。

 

「これは……」

「なんだ、何が写って……ッ!?」

 

 スコールそして映像を覗き込んだマドカも映し出された〝(シルエット)〟を見て言葉を失う。

 

 

 

 〝キングオブスカイ〟が映し出した物、それは海上に姿を晒した〝ミルヒシュトラーゼ〟と瓜二つの外見を持った潜水艦であった。

 

  

 

 

 




皆さま、かなりお久しぶりでございます(汗
もう言い訳は無しにすいませんでした。

さて、シャルロット編の戦闘がはじまりましたね。
果たして、秋穂は勝てるのか、シックザールは? 最後の潜水艦の正体とは!?


それでは、またよろしくお願いいたします。
のろいうさぎでした。
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